毎週日曜日更新! あの日“アイツ”を追いかけた 全ての女子たちへ! 「腐った遺伝子」 第14回 文=早川舞 |
あけましておめでとうございます。皆さま年末年始のお休みはどのように過ごされましたでしょうか。私は年末は「コミケ」に行き、年始は初詣を2日かけて5軒ぐらいはしごしました。両方ともひとりで。
コミケはまだしも、初詣は誰か友達でも誘っていけばいいのに、と我ながら思ったりもするんですけど、1月1日に誰かを誘うのって、なんだかハードルが高い気がするんです。もうクリスマスなんて目じゃないぐらい。例えばクリスマスにイチャイチャしてる友人に電話とかしちゃってもまだ許される気がするんですが、お正月って、しかも1月1日って、元旦って、もう本当に孤独な人のような気がするのは私だけでしょうか。
そんなわけで今年は三が日も終わりに近づいたころにやっとまともに人と喋ることができたわけですが(それまではコンビニの店員さんとか初詣のおみくじ売り場の人とか)、そのときに、なんかもう今年は孤独キャラでいこうかなとか思いました。
引きこもりじゃないのに、内向的なわけでもないのに節目節目でふと気がつくと孤独っていう。まわりの人たちと、それなりに気を使ったりして普段は普通に、人並みに付き合っているつもりな分、救いがない気分になるというか、空しさ倍増です。
↑あ、そういえば年末にはバンドでライブもしました。元「ラ・シオラ(新宿)」の同僚で、現「マニアック(赤坂)」に在籍しつつ、カメラマンとしてもご活躍されている「紫女王様」にライブの写真を撮っていただいたのですが、さすがは女王様同士、感性が合うのでしょうか。「カッコいいなぁ」と惚れ惚れするようなカットの連続でした。「そうそう、こういうところを撮ってほしかったんだよ!」みたいな。
そういう意味ではいつも我々のバンドを撮って下さるカメラマンさんもミュージシャンを撮ることが多かったとおっしゃっていたせいか「舞台の上でこんな表現をしたい」という意図や欲求を的確に捉えてくださる方です。
制御しきれない自己愛による摂食障害に振り回され続けた文字通りゲロまみれの人生ではありますが、ゲロを喉に詰めて死にそうになったり、顔中に内出血の痕を作りながら(力むから)つかんできた「人に見てほしい部分」を、どういう形であれ捉えてもらえることができると、多分この世の中で生きていくことって意外と捨てたものじゃないのだろうと素直に思えます。
(前回からの続きです)
摂食障害(過食嘔吐)が悪化しすぎて、いよいよ生活もヤバい! となったときに、私はやっと病院に行く決心をしました。とはいえいきなり精神科というのはヘビーなので、最初は心療内科でしたが……。
「どういうときに食べて、吐きたくなるんですか」
「普段はそんなでもないんですが、お腹が空くと猛烈に食べたくなるんです。それで食べ過ぎて吐いちゃうんです。多分、昔、極端なダイエットをしていたから、その影響だと思います」
「そうでしょうね。ほかにもきっといろいろ原因があるのだと思いますから、とりあえずはゆっくり解決していきましょう」
細かくは覚えていませんが、確かこんな感じの会話だったと思います。
そして次の瞬間、私は自分の耳を疑いました。
「とりあえずは、どんなに食べても吐かないでください」
ええええええーっ、何それ!? それ無理っていうかそれじゃ解決にならんです! とりあえず病院に来た目的にまったく合致しないです! 吐かないでいたらブクブク太ってしまうじゃないですか!
私は太るのが怖いんです。怖くて仕方ないんです! それを悩んでわざわざ病院にまで来たのにこれではまったく何の解決にもならない……。
私はそもそも食べてしまうのが問題だと思っているのに、向こうは吐くのが問題なのだと捉えている。だから食べないことに対してのアプローチは二の次なんですね。
まぁ治療のプロセスや障害の性格など、それに長い目で見たら食べてしまうことの解決にもつながって決して間違っていないのだろうけど……。
この病院だめぽ……そう思った私は、また次の病院を探し出して行ってみたのですが、そこも反応は同じ。
この2つの病院での対応を見る限り、少なくとも患者の目からは、過食嘔吐の人の初期の治療方法として根本的な問題があると思わざるを得ないのですが、そのあたりはどうなんでしょうね。
精神科医とか心療内科医のM男性がいたら教えて下さい。
「もう私の摂食障害は、この治療法を拒否し続けている限り、一生治らないのかもしれない……」
私は絶望的な気分になりました。吐かずに太ることを受け入れない限りは、私はゲロとともに、毎日食費に怯える生活を送らないといけないのかもしれない。
単に食べる量を減らせばいいだけの話ではあるのですが、過食が始まると、もう自分では制御が効かなくなるんですね。自分ではないものに憑依されているようになる。
←『ゼイラム』
品番:BCBJ-1676
税込:5,040 円
販売元:バンダイビジュアル
(C)Copyright BANDAI VISUAL CO.,LTD. All Rights Reserved.
↑私に憑依していたもののイメージカット。作品の内容と過食とはまったく何の関係もありません。でもなんかいっぱい食べそうでしょ?
そう言えば私がキャットスーツ好きになったきっかけって、「草薙素子」だったり「イリア」だったり(どっちも余計な部品が多いけど)、ことごとくオタ文化からだなぁ……。
オタ文化以外では『アンダーワールド』という映画の「ケイト・ベッキンセール」のキャットスーツ姿があまりにも美しくて、毎日映画を家で流しっぱにするほどだったんですが、あくまでも流しっぱというだけで見ていたわけではなかったので、DVDがちゃんと再生できなくなるほど流した今でさえ、どんなストーリーなのかよくわかりません。映画を見る習慣がないもので。苦手なんですよ映画。
ですが、世の中捨てる神あれば拾う神あり。
「もう1軒行ってみて、同じことを言われたらあきらめよう」
そう思いながら足を踏み入れた3軒目で、私は憑き物が落ちたような気分を味わいました。
今までに行った病院では、自分としてみればまるで見当違いに思える治療プロセスを示されたこと、一度何かを食べ始めると止まらなくなるのが怖くて、お腹が空くのが怖くてしょうがないこと、私はそんなことを話しました。
前の2軒よりは必死だったと思います。
「過食嘔吐しちゃうのは、ストレスが溜まっていたらしょうがない部分もありますよね。それで胃や喉が痛くなったりすることはありませんか? 体に不調を感じたりとか」
「いや、ないです(私は今まで、一度たりとも胃に異変を感じたことはありません。丈夫なんでしょう)」
「仕事や生活、体に大きな支障がないのなら、無理に止めなくても大丈夫ですよ。例えば吐くなら吐くで回数を減らす努力からしてみて、あとはストレス解消だと思って胃を荒らさないように気をつけながら続けてもいいんじゃないですか」
目からウロコとはこの瞬間のことをいうのだと思います。
今までは、嘔吐は絶対的にやってはいけないことだと思っていた。だからそれをしてしまう自分が嫌だった。
でも、条件付ではあるけれど、それを取り入れるのもいいんじゃないかと言ってくれる人がいる。しかもその人はお医者さんだ。
そのお医者さんは、胃薬と、「そんなにお腹が空くのが怖いのなら」と、本来は何か別の目的の薬を処方してくれました。
食欲をなくす薬なんかではありませんが(というか、そんな薬はないらしいです)何でもその薬を飲むとお腹が気持ち悪くなって、とりあえず食欲どころではなくなるとのこと(笑)。
もちろんその薬を、その症状がない人が飲んでも問題はないそうです。「どうしても食べるのが怖い、となったときに服用してみてください」ということで処方してくれましたが、そうですよ! 私が欲しかったのはこういう薬であり、こういう治療だったんですよ!
まぁ問題が解決できたというよりは、単に開き直れただけなのですが、それでもすごく精神的に楽になったし、薬の効果もあったのか(プラシーボだったらうけますけど)コントロールをする努力が前よりもできるようになった気がするし、「吐いて人より食費がかかるならその分がんばって働こう」という前向きな勤労意欲まで目覚めてしまったし、本当にこのときの先生には感謝です。
↑わたくし、じつはちゃんとお箸が持てません。鉛筆と同じ持ち方になってしまいます。病院に行くずっと前の話ですが、「ごはんをゆっくり食べれば食べ過ぎずに済むかも!」という浅はかなアイディア(普通のダイエットでは有効な話ですが、病気にまでなった私には焼け石に水)を思いついた私は、せっかくならこれを機に箸の持ち方をじっくり身につけようではないかと矯正用の箸を買ってきました。不自由な思いをすることになるわけですから当然食事のスピードも落ちるでしょう。が、もちろんそんな努力は無駄でした。むしろイラついて余計がっついてしまうぐらいな。
そんなわけで私の箸の持ち方はいまだに鉛筆と同じなんですが、さすがにもう三十路だし、いい加減ちゃんとしようと思い立ちまして、年明け早々改めて矯正箸を買ってまいりました(ひとりで)。今年の目標は「ちゃんとお箸を使える人になる」。
(続く)
早川舞 世界、特にヨーロッパのフェティッシュ・カルチャー関係者との交流も深い、元SM女王様フリーライター。だが取材&執筆はエロはもとよりサブカルからお笑い、健康関係まで幅広く?こなす。SMの女王様で構成されたフェミ系女権ラウドロックバンド「SEXLESS」ではボーカルとパフォーマンスを担当。 現在、フェティッシュ・ミックス・バー「ピンク・クリスタル」に毎週木曜出勤。
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