DJ Harukichi shouts at the crossing of music and Eros. 毎週木曜日更新! DJハル吉の脳内性感ミックスアップ! 音楽とエロスの交差点【最終回】 『DANTE 01』 監督: マルク・キャロ 文・翻訳=DJハル吉 |
2001年に『アメリ』の大ブレイクで不動の地位を確立したジャン=ピエール・ジュネ監督と過去に共同監督をし映画『デリカテッセン』(1991年)『ロスト・チルドレン』(1995年)といった名作を世に送り出してきたマルク・キャロ監督。その後映画から離れていましたが今年初ソロ長編作品『DANTE 01』を公開しました。間もなく国内版DVDが発売されるキャロ監督にスポットを当てます!
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『デリカテッセン』や『ロスト・チルドレン』を観る度に思っていたのは、ジュネ監督とキャロ監督の割合は実際どうなんだろうということ。その後ジュネ監督は『アメリ』『ロング・エンゲージメント』とヒットを飛ばしたので、路線というか監督の趣向はハッキリしたのですが、キャロ監督の部分がまだ把握しきれていませんでした。そのときに『DANTE 01』公開のニュースを知り、日本劇場公開を楽しみにしていたのですが、残念ながら公開ならず、フランス版DVDを取り寄せて観てみました。
Realisateurs:Marc Caro Format:Couleur, Dolby, DTS, Plein ecran, Cinemascope, PAL Region:Region 2 Nombre de disques:1 Studio:Wild Side Video Date de sortie du DVD:5 aout 2008 Duree:79 minutes ASIN: B0019MQCDW Prix:19.99 euro |
『Dante 01』トレーラー
字幕がないので展開がよく分からないのですが、ネットの情報を集めるとストーリーはこんな感じです。
設定は近未来、エイリアンと遭遇した宇宙船でただ一人生き残った主人公サン・ジョルジュ。仲間を殺した容疑で判決を受け囚人収容船「Dante 01」に収監される。そこでは囚人がモルモットとして人体実験されていた。エイリアン遭遇で得た謎のパワーに目覚めたサン・ジョルジュが船内で災いを引き起こしていく……。
執拗な顔のアップ、しかも汗をかいてるのか必ずヌメッとテカっている表情、人間を爬虫類のように感じさせる薄緑色の照明。そしてなぜか全員スキンヘッド(笑)。荒廃した世界感、錆びた金属部品への偏愛、そして音楽はほとんど電子音(ノイズ)だけというキャロ監督のダークでフェティッシュな要素が散りばめられた映画です。もちろん、ジュネ&キャロ監督映画に欠かせない名優ドミニク・ピニョンも出演してます。
と、ここまで書いたところで、国内版発売が決定しました!
『ダンテ 01』 監督: マルク・キャロ 形式: Color, Dolby, DTS Stereo, Dubbed, Subtitled, Widescreen リージョンコード:リージョン2 画面サイズ:2.35:1 ディスク枚数:1 販売元:ジェネオン エンタテインメント DVD発売日:2008/11/21 時間:85 分 ASIN:B001G75F4W 価格:3,990円 |
もし『ダンテ 01』が気に入って、もっとマルク・キャロ監督の作品を観たいという人にはこちら、
『Made in Caro』 Acteurs:Marc Caro Format:PAL Region:Region 2 Nombre de disques:1 Studio:ARCADES VIDEO Date de sortie du DVD:10 janvier 2007 ASIN:B000M34420 Prix:14.95euro |
サンプル映像はこちら
『Made in Caro』は監督が1984年から2004年までの20年間に撮った、短いのは30秒、長くても13分という短編ばかりを集めたDVD(約80分)で、CM、ミュージッククリップ、前衛ダンス、コラージュなどキャロのエッセンスがぎゅっと詰まったものばかりです。
テクノメタリックな映像が高速で流れる中、サイバーフェティッシュな女性達がバイブマシンにまたがり腰を動かす「Exercice of steel」、しかもこれがフランス厚生省委嘱ってのが凄い。残念ながらYouTubeにありませんでした。まぁボカシなしのファッキングマシーン映像ですから、買ってからのお楽しみですね。このDVDで初めて知ったのですが、キャロ監督はPVを幾つか撮ってます。
フランスの国民的バンド「アンドシーネ」のビデオクリップ「Savoure le rouge」
フェティッシュな巨女に金属衣装、ホント、『ロストチルドレン』の世界観です。
もう一つ「アンドシーネ」のクリップ「Indochine les Tzars」も収録されてます。
こちらは『デリカテッセン』のセットを使ったんじゃないのかと思ってしまいますね。ペラペラの二次元キャラをコラージュ風に入れるのもキャロの特徴です。
フランス・テクノの鬼才ロラン・ガルニエのクリップ
「Coloured City」
オイルを塗ったような顔とエロティックに踊り狂うダンサーを高速カットアップで切り替えながら、ローアングルから撮る手法はもうエロくてサイコーです。この撮り方は『Dante 01』にも活かされてます。
その他の収録作品でYouTubeにも上がっていたものとしては
「Touentiouane」
「Aka Science Music」
『Made in Caro』にはこの他、意味不明前衛映像作品(ジャン・ポール・ゴルチエが衣装担当した映像とか)が沢山入ってますので、アングラ・ショートフィルム好きにも観ていただきたいです。
キャロ監督は自分の短編に音楽を作ったりもしてるんですが、実は漫画も描いてます。
『Contrapunktiques』 Album:80 pages Collection:Eperluette Langue:Francais ISBN-10:2844142095 ISBN-13:978-2844142092 Prix:20euro Editeur:L'Association (20 juin 2006) |
これは短編集『Tot』(1981)と『In Vitro』(1987)からの抜粋を収めた編集本です。一話が4〜6ページと非常に短く、フランス語のためストーリーは分かりませんが絵は暗くて濃く、ダーク・サイファイ系。エッチングか版画のような画風で荒々しく、登場人物の顔にピカソ&キュビズムが入ってて面白いです。『ジャン=ピエール・ジュネ短編作品集』(DVD)収録の『ビリー・ブラッコに休息なし』の原作も収録されてますが、これなんかを見ると、ジュネ監督と共同監督時代映画のダークSF部分はキャロ監督が担当していたんだなーと思います。
余談ですが今年2月にバイオメカノイド・エロス絵画の巨匠空山基のアトリエを訪問したようです。
金属の持つエロスとか語り合ってそうですよね。同席したかった(←絶対無理)。
DJハル吉:今日の一枚
『ロストチルドレン』 オリジナルサウンドトラック(1996年 イーストウエスト・ジャパン)
ジャン=ピエール・ジュネ&マルク・キャロ共同監督の最高傑作といえば、やはり『ロスト・チルドレン』。デビッド・リンチ監督映画のサントラを多く手がける作曲家アンジェロ・バダラメンティがオーケストラを使い、ゆっくりとメロディが立ち昇る曇り空のようなアルバムに仕上げました。劇中使われた手回しオルガンのコミカルな曲やテーマソングを歌うマリアンヌ・フェイスフルの物悲しい歌メロがトランペット、弦楽器等に編成やテンポを変えて何度も出てきます。CD後半は映画を反映して緊張感を漂わせつつエンディング曲へ向かいます。
テーマソングはこちら
文・翻訳=DJハル吉
DJハル吉 7"インチ専門DJ。得意なジャンル:童謡とノイズ。その他インディーズ翻訳家兼作曲家。曲を演奏してくれるオーケストラ募集中。鳥の唐揚げが大好き、あとラム肉。座右の銘「猫は野良に限る」。 DJハル吉サイト=「峠の地蔵」毎週月曜更新 |
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