WEB SNIPER Cinema Review!!
90年代を疾駆した伝説のインディレーベル
典型的なグラスゴーのワーキングクラスの家庭に生まれ育ち、鉄道員を経てロンドンに進出、クリエイションレコーズを立ち上げた男、アラン・マッギー。80年代初頭のグラスゴーからオアシスの発掘〜世界的大ヒットに至るまで、ワーキングクラスの気骨とアティテュード、すなわち剥き出しの誠実さを貫き通した男。その破天荒な生き様と人物像、レーベルの流転の歴史、愛憎渦巻く人間模様を、鳴りっぱなしの音楽とレアな映像とともに、錚々たる人物が語り尽くす!! 酒とドラッグ、そしてロックンロールにまみれた男の冒険の物語。8月27日(土)より、シアターN渋谷ほかにてロードショー
全国順次劇場公開
または、プライマル・スクリームのボビーが「クリエーションレコーズははみ出し者や精神異常、麻薬患者に社会不適合者の寄せ集めさ」と話し始めるとしたら。今すぐ観に行きたくはならないだろうか!
出演者は、ジム・リード(The Jesus & Mary Chain)、ノエル・ギャラガー(Oasis)、ボビー・ギレスピー(Primal Scream)、ケヴィン・シールズ(My Bloody Valentine)、なぜかピーター・フックも……、映画にはマイブラの録音費用の話もオアシスのネブワース・パーク野外コンサートの話も出てくる。
この映画には今すぐ何か始めたくなって、実際始めた奴らが続々登場する。例えばクリエーションレコーズは、ある日テレヴィジョン・パーソナリティーズのライブを観たアラン・マッギーが、今すぐ彼らのすべてを知りたくなったところから始まった。次の日ラフ・トレードに行った彼はテレヴィジョン・パーソナリティーズのレコードを全て万引き、バンドを結成し、そしてやがてクリエーションレコーズが誕生する(彼らパンク世代のがんばりのせいで、今や全てのイギリスのレコード屋では商品の中身を抜いてレジ奥に隠している)。
思ったことをすぐ始めるというのはなんて素晴らしいことなんだろうか。8月頭にイギリスで暴動があったが、あれも「欲しい」ものをそのまま取っちゃうギャングと後にくっついて行った普通の子供達の暴動というような報道をされていた。イギリス人というのは結果はともかく、思ったことを実行に移す力には長けているのだろうか。
良いと思ったバンドとはすぐに契約、良いと思ったドラッグもすぐ吸引。劇中には、アシッドハウス・ムーブメントの話も出て来て、あのハシエンダにアラン・マッギーが行っていたのは意外だった。しかしこのエピソードがまた最高で「なんでもEっていう新しい麻薬がはやっているらしい」そんな噂を聞いた彼がマンチェスターに寄ったおり、早速ハシエンダに出かけてみる。するとそこには3000人の人間が集まり、ステージ上にも600人の人間がいて、完全にシラフじゃないハッピー・マンデーズのベズを先頭に、全員が猛烈に天井に向かって空中パンチを繰り出していた! そして「俺はすぐにマンチェスターに引っ越した……」という、まあどうしようもない馬鹿な話なのだが、その後トニー・ウィルソンの番組に出演して「マンチェスターに引っ越して来た理由は?」「良質のエクスタシーの為だ!」などと会話しているのを観ると、これが本当にお茶の間で流れていたのか……とイギリスを国ごと訝らずにはいられない(クリエーションレコーズについては本も出ていて、そういうアホな話が沢山載っている。どれも笑えるものばかりなので、こちらもおすすめだ!『クリエイション・レコーズ物語 』著者=パオロ・ヒューイット 訳・監修=伊藤 英嗣 出版社=太田出版)。
グラスゴーの鉄道員が始めた個人レーベルは、ジーザス&メリーチェイン、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、プライマル・スクリーム、ライド、ティーンエイジ・ファンクラブ、オアシスをデビューさせ、ついに世界最高のレーベルになる。しかし同時にアラン・マッギーのドラッグトラブルで傾き始め、アルバムチャートの1位、2位をオアシスとプライマル・スクリームで独占、業界の頂点を極めたまま解散、消滅した。
すぐに行動して成功し、考えずに行動して自滅する。全くもってイギリス。全くもってロックンロール。そこには確かにこないだの暴動と同種の衝動や、思慮のなさが詰まっているかもしれない。しかし、この映画の登場人物たちが違うただ一点、それは音楽への愛なのだ。ジーザス&メリーチェインが「ロックが嫌い、ロックに群がる空っぽな奴らも嫌い」と歌うエンディング曲、「アイ・ラブ・ロックンロール」が効いている。これはまさにクリエーションレコーズについて歌った曲だろう。そこには、どうしようもない奴らが音楽に対する愛だけで連帯する、サーカスのような寂しさときらめきがあった。
文=ターHELL穴トミヤ
ボビー・ギレスピー、ケヴィン・シールズ、そしてノエル・ギャラガーetc.
超豪華キャストとサウンドで贈る、スペシャルなドキュメント!!
FLV形式 6.43MB 2分16秒
『アップサイド・ダウン:クリエイションレコーズ・ストーリー』
8月27日(土)より、シアターN渋谷ほかにてロードショー
全国順次劇場公開
『アップサイド・ダウン:クリエイションレコーズ・ストーリー』公開記念イベント開催!
【アラン・マッギー 緊急来日舞台挨拶決定!】
アラン・マッギー氏の緊急来日舞台挨拶が決定いたしました。
当日は、お客さまからの質問にアラン氏が直接答えるQ&Aの時間もあります。
【MADCHESTER NIGHT 2011】
映画公開に合わせ、初日(8/27)夜、代官山UNITにて記念イベントの開催が決定いたしました。
ストーン・ローゼズ、ハッピー・マンデーズ、ザ・シャーラタンズ……
80年代末にイギリスの一地方都市であるマンチェスターから世界中のダンス・フロアを揺るがす規模へと拡大したマンチェスター・ムーヴメント。 ダンスとロックの幸せな融合が生み出した狂騒の一瞬を再現する”MADCHESTER NIGHT”が、今年は映画『アップサイド・ダウン:クリエイションレコーズ・ストーリー』の公開に合わせての開催に!
クリエイションも中心となって切り開いたと言っていい、その幸福な時代のパーティーをクリエイションがリリースしてきた数々の名曲で追体験!!
【限定Tシャツ販売!!】
日本国内300枚限定! オフィシャルTシャツ付特別鑑賞券セット(税込¥4,000)をシアターN渋谷、ヒューマントラストシネマ有楽町にて発売!!
【『トレインスポッティング』 レイト上映決定!!】
『アップサイド・ダウン:クリエイションレコーズ・ストーリー』公開を記念して、 シアターN渋谷では9/10(土)〜9/23(金)の期間、『トレインスポッティング』をレイト上映することが決定いたしました。
『アップサイド・ダウン:クリエイションレコーズ・ストーリー』には原作者のアーヴィン・ウェルシュも出演しています。
(『アップサイド・ダウン』特別鑑賞券提示でいつでも1,000円で『トレインスポッティング』鑑賞可能です)
関連リンク
映画『アップサイド・ダウン:クリエイションレコーズ・ストーリー』公式サイト
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