『ビデオ・ザ・ワールド』創刊号/1983年11月号 発行=白夜書房
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「ビデオ・ザ・ワールド」における青山正明(1)
今回から数回連続で『ビデオ・ザ・ワールド』における青山正明を取り上げる。『ビデオ・ザ・ワールド』は白夜書房における、いわゆる中沢(慎一)班の雑誌で、要は青山とも関係が深かった。1983年末に創刊し、現在も続刊中。
1982年に登場した裏ビデオ『洗濯屋のケンちゃん』の大ヒット(一説には10万コピー)で、同年から家庭用ビデオデッキが急速に普及したと言われるが、同時にアダルトビデオ市場が開拓されていく中で、よりディープな情報への需要が高まっていた。そうした流れを受けてか、『ビデオ・ザ・ワールド』は初めから表と裏を並列に扱っており、日本のビデオ史を語る上で絶対に外せないアダルトビデオ情報誌の草分けである。
『ビデオ・ザ・ワールド』創刊号/1983年11月号
現在とは違うロゴがどこか新鮮な記念すべき創刊号。表紙を現女優(当時アイドル)の北原佐和子が飾るように、この時期はまだビデオ専門誌というよりも、ビデオをメインにした風俗全般の情報誌という趣がある。特に『Hey!Buddy』の全盛期であるためか、初期はロリータ写真の掲載も目立つ。実質的な制作はVIC出版という編集プロダクションが担当。青山は「不幸な人々」と題した死体写真コーナーを担当。一枚ずつ写真を解説しているのだが、特筆すべきものはない。
『ビデオ・ザ・ワールド』1984年1月号
表紙は斉藤慶子。青山は引き続き死体写真コーナー「不幸な人々」を担当。その他「超法規美少女ビデオのマニヤ度」と題したビデオ紹介記事を書いているのだが、ここで紹介されている『テレ美少女コレクション』(いちご通信社)は青山が司会を担当したビデオで、いわゆる自作自演である。
『ビデオ・ザ・ワールド』1984年3月号
表紙は浜田朱理。村上龍とアル・ゴールドスタイン(エロ本『SCREW』編集長)の対談が収録されているところが時代を感じさせる。「不幸な人々」は第3回。その他に「神秘かグロか!誕生の瞬間[出産ビデオ]」の記事を担当。昨年出た2本の出産ビデオについて不満タラタラ。「出産は人に見せる物ではないし、見ても楽しくない。私は何が言いたいのか? つまるところ、楽しいオナニーライフの一助にと、大枚はたいて購入したにもかかわらず、一発もセンズリがこけなかったのである。くやしい。アダルトビデオのコーナーにこんなもん置くな! 教育用のラックに置いておけ!」。
『ビデオ・ザ・ワールド』1984年5月号
表紙は原真祐美。裏ビデオ情報が徐々に増えてきている。苦情が増えたせいか死体写真連載は前回で終わりのようで、別の記事が増えている。「鬼畜ファックビデオのすごさ!! 親が観たら泣く、ロリータ本番」という『ザ・ロリータ〈姦痛〉』の紹介、前回から懲りてない「医学ビデオにエッチな期待!ビデオで観る「家庭の医学」」、そして「ホラービデオが大好きッ!」というホラービデオコレクターへのインタビュー記事を担当。
『ビデオ・ザ・ワールド』1984年7月号
表紙は1997年に自殺した可愛かずみ。この辺りでアイドルからポルノ出演経験のある女優へと移ってきた。青山は前号で紹介した『ザ・ロリータ〈姦痛〉』の裏ビデオ紹介記事を担当しているが、『Hey!Buddy』と内容がかぶっている。
『ビデオ・ザ・ワールド』1984年9月号
表紙は高橋麻子。青山は『ハスラー・ビデオ・マガジンvol.1』と『リトルミイ&ストレンジラヴ』の2本の海外裏ビデオを紹介しているが、やはり『Hey!Buddy』と内容がかぶっており、特筆すべきものではない。
『ビデオ・ザ・ワールド』1984年11月号
表紙は元トライアングルの小森みちこ。好評につきこの号から月刊化(それまで隔月)。発行部数は15万前後だったようだ。青山は表紙でも目立っている「ロリータ・ビデオのすすめ![ワレ目を合法的に観賞できる]」の記事を担当。キャッチコピーが時代を感じさせるが、「ワレ目を合法的に」という売り文句から連想できるのは、あくまで性器を見たいが見れないための代用としてのロリータだったことで(子供は修正が不要だったから)、しかしいつのまにかロリータそのものへの需要が多数を占めるようになったという仮説である。
『ビデオ・ザ・ワールド』1984年12月号
表紙は豊田真子。「とってもボイン?日米Dカップビデオ研究」と「あくまでワレ目!ヨーロッパ・チャイルド・ビデオ!!」の記事を担当。マザコン(巨乳)とロリータ(ワレ目)という青山の二大性癖について、活き活きと語っている。それにしても文章の書き出しが強烈だ。「皆さーん、元気に日常生活を送っていますか? 年功序列、終身雇用、能力よりも努力に注目、「誰でもやれば出来るんだ」という能力平等観、行動の規範は何やら理論も契約もなく、「社会の人々がそうするから」と相対的、人間関係至上主義、作品自体を批評しても、「あいつは俺に敵意がある」と、作品をとびこえて、人対人の直接感情的出来事になってしまう実に人間味溢れる日本社会。ちゃーんと温情主義の利得を満喫してるかなあ? 能力無くても先輩は先輩、長く居ることこそ価値がある。だからして、VW創刊以来執筆を続けている僕はエライのです」。
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【プロローグ】 【1】 【2】 【3】 【4】 【5 】 【6】 【7】 【8】 【本文註釈・参考文献】
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「ビデオ・ザ・ワールド」における青山正明(1)
今回から数回連続で『ビデオ・ザ・ワールド』における青山正明を取り上げる。『ビデオ・ザ・ワールド』は白夜書房における、いわゆる中沢(慎一)班の雑誌で、要は青山とも関係が深かった。1983年末に創刊し、現在も続刊中。
1982年に登場した裏ビデオ『洗濯屋のケンちゃん』の大ヒット(一説には10万コピー)で、同年から家庭用ビデオデッキが急速に普及したと言われるが、同時にアダルトビデオ市場が開拓されていく中で、よりディープな情報への需要が高まっていた。そうした流れを受けてか、『ビデオ・ザ・ワールド』は初めから表と裏を並列に扱っており、日本のビデオ史を語る上で絶対に外せないアダルトビデオ情報誌の草分けである。
『ビデオ・ザ・ワールド』創刊号・目次 1983年11月号/発行=白夜書房 |
現在とは違うロゴがどこか新鮮な記念すべき創刊号。表紙を現女優(当時アイドル)の北原佐和子が飾るように、この時期はまだビデオ専門誌というよりも、ビデオをメインにした風俗全般の情報誌という趣がある。特に『Hey!Buddy』の全盛期であるためか、初期はロリータ写真の掲載も目立つ。実質的な制作はVIC出版という編集プロダクションが担当。青山は「不幸な人々」と題した死体写真コーナーを担当。一枚ずつ写真を解説しているのだが、特筆すべきものはない。
『ビデオ・ザ・ワールド』1984年1月号/白夜書房 |
表紙は斉藤慶子。青山は引き続き死体写真コーナー「不幸な人々」を担当。その他「超法規美少女ビデオのマニヤ度」と題したビデオ紹介記事を書いているのだが、ここで紹介されている『テレ美少女コレクション』(いちご通信社)は青山が司会を担当したビデオで、いわゆる自作自演である。
『ビデオ・ザ・ワールド』1984年3月号/白夜書房 |
表紙は浜田朱理。村上龍とアル・ゴールドスタイン(エロ本『SCREW』編集長)の対談が収録されているところが時代を感じさせる。「不幸な人々」は第3回。その他に「神秘かグロか!誕生の瞬間[出産ビデオ]」の記事を担当。昨年出た2本の出産ビデオについて不満タラタラ。「出産は人に見せる物ではないし、見ても楽しくない。私は何が言いたいのか? つまるところ、楽しいオナニーライフの一助にと、大枚はたいて購入したにもかかわらず、一発もセンズリがこけなかったのである。くやしい。アダルトビデオのコーナーにこんなもん置くな! 教育用のラックに置いておけ!」。
『ビデオ・ザ・ワールド』1984年5月号/白夜書房 |
表紙は原真祐美。裏ビデオ情報が徐々に増えてきている。苦情が増えたせいか死体写真連載は前回で終わりのようで、別の記事が増えている。「鬼畜ファックビデオのすごさ!! 親が観たら泣く、ロリータ本番」という『ザ・ロリータ〈姦痛〉』の紹介、前回から懲りてない「医学ビデオにエッチな期待!ビデオで観る「家庭の医学」」、そして「ホラービデオが大好きッ!」というホラービデオコレクターへのインタビュー記事を担当。
『ビデオ・ザ・ワールド』1984年7月号/白夜書房 |
表紙は1997年に自殺した可愛かずみ。この辺りでアイドルからポルノ出演経験のある女優へと移ってきた。青山は前号で紹介した『ザ・ロリータ〈姦痛〉』の裏ビデオ紹介記事を担当しているが、『Hey!Buddy』と内容がかぶっている。
『ビデオ・ザ・ワールド』1984年9月号/白夜書房 |
表紙は高橋麻子。青山は『ハスラー・ビデオ・マガジンvol.1』と『リトルミイ&ストレンジラヴ』の2本の海外裏ビデオを紹介しているが、やはり『Hey!Buddy』と内容がかぶっており、特筆すべきものではない。
『ビデオ・ザ・ワールド』1984年11月号/白夜書房 |
表紙は元トライアングルの小森みちこ。好評につきこの号から月刊化(それまで隔月)。発行部数は15万前後だったようだ。青山は表紙でも目立っている「ロリータ・ビデオのすすめ![ワレ目を合法的に観賞できる]」の記事を担当。キャッチコピーが時代を感じさせるが、「ワレ目を合法的に」という売り文句から連想できるのは、あくまで性器を見たいが見れないための代用としてのロリータだったことで(子供は修正が不要だったから)、しかしいつのまにかロリータそのものへの需要が多数を占めるようになったという仮説である。
『ビデオ・ザ・ワールド』1984年12月号/白夜書房 |
表紙は豊田真子。「とってもボイン?日米Dカップビデオ研究」と「あくまでワレ目!ヨーロッパ・チャイルド・ビデオ!!」の記事を担当。マザコン(巨乳)とロリータ(ワレ目)という青山の二大性癖について、活き活きと語っている。それにしても文章の書き出しが強烈だ。「皆さーん、元気に日常生活を送っていますか? 年功序列、終身雇用、能力よりも努力に注目、「誰でもやれば出来るんだ」という能力平等観、行動の規範は何やら理論も契約もなく、「社会の人々がそうするから」と相対的、人間関係至上主義、作品自体を批評しても、「あいつは俺に敵意がある」と、作品をとびこえて、人対人の直接感情的出来事になってしまう実に人間味溢れる日本社会。ちゃーんと温情主義の利得を満喫してるかなあ? 能力無くても先輩は先輩、長く居ることこそ価値がある。だからして、VW創刊以来執筆を続けている僕はエライのです」。
(続く)
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ばるぼら ネッ
トワーカー。周辺文化研究家&古雑誌収集家。著書に『教科書には載らないニッポンのイ
ンターネットの歴史教科書』『ウェブアニメーション大百科』など。なんともいえないミ
ニコミを制作中。
「www.jarchive.org」 http://www.jarchive.org/ |
09.05.24更新 |
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