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第12章 指導者・レイヤ【1】

熱い水流が、肌に叩きつけられ心地良い刺激を与えた。まだ残っていた眠気が引いていき、意識がクリアになっていく。

シャワーで汗を洗い流しながら、ふと明け方に見た淫夢を思い出す。無意識に、指を股間へと伸ばした。そこは、あの快楽にまだ痺れているような気がした。夢とは思えない、生々しい記憶が残っている。

「エリカ……」

夢の中で再会した、かつての恋人の名前が口からこぼれた。金色の美しい髪を振り乱しながら、彼女は股間に顔を埋め、その部分に舌を這わしていたのだ。

「あ、ああ……」

指がゆっくりと、沈んでいく。そこは明らかにシャワーのお湯とは違った液体で湿っていた。人差し指の先が、敏感な肉芽に触れる。ビクン、と体が震えた。

もう片方の手は胸に触れていた。やや小さめではあるけれど、形よく膨らんだ白い乳房。そして淡いピンク色の乳輪と乳首。既にぴんと勃ったその突起を指先で軽くつまむ。

「ん、んん……」

思わず声が漏れる。

淫夢を脳裏に少しずつ蘇らせる。エリカは夢中になって、自分の敏感な部分を舐め、吸い上げ、そして舌を奥まで侵入させてきた。そして時折顔をあげると、艶めかしい表情でじっと見つめて来た。濡れた瞳が、あまりにもエロティックだった。

指の動きが更に激しくなる。肉芽を擦り、乳首を強くつまみ上げる。足が、がくがくと震える。

「あっ、だ、め……」

シャワーにうたれながら、絶頂は訪れた。呻くような喜悦の声は、水音にかき消された。

しばらく、タイルの壁に体を持たれかけさせ、息を荒げていたが、やがて改めて体をシャワーで洗い流す。

自慰の後の、気だるい虚しさを振り払うように、勢い良くバスルームから出ると、その白く瑞々しい肢体を、タオル地のローブに包んだ。

淫夢は、現実の記憶ではなかった。エリカとそんな行為に及んだことは一度もないのだ。エリカも自分に対して好意を抱いてくれていたことはわかっていたが、それ以上の関係に進むことはなかった。

お互いにためらいがあったのだ。そして自分にも立場というものがあった。世界的な女性権利団体であるPTWのリーダーであるという立場が。

そして、そのエリカが使命を持って東京へ潜入してから、消息を絶った。PTWと敵対する団体に捕らえられたとの情報も入っている。すぐにでも自ら東京へ行き、エリカを探したい気持ちもあったが、それは許されないことだった。何しろ現在、PTWのメンバーは次々と各国の国家権力によって捕らえられているのだ。そのほとんどが言いがかりのような微罪による別件逮捕だった。

メディアもあることないことを報道し、PTWがさも過激な抗議行動を繰り返している団体だというイメージを広げている。本来は、性の商品化に反対する、極めてまっとうな団体であるのに。

世界中の、ありとあらゆる権力が、一斉にPTWに牙を向いて襲いかかってきているような気分だった。

そして、PTWのリーダーであるレイヤ・キヴィマキもまた、国際指名手配を受けて、こうして潜伏行動を余儀なくされているのだ。

ここ一カ月ほど、PTWのスポンサーの一人である女性華僑ジェニーの邸宅に、レイヤは滞在していた。財界の有力者である彼女には、国家権力も簡単に手出しはできない。とりあえず、ここに身を潜めていれば、安全ではある。

しかし、次々と入ってくるメンバー逮捕の報せに、レイヤは胸を痛めるばかりだった。当然のように脱退していくメンバーも多い。PTWという団体は、今や壊滅寸前、いや、既に壊滅してしまったと言ってもいいだろう。

PTWに限らず、世界中の多くの女性権利団体は同じような状況にあった。もっと危険な政治団体はいくらでもあるのに、なぜ女性権利団体だけが狙われているのか。恐ろしく巨大な闇が、世界の陰で蠢いているのだと、レイヤは感じていた。

その一方で、世界が落ち着きを見せているのも事実だった。長い歴史の中で血で血を洗うように戦い続けていたいくつもの紛争が、停戦、あるいは無血解決を見せているのだ。そこにも、何か大きな力が作用しているようにレイヤには思えてならなかった。

素肌にバスローブだけをまとった姿で、ベッドに腰掛け、レイヤは虚空を見つめていた。なぜエリカの淫夢など見てしまったのだろう。もしかしたらエリカの身に何か起きているのだろうか。

そう考えた時、携帯電話の呼び出し音が鳴った。

「はい。ハンナです」

潜伏生活が始まってからレイヤは、ハンナという偽名を使っている。電話をかけていたのは、レイヤの腹心ともいっていい存在のターヤだった。ターヤも、また地下に潜っている。

「エリカから連絡が入ったわ」
「えっ」

レイヤはあまりの偶然に耳を疑った。そして、一瞬顔を赤らめた。電話の向こうのターヤに、昨夜の淫夢を知られてしまったような気がしたのだ。

「やっぱり東京でやつらに捕らえられていたみたい。なんとか逃げ出してきたんだというんだけど……」
「エリカが、生きていたの……」

レイヤの目から、知らず知らずのうちに涙がこぼれ落ちていた。


「あ、あ、あっ……」

その声は、甘く切ないものだった。もっと快感が欲しいとねだっているようだ。

縛られた不自由な肉体をよじると、胸元まで伸びた美しい金髪が揺れる。真っ白な肌には、細かい汗の粒がびっしりと浮いていた。

「ねぇ、何が欲しいの、エリカ?」

端正な顔立ちの少女が、エリカの耳元で囁く。エリカは濡れた目で、少女を見る。

「お願いします、もう、我慢できないんです」

もちろん少女は、エリカが何を求めているのかは知っている。知っているが、わざとわからないふりをする。

「なあに? 何が欲しいのか、ちゃんと言わないとわからないわよ」

少女は残酷な笑みを浮かべる。それは、その現実離れした美貌には、あまりにも似合いすぎていた。

「晶さんのを欲しいんです……」
「私の、何をどこに欲しいのか、ちゃんと言わないとだめでしょ。ほら、みなさんにもちゃんと聞こえるように大きな声で」

セーラー服に身を包んだ晶は、息を飲んで二人を見つめている大勢の観客を見渡した。

きらびやかなパーティ会場の中央の舞台に、全裸のエリカは天井から吊るされていた。両腕は上に向かって引き伸ばされ、両脚は左右に大きく広げられて膝から吊られているため、M字のように開いていた。女として隠しておきたい何もかもがさらけ出される恥ずかしいポーズだった。開ききった股間の中央では、無毛の肉裂がヒクヒクと震えていた。そこは、延々と続けられた晶の指と舌の愛撫で、十分過ぎるほどに潤っていた。

セーラー服姿の少女は、観客たちが驚くほど見事なテクニックで、この美しい金髪の女体を快楽にのたうち回らせているのだ。しかも、ぎりぎりまで追い上げておきながら、決して絶頂にはいかせないのだ。いきそうになると、止める。そしてまた追い上げる。何度も何度もそれを繰り返されて、エリカの肉体は限界に達していた。

「晶さんのおちんちんを、エリカのおまんこに突き刺して下さいっ」

女神のように美しいエリカが、そんな言葉を口にするのを見て、観客は信じられないようにどよめいた。

しかし、晶はさらに追い詰める。

「おまんこだけで、いいの? 満足できるのかしら?」
「ああ……。お尻の穴もです。晶さんのおちんちんをエリカのお尻の穴に突っ込んで、いっぱいかき混ぜて下さいっ!」
「よく言えたわね、エリカ」

すると、晶はセーラー服のスカートをめくり上げた。

観客がどよめく。そこには、その可憐な少女の下半身にはあってはならないものがそそり立っていたからだ。

このショーを見に来ているものは、ほとんどが晶の正体を知っているはずだったが、それでもそれは信じられない光景だった。

晶は少し自慢気に、スカートの下のその大きなものを、観客に見せつける。先端がやや皮をかぶっていて、初々しいしいピンク色の亀頭だが、その逞しさは、あまりにもその風貌とは不釣合いだった。

「ああ……。晶さんの……」

エリカは、ヨダレをたらさんばかりの表情で、それを見つめた。もう、エリカの頭の中には、それで貫かれ、絶頂を極めたいという欲望しかない。

「おちんちん……。早く、おちんちん、下さい」
「ふふふ、今あげるわ。待ちなさい」

晶は吊り上げられているエリカの背後に回る。そして、下から腰を突き上げるようにして、エリカの秘肉を一気に貫いた。

「ああっ、ひぃっ!」

エリカの歓喜の声が響き渡る。晶は激しく腰を突き上げる。

「あっ、あっ、あっ!」

ずぶり、ずぶり、と晶の肉棒が濡れそぼった無毛の肉裂を出来るする様が、観客によく見えた。それが最もよく見える体位を晶は熟知していたのだ。

それは凄まじい光景だった。M字開脚で吊られた金髪の美女を、セーラー服姿の美少女が見せつけるようにして貫いているのだ。

世界中から集まったと思われる様々な人種の観客たちは、この世のものではないものを見せられているかのような顔をしていた。それは、恐ろしく卑猥で、恐ろしく美しかった。

晶は背後からエリカを抱きしめて顔を寄せた。するとエリカも首をひねって、晶と唇を合わせた。舌が伸び、絡み合った。二人は上と下の二箇所で、悩ましく結合している。

「どうですか、首相閣下」

北尾が、まるで痴呆のようにポカンと口を開けている白人男性に声をかけた。

「いや、まったく、これはすごい。本当に、あの子は、男なんですか?」
「ええ、正真正銘のね」
「なんということだ。信じられないが、素晴らしくおぞましく、美しいな……」

頭にターバンを巻いた浅黒い男が言った。白人男性は、その男を見て、少し照れくさそうに言った。

「全くです。見てはいけないもののようですが、目が離せません」

二人は、何世紀も対立している二つの国の代表だった。二人はこうして並んで立っているということは、公の場ではありえないことだった。

この会場には、そうした関係にある国の代表者、有力者が数多く集まっていた。もし、今この場に何か大きな事故でもあれば、世界はたちまち麻痺してしまうだろう。

ステージの上では、エリカが何度目かの絶頂を迎えていた。晶に貫かれてすぐに、待ち構えていたかのように一度目の絶頂に達し、さらに続けざまに、二度、三度と体を仰け反らせた。エリカは、その女神のような美貌からは想像もできないような獣の咆哮を上げて、イキまくっていた。

晶は腰の動きを止めることなく、エリカの耳元で囁く。

「おまんこだけで、満足なの?」

すると、エリカは答える。

「ああ、いや。お尻も、お尻の穴にも下さい……」
「ふふふ、欲張りね」

そして晶は、ペニスを秘肉から引き出すと、すぐにその後ろの窄まりへと突き立てた。

「あっ、ああっ!」

さっき以上の悦楽に満ちたエリカの絶叫が上がった。
(続く)

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11.08.08更新 | WEBスナイパー  >  赤い首輪
文=小林電人 |