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WEB SNIPER Cinema Review!!
監督生活47年、監督作42本目にして、自己最高の興行成績を樹立!!
ウディ・アレン監督が監督・脚本をつとめ、パリを舞台に練り上げたロマンティックなラブコメディ。ハリウッドの売れっ子脚本家ギルが、憧れだった1920年代のパリへ毎晩タイムスリップ。ヘミングウェイやフィッツジャラルドなどの作家、またピカソやダリ、マティスなどの芸術家たちに巡り会い、夢のような時間を堪能する。仏大統領夫人としても知られる歌手カーラ・ブルーニなど、豪華スターの出演も嬉しい注目の1本!!

新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマ他、全国公開中!
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(C)2011 Mediaproducción, S.L.U., Versátil Cinema, S.L. and Gravier Productions, Inc.

ウディ・アレンが好きと言えばセックスできたのは1990年代まで! 先行き不透明なこの時代、「ウディ・アレンが好きで......」「メガネもデザイン同じの揃えてます......」とか言ってると「ああ......、これからの厳しい国際競争社会を、この人と一緒では生き抜いていけないな......」とOLから遠ざけられてしまいます。
そうしたらますますフィクションの世界にのめり込むしかないんですが、それでまったく問題なし! 現実からの逃避欲求を100%受け止めてくれる新作が登場しました!

オーウェン・ウィルソン演じる主人公は、成功しつつも仕事にうんざりしている脚本家。まあどう考えてもウディ・アレン本人のことなんですが、古いものを愛しヨーロッパに憧れを持つ彼は、パリに移住し小説家として出直す夢を持っています。お相手は、毎度おなじみ「彼の繊細な趣味を理解しない」アメリカの俗物女。主人公は2人水入らずで過ごすはずのパリ旅行にやって来たのに、どうも思い通りにすすまない。ついには1人で夜の街を歩くはめになってしまうんですが、そこにクラシックカーがやってくる。誘われるがままに乗り込んだ彼が辿り着いたパーティー会場、そこはなんと1920年代のパリだった......。

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とくればもう、あとはやりたい放題! 「スコット・フィッツジェラルド」に自己紹介され、「コール・ポーター」の生演奏を横目に「ジャン・コクトー」主催のパーティーを抜け出した先では、「ヘミングウェイ」が飲んでいる......という、めくるめくパリ狂乱の時代ツアーが始まります。ここが1920年代だと気づいたときのオーウェン・ウィルソンの驚愕顔! そして、慣れてからヒーローの後を追い回すときのボンクラ顔! 変幻自在かつ常に間抜けな彼の顔は、今回の主役抜てきへの決定打となったに違いありません。

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そんな本作の見どころはとにかく、1920年代のパリの偉人!偉人!偉人! なにしろ世界中の芸術家がパリを目指していたこの時代。パリのオールスター感たるや、街全体が世界史における、芸術史における巨大トキワ荘状態だったわけです! そして、それがまたみんな次々と都合よく出て来るのが、ウディ・アレンのいいところ。
ヘミングウェイはやたら好戦的だし(ボクシングの誘いに応えてはいけない!)、ダリはやたらアッパーかつ自己アピールに余念がないし、主人公が狂人扱いされる危険を冒してまで「実はぼく、2010年代から来た未来人なんです!」と告白しても、相手がマン・レイで、「うむ、全くあり得る話だ!」とシュルレアリスム的にバッチリ納得されてしまうし、主人公はそんな歴史上の本人たちに夜な夜な会っては、昼は現代のパリに帰ってくる。

主人公が「20世紀初頭の文化と芸術家マニア」というこの映画。一見インテリ趣味にもみえるんですが、そうじゃない。むしろエセ・インテリ野郎が出て来て、そういう自分を大きく見せたり、異性にもてるための「教養」は本作では否定されていました(ウディ・アレン好きをアピールしてセックスしたいみたいな男は論外なわけですよ!)。じゃあ代わりになにがあるのかといえば、それは「憧れ」です。
だからこの映画の設定は、HIPHOPマニアが80年代のブロンクスにタイムスリップするとかでもいい!(うわー! アフリカ・バンバータとジャジー・ジェイが団地でパーティーしてるー!)。ロックンロールマニアが60年代のアメリカにタイムスリップするのでもいい!(うわー! ウッドストックへの道が渋滞してるー!)、浮き世絵の教授が江戸時代にタイムスリップするのでもいい!(うわー! 歌麿の切れはしで団子を包んでるー!)そんな「自分がもう決して参加することができない過去」への憧れをもった人たち(そんな奴はたいていボンクラです)が、タイムスリップしてヒーローに会えてしまうという、それが最高なんです。そこには、決して会えなかったはずの肉親に、次々と会えていくような幸福感が満ちていた!

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そしてだからこそ、後半の仕掛けが素晴らしいんですが、そのタイムスリップでむくわれる幸福感は、やっぱりいらないんだと、主人公は再び現代に戻ってくるんですね。でもそれは、過ぎ去った時代に憧れる人間を「後ろ向き」と否定するものじゃない。それどころか、そこには「いつだって過去に憧れるそんなロマンティストこそが、未来を創造して来たんだ」という、ウディ・アレンの自負が見て取れる。
本作は『カイロの紫のバラ』(1985)とは違う、現実逃避を抱きしめて、抱きしめたまま克服して帰ってくる。そんな現実逃避ものになっているんです。

ほぼカメオ出演(美術館のガイド役)ですが、フランスの歌姫にして元・大統領夫人、カーラ・ブルーニが出てるのもよかったですね。なるほど、恋にキャリアに行動に、現代で最も「フランスらしいフランス人」といえば彼女しかいない(2008年の洞爺湖サミットを「サード・アルバムのレコーディングのため」という理由で欠席したのは最高!)。彼女をキャスティングしたのは「パリが最もパリらしかった時代に捧げる本作から、現代へと繋がる象徴として」にちがいない! さすがウディ・アレン、眼のつけどころがいいね!ボタンを心の中で押したんですが、インタビューによると、食事会で会ったから何となく頼んだんだとか? 彼女が偉大な歌手だということも知らなかったとか!?(いいねを取り消します!)まあこれもウディ・アレンらしいエピソードといえば、エピソードといえるかもしれません。

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というわけでそろそろシメたいんですが、いやー冒頭の途中で飽きる、絵ハガキのようなパリから一転、主人公が過去と現在を行き来するようになってから歩くセーヌ川沿いのパンショット! 素晴らしかったですね!(シメないのかよ!)本作の撮影監督は『デリカテッセン』や『エイリアン4』の人なんですけど、このセーヌ川のシーンを観た時、「ああ、冒頭はわざと、退屈でつまらない撮り方をしてたんだ」と分かりました。主人公があそこで、本当に絵画のなかに入ってしまったような、生々しいパリに辿り着けたのは何故なのか! それは、憧れが、ついに彼の人生を変えようと、触手を延ばして来たからじゃないですか!? 1920年代のパリもいいけど、主人公が歩くあのセーヌ川沿いの現代のパリもいい、あのパリにも行ってみたいよ!と憧れがまた1つ増えてしまいました。いやー、というわけでそろそろシメたいんですが、そして忘れちゃいけない、マリオン・コティヤール! かわいすぎ! いやー、彼女『インセプション』にも出てますけど、この映画も後半ある意味『インセプション』! ウディ・アレンも『インセプション』観たんですかね? 『インセプション』観てるウディ・アレンを、観てみたいですね。そんな場面に居合わせたら、それこそ本作のオーウェン・ウィルソン状態ですよ。すごいディスってたりしてね。ずーっとディスりながら観てそうですよね。それでもパンフレットのマリオン・コティヤールの顔写真の上にはグルグル丸つけたりして。なんて......、やっぱり憧れの人の言動を自分で勝手に考えちゃうのって楽しいですね。この映画も20世紀の偉人たちを好き勝手動かして、ウディ・アレンはさぞかし楽しみながらつくったんじゃないでしょうか。

文=ターHELL穴トミヤ

ウディ・アレンが放つロマンティック・コメディ、
それは胸おどる、遊び心たっぷりの"世紀のホラ話"――


FLV形式 4.67MB 1分50秒

『ミッドナイト・イン・パリ』
新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマ他、全国公開中!
(C)2011 Mediaproducción, S.L.U., Versátil Cinema, S.L. and Gravier Productions, Inc.

原題= Midnight in Paris
監督・脚本= ウディ・アレン
出演=キャシー・ベイツ、エイドリアン・ブロディ、カーラ・ブルーニ、マリオン・コティヤール、レイチェル・マクアダムス

配給=ロングライド

2011|スペイン・アメリカ合作|カラー|1時間34分|英語・フランス語|アメリカン・ビスタ|ドルビー・デジタル

関連リンク

映画『ミッドナイト・イン・パリ』公式サイト

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ターHELL 穴トミヤ  ライター。マイノリティー・リポーター。ヒーマニスト。PARTYでPARTY中に新聞を出してしまう「フロアー新聞」編集部を主催(1人)。他にミニコミ「気刊ソーサー」を制作しつつヒーマニティー溢れる毎日を送っている。
http://sites.google.com/site/tahellanatomiya/
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