2011.10.30.Sun.at Tokyo Big Sight.
有明・東京ビッグサイト
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プロ・アマを問わないマンガ作家・イラストレーターたちが、自主出版した本・作品を発表・販売する展示即売会=コミティア。そこは作家たちが自分の個性を自由に発揮できる場であり、訪問者にとっては未知の表現に出会えるかも知れない宝の島――。 去る10月30日に開催された「COMITIA98」の収穫物を、コミティアファンの伊丹直行氏と「あぶらいふ」編集人の井上文氏に紹介してもらいます。編集部でゲットしたお宝も併せて掲載しますので、よろしければぜひチェックを!!
□書名=人間不信
□サークル名=いまい漫画株式会社
3.11以降の表現とは!等と大上段に構えた論説があったりしますが、現在進行形の問題でもあるし、色々センシティブな部分を抱えていたりするし……と色々考えていたところにこの本です。元々、シュールでブラックなのだけれどどこか抜けの良いギャグが冴え渡っているサークルなのですが、今回はその懐の広さを見た気がします。しかし何故、現在の不良なのにリーゼントなのか、だけが気になりますね……。(伊丹直行)
□書名=夜と宇宙とネコ
□作者=たかはたまさお
イラストレーターの作る本「土星」を主催されている高旗将雄さんの新作は24Pに短編を3本収録。内容はタイトルどおりに夜と宇宙とネコのお話。1本目は夜の夢の覇権を担う二大巨頭“バク”と“枕返し”がとある夜空でバッタリ。2匹の相克はこれまた観測者である屋根の上の黒猫によって見守られながら手に汗握る大バトル……とはなりません。2本目は常日頃宇宙に思いを馳せる夢見る少年が、うつつからネコの呼びかけで宇宙的な大発見! だけど本当に彼が見つけたものは……。3本目はネコの家臣と殿様の問答がねずみの入れ知恵でおかしなことに……という短編3本、どの作品もほっこりしますが振り返れば全てにネコが描かれたネコ同人誌でさらに和みます。2本目は高旗さんの日記サイトで全頁閲覧可能なので是非。(編集部)
□書名=ASTORONAUTS
□作者=原田尚
□サークル名=素路
不治の病に懸かった幼なじみ「一騎」と共に、自分の将来に期待しなくなった中学3年生の「信也」が未来の自分に会いに行き、今を後悔しないための礎を胸に得る。タイムトラベルものが好きだけれど、なぜ好きなのかと言えば、この作品にもある蕾みたいな固さがどうしようもなく好きなんだと改めて思った1冊。何歳になっても人は未来の前で青い。(井上文)
□書名=LV30
□作者=柳田人徳
□サークル名=めこ
コミティアに来るたび、必ずチェックするサークルが何個もあります。長年足を運んでいるうちに、新刊が出なくなったり参加自体がなくなっていくサークルもあって、趣味で創作をやっていくことの厳しさについて考えることもあります。「めこ」の新刊は、同人誌を買うだけの自分からは見えにくかった「創作を続けることの厳しさ」と、そこから見える希望について書かれていて、非常に胸に響きました。(伊丹直行)
□書名=G20 KMS kanban musume summit 2011
□サークル名=henazin★ 各界から看板娘を集めた!という体の合同誌。印象的な書影は看板娘たちのシルエットをあしらったモノです。実際に冒頭では看板娘たちがあーでもないこーでもないと仲睦まじく遊んだりお話ししたりと、各作家さんとキャラを知っていても知らなくても楽しい雰囲気が伝わってきます。P46-47ではフキダシのみで各キャラたちが騒いでおり、各看板娘の同定作業を楽しめるという親切な作り。こうした合同誌は誌面の楽しげな雰囲気とは裏腹に編集の苦労が忍ばれるのですが、主催のねこまふさんには是非とも次回以降の開催も期待したいところ。頑張ってください!(編集部)
□書名=狐と狼の話
□サークル名=ゴースト 虫が苦手な人でもついつい読んでしまう、可愛さ溢れる虫の漫画でおなじみのゴーストさんの新刊は、虫ではなく狐と狼が主役です! しかし漫画の可愛さ・出てくる生き物への造詣の深さは変わりません。今回、お調子者な狐が非常に可愛いのですが、狼のかっこよさにもうっとりできてお得な1冊です。(伊丹直行)
□書名=ゴールデンタイム
□作者=石垣裕太郎
□サークル名=恐竜ランド
おしっこでこんなに軽々とファンタジー。黒と黄色の2色刷りで描かれた“おしっこが止まらなくなってしまった女の子のお話(表題作)”は、トイレでの困惑から始まって泳げるほどのおしっこの中で恋が走り、「そのもの青き衣をまといて金色の野に……」と伝説を生み、ついにSFにいたるギャグテイスト。おしっこが黄色くてきれいであったかくて恥ずかしくてよかったとしみじみ。(井上文)
□書名=くろほん
□サークル名=ステーキハウスまで何マイル
エロくてぷにぷにした女の子が死ぬほど可愛い「派手な看護婦」さんの、クロッキー帳をそのまま(?)同人誌にしたもの。可愛い女の子の落書きが所狭しと載っています。落書きと言うにはクオリティが高すぎる女の子の絵に混じって、講義のメモやよく分からない落書きが載っているのもリアルです。本の仕様もクロッキー帳風になっていて、たいへんかわいい。(伊丹直行)
□書名=変態
□作者名= ソウマトウ
□サークル名=まよいばし
サークルまよいばしの漫画制作ユニット、ソウマトウさんの新作。タイトルと書影でロリ変態モノかと思った私は要反省。表題が指し示しているのは幼生から成体への変態です。成長期・思春期の恐怖や不安などが、生物の変態という現象を用いて鮮烈に描かれている。なかでも蛹への変化の過程でドロドロのスープ状に変化しても自己同一性を保てるのか、という不安が胸を打つ。私たち人間も約3カ月で細胞が丸々生まれ変わっている等と言われるが、その際に感情や心のあり方が少しずつ削ぎ取られながら変化していると想像すれば、完全変態したいなんて思うからこれまた要注意です。(編集部)
□書名=Launch_Pad 1.1
□サークル名=PLAINTEXTFILES
「電子書籍世代の校内図書室の在り方を考える」作者が「ボーイ・ミーツ・ガール的な舞台装置として、図書室は機能するのか」というテーマに照準を合わせて見事な狙撃を披露。撃たれました。近未来、データ化された本を管理する図書部の部長(可愛い女の先輩)がいつも手に持つ「3.5インチハードディスクドライブ大の『何か』」が胸に飛び込んでくる実弾。小さな造本そのものや小説という形態の意味も含めて、これはずっと持っていたくなる1冊。(井上文)
□書名=芙蓉のひと
□作者=成松幸世
□サークル名=みそ煮/misoni
みそ煮の成松幸世さんの新刊は関西コミティアにて初出のゆる百合コピー本22P、しゃべるたびに口から白い物体が零れる女の子の話。ポップコーンのようで食べても美味しいときとマズイ時があるそれは、口から落ちると花のようにふくらむ。この不思議な花は彼女が恋する“彼女”に食べられたり“彼女”の膣内にとり込まれたり失恋の際もひどい味になったり。物語は同じ体質の新しい“彼女”ができて、花をコレクションされている描写で終わるのだが、作中で様々なメタファーを引き受ける白い花の様相に、読者それぞれの感慨を見初めていただきたく思う。(編集部)
□書名=ビュー
□サークル名=山崎由紀子
一枚絵でイラストで漫画でドローイングでコラージュで、全部を包括するとこういう表現になるような、それとも最初からマッシュアップされて生まれきたような、かっこいいイラストレーション作品集です。イラストにも芸術にも詳しくないのですが、カラーの使い方も線も全部かっこいい! ごちゃごちゃしているようで、読後感がすっきりした1冊。(伊丹直行)
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