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Alice who wishes confinement
私の居場所はどこにあるの――女児誘拐の不穏なニュースを観ながら倒錯した欲望に駆られた女子高生が体験する、エロティックでキケンで悩み多き冒険。理想と現実の狭間で揺れ動く乙女心とアブノーマルな性の交点に生まれる現代のロリータ・ファンタジー。オナニーマエストロ遠藤遊佐の作家デビュー作品!!翌日は金曜日だった。タナベは昼休みも取らず、頑張って仕事を終わらせて定時きっかりに会社を出た。家に帰る前にいくつか買い物をするためだ。会社が休みの土日にまゆりと2人きりで過ごすことを、彼は週頭から楽しみにしていた。優しく紳士的な態度が功を奏したのか、ここのところほんの少しずつではあるけれど笑顔が増えてきた気がする。一気に距離を縮めるならこの2日間が勝負だ。
――やっぱり無理矢理いうことをきかせるなんて真似をしなくて正解だったな。すぐ隣に寝てる女をオカズにオナニーしなきゃならないのは正直参ったけれど……。
これまでは長い時間一緒にいても、タナベが一方的に喋りかけるだけであまり会話が盛り上がらず、いたたまれない気持ちになることもしばしばだった。でも今週は違うような予感がする。なんとなくうまくいきそうな手応えがあるのだ。
今朝、出掛けに「今日は帰りにアリスが欲しがってた『24』のDVD―BOXを買ってくるよ。新しいテレビで一緒に観よう」と言うと、彼女は目を輝かせ「嬉しい。早く帰ってきてね、おじさま」と見送ってくれた。出社するタナベを毎朝見送るのは交換条件の一つになっていたが、早く帰ってきてねと言われたのは初めてだった。
――ゆっくりとDVDを観て、お腹が空いたら好きなものを食べて、朝から晩まで自堕落に過ごそう。もしかしたら気分が盛り上がって、そのまま一線を超えるなんて可能性もあるかもしれない。
夢で見たまゆりのアソコの熱くヌメった感触を思い出すと、下半身が急激に熱くなってきた。
――いやいや、期待しすぎちゃダメだ。性的な進展がなくてもそれはそれでいい、まずはアリスに僕を好きになってもらうことだ。結ばれるのはそれからでも遅くない。
欲望を振り払うように足早にCDショップに向かいながら、自分にそう言い聞かせる。
ふと、昨日馴染みのイメクラ嬢から「久しぶりに会いたい」という営業メールが来ていたのを思い出したが、すぐに脳みその奥にしまい込んだ。今のタナベにはDVDを買って美少女の喜ぶ顔を見ることのほうが重要なのである。
『24』のDVD―BOX は目に付く場所に平積みになっていたのでホッとした。インターネットで注文すれば確実にしかも割引価格で手に入るのはわかっているのだが、できることなら宅配便の業者であっても家には近づけたくない。そんな小心さから、頻繁に利用していたネット通販も最近はほとんど使わなくなっていた。
CDショップを後にすると、そのまま同じデパートの中にある食品売場に向かう。ここでの買い物は少々手間取った。鍋に入れるきりたんぽがなかなか見つからなかったからだ。数日前、テレビの旅番組に秋田名物のきりたんぽ鍋が出てきたとき、まゆりはそれを珍しがり、食べてみたいと言った。それを聞いてタナベは週末のメニューをきりたんぽ鍋にしようと決めたのである。
彼の実家は秋田だった。内気で現実的な性格のせいかノスタルジーを感じることはほとんどなかったが、溺愛している美少女が自分の故郷の味に興味を示してくれたと思うと嬉しかった。秋田に比べれば可愛いものとはいえ、今年の冬はかなり寒い。体が芯から温まる比内鶏のスープとそれがたっぷり染み込んだきりたんぽを、まゆりに食べさせてあげたいと思った。
店員に声をかけ肉屋と名産品のコーナーを何度も行き来して、ようやく全部の材料が揃った頃には、すっかりお腹が空いていた。考えてみれば、昼は仕事をしながらカロリーメイトを食べただけである。でも、どこかで立ち食いソバでもすすろうという考えは起きなかった。家ではとびきりの美少女が自分の帰りを首を長くして待っている。それに今日の晩はスペシャルメニューだ。お腹が空いていたほうが美味しく食べられるに違いない。
いくら好きでもいつも冷凍ピザでは味気ないだろうと思い、奥様方に混ざってデリカテッセンのローストビーフやサラダ、コロッケなども大量に買い込んだ。少し買いすぎかとも思ったけれど、2日分だしまあいいだろう。
「ただいま。遅くなっちゃって悪かったね、いろいろ買うものがあったもんだから」
いつものようにドアにつけられた南京錠を外してリビングに入り、今度は内側の南京錠にしっかりと鍵をかける。
ソファで居眠りをしていたまゆりが慌てて起き上がり、フラフラしながら出迎えに来た。低血圧だとかでひどく寝起きが悪いのだが、タナベが提示した“笑顔で出迎えること”という交換条件だけはなんとかして守ろうとしている。こういう真面目さがロリコン中年男にはなんともいえずキュンとくるのだ。
「おかえりなさい、おじさま……」
ふあぁ、と小さくあくびをしてしまい、しまったというように肩をすくめる。
「やだ、ごめんなさい」
「いいよいいよ。さあ、今のうちにお風呂に入っておいで。今日はアリスのためにスペシャルメニューを作るからね。ちょっと時間がかかるからゆっくりお湯につかるといい。ほら、約束のDVDもちゃんと買ってきたから、食べ終わったら観よう」
ありがとう、おじさま。そう言って微笑むと、まゆりはパジャマを持ってそそくさとバスルームに消えた。
――さて、やるか。
小さな口元から覗く八重歯に見惚れながら、タナベは夕食の支度にとりかかった。
天井からポタリと落ちた水滴がおでこに当たり、まゆりはハッと我に返った。
さっきからこんなことを何度も繰り返している。ふと気がつくと考えごとに没頭していて、ちょっぴりのぼせ気味だ。額からは汗が吹き出し、白い頬はピンクに染まっている。そろそろ出なきゃタナベに不審がられてしまう……そう思うのだが、なんとなく動く気がしなかった。
消しても消してもしつこいくらいに彼女の頭に浮かんでくるのは、これから食べるスペシャルメニューが何かについてではもちろんない。昼間、藤原に送った近況メールの返事のことだ。
数日ぶりに受け取った外部からのメールには、思いがけないことが書かれていた。
藤原によると、両親はまゆりが一人旅に出かけているという嘘を少しずつ疑い始めており、ごまかすのに少々苦労しているらしい。まあ、それは最初から予想していたことだから仕方がないだろう。彼女の心を乱したのはそのことではなく、心配する両親をなだめて捜索願いを出すのを思いとどまらせているのは姉の富子だという事実だった。「あの子は大丈夫よ、根が真面目だし、ああ見えて意外にしっかりしてるんだから」富子はそう言って慌てる両親を面白がっているのだという。
「最近様子が変だったから事件に巻き込まれたのかもしれないって、それ逆でしょう。何か行動を起こすつもりだったから様子がおかしかったんじゃない。女の子なんて18歳にもなればいろんなことがあるんだからほっといてあげなさいよ。私だって最初に駆け落ちしたの、高2の時だったわよ」
いやあ、繭さんにお姉さんがいるなんて知らなかったけど、物分かりよくてなかなかいいキャラじゃない。ヤンキーっぽいところは好みじゃないけどね――。
藤原は富子のことを気に入ったらしくしきりにそう褒めていたけれど、まゆりの心は複雑だった。大騒ぎされなくて済んでいるのはありがたいが、失踪したのかもしれないと疑いつつ放っておかれるのはなんだか寂しくもある。
――私がいなくなったことなんて、お姉ちゃんはどうでもいいの? お母さんたちもお母さんたちよ。本当に心配してるなら、そんなに簡単に納得しないはずじゃない。やっぱりひきこもりの登校拒否娘なんて、家にいなくて清々してるんだわ。
自分が望んで監禁されたくせに、気がつけばそれを棚に上げて毒づいてしまう。まゆりはやっと、家族が心配のあまり半狂乱になってくれるのを心のどこかで期待していたんだと気づいた。
――これじゃあまるで赤ん坊が駄々をこねてるのと同じね……。
急に自分がひどく子供じみたことをしているような気がして、切なくなった。
私、どうしてこんなところにいるんだろう。知らない男にいろんなものを買ってもらって、いい気になって……。
そう思ってふと顔を上げると、なぜか今まで気付かなかったものが目に入ってきた。
バスルームの小窓である。
綺麗にリフォームしてあるものの元々の作りが古いせいか、この家は天井が高い。その高い天井の上のほうに、換気のために小さな窓がつけられているのだ。これまで逃げ出そうと考えたことがなかったから見逃していたのだろう。
小柄な18歳の少女でもとても抜けられないくらいの小さな窓だし、なによりまゆりは裸である。ここから外に出ようなんて考えは微塵もない。とはいえ、家のつくりから考えると窓の外は外界につながっているはずだ。
まゆりは、数週間ぶりにこの2LDK以外の世界を見てみたいと思った。逃げるんじゃない、見るだけだ。台所で料理に精を出しているタナベが知ったらきっと怒るだろうと思ったけれど、どうしてもバカなことがしてみたくなった。魔が差したというやつだ。
まゆりは湯船から出ると、石鹸やシャンプーを置いておくためのプラスチックの三角コーナーを引き寄せた。いかにも近所のホームセンターで購入したような安物であまり丈夫には見えなかったが、80センチ程の高さがある。これに登れば小窓に顔が届きそうだ。
シャワーノズルに手をかけ、壊れないようにうまく体重をかけながらゆっくりと登る。
――よし、大丈夫。なんとかなりそう。
全裸の美少女が窓の外を見ようと躍起になって三角コーナーに登っている様子はなんともいえず滑稽だったが、彼女は真剣だった。
窓枠に手をかけ、慎重に鍵を外して窓を開ける。
外を見たが、そこには葉の落ちた木が何本かあるだけだった。裏庭のようだ。この窓からでは隣家の灯りも人通りのある歩道も見ることはできなさそうだ。
なあんだ。半分ホッとした気持ちでまゆりはそっと目を閉じた。
冷たい外気がスーッと頬に当たる。ああ、気持ちいい――。
……と、その瞬間、頭がクラクラして足元がふわりと宙に浮いた。カランカラーン! ゴットン!という家中に響くような大きな音を立て、少女の白い裸身は三角コーナーから転がり落ちた。
大丈夫だと思っていたが、30分も湯船に浸かっていればのぼせるのは当たり前だ。
「い、痛ぁい……」
腰を強く打ったらしい。いきなりのことに思わず呻き声が溢れる。痛みを我慢しながら必死に腰をさすっていると、手のひらにヌルヌルした血の感触を感じた。指先も切っているようだ。
物音を聞きつけたタナベが血相を変えて駆けつけてきた。
「どうしたんだ、アリス。何があった!?」
余程焦っていたのだろう、ノックもせずにいきなりドアを開けてバスルームに飛び込んできたタナベは、全裸でうずくまるまゆりと倒れた三角コーナー、そして冷たい風が吹き込む開きっぱなしの小窓を目にすると、即座に何が起こったのが理解したようだった。
「……どういうことだ? 逃げようとしたのか、アリス……そうなんだな!」
エプロン姿の中年男の顔に一瞬泣きそうな表情がよぎり、次の瞬間バキッと何かが割れる音がした。タナベが三角コーナーを壁に叩きつけたのだ。まゆりが登っても壊れなかったそれは、あっけなく真っ二つになった。恐る恐る見上げると、優しいロリコン男は今まで見たことのないような恐ろしい形相で震えていた。
「どうしてだ! 俺は君と一緒に食べようと思って一生懸命鍋の用意をしてたんだぞ。アリスが待っていると思って女の誘いも無視して大急ぎで帰ってきた。それなのに何が不満なんだ。嫌がることなんて何一つしてないだろう!」
小心で注意深い男が、バスルーム中に響き渡るような大声でまくしたてるのを聞いて、まゆりは耳を塞ぎたくなった。どうしてこんなことをしてしまったんだろう。きっともう、今までのように快適な生活は望めない。それだけじゃない、タナベをひどく傷つけてしまった。後悔してもしきれない。でももう遅いのだ。
子犬のような大きな目から涙が溢れ出す。腰の痛さを忘れるくらい激しく胸が痛んだ。
ごめんなさい、そんなつもりじゃなかったの……ねえ、おじさま聞いて。
小さな弁明の声が聞こえないかのように、タナベはポツリとつぶやいた。
貢ぐだけ貢がせて、結局俺をバカにしてたんだよな――。
「……わかった、君がそういうつもりなら僕にも考えがある。それ相応の扱いをするまでだ。今までは大切なお客様だと思って接してきたけど、これからはそうはいかない。いくら嫌われたってかまわない、獲物として好きなようにさせてもらうよ」
ごめんなさい……ごめんなさい……。素っ裸で泣きじゃくるまゆりを、タナベは小柄な体からは想像もできないようなすごい力でバスルームの外に引きずり出した。
(続く)
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