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赤い首輪 
第1章 教え子・まる【1】

著者=
小林電人


全ての国民は2年間、国に全てを捧げてに奉仕する義務がある――。日本によく似た、しかし異なる某国で「奉仕者」の立場に転落した少女が辿る、絶対服従の日々。飼育・調教が法律によって認められた世界で繰り広げられる、 異色エロティックロマン!
 
 | 


第1章 教え子・まる【1】


「小林先生がご主人様になってくれて、本当に良かったです」

まりは、はにかみながら、そう言った。小林の部屋のソファにちょこんと座ったその少女の顔には、まだまだあどけなさが残っていた。夏服のセーラー服の袖から突きだした腕も、ほっそりとしていて、乱暴に扱ったら壊れてしまいそうな繊細さを感じさせる体つきだった。

「ひどいご主人様だと、色々と、あの……いやらしいこともされちゃうって聞いてたし、いきなり赤紙をもらった時は、私、どうなっちゃうのかってドキドキして眠れなくなるくらい怖かったんですよ」

いやらしいこと、と口にした時、まりの頬がほんのり赤くなった。そのいやらしいこととは、どんな行為を指すのか、幼く見えるまりでも、少しはわかっているようだ。

「でも、小林先生なら、優しいから安心ですよね。先生に教えてもらった6年生の時は、すごく楽しかったです」

まりがにっこりと愛らしい笑顔を浮かべて、そう言うと、小林は少し照れたように呟く。

「そうか……。おれはそんなに生徒に慕われてたのか」
「あの小学校だと、一番人気あったと思いますよ、小林先生」
「ははは。そんなことないだろう。北山先生なんかのほうが、若いしイケメンだし人気あったんじゃないのか?」
「北山先生は、なんか軽い感じがして、あんまり好きじゃなかったなぁ。小林先生のほうが、授業も面白かったし、いっぱい遊んでくれたし、すごく優しかったじゃないですか」

小林は苦笑しながら、まりたちを担任していた頃を思い出す。6年2組は、元気があって明るくて、なかなかいいクラスだった。

今、小林が担任している3年1組は、問題児が多く、何かとストレスがたまるのだ。6年2組を担任していた時は、特に問題もなく、楽しい日々だった。それは生徒たちにとっても同じだったのだろう。

「お前たちが卒業して、もう3年になるのか。山本も少しは成長したのか? まだ小学生みたいな顔してるぞ」

小林が言うと、まりは少し拗ねたような表情を浮かべた。

「いやだぁ。これでも結構、背は伸びたんですよ。それに……」

そして、少し恥じらいながら、まりは言った。

「胸だって、ちゃんとあるんだから」

すると小林が言う。

「よし、じゃあ、そこで脱いで体を見せてみろ」
「え?」

まりは、きょとんとした顔で小林を見た。かつて小学校の担任だったこの男が何を言い出したのか、理解できなかった。何かの言い間違いだと思った。

「聞こえなかったのか? 裸になれと言ってるんだ」
「で、でも……」

小林の顔から温和な笑みが消えていた。

「奴隷はご主人様の命令には絶対服従だと知っているだろう?」
「先生……」
「お前は何か勘違いしてるんじゃないのか? おれはもうお前の担任の先生なんかじゃなくて、ご主人様なんだぞ。さぁ、早く脱ぐんだ」

小林に怒鳴りつけられて、まりは身をすくめた。小林が冗談を言っているわけではないことがわかった。そして、自分の立場を思い出す。自分はこれから2年間、小林の奴隷なのだ。

「さあ、立て。全部服を脱ぐんだ。これから服を着ることは一切禁止する。奴隷は裸で十分なんだからな」

まりは、目に涙を浮かべながら、のろのろと立ち上がった。奴隷はご主人様の命令に逆らうことは許されないのだ。

まりは震える手で、小林の目の前で、セーラー服をゆっくり脱いでいった。それでも、少しでも肌を小林の視線から隠そうと体を縮こませながら。

やがてまりは、薄いピンクの可愛らしいブラジャーとショーツだけの姿となった。手で胸元と股間を隠し、もじもじと身をよじっている。異性の目に下着姿を晒すのは、初めてのことなのだ。

「それじゃ、よく見えないぞ。まっすぐ立って、両手を頭の後ろで組むんだ」
「……」
「早くするんだ」

まりは、涙ぐみながら、小林の命令に従った。おずおずと両手を上げて、頭の後ろで組む。

「ふふふ、そうだ。いいぞ」

下着だけを身につけた少女の全身が露になった。幼い顔立ちに比べると、思春期らしい発育が見られる体だった。決して大きくはないが胸も相応にふくらみ、下腹部は女性らしい曲線を描いている。さらけ出された脇の下は、ちゃんと手入れをしているのか、まだ発毛がないのか、つるつるだった。

「可愛い下着をつけているじゃないか。生意気に色気づきやがって」

小林は不躾な視線をまりの全身に這い回らせる。そのおぞましさと恥ずかしさに、まりは気が遠くなりそうだった。

「ほう、確かに少しは胸が膨らんでいるようだな」

小林は、少女の小さな膨らみに手を伸ばし、ブラジャーの上からギュッとつかんだ。



「あっ」

膨らみかけた乳房を乱暴に握られる苦痛と、初めて異性に触られる恥辱に、思わず声が出る。避けようと体をくねらせる。

「あっ、いや……」

構わず、小林はまりの胸の感触を楽しむ。

「まだまだ小さいが、そのうち大きくなるだろう。おれが毎日刺激してやるからな。ふふふ」
「ああ……」
「よし、じゃあ下着も取るんだ」
「でも……」

まりは、半泣きになった顔で抵抗を示す。しかし、それは無駄なのだということは十分にわかっているのだ。

「おれを怒らせるなよ。さぁ、脱げ!」

小林に怒鳴られると、まりは唇を噛みしめ、絶望的な表情でブラジャーに手をかけた。左手で乳房を隠しながら、右手で背中のホックを外す。ブラジャーがはらりと床に落ちる。

「下もだ」

まりは身をよじり、太腿を閉じて、なんとか小林の視線から股間を隠すように、苦労してショーツを下ろした。左手は乳房、右手は股間を隠している。いじらしくも懸命に恥ずかしい部分を隠している姿は、全裸以上に男の欲情をかき立ててしまうのだが、まりには、そんなことはわからない。ただただ小林の視線から自分の恥部を守りたかった。

「そんなに見られたくないのか。ふふふ。まったく山本は恥ずかしがり屋だな」

そう言いながら小林は、用意してあった紙袋の中から、首輪を取りだした。真っ赤な皮製の大振りな首輪である。それをまりに見せつけた。

「さぁ、奴隷の証をつけてやろう」

両手で体を隠しているまりの首に、首輪を巻き付ける。そしてしっかりとロックをかけた。ガシっと鈍い金属音がした。

「2年間、これは外れないぞ。この首輪をつけている間は、お前は一切の人権を剥奪されるんだ。何もかも、法律で決まっていることだからな」

まりは事前の説明会で、この首輪のこともわかっているつもりだった。しかし、実際につけてみると、その屈辱感はあまりに大きかった。自分はもう人間として扱われない存在なのだと思い知らされた気分だった。



「人間じゃないお前に、山本まりなんて名前はもったいないな。そうだ…。これから、お前のことを、まると呼んでやろう。名字もない、ただのまる、だ。ペットみたいで可愛い名前だろう。どうだ、気に入ったか?」

まりは、名前さえ奪われるという仕打ちにショックを受け、うつむいた。しかし、小林はまるの顔を無理やり上げさせる。

「私は、奴隷のまるです、ご主人様、そう言ってみろ」

それがどんなに屈辱的な言葉であろうとも、従わねばならないのだ。まりは、絞り出すような声で、復唱する。

「わ、私は、奴隷のまるです、ご主人様」
「もっと大きな声ではっきり言うんだ!」
「私は、奴隷のまるです、ご主人様」
「もう一回!」

小林は何度も言い直させ、まり……いや、まるは、涙声になりながらもその命令に従った。

「私は、奴隷のまるです、ご主人様」



国民奉仕法は、全ての国民が一定期間、国に奉仕することを定めた法律である。男女共に15歳から40歳までの間のうち、二年間が奉仕期間となり、その期間中は国民としてのあらゆる人権は一時的に放棄させられる。その時期は、基本的にランダムに決められ、実施される二カ月前に該当者の元には通知書が送られる。通知書は、その色から、通称「赤紙」と呼ばれている。

奉仕の方法は、男性と女性では異なっている。男性は徴兵。すなわち二年間の兵役が義務づけられる。

そして女性は二年間、奉仕者とならなければならない。奉仕者とは、被奉仕者に対してあらゆる奉仕をする者を指す。被奉仕者は、奉仕者に対して、しつけとしての暴力・凌辱も認められている。生命の危機に関わるようなことや、肉体的な破損をもたらすようなことでなければ、ほどんどの行為が許される。そのため、奉仕者を奴隷、被奉仕者をご主人様と称することが一般的だ。

奉仕者となることが決定すると、その地区での広報誌に、プロフィールが掲載される。そしてその奉仕者のご主人様になれるかどうかは、使用料の入札で決められるのだ。使用料の金額を最も高く入札した者が、ご主人様になれる。その使用料は国の財源となる。

つまり、奴隷は、その奉仕労働によって、国の財政を助けるわけだ。

小林が、なんの気なしに自分の地区の奉仕者候補リストを見ていた時、その中にかつての教え子の名前を発見した。かつての教え子を、自分の奴隷にするというアイディアは、実に魅惑的なものに思えた。

ちょうど現在受け持っているクラスでは問題が連続して起こり、保護者とのやりとりで精神的なストレスがたまっていた小林にとって、奴隷を持つということは、なかなかいい発散になりそうだった。

幸い、40歳近くになっても独身であり、たいした趣味も持っていない小林には、少なくない額の貯金もあった。

かつての幼い面影を残しつつも、可愛らしい少女に成長していた山本まりには、他にも5人の応募者がいたが、小林は見事に落札。3年前に担任だった教え子のご主人様となることに成功したのだった。

ご主人様のすべてが、奴隷に性的な奉仕を命じるわけではなく、単なる使用人や労働者として働かせる場合も多い。

山本まりも、あの優しかった担任教師がまさか性的な欲望目当てで、自分を選んだとは露ほども思っていなかった。

しかし、小林には隠し続けていたサディスティックな性癖があったのだ。それが原因で、これまでの恋愛も失敗に終わっている。優しい男だと思って近づいて来た女たちは、小林の隠れた一面を垣間見ると、みんな去っていった。

いつかは奴隷を手に入れて、この性癖をぶつけてみたい。そんな思いを胸に秘めていた時に、奉仕者決定リストの中に、山本まりの名前を見つけたのである。



こうして、ご主人様である小林と、奴隷であるまるの二年間の生活がスタート した。それはまるにとって、あまりに過酷な日々となったのである。

(続く)



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09.07.13更新 | WEBスナイパー  >  赤い首輪
文=小林電人 |