↑天王洲アイルにて、料金表。暴利!!
2009夏休み特別企画!
special issue for the summer vacation 2009
「ポケモンスタンプラリー2009」を
完全制覇するドMな冒険【3】
取材・文=
四日市
ポケモンスタンプを集めてプレゼントをゲットせよ! この夏、誰よりも熱く、誰よりも虚しい旅立ちを決意した大人がいた――。猛暑の中で電車を乗り継ぎ、駅から駅へ。全95個のスタンプを求めて殺人的なラリーを闘った、夏休み5日間のドMなアドベンチャーとは……。いつしか探し始めた魂の故郷を求め、長い旅路はいよいよ最終局面へ!! << 前回の記事を読む
■四日目・山の手沿線
四日目は都合があって早朝から動けなかったため、山手線周りを巡ることにした。
これまで毎回、いちおう都区内フリー切符を買っていたのだが実はあまり有効に活用できていなかった。今日はおおいに活躍してもらう。その凛ととがった四肢を汗と改札で陵辱し尽くして、しわしわにしてやる。
始発から動かなくていいし本数が多く、駅の間隔も短い。「リーチせずにはいられないな!」状態の私に、しかし再び天上衣の姿をしたポケモンの悪意が立ちはだかる。
つらい。
本数が多くて駅の間隔が短いというのは時間の消費も少ないかわりに全く休む暇がない。
あげく、人が多い。スーツ姿のサラリーマンや夏休みと思わしき若者たちに混ざってスタンプラリー手帳をもはや恥ずかしげもなくポケットから覗かせながら山手線をぐるぐる巡る自分に何の疑問もわかないほど訓練された勇壮な出で立ち。
あとなんか京葉線など中途半端にスタンプが配置されていて東京駅で乗り換えなければいけないのだが、東京駅が広すぎて生きるのがつらい。
↑東京駅。商魂の逞しさに感動した。
時間を大幅に余した状態で、疲労による終了を決定する。四日間のポケモン拷問により体力の回復が追いつかない。一休みして脳がかろやかな回転を始めた頃、時間を余らせるくらいならもう少しゆっくり回ればよかったと反省するのであった。
■五日目・魂の故郷、羽田空港
素晴らしい夜明け、木々の囁きと風のひらひらと撫でる音の波。目に見えるものはぜんぶ愛しくて、耳に届く音は何もかも美しい。
この苦行がはじまってから、初めて午後から行動を開始する。
浜松町。
ここから天空へと続く道、羽田空港への道が開けている。
魂の執着地点、全ての苦しんだ魂たちが祝福され、愛に包まれて、消滅する約束の地。
午後から活動を始めてまずは浜松町へ。
モノレールで天王洲アイルへ向かうためにチケットを購入。ひとつ隣の駅なのに190円。ここは物価が観光地価格だ。
しかし、改札の中へ入るなり私の目にいきなり飛び込んできたのは「ポケモンスタンプラリー・モノレール一日フリーパス」の看板。
↑浜松町、モノレール駅。看板おくなら改札の外にしてくれ。
このような罠がJR東日本には張り巡らされている。告知したのであれば改札の外に設置しやがれダボハゼが、と毒づいたがダボハゼはむしろ事前情報の収集を怠った私のほうである。
一区間分のチケットは既に購入していたが念のために料金を計算してみたら天王洲アイルから羽田空港第2ビルへ行き、また浜松町へ戻ってもまだフリーパスのほうが安いのでこちらも購入。
↑モノレールチケット表。
↑モノレールチケット裏。
やってきたモノレールはその全身がポケモンによって蹂躙されており内も外も全てポケモンである。内部にはポケモンを操る猛獣使いの子供たちが風流な俳句を詠んでおり完全にカオス。
↑浜松町から天王洲アイルへ行く途中の風景。爽快極まる。
十分程度揺られながら到着。だいぶ遠回りしたけど、やっと会えたね。
↑天王洲アイルで。
↑天王洲アイルから羽田空港第2ビルへ。
羽田空港第2ビル、感動のエンディングを彩るポケモンはヒコザルとかいう見るからにザコっぽいポケモンだが、高額なモノレールに設定されている上に羽田空港であるからして猿のようだがきっと空を飛ぶし、ブルジョワジー溢れるポケモンなのだろう。間違いない。
ブルジョワジーの駅にふさわしくシールやうちわが配られていたが、特別に感動はなかった。
↑羽田空港第2ビルにて感動のスタンプラリー完了。
↑ここまできてなんでサルなの……。
全てを終わらせた後、モノレールに揺られながら窓の外の開けた景色を眺めていると、なぜこれまでこの東京の街、自然と人知の生み出したコントラストに目を向けようとしなかったのだろうかと自責の念に駆られる。
「WEBスナイパー」はこの拷問のようなサディズムに見せかけて、日々を忙しく生き、人々の生きる街、活動する街に対して無関心な態度を貫く私に、世界の美しさを教えようとしたんではないだろうか。
そんな母のように包み込む編集部I氏の本心に気づいてみれば途端に感謝の気持ちが溢れてくるわけもなく、やはりI氏は死ぬべきである。
結論として、このような放置プレイを上回る高度なサディズムに対して私のような素人は快楽を得ることはできないし、原稿料を拘束時間で割ったら時給500円未満である。
「WEBスナイパー」を爆破する。
■総括
一日目で失敗してしまったがポケモンスタンプラリーを最短で終わらせるなら、熊谷から出発して池袋、田端より北を。土浦から出発して西日暮里から秋葉原あたり。千葉から出発して浜松町、天王洲アイル、羽田空港第2ビル。品川から横浜を回って、新宿、中央線あたり。八王子から出発して残りの山手線を。と、五日間で巡るのがほどよく回れるのではないだろうか。
しかし私はここに新たなソリューションを提案する。
まず3000円、余裕をもって5000円程度の金銭を用意していただきたい。そしてヤフーオークションを「ポケモンスタンプラリー」と「全駅」で検索するのだ。
これによってたった一日で95駅すべてコンプリートすることができる。疲労も精神的な磨耗も一切ない、真にエコなライフスタイルだ。
ポケモンスタンプラリーは人間の精神を荒廃させる恐ろしいサディズムだ。もしライターという職業がポケモンスタンプラリーに参加しなければならない職業ならば、私はこの場でライターの廃業を宣言する。人間が生み出した最も愚かなる営みこそがポケモンスタンプラリーでありこのような破滅の営みで金銭を得る職も、金銭を与える職も汚濁に火に投げ込まれて死ぬべきである。旅の道程で、数多くの子供とそのご両親に遭遇した。親になるとはポケモンスタンプラリーに参加するということでもある。ならば、人間は子を成さず滅亡するしかないのではないか。これ以上、ポケモンスタンプラリーによる不幸を増やしてはならない。私は平和を訴える。精神が狂う。
今はただ、この苦行を完了させた私を労ってほしい。空虚な拍手をささげてほしい。
文=四日市
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四日市 エヴァンゲリオン研究家。三度の飯よりエヴァが好き。クラブイベントにウエダハジメ、有馬啓太郎、鶴巻和哉らを呼んでトークショーを開いたり、雑誌に文章を載せてもらったり。プロフィール画像は昔描いた三十路魔法少女漫画。 |
09.08.14更新 |
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