2010.04.17 Sat at Shibuya O-EAST
7月17日(土)
東京・渋谷「Shibuya O-EAST」にて開催
長らく闇に封印されていた「見てはいけない物」のオンパレード。 ありとあらゆる魑魅魍魎が一夜の邂逅を求めて、世界中から結集し皆様を禁断の領域に誘います――。開催のたびに物議を醸す異端の祭典「サディスティックサーカス」が今年も見参! 18禁&心臓の弱い方お断わり、都会の変態夢遊病者が集うこのスペシャルなパーティーの模様を、早川舞さんにレポートしてもらいます!!
フェティッシュイベント数あれど、「見世物度」の高さということでは毎回大きく他を凌駕する「サディスティック・サーカス」。こちら、タダのフェティッシュ・イベントじゃござんせん。東西のエロ・グロ・ビザール・キッチュでほんのちょっとポップな人体パフォーマンスを、お腹いっぱいになって胸やけを起こすまでじっくりたっぷり見てみたい、という方にぴったりな内容。
そんな「サディスティック・サーカス2010」に、私、早川舞がお邪魔させていただきました。「禁断のサーカス」「巨大な見世物小屋」「大人のトラウマ」等々の謳い文句に心躍らせて初めて足を運んだのは何年前だったでしょうか。こちらのイベントが立ち上がってからというもの、毎回とはいかないまでも、何度もわくわくしながら見世物小屋の客のひとりとなるべく遊びに行っておりました。
↑サディスティック・サーカスの特長は、「ショーを見せる」ことに最大限に重きを置いているという点。今回の会場となった渋谷O-EASTのフロアには、舞台をじっくり鑑賞できる形にズラリと椅子が並び、「さぁ、とくと見ろ!」状態。しかも基本的にはほとんど指定席なので、椅子の取り合いに汲々とすることもなく、最後まで落ち着いて鑑賞にいそしめるというわけ。さすがは「見世物小屋」と掲げるだけのことはあります。
さて、開場時間になると、お客さんが続々と入場〜。開演15分前には、早くもほとんどの席が埋まりました。スゴイ! 夏だけあって、浴衣姿や、浴衣と洋装を組み合わせた格好の女性が目立ちました。
↑開演時間まではまだ間があるものの、早く来てくれたお客さんにはプレ・サービスが。舞台横の小舞台で、銀座・ブラックハート所属の女性たちによる、ミニSMショーが始まりました。
↑開演時間がやってきたところで、女性たちが並んでご挨拶。ちなみにMCによると、イベント後はブラックハートで飲み放題だったそうのですが、私は行けませんでした(笑)。
トップバッターはこまどり姉妹。平成生まれの方はご存知ないかもしれませんが、というか私もあまり知らなかったのですが、昭和歌謡を代表する双子デュオです。北海道を転々とした後、13歳のとき両親とともに上京、生活費の足しにするため、浅草で「流し」としてアマチュア歌手生活を始めたところをスカウトされ、1959年から芸能界で活動を開始。旅に旅を重ねたどり着いた場所で小さな双子で歌っていたなんて、永遠の中二病としては何だかロマンを掻き立てられます! 当時はそんな甘いこと言ってられなかったと思いますが……。
↑芸能生活50年を超える二人の歌姫の息は今もなおピッタリ。何というフェティッシュな……。歌の合間合間に、大病をして余命宣告まで受けたことや、レコード会社の社員に邪魔され続けて二人ともなかなか恋愛ができなかったことなどをしみじみと、でも何だか楽しそうに語ってくれました。
↑歌ってくれたのは、「ソーラン渡り鳥」「三味線姉妹」など。背後のスクリーンでは歌に合わせて、VJのCGな映像が炸裂。でもモチーフには古き良き波頭模様を使っていたりして、20世紀と21世紀の融合地点を見た気がしました。何とも不思議なかんじ。
さて、お次はこちらも昭和を風靡した、トップストリッパー・浅草駒太夫! ストリップ界に花魁の世界観を持ち込み、華麗なショーで客席を沸かせ続ける彼女は、60歳を越えた今なお現役ストリッパーとして踊っています。
昭和の底力を感じさせる、きらびやかで妖艶で、それでいて骨太なショーでした。
↑花魁の姿で颯爽と登場。目にもあやな衣装とにじみ出る色気を華やかな舞に乗せて客席に見せつけます。まさに禁断の蝶!
↑やがて花魁の衣装がはかなくもなまめかしく、一枚ずつ床に落ちていきます。しかし、挑発的な視線は崩さない。これが花魁の心意気なのか。
↑襦袢が見えた時点でもはっとしたのですが、腰巻まで行くともうハァハァですね。体のラインは年にしてはかなりきれいだと思うのですが、それでもやはり年相応。それが逆に妙にエロいんです。人生の嵐を乗り越えてきた女の業を感じるエロさとでもいいましょうか。このエロさはたぶん、30代、40代程度では出せないでしょう。
この後、行灯を男性に見立てて擬似セックスダンスを見せてくれたのですが、なんじゃこのパワフルさ! 今日びの草食系男子なんて骨の髄まで啜られて、そのへんにポイされそうです。
続いては漫読士・東方力丸氏と活弁士・山田広野氏による、「声と絵」・「声と映像」の対決。
「まんどくし?」そう、漫読士です。彼は、普段は下北沢の路上や井の頭公園などに漫画を並べ、通りすがりのお客さんに選んでもらった漫画のページを開いて見せながら、真に迫った口調で読み聞かせるという活動をしています。紙芝居の漫画バージョンとでもいえば伝わりやすいでしょうか。
今回は会場の広さもあって、開いた漫画をお客さんに直接見せるというのはムリ。そこで手に持ったハンディカメラで漫画のページを映し、それを同時に背後のスクリーンに流すという方法で行なわれました。
↑読んでくれた漫画はゲイマンガの巨匠・田亀源五郎先生によるねっとりむっちりがっちりした……まぁ……毛と業の深いやつです。ロシアの将校(美青年)に捕らわれた日本軍の大将(ガチムチ+ヒゲ)が性玩具に堕とされかけながらも、部下の日本軍兵士(ガチムチ)に救出され、でもやっぱりヤラれるという、田亀クオリティがほとばしりすぎて顔にかかっちゃいそうな内容。擬音の表現がリアルでした。「クチュッ、クチュッ」とか。
山田広野さんは、フェティッシュイベントやサブカルイベントにご出演されることがよくあるので、ご存知の方も多いのでは。自作の映像に活弁をあてるという、活弁士であり、映画監督でもあります。この日は全体の司会進行も同時に務めていました。
↑この日の映像は自作ではなく……、家の近所で偶然拾ったという「すでにこの世にはなかったことになっているもの」昭和ブルーフィルムのフィルムにムリヤリ声をあてるという離れ業を披露して下さいました。っていうかなんでそんなものが落ちてるんだ……。天がうまく采配して山田さんに拾わせたのだとしか思えません。
個人的には、当時の人がモモヒキを穿いたままセックスに臨もうとしていたことに、地味にショックを受けました。
休憩を挟むと、さらにフェティッシュ、ゴシック色の強いラインナップに。ボディサスペンションやボディアート、人体改造の第一人者であり、それを電子音楽に昇華させ、表現しているルイス・フライシャーと彼のパフォーマンスチームが舞台に姿を現しました。
などと言っても、ゴシックだとか人体改造だとかに興味のない向きには何が何やらハイー???というところだと思いますので(私も説明だけ読んだ時点ではわからなかった)、あ、ありのまま起こったことを話すぜ。
まずは舞台の上でお香が焚かれ、これから怪しいミサでも始まりそうな雰囲気でスタート(ミサ、出たことないけど)。実際、ヴァニラ画報7月10日掲載
「サディスティックサーカス2010・ルイスからのお知らせ」によると、今回のパフォーマンスには「見物客の夢や悪夢を自分のパフォーマンスによって変化・浄化させる試み」があったそうです。悪夢や浄化といったキーワードが出てくる以上、一種まがまがしい宗教的な雰囲気が漂ってしまうのは、否応のないことではあったでしょう。
↑さて、写真では少々わかりにくいかもしれませんが、彼は革や骨、金属といったアートで身体を包み、また自らの肉体そのものにもピアッシングなどを多く施しています。体を動かすと、当然それらも動いて何らかの音をかすかに出すわけですが、彼はその音を拾ってエフェクターで加工したり、増幅させたりして、即興性の強い音楽を作っているわけです。
見物客の反応や、彼らが持っている夢や悪夢のイメージが、ルイス氏の舞台上での動作に影響を与え、身体から発せられる音として増幅されると考えると、彼が今回意図していたことが少しわかったような気がしました。
私事で恐縮ですが、昔、おもちゃの聴診器を買ってもらったときに、自分の心臓の鼓動を聞いて、無性に楽しくなったことがあります。何もせずにゆったりしているときはゆっくりで、走ったり、びっくりしたりすると速くなる。自分の身体は外界のいろんな事象とつながっているんだなぁと感動したものです。彼のライブパフォーマンスの原点には、身体が外界とリンクしていることへの素直な驚きと、それを人体改造によってもっと強く感じたいという欲求があるのではないかという気がします。
↑革やマスク、コルセットなどでもダークな世界観を表現したパフォーマンスチームを率いての登場。チームは人種も性別も様々です。
↑背中の皮膚に直接刺したフックに金属の管を引っかけ、それをこすって音を出す。音だけでも痛そうです。客席にまで下りてくれたので、お客さんも参加して音を出してました。ぎゅいぃ〜ん、ぎゅいぃ〜ん、という電子音が忘れらないよ……。
さぁ、宴も佳境に入ってまいりました。次は「和」の出番です。「女が女を縛る美」を追求されている女流緊縛師・蕾火さんと、生々しい切腹ショーでフェチを惹きつけ、自身も大の切腹マニアであるという早乙女宏美さんによる緊縛ショーです。
↑時は幕末。会津藩で実際に結成されたという娘子隊(女性たちからなる戦闘部隊)は、敵の手からお姫様を守るべく慣れない薙刀さばきで戦いますが、奮闘空しくお姫様は敵の手に落ちてしまいます。
↑敵の武士によって捕らえられ、裸に剥かれ縛り上げられてしまうお姫様。それだけでも十分すぎるほどつらいのに、ついには逆さ吊りにまでされ、木の太枝で打たれてしまうお姫様……。さらには水責めも。
彼女からはもう引き出せる情報がなく、用済みと判断したのか、それとも辱められたやんごとなき姫君を哀れんでのことか、武士は最後にお姫様の喉をかっ斬って殺し、その場を後にします。
↑お姫様を助けようと娘子隊が駆けつけたときには、彼女はすでに変わり果てた姿に。お役を果たせなかった娘子隊の一人は切腹。こと切れた仲間を見つけたもう一人も、後を追うようにその場で腹を斬ったのでした。
美人が脂汗を流して自傷する姿はいいですね。切腹はその最たるものだと思います。女の私が見てももぞもぞするぐらいだから、男性はなおのことそそられるのではないでしょうか。守ってあげたくなる感覚と壊してしまいたい衝動がないまぜになる。自分の中の優しさと残酷さを、同時に眼前につきつけられているような気分になります。
さぁ、いよいよトリの出番です!!
しんみりした雰囲気も吹き飛ばすかのような、明るい笑い声とともに登場したのは、北欧からやってきたという激痛サーカス一座、ペイン・ソリューション!
己の体ひとつが即ち芸! 痛いこと、熱いこと、キツいことを片っ端からやって驚きと笑いを提供するのがおいらたちのライフワークさ!と彼らが言ったかどうかは知りませんが、とにもかくにもありとあらゆる痛みを面白おかしくお見せします! というのが売りのサーカス集団、それがペイン・ソリューション。何でも苦行僧の訓練法もマスターしたのだとか……。
↑一見、コスプレめいて見える姿のこのおっちゃんが、ペインソリューション一座の団長、ヘッドマスター。ひとつ芸が終わるたびに会場内にこだまする、彼の「もっと見たいかぁ〜!?(英語)」に観客は拳を突き上げっぱなし。
基本的には彼はショーの舵取り役だったので、「団長、いちばん痛くなさそうだよね……」とこっそり思ったいたのですが、最後は自ら野太い針を顔をはじめとする体じゅうににズブズブ刺し、ちゃんとおいしいところを回収していました。
↑団長の愉快な仲間たち、マニアック(左)とプリンセス・オブ・スカーズ(右)。マニアックが持っているドリルは、もちろん鼻に突っこんで穴を開けるためのものです。
↑何を思ったか女装して出てきたマニアックさん、何を思ったか今度は電球を丸ごとぼりぼり食べ始めました。(以下すべて意訳)団長「ガラスを食べたんだから消毒しないとね。日本でいちばん有名なガラスクリーナーは何?」観客「マジッ○○ン!」団長「マジックイーン!(発音できてない)」おもむろにマジッ○○ンらしきものを取り出し、マニアックさんの口の中にスプレーする団長。容赦ねぇです。
↑マニアックが針山の上に寝転んだ! だけでもすごいのに、その上に置いた針山の上にプリンセス・オブ・スカーズが寝転んだ! だけでもすごいのに、その上に置いた針山の上で団長が大空を飛ぶ鳥のポーズ! どこまでビビればいいの私!? この後、どんどん針の本数は減っていき、最後にはプリンセス・オブ・スカーズがオンリーワンの針の上にうつぶせに……お腹、大丈夫でしたでしょうか。
↑オツカレサマデシター!と思いきや、観客のアンコールに答え、まだまだやっちゃう団長。最初にも書いた通り、結局体じゅうに針を刺しまくって(特に額が圧巻でした!)、血まみれになり終了しました。えげつないことをやっているのに、終始明るい3人でした。
もう今さら、ちょっとやそっとのことを見ても驚かないや!と人生微妙に斜に構えていた私ですが、この日、会場から出てきたときには渋谷の町がちょっと歪んで見えました。
特に呆然とさせていただたいのは、最後のペインソリューション。痛みが痛みとしての役割をまったく果たしていない彼らの姿は、まさしく真夏の夜の悪夢と呼ぶにふさわしい。
それと、やっぱり悪趣味を悪趣味だと笑い飛ばすのは楽しいな、と。残酷なものや、悪趣味なものから目を逸らさないでいても白眼視されない時間って、ある種の人には絶対に必要なものだと思います。そういう数時間があっただけで、私もまた明日から毎日を生き抜いていけそうです。
文=早川舞
関連リンク
「SADISTIC CIRCUS」公式サイト
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早川舞 世界、特にヨーロッパのフェティッシュ・カルチャー関係者との交流も深い、元SM女王様フリーライター。だが取材&執筆はエロはもとよりサブカルからお笑い、健康関係まで幅広く?こなす。SMの女王様で構成されたフェミ系女権ラウドロックバンド「SEXLESS」ではボーカルとパフォーマンスを担当。