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第13章 女上司・麻奈美【6】

「私は東京には特別な思い入れがあります。東京の文化は素晴らしいですね。この料理も、この建物も素晴らしい」

イサク・バックマンは流暢な英語で話した。イサクの国の公用語ではないが、そこは世界的なIT企業のトップだ。

「気に入っていただけて光栄です」
「この建物は100年以上前に建てられたそうです。この店は江戸時代から続く老舗なのですよ」

林原社長も佳織も流暢な英語で答える。ひとりおいてけぼりになっているのは陽太だ。なんとなく会話の意味はわからないでもないが、とりあえず曖昧に笑ってうなずいているしかない。

豪華な懐石料理の食事がひと通り終わった時、佳織が切り出した。チラリと林原の顔を見て、表情に一瞬だけ緊張が走った。この会談が成功に終わるか、とんでもない失敗に終わるかは、これからのやりとりにかかっているのだ。もし、事前につかんでいる情報が間違っていたら、イサクは激怒して席を立ってしまうかもしれないのだから。

「バックマンさんには、最近熱中しているものがあると聞いたのですが……」

急に佳織に言われて、イサクは戸惑う。

「え、最近ですか、なんのことだろう……」
「こういったものは、お好きではないでしょうか?」

佳織が合図をすると、陽太は襖を開けた。そこには畳の上に正座している全裸の麻奈美がいた。深く頭を下げて土下座する。

「はじめまして、麻奈美と申します、バックマンさん」

完璧な発音の英語だった。

「えっ……」

驚くイサクの表情を林原と佳織は息を飲んで見つめる。

「赤い、首輪だ……」

イサクがそう言葉を漏らした時、佳織は勝利を確信した。

赤い首輪は、奉仕者のシンボルであり、海外に輸出されている「ドール」たちにも、その赤い首輪はしっかりとつけられている。それを知っているということは、イサクもドール愛好家である証拠だ。

「麻奈美、立ってバックマンさんに身体をお見せしろ」

陽太は日本語で、麻奈美に命令した。

「はい」

麻奈美はゆっくりと立ち上がり、頭の後ろで腕を組んで、身体の全てをさらけ出した。白く滑らかな肌。むっちりとやわらかそうな肉体は、男なら誰しもがそれを抱いた時の感触を想像してしまうだろう。

もう、すでにその裸身を何度も見ている陽太や佳織でさえ、未だにうっとりと見つめてしまうほど魅惑的な裸身だった。しかし、その裸身を、最も知り尽くしているはずの林原だけが、そっと視線を外していた。

「美しいですね……、しかし、これは」
「我が国の制度で、この女性は一定期間人権を放棄し、その身体を使って他人に奉仕しなければならないのです。いわゆる奴隷です。海外では、ドールと呼ばれているようですが」
「……」

イサクは黙って、麻奈美の裸身を見つめている。魂を奪われてしまったのようだ。

「麻奈美は、ついこの間まで我が社の腕利きの社員でしたが、今はこのように会社で飼われる奴隷となっております。どのような命令にも従いますのよ。ほら麻奈美。お前の恥ずかしいところをバックマンさんに見ていただきなさい」
「はい」

麻奈美はくるりと後ろを向いて、身体を前に倒した。脚は肩幅よりも開く。そして手を後ろに回して豊かな尻肉の頂にかけた。

「お見苦しい物をお見せいたします。お許し下さい」

麻奈美は突き出した尻肉を左右に大きく割り裂いた。女として最も隠しておきたい二つの秘穴がさらけ出される。肉裂は口を開いて鮮やかなサーモンピンクの粘膜をのぞかせ、窄まりは皺が伸びきるほどに広げられる。

もう、数え切れないほど取らされてきた奴隷としてのご挨拶のポーズだ。しかし、どんなに繰り返しても、この恥辱に麻奈美が慣れることはできなかった。全身が恥ずかしさでカッと熱くなる。

そして、この時の恥ずかしさは、今まで以上だった。麻奈美はあまりの恥辱に顔を真っ赤にして、涙まで浮かべていた。

その理由を林原は知っていた。麻奈美は、IT業界のカリスマであるイサクに憧れていたのだ。イサクの著書を繰り返し読み、その一部を自分の手帳に書き写すほど陶酔していたのだ。それはかつて愛人関係であった林原にとって、軽い嫉妬を覚えるほどの傾倒ぶりだった。

その憧れの相手に、こんな姿を見せなければならないという麻奈美の心情を思うと、林原は胸が傷んだ。そして、麻奈美がイサク・バックマン信者であることを知って、わざわざこんな目にあわせているという自分の妻の残忍さを恐ろしく思った。林原は、麻奈美の姿を直視することなどできなかった。

そのイサクは、驚きに目を見開いて、黙ったまま麻奈美の恥ずかしい部分を見つめていた。ポカンと口を開けているその表情は、とてもIT業界のカリスマには見えなかった。

「どうでしょう、バックマンさん。少々歳はいってますが、綺麗なものだと思いますが。もちろん、アイリさんほど若い子にはかなわないでしょうけど」

佳織の言葉に、イサクはギョッとして振り向いた。自分の飼っているドールの名前を、なぜ知っているのか。

緊張した空気が流れた。

「なぜ、その名前を?」
「申し訳ありません。調べさせていただきました」
「私を脅すというのか?」

世界的なIT企業のトップが少女を性的奴隷として所持しているという事実が公になれば、ただごとではすまないだろう。たとえ、世界の風向きが男尊女卑に傾いている現在だとはいえ。

「とんでもありません。私たち東京の人間は奉仕制度を誇りに思っているのですから。ドールの存在を否定するはずがありません。むしろ、同じ考えを持つ仲間として、腹を割っておつき合いさせていただければと思っています」

林原は、言葉をひとつひとつ選びながら話していく。ここでイサクを怒らせてしまったら、全ては水の泡だ。

しばらくの間、沈黙が続く。その間も、麻奈美は屈辱的なポーズを崩すことはできない。恥ずかしい部分を、憧れの人の目の前にさらけ出し続けるしかないのだ。

そして、イサクが口を開いて、ポツリと言った。

「濡れていますね、すごく……」
「えっ」

佳織、林原、そしてつられて陽太も、麻奈美の股間を見た。

自らの手で広げられたその部分は、確かにたっぷりの透明な液で満たされて、キラキラと濡れ光っていた。

「あ、ああ……」

憧れの人にそんな状態を指摘された麻奈美は顔を赤らめる。そしてその恥ずかしさが、また麻奈美の身体を熱くして、その部分をさらに濡らしてしまうのだ。

度重なる調教によって、麻奈美は被虐と羞恥に、悦びを感じてしまう肉体になっていたのだ。それがこの地獄の日々の中で、発狂してしまわないための本能的な選択だった。

「彼女に触っていいですか?」
「どうぞどうぞ」

イサクは、麻奈美に近づくと、その尻肉にそっと触れた。

「あっ」

その感触に、麻奈美は思わず声を上げる。身体がさらに熱く燃え上がる。

イサクの手は、麻奈美の尻肉の滑らかさを確かめるように撫で回す。そして広げられた肉裂の中へ指が滑り込んだ。十分に湿り気を帯びていたそこは、あっさりとイサクの人差し指を飲み込んだ。

「あっ、ああっ」

痺れるような快感が麻奈美の脳天まで突き抜ける。あのイサク・バックマンに指を挿入されている。そう思うと、麻奈美は狂おしいまでの恥ずかしさと快感に襲われた。

「すごいな、指をしめつけてくる」

イサクはゆっくりとかき混ぜてから、指を抜いた。指先が愛液でヌラヌラと濡れ光っているのがわかる。

「こちらはどうかな」

イサクはその濡れた指先を、窄まりの中央へと押し当てた。

「あっ、そこは……」

麻奈美は思わず小さな悲鳴を上げた。奴隷は後ろの穴も使って奉仕しなければならないというのが常識だが、これまで麻奈美を調教して来た人間の中には、特にそこに興味を持つ者がいなかったのだ。

キュッと締まった窄まりの中央に、濡れた指先がゆっくりと侵入していく。

「力を抜いてご覧……」

そしてイサクの指は第二関節まで、麻奈美の窄まりに沈んだ。ゆっくりと出し入れする。

「あっ、あっ、ああ……」

初めて味わう感覚に、麻奈美は声にならない声を上げる。不快なようで、それでいて身体の奥がしびれてしまうような、そんな感覚だった。そしてそれはジワジワと快感へと変わっていった。

「こっちはあまり慣れていないようですね」

イサクはそう言うと、右手の指をそこに突き刺したまま、左手の手のひらで思い切り尻肉を叩いた。

バシッと乾いた音が上がる。

「ひぃッ!」

麻奈美は突然の苦痛に、悲鳴を上げた。しかし、それは単なる苦痛だけではなかった。その瞬間、麻奈美の中で何かが弾けた。目の前が真っ白になり、力が抜けた。

ガクっと膝が崩れて、麻奈美は倒れてしまった。軽いエクスタシーに達してしまっていたのだ。

「調教はまだまだ浅いようですが、なかなか美味しそうなドールですね」

窄まりから抜いた指先をハンカチで拭きながら、イサクは笑みを浮かべた。

陽太は、イサクの豹変ぶりをポカンと口を開けながら眺めていた。


そうして、イサクは麻奈美と二人でプレイを楽しむこととなった。佳織はこの接待が見事に成功したことを確信してにこやかに、林原は複雑な表情を浮かべて、一緒に帰っていった。

そして陽太は、麻奈美の管理者として、隣の部屋で待機することとなった。

襖一枚向こうでは、イサクが麻奈美の肉体を思う存分楽しんでいるのだ。さっきから、悲鳴のような、それでいて甘く切ないような麻奈美の声が漏れ聞こえてくる。

陽太はもやもやした気持ちを抱えながら、それを聞いていた。麻奈美に対して恋愛感情を持っているわけではないが、初めて会ったあの外人男性に、自分の麻奈美が弄ばれているというのは、正直言って不愉快だった。

しかも、あの男は自分よりもずっと、「奴隷」の扱いに慣れているようだった。漏れ聞こえてくる麻奈美の狂おしいまでのあえぎ声がそれを証明している。自分は、あんな声を麻奈美に出させることは出来なかった。いや、どちらかと言えば麻奈美にリードされっぱなしだった。ご主人様面していても、結局のところは何も出来てはいない。これでは麻奈美の管理者などと偉そうな顔は出来ない。

陽太は襖をそっと小さく開けてその隙間から隣の部屋を覗いた。

そこには、今まで見たことのない壮絶な色気を発散する麻奈美の白い肉体が蠢いていた。

(続く)

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11.11.21更新 | WEBスナイパー  >  赤い首輪
文=小林電人 |