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第8回 気狂い縄師 荊子

文=
抱枕すあま

まだ暑い日が続いていますが、皆さんいかがお過ごしですか?
先日、身体の中から涼しくなろうと、尿道と肛門にフリスクを入れてみました。あまり涼しくはなりませんでした。これが成功したら、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)で発表し、地球温暖化を防止した立役者として、ノーベル賞を貰う予定だったのですが、失敗に終わりました。
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話は変わりますが、皆さん気狂い縄師の荊子さんをご存じですか? 「荊子」と書いて、「いばらこ」と読みます。『スナイパーEVE』の愛読者の方ならよくご存じだと思いますが、ちょっと変わった女性の縄師さんです。

普通、SMショーといえば、音楽に乗せて縄師さんが女性を次々に縛っていく姿をイメージしますよね? しかし、荊子さんは違うのです。音楽はまったく使わず、独特の言葉責めを駆使してショーを作り上げるのです。ステージ上にある音は、荊子さんの囁きとM女さんの吐息のみ。耳を澄ませて見るSMショーというジャンルを作り上げた、唯一無二の存在なのです。

そんな荊子さんが、『環七 Beatic Circus vol.3 高円寺ストリップ激情!!』というロックとエロが融合したイベントで、DJと共演するというではありませんか!! 音楽を使わないことで自分の世界を表現していた荊子さんが、それを捨て去るのです。今までに見たことのない、音楽のある荊子さんのショー。荊子ファンの私としては、これを見逃すことなどできません。私はいそいそと、東高円寺のライブハウスへと向かったのでした。

会場はライブハウスなので、当然のごとく天井に梁がありません。そのため、上から吊ることができないのです。縄師がショーを行なう上で、これは大きな制約となります。しかし、荊子さんは平気です。昔、新宿のセルDVD&雑誌販売店『メンズショップタイヨー』で荊子さんがイベントを行なったとき、本人に直接聞いたことがあるのです。

す「梁がないと、吊れないですよね。イベントがやりにくくないですか?」
荊「店内を引きずり回すから大丈夫」

す「明日食べるパンがないのですが……」
荊「ケーキを食べるから大丈夫」

やっぱりこの人は、本物のサディストでした。気安く近づくと、手を噛まれるおそれがあります。荊子さんのショーは、窓の外からそぉ〜と覗くように鑑賞するのが正しい見方なのです。そのため、私は後方からこっそりと見ていようと思っていました。あたかも、飛雄馬を電信柱の陰から見守る明子姉さんのように。しかし、その姿を安藤ボン監督(多くの荊子さんの出演作品で監督をしている女性)に見つかってしまい、いつの間にか前から2列目の特等席へと移動させられてしまいました。ライオンの檻と柵の隙間の様な危険な場所に放り込まれたのです。

この日の荊子さんの衣装は、黒のラバー製ドレスでした。いつにも増して、格好いいです。このドレスは、もちろんスリット付きです。荊子さんの衣装といえば、スリットの深さが楽しみの一つでもあるのですが、残念ながらこのドレスのスリットは浅めでした。これでは、荊子さんのパンチラは期待できません。まぁ、荊子さんのパンチラを期待してショーを見に来ているのは、私くらいでしょうが。



荊子さんのお相手は、安藤ボン監督と荊子さんの記念すべきインディーズ第1作『新世界〜気狂い縄師荊子』に出演していたリナ嬢でした。DJの音楽に導かれて、荊子さんがステージに登場しました。しかし、音楽があるため、いつもの言葉責めはできません。その分、荊子さんは縛りに集中しているように見えます。そして、荊子さんの細くて長い指先で、リナ嬢のオッパイをなんとも艶めかしく揉みしだいていきます。



荊子さんは、女王様ではありません。本人は縄師だと言っています。でも、私は荊子さんのことを、縄師だとも思っていません。荊子さんの魅力は、縛り終えた後の責めにあるのです。荊子さんの責めは、子供のように純真で無垢です。そして、子供のように残虐なのです。ステージ上で自由気ままに動き回る荊子さんを見ていると、どこまでが本気で、どこまでが演出なのか、境目が分からなくなります。非日常の中に存在する、作られたサディストとは違うのです。荊子さんは、日常の中に普通に存在している、産まれながらのサディストなのです。だからこそ、荊子さんのショーには、我々を惹きつける魅力があるのです。

実は、荊子さんの相手役のリナ嬢とは、安藤ボン監督主催のお花見の時にお会いしていたので、妙にドキドキしてしまいました。知っている人が荊子さんに責められるというのは、なんだかとてもこそばゆく、ヘンな感じがします。そんな私を知ってか知らずか、荊子さんはリナ嬢の顔を、私の方へと向けさせました。リナ嬢と目が合った私は、思わず「お花見の時はどうもっ!!」と挨拶しそうになるのを堪えるのに必死でした。しかし、この日の荊子さんは、私に対して妙にサービスが良かったのです。私が見やすいように、自分やリナ嬢の立ち位置をいろいろと考えてくれているようでした。

「ひょっとして、荊子さんは僕のことを……」

と妄想が膨らんだのですが、ただ単に、私の前に座っていた人が、ショーの様子を撮影していただけでした。とほほっ。

実際のところ、音楽のある荊子さんのショーに対して、私は少なからず危惧していました。今までの荊子さんのショーの魅力が、音楽により損なわれてしまうのではないかと。しかし、普通に音楽を流すのとは違い、DJとのコラボだったということもあり、荊子さんの世界観や責めのリズムに、音楽が非常に合っていました。私の心配は杞憂だったのです。しかも、いつもより格好良かったのですよ。

皆さんも、荊子さんの新しい魅力を見に行ってみませんか?




荊子さんと安藤ボン監督の最新作『新世界6』には、あの神田つばき女史が出演しています。
http://www.andobon.com/works/dbn.html

荊子さんの過去のイベントリポート等は、以下をご覧下さい。
http://happy.ap.teacup.com/applet/suama/msgcate7/archive

suama.jpg 抱枕すあま 『SM探偵団』(ガッツ)で男優兼監督としてデビュー。その後、カメラマン、照明を経てスタッフその3となる。着実に一歩ずつ大物監督へのステップを踏み外している。最近では、『SM魔女狩り審問会』(エピキュリアン)において、金属製拘束具のデザインおよび製作を担当した。抱き枕との生活を綴ったブログ『すあま日記帳』もある。
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07.09.16更新 | WEBスナイパー  >  コラム