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第11章 学級奴隷・真弓【2】

「高梨、前へ出てこい」

石川先生の声は聞こえていましたが、私は席を立つことは出来ませんでした。これは悪夢ではないかと思っていました。私は、これから一カ月、クラス全員の奴隷になるだなんて。

「先生……」

私は石川先生の顔を見ました。その時の私は、きっと捨てられた子犬が助けを求めるような情けない顔をしていたと思います。

石川先生は私の席まで歩いてきました。そして、思い切り私の頬を平手打ちしました。

「ひっ!」

鋭い音が教室に響き渡りました。目の前が真っ白になり、頬が焼けるように熱くなりました。一瞬、私は何が起きたのかわかりませんでした。私はこれまで一度も顔を叩かれた経験がなかったのです。

「お前は、もう奴隷なんだ。これから一カ月間、お前に人権はない。ご主人様の命令は絶対だ。言われたことは、すぐに従え」

石川先生は冷酷にそう言い放ちました。私は恐ろしくなり、急いで立ち上がってて返事をしました。

「はい。申し訳ありませんでした」
「よし、教壇の前に立て」

私はよろよろと教室の前へと向かいます。恐怖に脚が震えています。いったいこれから自分はどうなるのかと考えるだけで心臓が押し潰れてしまいそうです。

「それでは、高梨に奴隷の証を与える」

石川先生は、私の首に赤い革製のベルトを巻きつけ、そしてロックしました。ガシッと鈍い金属音がします。赤い首輪。奉仕者=奴隷であるという証明です。これをつけている間は、一切の人権は奪われてしまうのです。

「これで高梨は、一カ月間、このクラスの奴隷となった。奴隷だから苗字もいらないな。これからは真弓と呼ぼう。いいな、真弓」

私が呆然としていると、石川先生は、また頬を平手打ちしました。電撃をくらったような痛みに、私は床に崩れ落ちます。

「ちゃんと返事をしろ!」
「は、はいっ!」

命令に従わなければ、殴られる。私は恐怖で体がすくんでしまいます。でも、力を振り絞って姿勢をただして、精一杯の声で返事をしました。すると石川先生は、満足そうに笑みを浮かべて、話はじめます。

「さて、これから真弓は2年S組、つまり先生とお前たち全員の奴隷となるわけだ。さて、奴隷がやってきたら、まずどうすればいいかな?」

生徒たちを見渡し、一番前の席の榎本君を指名しました。榎本君は、クラスで一番背がちいさい男子ですが、いやらしい話題が好きで、みんなからはエロ本と言うあだ名で呼ばれています。

いきなり指名されて、榎本君はちょっと戸惑ったようでしたが、すぐ目の前に立っている私を見て、ニヤニヤ笑いを浮かべながら、答えました。

「奴隷が服を着ているのはおかしいと思います。裸になるべきです」

榎本君がそういうと、クラスがワッと沸きました。

「さすがエロ本!」
「おめえが見たいだけだろ!」
「そんなの、真弓がかわいそうよ!」

女子からは同情の声も聞こえましたが、男子の歓声にかき消されます。

「そうか、奴隷が服を着ているのはおかしいか。なるほど。奴隷といえば全裸に首輪が普通だな。しかし、それが決まりというわけじゃあない。いつも服を着ている奴隷もいる」

石川先生の言葉に私は胸を撫で下ろしました。奴隷がご主人様にいやらしいことをされたり、性的なご奉仕をすることは、当たり前のようですが、やはり学校での実習では、そういうことはやらないのでしょう。

榎本君をはじめとする男子生徒の一部からは不満の声が上がりました。

「ははは、がっかりしたか。でも、服を着ていてもいいとはいったが、裸でもいいということだぞ。それはご主人様の希望次第だ」

石川先生がそう言うと、再びクラスが沸きます。男子たちは大声で「全裸、全裸」と叫んでいます。女子は黙っています。

「それでは、多数決だな。学級奴隷は全裸のほうがいいと思う者は手を上げて」

石川先生のその言葉と同時に、男子たちは勢いよく手を上げました。榎本君たちは予想していましたが、仲良くしている同じ班の白間君や、いつも女子に親切な学級委員の宇佐美君まで手をあげていたことにはショックを受けました。それでも3人ほどの男子は私をかわいそうに思ってくれているのか、手を上げないでくれていました。そして女子は、誰も手をあげません。

このクラスは男子と女子が15人ずつですから、権利のない私を抜いても、男子3人が手を上げなければ、過半数は「服を脱がなくてもいい」となるのです。私はホッとしました。

しかし、ちょっとの間をおいて、美雪さんが手を上げました。

「やっぱり私も賛成しよう。実習とはいえ、ちゃんとやったほうがいいものね」

すると、美雪さんと仲のいい美津子さんや美々さんも手を上げました。

「よし、15対14で、奴隷は全裸ということに決まりだな」

石川先生がそう言って私を見ました。私は意外な展開に言葉を失います。

美雪さんが、私のことをよく思っていないことは知っていました。美雪さんと山岸君は一年生の時は同じクラスで、二人はつきあっていたのです。といっても、山岸君は美雪さんとつきあっていたという意識はあまりなくて、単に仲のいい友達くらいの気持ちだったと言っていました。だから、二年生になって、山岸君が別のクラスになると、自然と関係は離れていきました。

ところが、一カ月前に私が山岸君に告白されて、つきあうことになったことを知った美雪さんは面白く思うはずがありません。私が色じかけで山岸君を奪ったなどと、根も葉もない陰口を言っていました。

でも、だからといって、同じ女の子なのに、こんなひどい提案に賛成するなんて。

私は目の前が真っ暗になりました。

「真弓。ご主人様の総意だ。奴隷はすっぱだかになることに決まった。さぁ、早く脱ぐんだ」

私はさすがに返事をすることができませんでした。そんな私を見て、石川先生は勢いよく教壇の机を叩きました。すごい音がして、私は身をすくめました。

「返事はどうした、真弓」

ご主人様の命令に奴隷は絶対に背いてはいけない。それが奴隷の決まりなのだと、私も知っています。私はもう逃げることができないのです。もし逆らったらどんなひどい目に遭うのか…。

「は、はい……」

私はゆっくりと、できるだけゆっくりと制服を脱いでいきました。ベストを脱ぎ、そしてスカートを下ろします。ショーツが丸見えになりました。

「おっ、白いパンティだね、真弓ちゃん!」

そんな声が飛びました。たぶん榎本君だったと思うのですが、私は恥ずかしくて顔を上げられません。うつむいたまま、ブラウスも脱ぎました。

「おっ、意外に胸、大きいじゃん」
「Dカップくらいあるのかな」

男子のそんな声に私は思わず、胸を隠してしゃがみ込んでしまいました。男子の前に下着姿を晒すなんて、恥ずかしくてたまりません。体がカッと熱くなります。きっと耳まで赤くなっていたと思います。

「ちゃんと立って、早く脱ぐ。ホームルームの時間が終わってしまうぞ」

石川先生は少しイラついたように言います。

「はい……」

私は背中のホックを外します。両腕で抱え込むようにして胸を隠しながらブラジャーを外しました。

「隠すな。これからお前はずっと裸なんだぞ。いちいち隠してられないぞ。みんなにちゃんと見せてやれ!」
「……は、い」

私は涙を堪えながら、腕を体の横にどかせました。胸がクラスメート全員の目の前に晒されました。

「うわぁ、けっこう大きいな」
「巨乳だ、巨乳」
「乳首とかピンク色で可愛いな。AVで見た大人のおっぱいと違うな」

男子生徒たちが歓声を上げました。

二年生になって急に大きくなってきた胸です。体育の着替えの時などに、ふざけて女の子同士で比べっこした時は、みんなに大きいと冷やかされました。それでも、その時は少し誇らしげだったのですが、今はその大きさが恥ずかしくてたまりません。

男子はみんな身を乗り出すように覗き込んでいますが、女子もチラチラと興味深げに見ています。きっと自分の胸と比べているのでしょう。

私は恥ずかしさで倒れてしまいそうになります。体の奥から熱くなり、うっすらと汗までかいていました。

「おい、見ろよ。乳首が立って来たぜ」

榎本君が私の胸を指さして叫びました。

「本当だ! さっきまでへこんでたのに。こいつ、みんなに見られて興奮してるんじゃないのか? 奴隷のくせに」

私は慌てて胸を隠しました。

「ち、ちがうの。これはいきなり裸になったから、寒くて……」
「うそつけ。汗かいているじゃん。興奮して乳首立ててるんだろ!」
「そういうの、なんて言うんだっけ? 露出狂? マゾ?」

男子たちの容赦のない言葉に私は泣き出しそうになってしまいます。

しかし、石川先生はそんな私にさらに厳しく怒鳴りつけます。

「胸を隠すな。いちいち言わせるんじゃないよ。さぁ、さっさと下も脱ぐんだ」
「はい……」

そうです。私はブラジャーだけではなく、ショーツも脱がなくてはならないのです。それは私にとって、あまりに辛いことでした。どうしても、それを下ろす勇気がありません。

私はショーツの端に手をかけたまま、もじもじとするばかりでした。

「早く脱ーげ、脱ーげ!」

男子は変なメロディまでつけてはやし立てます。時間を気にしている石川先生が睨みつけてきます。

早く、脱がないと怒られる。わかっているけれど、手が動きません。私は立ちつくしたままでした。

「ええい、まったく世話がやけるな。おい、榎本、手伝え」
「きゃっ!」

私は思わず悲鳴を上げました。石川先生が後ろから私を抱え込んで、両腕を押さえたのです。そして、先生に指名された榎本君が、私に近寄ります。

「いいんですか、先生?」
「ああ、もう時間がないからな。下ろしちまえ」
「じゃあ、失礼しまーす」

榎本君は私のショーツに手をかけ、そして引き下ろしてしまいました。

「い、いやぁっ。見ないで!」

私は絶叫しました。でも、その声以上に、クラスの男子から大きな驚嘆の声が上がりました。

「うわっ、すげぇ!」
「モジャモジャじゃん!」

ショーツを足から抜き取った榎本君は、至近距離から私の股間を見つめています。

「高梨、お前、すげえ生えてるんだなぁ……」

私はイヤイヤと首を振って泣きじゃくりました。そうです。私の股間には、大人みたいに濃い陰毛が生え茂っているのです。それは私の悩みでした。どうして自分だけ、こんなに早くいっぱい生えてしまったのか、密かに悩んでいたのです。

そんなところを、クラスメート全員と石川先生に見られてしまいました。恥ずかしくて、恥ずかしくて、死んでしまいそうです。

しかし、これから始まる恥ずかしい奴隷生活の辛さは、こんなものではなかったのです。

(続く)

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11.06.06更新 | WEBスナイパー  >  赤い首輪
文=小林電人 |