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僕らが好きなアイドルは、僕らのことを好きだろうか。
うしじま撮影企画 第1回 アイドルとアイドルファンとうしじま

昨年、インディペンデントな存在ながら様々なメディア上で紹介された「うしじま いい肉」。WEBスナイパーではそんな彼女を撮影する企画を進行中です。まず第1回は「アイドルゴシップクリッピング」の岡島紳士さんによる、アイドルとアイドルファンとうしじまについての考察をお送りします。
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■アイドルとは何か

アイドルとは何か。一般的な意味を知りたければWikipediaなどを参照して欲しい。ここで僕が説明したいのは、僕にとってのアイドルとは何か、ということについてだ。とはいえ、この定義が極めて個人的なものであったとしても、アイドルファンとして今を生きる読者に対し何らかのポジティブな影響を与え、非アイドルファンの読者に対しても「アイドル」についての理解を深める手助けになることを、信じて止まない。以下、基本的には真面目な顔でしかし時々変態的な笑みを浮かべながら誰もいない虚空に向かって話し掛ける29歳成人男性を想像しつつ、読み進めて欲しい。

「idol」を和訳すると「偶像」。すなわち崇拝すべき何かしらのイメージを具体化させた像のこと。つまり、理想とする対象はその像を通して見られ、感じられるイメージなのであって、像そのものではない。「アイドル」に対しても、僕は同様の認識を持っている。たとえば僕に好きなアイドルがいるとして(実際もの凄い数いるよ)、僕が好きなのはアイドルそのものではなくて、そのアイドルを目にすることで得られるイメージであり、概念。アイドル個人は僕が脳内で快感を得るために必要な媒介でしかない。そして、これは思春期の男子が異性に抱く初めての恋心と構造は同じだと考えている。思春期の頃、大抵の男子は全く話したこともないような、内面をほとんど知らない異性に好意を持つ。勝手に理想とするイメージを相手に投影する。初恋とは往々にしてそういうものだろう。その関係性は「アイドルとファン」レベルに、極めて希薄だ。要するに、アイドルファンは、すべからく"初恋戦士"であるといえる。ウィー・アー・ラブ・ウォリアーズ。どんなに太っていても臭くても髪の毛がベトベトでも借金まみれでも信じられないくらい臭くても。我々アイドルファンは、終わらない思春期を永遠に過ごしている。

■誰がアイドルか

僕が運営している個人ブログ「アイドルゴシップクリッピング」では、開設した05年9月当初からトップページに「アイドルの定義は曖昧にしています」とブログについての説明を書いている。これはサイトで取り上げるタレント、有名人が自らの肩書きをアイドルだと表明しているいないに拘わらず、あるいは世間でアイドル視されているいないに拘わらず、対象とする相手について僕が「アイドルだと思えば、誰だってアイドルだ」と宣言していることに他ならない。前述したように「脳内に理想的な異性のイメージを喚起してくれる」対象であれば、誰であれアイドルなのだ。スポーツ選手だろうとアーティストだろうとAV女優だろうと市議だろうと海女だろうとCGだろうとボーカロイドだろうとファイル共有ソフトからハメ撮りが流出したOLだろうと、僕がアイドルだと思えば、彼女はアイドル。そしてこのことは、アイドルファンの1人1人にとっても言えることだと考えている。

2009年は「アイドル」というジャンルの枠組みが世間的にも大きく変容した一年だった。2007年、中川翔子のブレイクはオタクアイドルの大量生産という結果を招いたが、昨年は更に細分化されたオタク趣味(ガンダム、エヴァ、BLなど)や自身の些細な特徴(方言、貧乏、処女など)を主張する自称"○○ドル"なるタレントが急増した。加えてアイドルでもタレントでもない女性有名人が"美し過ぎる"という理由で世間からアイドル視されるという状況も続いた。「アイドルだと思えば、誰だってアイドルである」という認識は、メディアで明言されないまでも、もはや世間に浸透し、定着しつつある。アイドルファンの間で繰り広げられて来た「Perfumeがアイドルか、アーティストか」という論争も、その論争を達観して眺めるニヒリストも、近いうちに消滅してしまうだろう。

■アイドルを語ることについて

これまでのアイドル批評のほとんどは、アイドルファンにとっては無関係なものだったのではないか、としばしば思う。たとえば社会の状況や事務所の大きさと照らし合わせてアイドルのブレイクを予想したり、アイドル楽曲の音楽的価値について論じたり、少女愛・少女性愛について自己分析したり。それらは「エンタメ界を眺めるビジネス的視点」であり「アイドル歌謡曲ファン及び音楽評論家的視点」であり「ポエティックなロリコンの視点」であって、アイドルファンそのものの視点ではなかった。当然それらの視点もアイドルファンに内在する場合もあるが、純粋な「アイドルファン」そのものの視点とは言い難い。アイドルの本質がイメージでしかないならば、真のアイドルはアイドルファンの脳内にしか存在しない。故に、アイドルファンにとって、アイドルとアイドルファンは、常に「1対1」の関係を持つ。アイドルとアイドルファンは周囲の状況や雑多なノイズからは切り離され、アイドルファンの脳という殻の内側に隔絶されている。

ではアイドルファンは、理想のイメージではない、「アイドル」の媒介である生身のアイドルに対して、本当のところは何を望んでいるのだろうか。何故一部のアイドルファンは毎週末イベントに駆けつけ、同じCDを山ほど買い込み、握手会で何十回とループするのか。コンサート中に叫び踊るのか。イベントの度に高額な品物をプレゼントするのか。一体その先に、何を求めているのか。

アイドルファンの視点からアイドルを語ること。それは一体どういうことなのか考える前に、ひとまずこの話題を中断し、コスプレイヤー・うしじまについての説明に移りたい。

■うしじまとは何か

「うしじま いい肉」は現役で活躍するコスプレイヤーだ。先月AmazonのアイドルDVDセールスランキングで1位を獲得したことで、ネットで大きく話題になっていた。芸能事務所にも所属していないアマチュアのコスプレイヤーによる自主制作作品が、AKB48などの名だたるメジャーアイドルを押しのけ当ランキングのトップを獲得する、といったことは前代未聞。このことにより、結果的に彼女は「大手メーカーに頼らなくてもメジャーアイドルに対抗しうる質の高い作品の制作が可能であること」を証明してしまった。彼女が成し遂げたことは、まさに快挙といっていいだろう。

うしじまがコスプレイヤーとして特徴的なのは、その活動が完全自己プロデュースであること。モデルだけでなく、コンセプトやロケ地の設定、カメラマンの手配、プレスの発注まで、何もかも全て彼女1人でこなしている。そして、その作風も突出してユニークだ。アニメ『攻殻機動隊』に登場していそうな"イヌコマ"なる四つ足の巨大マシンに搭乗する、というアート・サブカル・オタク的要素の強いパフォーマンスをはじめ、渋谷や秋葉原の街でゲリラ的に水着姿で撮影を敢行するといったアイドルグラビア・AV文化の影響を色濃く受けた写真や、ロリコンにはお馴染みの少年少女たちがふんどし姿で参加する「博多山笠祭り」にオマージュを捧げたふんどし姿の写真などなど……。とにかく彼女の活動は「アニメやマンガのキャラクターの衣装を着てポージングを決める」、といった従来の一般的な"コスプレイヤー"のイメージからは大きく逸脱しているのだ。

うしじまの人気は何も突然ふって湧いたものではない。06年12月に初めてのCD-ROM写真集を発表して以来、今までに16枚のCD-ROM写真集と1枚のDVDをリリース。ネットでは画像掲示板や2ちゃんねるのスレッドなどに彼女の画像が脈絡の有無に拘わらず貼られ、その度「この可愛い子は誰?」と書き込まれ、徐々に知名度を上げていた。現在の活躍はその蓄積された人気が一気に爆発した結果によるものと見ていいだろう。

■うしじまはアイドルか

うしじまはアイドルだろうか。僕の定義からすれば、当然彼女はアイドルである。彼女自身がタレント志望ではないことを明言していても、それとは無関係に僕にとってはアイドルだ。

彼女のDVDがイメージDVDとしては大ヒットと呼べるセールスを記録したことは、アイドル業界に微かな変革をもたらすかもしれない。「インディペンデントなグラビアアイドル」とも呼べる、彼女のような活動を展開する後続の女の子が、今後現われるかもしれない。

しかし、先の定義を踏まえれば、そういった外側の影響は、我々アイドルファンにとっては当然意味を持たない。


■うしじまを撮影し隊!

うしじまは自らを完璧にコントロールできる状況でしか、創作活動を行なわない。うしじまは「うしじま」というイメージを守ろうとはしない。そういった意識すらなく、ただただ自分がやりたいことをやりたいだけやっているに過ぎない。しかし、そんな彼女を受け入れた上でなお、僕はうしじまに対し、「うしじま」という理想のイメージを抱えてしまっている。我々うしじまファンには、それぞれにうしじまの見たい姿があるのではないだろうか。

これからWEBスナイパーで行なわれる本企画ではそれら全てを彼女にぶつけたい。DVDが発売された際に「今の着エロDVDはアナルのシワを見せて当然」「うしじまのアナルが見たい!」という書き込みがネットのあちこちに散見された。では、その要望を直接本人にぶつけてみるとどうなるだろう。どんな顔をするのかな? 泣くのかな? 笑うのかな? 怒られちゃう? どんな反応を見せてくれるだろう。

どれだけ下品で下卑た要望でも構わない。「うしじまに着て欲しい衣装」「シチュエーション」「その他、撮影のアイディア」など下記のフォームから自由にその欲望を書き込み、送って欲しい。それらファンの声を集約し、ファン代表として僕がうしじまに目の前で音読し、ファンとしての要望を直談判したいと思う。そして、次回の記事では、そんなうしじまとの真剣勝負を赤裸々に公開し、最終的にはこの企画でそれらの要望を反映させた独自のうしじまの撮影を行なう予定だ。

この企画が終わる頃、「アイドルファンとしてアイドルを語るとはどういうことなのか」。その答えが出ていれば幸いだ。

僕らが好きなアイドルは、僕らのことを好きだろうか。
たくさんのご応募、お待ちしております!
文=岡島紳士

『What if it's a human?』
出演・監督:うしじま

収録時間:50分
価格:3,000円
発売:2009年12月31日
発行:Predator Rat

『うしじまいい肉の建もの探訪』
出演・監督:うしじま

収録枚数:150枚
価格:2,250円
発売:2009年12月31日
発行:Predator Rat

関連リンク

うしじまは11人いる!


岡島紳士 フリーライター。アイドル分野が専門。主に強いのはU-17・ジュニアアイドル方面。雑誌『サイゾー』(サイゾー株式会社)、『BUBKA』(コアマガジン)などに継続して寄稿している。アイドルのゴシップ情報を収集しまとめるサイト『アイドルゴシップクリッピング』を運営中。
アイドルゴシップクリッピング
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10.01.17更新 | 特集記事  >  特集
文=岡島紳士 |