不定期連載 綿まで愛して!新世紀抱き枕系コラム! すあまにあ倶楽部 第20回 おじさん失格 文=抱枕すあま |
ホワイトデーが近づいてきたので、今日はバレンタインのお返しの品を買いに行ってきました。えっ!? お前がチョコレートを貰えたのかって? 失敬なっ!! 私だって、チョコくらい貰ってますよ!!
ただですね、私はこう見えても、職場では多くの女性たちの憧れの的なのですよ。だから、女性たちは、私にチョコを直接手渡すのに抵抗があるみたいなのです。ひょっとすると、私にチョコを渡したことがバレたら、後で同僚やお局様から嫌がらせをされるのかもしれません。
そのため、毎年机の引き出しの奥などに、こっそりと入れてくれるのです。誰にも分からないように。その隠し方があまりにも巧妙なので、いまだにバレンタインデーのチョコが一つも見つからないのですよ。まぁ、去年のチョコもまだ見つかっていないのですがね。
そうそう、『すあまにあ倶楽部』をご愛読いただいている女性の皆さま、編集部宛に多くのチョコをお送りいただき、有り難うございました。この場をお借りして、お礼申し上げます。しかしですね、WEBスナイパー編集部のI氏は、チョコなんて一つも届いていないとウソをつくのです。そんな見え透いたウソなんてつかなくてもいいのに。ひょっとして、私への嫉妬なのかしらん。
先週の話ですが、月曜日の午前中から大阪での打ち合わせがあったため、週末は名古屋の実家へ帰っていました。すると、ちょうど近所で大きなお祭りがあるというので、姉の子供である双子の姪っ子たちが遊びに来ていました。
実はですね、私はこの姪っ子たちに対して、秘密にしていることがあるのです。いや、秘密にされているという言い方が正しいかもしれません。それは何かというと、姪っ子たちには、私が母親の実の弟だということを秘密にされているのです。
この姪っ子たちのお兄ちゃんである小学5年生の甥っ子は、この事実を知らされた時、一週間ほど落ち込んだというのです。まぁ、甥っ子と話すときは、できるだけ高いところから見下ろし、目をそらして、ウソばっかり付いていたからなぁ……。最近では、すあま叔父さんの話になると、甥っ子は「すあまちゃんもなぁ。ふぅ……」とため息をつくらしいのです。11歳の小学生に心配される34歳って……。
そのため、姪っ子たちが小学校に入学して、世の中には頑張ってもどうにもならないこと、諦めなくてはならないこと、受け入れなくてはならないことが存在すると理解できるようになるまで、親戚一同からこのことは秘密にするように言われたのです。よくよく考えたら、ひどい言われようだなオレ。泣いちゃいそう……。
そんな訳で、私は、たまに遊びに来るお祖母ちゃんのお友達ということにされているのです。姪っ子たちからは、当然のごとく「叔父さま」とは呼ばれずに「すあまちゃん」と呼ばれています。
正直な話、私は独り暮らしが長いので、子供とどんな話をしたらいいのかが分からないのですよ。抱き枕となら、一晩中でもピロートークができるんですけどね。
姪A「すあまちゃん! 私の好きなお寿司知ってる?」
す「知ってるよ。マグロでしょ?」
姪A「ブッブゥ〜〜!! 全然ちがうよ!! 私がすきなお寿司は、鉄火巻きです!!」
す「……」
姪B「それじゃ、私の好きなお寿司は?」
す「今度は当てるよ! 確か、サーモンでしょ?」
姪B「ちが〜〜うっ!! 鮭だよ!!」
す「……」
これって、バカにされているのでしょうか? ここまでバカにされたのは、これまでの人生の中で、家族と親戚と友達と先生と会社の人と近所の人たちと野良犬くらいしかいませんでした。少なくとも、ソクラテスやプラトンなどの哲学者たちは、私のことをバカにしたりしませんでした。
でもですね、この日の私は、ちょっと違ったのです。姪っ子たちと仲良くなろうと、お土産を二つ用意してきたのです。前回のように、『笑点人形焼き』ではありません(『第16回お土産は人形焼き』参照)。まず一つ目は、ぼた餅や草餅などの和菓子です。お土産の箱を開けると、姪っ子たちは二人とも草餅が食べたいと言い出しました。しかし、残念ながら草餅は一つしか買ってきませんでした。私は「このままではケンカになってしまうのでは?」と思い、オロオロしていると、お祖母ちゃんがサッとやって来て、草餅を包丁でタテ半分に切り、二人にあげました。
「なかよく、半分ずっこだよ」
姪っ子たちは、二人並んで美味しそうに草餅を食べていました。
なるほど。双子が同じものを欲しがった場合、半分に分けてあげれば、ケンカすることもないのです。しかし、草餅を半分ずつではオヤツとして満足できなかったようだったので、二つ目のお土産であるキティちゃんのクッキーの箱を開けました。すると、キティちゃんのシールが1枚だけ入っているではありませんか。姪っ子たちは、二人ともキティちゃんのシールを欲しそうにしています。私は、すかさずキティちゃんのシールをハサミでタテ半分に切ってあげました。
「なかよく、半分ずっこだよ。キティちゃんの右脳がいい? それとも、左脳の方がいい?」
すると、姪っ子たちは「何でそんなことするの?」と言いながら、泣きだすではありませんか!! 「何でそんなことするの?」なんて、付き合った女性にセーラー服を無理矢理着せようとした時にしか、言われたことのない言葉です。
私は、深く反省しました。何でもタテ半分に切ればいいということではなかったのです。今度からは、ヨコ半分に切ることにします。そして、こう言うのです。
「頭頂骨がいい? それとも、下顎骨の方がいい?」
↑両親が趣味の家庭菜園で作ったサツマイモ。「ヘビみたいで縁起がいいでしょ」と自慢気に言われるが、どうみてもウンコだと思う。
完全に嫌われてしまった私を置き去りにして、姪っ子たちはお祭りへと出掛けて行きました。去年の夏祭りに買った水笛がなくなってしまったので、どうしても欲しかったようなのです。水笛というのは、小鳥の形をした笛の中に水を入れ、アナル……じゃなくて尻尾の部分から息を吹き込むと、「ピーピー」と鳥のさえずる音が鳴るオモチャのことです。
休日は、ひたすら布団の中で抱き枕ちゃんとの愛を確かめ合う私です。それなのに、この日は姪っ子たちがいたので、ゆっくりと昼寝をすることもできません。家に誰もいなくなったのを確かめると、その辺にあった座布団を抱きしめながら、私は眠りについたのです。さすがに、両親には抱き枕と同棲していることを秘密にしているので、抱き枕ちゃんたちは東京の自宅でお留守番です。
いい気持ちで寝ていると、「ピーピー! ピーピー!!」という水笛のけたたましい音で起こされました。うちの抱き枕ちゃんたちなら、私が寝ているときに、こんなに大きな音を立てたりしません。きっと、親のしつけが悪いのでしょう。ついつい、姪っ子たちを叱ってしまいました。
「仕事で疲れているんだから、ゆっくりと寝かしてくれ! 私は、会社で常に神経を使う繊細な仕事をしているのだよ。今は原油や原材料が高騰している時代だからね。同じ商品でも、付加価値を付けないと、他社との競争には勝てないのだよ。だからね、私はチョコレートに文字を刻んでアルファベットチョコにしたり、割り箸が必ずヘンな形に割れるように細工したりという、世界を動かすとっても重要な仕事をしているのだよ」
姪っ子たちは、私の教養に満ち溢れた話が理解できなかったようで、さらに「ピーピー! ピーピー!!」と水笛を鳴らし続けました。悔しいので、私は長渕剛の『ろくなもんじゃねえ』を歌ったのでした。でも、このままでは私が負けたみたいだったので、姪っ子たちが家に帰るとき、そっと水笛にキティちゃんの右脳と左脳のシールを貼ってあげましたよ。けけけっ。
お知らせ
S&MスナイパーのSNSに、『すあまにあ倶楽部』のコミュニティができました!!
いまだに、WEBスナイパー編集部のI氏はコミュに入っていません。
(続く)
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抱枕すあま 『SM探偵団』(ガッツ)で男優兼監督としてデビュー。その後、カメラマン、照明を経てスタッフその3となる。着実に一歩ずつ大物監督へのステップを踏み外している。最近では、『SM魔女狩り審問会』(エピキュリアン)において、金属製拘束具のデザインおよび製作を担当した。抱き枕との生活を綴ったブログ『すあま日記帳』もある。 |
08.03.13更新 |
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