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2009.11.22.Sun.at Nakano broad way.
マイノリティーのマイノリティーによるマイノリティーのため
アニメ・特撮TOY資料系同人誌即売会 |
資料性博覧会01
2009年11月22日(日) 東京中野ブロードウェー4階 |
『資料性同人誌博覧会01 カタログ』
2009年11月22日(日)に中野ブロードウェイ4階で開催された「資料性博覧会01」。多種多様な同人誌即売会が各地で行なわれている現在ですが、資料性同人誌という聞きなれないジャンルを取り扱ったこの即売会を、四日市さんにレポートしていただきます。
「マイノリティーのマイノリティーによるマイノリティーのため」の「アニメ・特撮TOY資料系同人誌」と銘打たれた資料性同人誌の即売会だが、そもそも資料性同人誌とは何なのか。それは創作・二次創作とは違い、ある特定の視点から作品にまつわる情報を収集し羅列、考察したデータベース本の同人誌版と思っていただければよい。マニアのコレクション自慢と言っても間違いではない。
なかなか反響が大きかったらしく当日の開場前には列ができ、整理券も配布されたようだ。
筆者は午後に到着したのだが、その時点では混雑も落ち着いておりのんびりと回れた。といっても出展は13ブース、場所はほとんど通路。いわゆる同人誌即売会というよりもフリーマーケットといった趣だ。参加サークルは基本的にコミックマーケットにも参加しているサークルがほとんどで、特撮が8割といった印象。あちこちで常連たちがマニアックな会話を繰り広げるオタク第一世代の雰囲気だが、狭すぎて買うにも交流するにもやや不便な感は否めない。一限だの時限だの完売だのといった即売会にありがちな殺伐としたイベントはなかったが、ウルトラマンセブンの12話、スペル星人について独自の研究を続けている「12話会」が今回だけ特別に持ち込んだバックナンバーは即座に完売したようだ。
『資料性同人誌博覧会01 カタログ』
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即売会ではおなじみのサークルカタログだが、これがなにげにすごい。早稲田大学アニメーション同好会の「アニコムZ」や山下将仁ファンクラブ、金田伊功ファンクラブの同人誌がずらりとカタログ化されている。解説などは特にないが表紙が並んでいるだけで壮観。
空想特撮愛好会
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『ビー・プロマガジン Vol.1』 鈴木光信
マグマ大使、怪傑ライオン丸、電人ザボーガーなど巷でカルトな人気を誇るビー・プロダクションの特撮作品に特化した本。「宇宙猿人ゴリ」、「吸血鬼ゴケミドロ」のパイロットフィルムの特集を組んでいる。
くまくま・らんと
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『80年代アニメを見て下さい!』 くまだよ!、かに三匹
10代から20代前半の若者に80年代アニメを見てもらい、その評価・感想を集計した変わった企画本。巻末の80年代OVAのDVDソフト化一覧はなにげに資料性が高いような気がする。
かに温泉
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『韓国アニメの世界(改訂第二版)』 かに三匹
韓国アニメの歴史を50年代から遡るかなりの力作。マジンガXやスペースガンダムVなどのパチモノにはたまらない魅力を感じる。著者が韓国で購入したロボット塗り絵や、韓国アニメにおけるメガネッ娘浸透率など馬鹿馬鹿しい企画も多く楽しい。
グッピー書林plus
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『竹内寛行 EXPERIENCE0』 菊田ダイ
ニセ鬼太郎の著者として有名な貸本作家・竹内寛行についての本。ニセ鬼太郎が生まれた経緯などかなり詳しく解説されていて、図版の引用も多いので大変に読み応えがある。「死霊の手」の原稿が丸ごと掲載されている。
イベントにあたり、ディープ・オタクな友人に参加を持ちかけてみたが「資料性同人誌の世界は古参が引退せずにずっと続けているので自分ごときでは太刀打ちできない」と断られてしまった。
とはいえ、資料性同人誌の世界は即売会のたびに新刊を出すような通常の同人サークルと違い、あるテーマに関する本が改訂、増刷のたびに資料が追記され充実しながら本の厚みを増していく世界なので、何十年も戦い続けている古強者の資料が充実しているのは当然のことだ。何も今から古い資料を掘り返す必然はない。今、直面している現実も十年経てば後追い不可能なほどに散逸してしまうのだから。
いってしまえば、資料性同人誌とは特定の対象を追い続ける消費行動の記録である。価値があると思うから追い求め、消費を続ける。個人の好みに主導された消費行動はまさしく個人の編集行為そのものだ。その行為の記録、収集物をまとめることは後の歴史から文化を振り返る際に正しい記録と新しい目線を導くし、なによりヌルい新参に誤解とかされたら困るし……という誇りを、オタクならひとつやふたつ持ち合わせているはずだ。一度ハマれば抜け出せないこの道程、あなたが古参になる日もすぐそこまできている。なにしろこの「資料性同人誌」というジャンルそのものすら、カタログによって歴史化されてしまっているのだ。
「資料性博覧会01」と称しているのだからこれが最後の資料性博覧会とは思えない。必ずや第二、第三の資料性博覧会が現れることだろう。その時に備え、我々の大好きなサブカルチャーを新たな視線で切り分ける新規参入者の登場を楽しみにもっともっと同人誌を買っていきたい。
取材・文=四日市
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『VICE A FILM ISSUE(Vice Japan)』 文=四日市
四日市エヴァンゲリオン研究家。三度の飯よりエヴァが好き。クラブイベントにウエダハジメ、有馬啓太郎、鶴巻和哉らを呼んでトークショーを開いたり、雑誌に文章を載せてもらったり。プロフィール画像は昔描いた三十路魔法少女漫画。
09.11.28更新 |
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