第52講 空気浣腸の歴史と快感【1】 文=横田猛雄 イラスト=伊集院貴子 |
第一課 遊郭のリンチ河豚責め
屁から空気の注入へと話が発展したところで、ここで空気注入について詳しくお話ししてみます。
ケッツの穴から空気を出来るだけ大量に注入して責めてやろうということは誰もが思いつくことですが、日本でこの責めがひろく行なわれるようになるのは大正時代以降です。
西洋では牛や豚の膀胱が浣腸用に用いられたり、後に詳しくお話しする鞴(ふいご)があったので、十八世紀以前にも空気浣腸は責めやショウとしてよく行なわれたようですが、日本では空気を用いた責めは自転車の空気入れが使われるようになってからのことで、西洋よりはかなり遅れています。
自転車の空気入れのゴムホースの先端の金具を取り去って、それをケッツの穴から突っ込んで空気を入れる責めは昔の遊廓では「河豚責め」と呼ばれ、接客態度の悪い女郎への刑罰として見せしめの効果をねらって行なわれたもので、その方法は女を全裸にして両手を縛って釣り上げ、ケッツの穴からホースを突っ込みペダルを踏んで、ゆっくりゆっくり腹がパンパンになるまで空気を入れるのです。
この刑を執行するのは牛太郎と呼ばれる若い男で、平素はぶらぶら遊んでいて、足抜けとか何とか問題の起こった時に顔を出す、用心棒と男衆とを兼ねたような存在で、いわゆる働くことの嫌いな碌でもない奴です。
人間の大腸には大体三千cc余りの空気や水は入りますので、それくらい入れると腸が横に開いて丸く膨らみ、いわゆる河豚のような腹になりますのでこれを河豚責めと呼ぶのです。女はこうして腹パンパンにされ、ケッツの穴に膏薬を貼って塞がれて廊下の柱に縛られ、行き交う客達の眼に晒されるのですが、遊廓の凄いところはこうやって何日にも渡って晒し物にすることです。夜が明けると主人がやって来て腹に手を当てて、空気が減っていると追加し、ついでに交合してゆくのです。
客の中には妊産婦を犯したい願望のある男が意外に多く、その者たちのために特別料金を上積みして交合させられるのです。
だが唯空気を入れただけでは数時間たつと腹が小さくなってゆくことが分かったのです。
それは空気が逆流して胃から口へ抜けてゲップになって排出されるからです。口から空気が洩れないようにするには、さすが遊廓文化の凄さです。何とするのかというと、紐できつく力一杯に女の胃の上、鳩尾ちのあたりを縛って締めつけるのです。
そうやってから空気を入れると空気は大腸と小腸に一杯になり、胃までは行きますが、そこでさえぎられて食道や喉には行かなくなります。そうなると肺の動きは抑えられるので口からハアハアと息をするのも困難になり、腹が膨らむにつれて背中が反り返って、腹を自分から前に突き出しているように見えます。
腹は空気が入って最初に臍の上のあたりが膨らみ、ついで向かって右側の脇が膨らみ、次に左脇が膨らみ、アンパンのように横に開いてパンパンに膨らみます。
妊婦の腹が臍を中心に前に突き出すように膨らんできて、臨月近くになるとやや垂れ気味になりますので、空気を入れられた河豚責めの腹と妊婦腹とは正確にいうと形がやや異なります。
もうこれ以上入らぬという所まで空気を入れられるものですから、腹はバスケットのボールのようにパンパンになり、四千cc以上の空気が中に納まり、横隔膜が上へ圧迫され肋骨が動かなくなるので、胸式呼吸は不可能で、かろうじて腹式呼吸で肩ではあはあ息をする状態となります。
戦前の遊廓では先に言った過失や裏切りをした場合だけではなく、稼ぎの悪い女に躾と称して定期的にこの責めが行なわれるのが普通となり遊女は、誰もが何度もこの責めを経験したと言われ、この躾をうけると素直ないい女になると客からも喜ばれたとのことです。
横田猛雄 1990年3月号よりS&Mスナイパーにて実践派のための肛門エッセイを連載。1993年ミリオン出版より『お尻の学校[少年篇]』発行。またアナル責めのAV作品にも多数出演しており、A感覚実践派の伝道師として他の追随を許さぬ存在。2007年5月号まで同誌上で『大肛門大学』を連載していたが、高齢と健康上の理由により連載終了。そしてWebスナイパーにて、膨大かつ偉大なるアーカイブの復刻連載開始です! |
09.04.22更新 |
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