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されど俺の日々  第三回

文=法野巌
イラスト=笹沼傑嗣


次々と凶悪な犯罪を繰り返す正太の犯罪者的性格は中学の頃から如実に現れていた。
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逆上と衝動の法廷ドキュメント、第八回をお届けいたします。
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傷害事件

二度めの事件は傷害であった。
正太の住む町は中央が城跡をしのばせる公園となっている。
夕方ともなると、繁みの多い公園は恋人達の格好のデートの場所となる。
正太はこの繁みの陰で愛撫に没頭していたカップルを襲い、男を殴り倒し、前歯を上下合計四本、肋骨を二本折り、口から血を流しながら、地面をのた打ち回っているところを更に足蹴にした。
現場を通りかかり、たまたま目撃した別のカップルから通報により駆けつけた警官に傷害の現行犯で逮捕されたものであった。

正太は取り調べに対し、アベックが人目を憚からず露骨な行為をしていたので、思わずカッとなって男を殴ったと述べた。
人目を憚からずとは言っても、しかしアベックが愛の行為に没頭していた場所は、繁みが人目を遮断するようになっている死角のような場所であり、何らかの目的で近づいたことは明らかであった。
多分、男を脅かすか気絶させるかにして、相手の女を凌虐するのが目的だったのだろうと、取り調べ官は追及した。
しかし、正太は頑としてその動機を認めなかった。
検事は単なる傷害事件として起訴せざるを得なかった。
この事件も、倒れている相手を更に足蹴にするという悪質な加害行為が認められること、被害者への弁償も済んでいないこと、前の罪を犯してからまだ間もないことなどの理由により、重い刑が言い渡された。
懲役二年であった。

もはや、故郷に帰ってもまともに相手になってくれる者は誰もいなかった。
ただ、さすがに母親だけは、正太を迎え入れてくれた。
母親には正太の他は近隣に親類縁者となる者はいなかった。
夫は正太がまだ三歳の頃、ぶらりと家を出たまま行方不明となった。
母親は、正太には父親のことは全く話さなかった。
従って父親がどうして母や自分を捨てて家を出たのかということを正太は知るすべもなかった。
敢えて、父親の話題を拒否する母親の態度に、彼女の夫に対する考え方、評価が表わされていた。

正太が非行少年、ひいては犯罪少年に成長した大きな理由に、この悲しい、孤独な家庭環境が指摘出来るであろう。
勿論、片親の家庭に育っても、健全な立派な成長をとげる子供も多数存在するが、一方非行に走る子供達もそれ以上に指摘出来るのである。
子供の健やかな成長に、両親の仲の良さは何よりの肥となる。
片親であったり、せっかく両親は揃っていても不仲であったりすると、子供は愛に対する飢餓状態に陥り、心の空白を埋めるために非行に走るという結末に至ることが多い。
勿論、そうでない子供も多数存在するのだから、非行化は、その子供の先天的な素因によるのか、それとも環境によるのかは簡単に白黒をつけられる問題でなかろうが、正太の場合には素質と環境とが同じ比率で作用したとしか考えられない。

(続く)

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07.08.11更新 | WEBスナイパー  >  スナイパーアーカイヴス