毎週月曜日更新!
小林電人衝撃のデビュー作『羞恥の教室』、第二章に突入! サイト「羞恥学園新聞」で羞恥とアナルにこだわった小説を連載し、マニアたちから熱い支持を得ている女子高教師の藤井慎治。ある熱烈な女性ファンと会う約束をしながらドタキャンされた藤井は、やりきれぬ思いをぶつけるように、実在の女生徒"忍"をモデルに新作羞恥責め小説を発表。だがその晩、約束をドタキャンしたナルからメールが。二人は必然だったかのようにメール調教へと流れてゆく。あくる日、昨夜の興奮さめやらぬ藤井を待っていたのは、女生徒"忍"からの衝撃の告白だった。
第二章 禁じられた関係のはじまり
I 忍 1
「黙っていてごめんなさい。S学園長様。私がナルなんです」
一瞬、藤井は忍が何を言っているのか、わからなかった。そしてその意味がわかった瞬間、ぐらりと視界が揺れた。
もうおしまいだ、と思った。生徒に自分がとんでもない変態教師であることを知られてしまった。きっと昨日、待ち合わせの場所に立っているはずのS学園長が、自分の学校の教師であることを知った忍は、夜中のメール調教で動かぬ証拠を押さえようと思ったに違いない。あのやりとりを公表されたら、いや、それ以前に、「羞恥学園新聞」などという変態的なサイトを現役教師がやっていることが公になったら、社会的な大問題になるだろう。学校からPTAから教育委員会から、そしてマスコミから世間から、自分は袋叩きにされるだろう。あくまでも妄想を書いただけであり、犯罪行為を犯したわけではないが、世間はそうは見てくれない。こんな妄想をする人間が女子高の教師をしているなど、許されない。そして、あげくの果ては教え子の未成年の少女に、あられもない姿の写真を送らせたりしたのだ。この事実をばらすと脅されたら、おれはこの生徒の言うことを何でも聞くしかない。仲村忍に生殺与奪の権を握られたも同然なのだ。
いや、しかしまてよ。もしそんなことを公表したら、忍は自分の性癖や、あのあられもない画像の存在までも公にしなくてはならなくなるぞ。そんな恥ずかしいことを、この少女がするだろうか?
いや、しかし、あれが本物だったという証拠もない。すべてでまかせで画像も偽造したものかもしれないし......。
一瞬のうちにそんな考えが藤井の頭の中をぐるぐるとまわった。
口をぱくぱくさせて、声にならない声をあげている藤井を気の毒そうに見上げ、そして忍は小さな封筒を差し出した。
「これ、読んで下さい。それではまた後で」
そういうと、早足で教室へ駆け戻っていった。
忍もタイミングを見計らっていたのだろうが、人通りのほとんどない渡り廊下だったため、腰を抜かしそうになっている藤井の姿は、他の生徒に見られないで済んだ。いや、実際に忍が去った後、藤井は廊下にへたりこんでしまって、しばらく立ち上がれなかったのだ。
頭の中が整理できないままに、なんとか立ち上がった藤井は、職員室に行くのを止め、自分の城である理科準備室へ走り込んだ。一刻も早く忍からの手紙を読まなくてはならない。そして、そこに書かれていることが、今後の自分の人生を決めるであろう。
「親愛なるS学園長様、いえ藤井先生。ナルこと1年S組の仲村忍です」
白と青のシンプルなデザインの封筒に入っていた便せんには、そんな書き出しから始まる文章が丁寧な字でびっしりと書かれていた。
「大変驚かれたと思います。お許し下さい。決してだますつもりはありませんでした。昨日、待ち合わせの場所に行った時、そこにS学園長様として立っていたのが、藤井先生だとわかった時、私も息が止まるほど驚きました。こんな偶然があっていいものかと思いました。そして複雑な気持ちになりました。私のずっと隠していた性癖を、顔見知りの、それも学校の先生に話してしまっていたという恥ずかしさの反面、それを唯一理解してくれた人の正体が藤井先生だったという喜びがありました。
実は私は、ずっと以前から藤井先生のことが気になっていたのです。どこがどうと聞かれると答えに困るのですが(すいません)、男性として惹かれるものがありました。でも、教師と生徒という立場ですし、これだけ年齢も離れているのですから、先生の方で私など相手にしてくれるはずもないからと、それ以上のことを考えることは止めていました。そして、何よりも私のこの性癖を隠したまま男性とつきあうのは苦痛でしかないのですから。
あの時は、あまりの驚きで混乱してしまい、お会いすることが出来ませんでした。もしナルの正体が私だと知られたら、関係がおしまいになってしまうかもしれません。その方がお互いに幸せではないかとも考えました。実際、一度は、もう何もかもあきらめてしまおうと思ったのです。
でも、あの後に『羞恥学園新聞』にアップされた小説を読んで、もうどうにも我慢できなくなったのです。偶然なのでしょうが、あの小説の中の『しのぶ』が、私と同名ということもあり、自分自身に思えてならなかったのです。しのぶちゃんがクラスメート全員に肛門の中を覗かれるというあのシーンを読んだ時、体の奥が痺れるほどの興奮を感じたと同時に、こんな恐ろしく恥ずかしいことを考える先生を心から尊敬しました。そして、この方に全てを任せてみたいと思いました。
ご迷惑かもしれませんが、もし私を受け入れて下さるのでしたら、今日の放課後、昨日と同じ場所でお待ちしております。 仲村忍」
それはS学園長、そして藤井に対する熱烈なラブレターだった。忍が決して藤井を陥れるつもりはないということはわかった。いや、もしかしたらこの手紙自体も手の込んだ罠なのかもしれない。
しかし、この手紙を読んで藤井は信じてみようと思った。もしこれが罠だとしても、これだけ幸福な気持ちを味わわせてもらえたのだから、本望だ。
そう、藤井は天にも昇るような幸運を感じていた。あのナルが、自分にとって理想のM女だと密かに思っていた仲村忍であったという事実。そして彼女が自分に対して信仰に近いほどの愛情を持っているということ。
もちろん教え子と教師という二人の立場が、いかにリスクを伴う関係かは十分承知している。もしこれが公になれば、相手は16歳の少女である。淫行という犯罪行為にすらなるのだ。さらにこれから二人が行なおうというのは、ただのセックスではない。世間には理解してもらえることのない変態的なプレイなのだ。二人の関係が知られるようなことがあれば、藤井の人生は確実に終わるだろう。
しかし、どんな危険があろうとも、この幸運を受け入れない男がいるとは藤井には思えなかった。たとえ地獄に堕ちようとも、忍との甘美な体験を選ぶのは当然だ。
その後の授業は、全く集中できず散々なものとなった。考えまい、考えまいとしても、忍の裸身が脳裏に浮かんできてしまうのだ。昨夜、メールで送られた画像の中の凄まじい痴態と忍の顔が頭の中で合成される。しかし、それでもまだ、あの大人しく真面目な生徒である仲村忍が、そんなドロドロとした性欲を内側に秘めているとは信じられなかった。あの陰りすら秘めた端正な顔立ちが、快楽に悶える表情を見せるなど、なかなか考えられなかった。
そんなことをつい考えてしまい、授業中にうっかり変な言葉を口走ってしまわないか、自分でも冷や冷やしながら、藤井は午後の授業も、なんとかこなした。
「先生、今日は何か変だよ」
最後の授業が終わった時、2年B組の坂本絵里香にも指摘された。絵里香は中学生と間違えそうな幼い顔立ちでありながら、とんでもない巨乳の持ち主だった。本人もそのことを気にしていて、かなり無理矢理ブラジャーで締め付けているという噂なのだが、それでもセーラー服の胸元は信じがたいほど膨らんでいる。性欲モードから切り替えられない今の藤井には目の毒だ。藤井は苦労して、その胸元に視線がいかないように努力する。
「そうか、すまん。ちょっと寝不足でな」
「寝不足っていうか、なんか恋愛方面の悩みとかあるんじゃなーい?」
「え、何で?」
藤井はドキリとして絵里香の顔を見た。
「あはは、本当にそうなんだ! ちょっとカマかけただけなんだけど」
「バカ、違うよ。変な噂立てるなよ」
この年頃の女の子は、そういった方面の変化に対しては異常なくらいに敏感なのだ。
「ふーん。まぁ、いいけどさぁ。そういう話とかあったら、私たちにちゃんと話してよね。応援するからさぁ」
若くもなく、少なくとも彼女らのような世代から見て魅力的とは言い難い地味なルックスの藤井だが、人あたりがソフトなためか、生徒からの人気は意外にあった。もっとも、恋愛の対象としての人気ではなく、親しみやすいというレベルのものではあったが。藤井に離婚歴があるというのも、今の若い女の子たちにとってはマイナスではなく、むしろ興味深い過去として映るらしい。
絵里香と話しながらも、藤井はてきぱきと教壇の上の教材をまとめて、さっさと教室を去り、職員室へ向かった。幸い今日は特に放課後にするべき業務はない。いや、本当はいくつかの細かい用事はあるのだが、それは後回しにできるものだ。もし今日中にやらなくてはならないものだとしても、今の藤井には落ち着いてこなせるわけもないが。
ついつい足早になってしまう自分に苦笑しながら学校を出て、駅へ向かう。昨日、待ち合わせた繁華街までは電車で30分ほどだ。向かいながら、もし忍が学校からその場所へ直行していて、制服のままだったらまずいな、などと考えていた。年齢よりは若く見られることが多いとはいえ、藤井も30代の立派なオジサンだ。制服姿の少女と連れだって歩いていたら目立ってしまう。援助交際だと思われても仕方がない。ただでさえ、ひと目を避けたい関係なのだが、そのあたりを忍はわかってくれているかな......。
夕方のせわしない雑踏の中で、忍の姿を発見した瞬間、藤井はなんとも言えない高揚感を感じた。昨日、藤井が立ちつくしていたデパートの前に、白のワンピースに黒いアウターを羽織った忍がいた。頭のいい忍は、制服ではまずいということを、ちゃんとわかっていたようだ。モノトーンでまとめたシンプルな服装だったが、それが忍の清楚な可愛らしさを際立たせているように思えた。
近づいてくる藤井を見つけた忍は、嬉しそうな、そして恥ずかしそうな明るくも複雑な表情をした。それは目があった藤井も同じことだった。忍に対して、どんな態度で接すればいいのか、この場に及んで決めかねていた。
先に声を出したのは忍だった。
「どうもすみませんでした。本当に来てくれてありがとうございます」
ペコリと頭をさげてお辞儀をする。
「いや、まぁ、その」
藤井はどぎまぎして、言葉にならない。
「とりあえず、ひと目につくところじゃ話しづらいことだからな」
二人は並んで歩き出した。他人に聞かれるわけにはいかない話をするのだ。とりあえずカラオケボックスに入ろうと考えた。
「一度、家に帰ったのか?」
「はい、うち、学校からここに来る途中の駅ですから。やっぱり制服じゃまずいし」
「そうだな。制服で来てたらどうしようって心配しちゃったよ」
いつもどおりの、学校での会話と同じ口調で二人は歩きながら話した。教師の藤井と生徒の仲村忍である。これがS学園長とナルの関係性で話すことが本当にできるのだろうか、藤井はそんなことを考える。実際にS学園長というご主人様キャラでしゃべるなんて、笑ってしまいそうだ。しかし、忍はそれを望んでいるのだろうか。
繁華街の外れの方にあるチェーン店のカラオケボックスに入店した。順番待ちをすることもなく、すぐに個室へ通された。空いているせいか、二人用の小さな部屋ではなく、5〜6人は入れる少し大きめの部屋だった。
「ご注文はリモコンでお願いします。ではごゆっくりお楽しみ下さい」
そういって茶髪の男性店員は出て行った。二人の関係を特に気にすることもないような無表情だった。
「先生。昨日は本当に申し訳ありませんでした。お許し下さい」
忍はいきなり床に座り込んで、深く土下座した。もう、すっかりナルのモードに入っているようだった。
続きを読む>>>
小林電人衝撃のデビュー作『羞恥の教室』、第二章に突入! サイト「羞恥学園新聞」で羞恥とアナルにこだわった小説を連載し、マニアたちから熱い支持を得ている女子高教師の藤井慎治。ある熱烈な女性ファンと会う約束をしながらドタキャンされた藤井は、やりきれぬ思いをぶつけるように、実在の女生徒"忍"をモデルに新作羞恥責め小説を発表。だがその晩、約束をドタキャンしたナルからメールが。二人は必然だったかのようにメール調教へと流れてゆく。あくる日、昨夜の興奮さめやらぬ藤井を待っていたのは、女生徒"忍"からの衝撃の告白だった。
第二章 禁じられた関係のはじまり
I 忍 1
「黙っていてごめんなさい。S学園長様。私がナルなんです」
一瞬、藤井は忍が何を言っているのか、わからなかった。そしてその意味がわかった瞬間、ぐらりと視界が揺れた。
もうおしまいだ、と思った。生徒に自分がとんでもない変態教師であることを知られてしまった。きっと昨日、待ち合わせの場所に立っているはずのS学園長が、自分の学校の教師であることを知った忍は、夜中のメール調教で動かぬ証拠を押さえようと思ったに違いない。あのやりとりを公表されたら、いや、それ以前に、「羞恥学園新聞」などという変態的なサイトを現役教師がやっていることが公になったら、社会的な大問題になるだろう。学校からPTAから教育委員会から、そしてマスコミから世間から、自分は袋叩きにされるだろう。あくまでも妄想を書いただけであり、犯罪行為を犯したわけではないが、世間はそうは見てくれない。こんな妄想をする人間が女子高の教師をしているなど、許されない。そして、あげくの果ては教え子の未成年の少女に、あられもない姿の写真を送らせたりしたのだ。この事実をばらすと脅されたら、おれはこの生徒の言うことを何でも聞くしかない。仲村忍に生殺与奪の権を握られたも同然なのだ。
いや、しかしまてよ。もしそんなことを公表したら、忍は自分の性癖や、あのあられもない画像の存在までも公にしなくてはならなくなるぞ。そんな恥ずかしいことを、この少女がするだろうか?
いや、しかし、あれが本物だったという証拠もない。すべてでまかせで画像も偽造したものかもしれないし......。
一瞬のうちにそんな考えが藤井の頭の中をぐるぐるとまわった。
口をぱくぱくさせて、声にならない声をあげている藤井を気の毒そうに見上げ、そして忍は小さな封筒を差し出した。
「これ、読んで下さい。それではまた後で」
そういうと、早足で教室へ駆け戻っていった。
忍もタイミングを見計らっていたのだろうが、人通りのほとんどない渡り廊下だったため、腰を抜かしそうになっている藤井の姿は、他の生徒に見られないで済んだ。いや、実際に忍が去った後、藤井は廊下にへたりこんでしまって、しばらく立ち上がれなかったのだ。
頭の中が整理できないままに、なんとか立ち上がった藤井は、職員室に行くのを止め、自分の城である理科準備室へ走り込んだ。一刻も早く忍からの手紙を読まなくてはならない。そして、そこに書かれていることが、今後の自分の人生を決めるであろう。
「親愛なるS学園長様、いえ藤井先生。ナルこと1年S組の仲村忍です」
白と青のシンプルなデザインの封筒に入っていた便せんには、そんな書き出しから始まる文章が丁寧な字でびっしりと書かれていた。
「大変驚かれたと思います。お許し下さい。決してだますつもりはありませんでした。昨日、待ち合わせの場所に行った時、そこにS学園長様として立っていたのが、藤井先生だとわかった時、私も息が止まるほど驚きました。こんな偶然があっていいものかと思いました。そして複雑な気持ちになりました。私のずっと隠していた性癖を、顔見知りの、それも学校の先生に話してしまっていたという恥ずかしさの反面、それを唯一理解してくれた人の正体が藤井先生だったという喜びがありました。
実は私は、ずっと以前から藤井先生のことが気になっていたのです。どこがどうと聞かれると答えに困るのですが(すいません)、男性として惹かれるものがありました。でも、教師と生徒という立場ですし、これだけ年齢も離れているのですから、先生の方で私など相手にしてくれるはずもないからと、それ以上のことを考えることは止めていました。そして、何よりも私のこの性癖を隠したまま男性とつきあうのは苦痛でしかないのですから。
あの時は、あまりの驚きで混乱してしまい、お会いすることが出来ませんでした。もしナルの正体が私だと知られたら、関係がおしまいになってしまうかもしれません。その方がお互いに幸せではないかとも考えました。実際、一度は、もう何もかもあきらめてしまおうと思ったのです。
でも、あの後に『羞恥学園新聞』にアップされた小説を読んで、もうどうにも我慢できなくなったのです。偶然なのでしょうが、あの小説の中の『しのぶ』が、私と同名ということもあり、自分自身に思えてならなかったのです。しのぶちゃんがクラスメート全員に肛門の中を覗かれるというあのシーンを読んだ時、体の奥が痺れるほどの興奮を感じたと同時に、こんな恐ろしく恥ずかしいことを考える先生を心から尊敬しました。そして、この方に全てを任せてみたいと思いました。
ご迷惑かもしれませんが、もし私を受け入れて下さるのでしたら、今日の放課後、昨日と同じ場所でお待ちしております。 仲村忍」
それはS学園長、そして藤井に対する熱烈なラブレターだった。忍が決して藤井を陥れるつもりはないということはわかった。いや、もしかしたらこの手紙自体も手の込んだ罠なのかもしれない。
しかし、この手紙を読んで藤井は信じてみようと思った。もしこれが罠だとしても、これだけ幸福な気持ちを味わわせてもらえたのだから、本望だ。
そう、藤井は天にも昇るような幸運を感じていた。あのナルが、自分にとって理想のM女だと密かに思っていた仲村忍であったという事実。そして彼女が自分に対して信仰に近いほどの愛情を持っているということ。
もちろん教え子と教師という二人の立場が、いかにリスクを伴う関係かは十分承知している。もしこれが公になれば、相手は16歳の少女である。淫行という犯罪行為にすらなるのだ。さらにこれから二人が行なおうというのは、ただのセックスではない。世間には理解してもらえることのない変態的なプレイなのだ。二人の関係が知られるようなことがあれば、藤井の人生は確実に終わるだろう。
しかし、どんな危険があろうとも、この幸運を受け入れない男がいるとは藤井には思えなかった。たとえ地獄に堕ちようとも、忍との甘美な体験を選ぶのは当然だ。
その後の授業は、全く集中できず散々なものとなった。考えまい、考えまいとしても、忍の裸身が脳裏に浮かんできてしまうのだ。昨夜、メールで送られた画像の中の凄まじい痴態と忍の顔が頭の中で合成される。しかし、それでもまだ、あの大人しく真面目な生徒である仲村忍が、そんなドロドロとした性欲を内側に秘めているとは信じられなかった。あの陰りすら秘めた端正な顔立ちが、快楽に悶える表情を見せるなど、なかなか考えられなかった。
そんなことをつい考えてしまい、授業中にうっかり変な言葉を口走ってしまわないか、自分でも冷や冷やしながら、藤井は午後の授業も、なんとかこなした。
「先生、今日は何か変だよ」
最後の授業が終わった時、2年B組の坂本絵里香にも指摘された。絵里香は中学生と間違えそうな幼い顔立ちでありながら、とんでもない巨乳の持ち主だった。本人もそのことを気にしていて、かなり無理矢理ブラジャーで締め付けているという噂なのだが、それでもセーラー服の胸元は信じがたいほど膨らんでいる。性欲モードから切り替えられない今の藤井には目の毒だ。藤井は苦労して、その胸元に視線がいかないように努力する。
「そうか、すまん。ちょっと寝不足でな」
「寝不足っていうか、なんか恋愛方面の悩みとかあるんじゃなーい?」
「え、何で?」
藤井はドキリとして絵里香の顔を見た。
「あはは、本当にそうなんだ! ちょっとカマかけただけなんだけど」
「バカ、違うよ。変な噂立てるなよ」
この年頃の女の子は、そういった方面の変化に対しては異常なくらいに敏感なのだ。
「ふーん。まぁ、いいけどさぁ。そういう話とかあったら、私たちにちゃんと話してよね。応援するからさぁ」
若くもなく、少なくとも彼女らのような世代から見て魅力的とは言い難い地味なルックスの藤井だが、人あたりがソフトなためか、生徒からの人気は意外にあった。もっとも、恋愛の対象としての人気ではなく、親しみやすいというレベルのものではあったが。藤井に離婚歴があるというのも、今の若い女の子たちにとってはマイナスではなく、むしろ興味深い過去として映るらしい。
絵里香と話しながらも、藤井はてきぱきと教壇の上の教材をまとめて、さっさと教室を去り、職員室へ向かった。幸い今日は特に放課後にするべき業務はない。いや、本当はいくつかの細かい用事はあるのだが、それは後回しにできるものだ。もし今日中にやらなくてはならないものだとしても、今の藤井には落ち着いてこなせるわけもないが。
ついつい足早になってしまう自分に苦笑しながら学校を出て、駅へ向かう。昨日、待ち合わせた繁華街までは電車で30分ほどだ。向かいながら、もし忍が学校からその場所へ直行していて、制服のままだったらまずいな、などと考えていた。年齢よりは若く見られることが多いとはいえ、藤井も30代の立派なオジサンだ。制服姿の少女と連れだって歩いていたら目立ってしまう。援助交際だと思われても仕方がない。ただでさえ、ひと目を避けたい関係なのだが、そのあたりを忍はわかってくれているかな......。
夕方のせわしない雑踏の中で、忍の姿を発見した瞬間、藤井はなんとも言えない高揚感を感じた。昨日、藤井が立ちつくしていたデパートの前に、白のワンピースに黒いアウターを羽織った忍がいた。頭のいい忍は、制服ではまずいということを、ちゃんとわかっていたようだ。モノトーンでまとめたシンプルな服装だったが、それが忍の清楚な可愛らしさを際立たせているように思えた。
近づいてくる藤井を見つけた忍は、嬉しそうな、そして恥ずかしそうな明るくも複雑な表情をした。それは目があった藤井も同じことだった。忍に対して、どんな態度で接すればいいのか、この場に及んで決めかねていた。
先に声を出したのは忍だった。
「どうもすみませんでした。本当に来てくれてありがとうございます」
ペコリと頭をさげてお辞儀をする。
「いや、まぁ、その」
藤井はどぎまぎして、言葉にならない。
「とりあえず、ひと目につくところじゃ話しづらいことだからな」
二人は並んで歩き出した。他人に聞かれるわけにはいかない話をするのだ。とりあえずカラオケボックスに入ろうと考えた。
「一度、家に帰ったのか?」
「はい、うち、学校からここに来る途中の駅ですから。やっぱり制服じゃまずいし」
「そうだな。制服で来てたらどうしようって心配しちゃったよ」
いつもどおりの、学校での会話と同じ口調で二人は歩きながら話した。教師の藤井と生徒の仲村忍である。これがS学園長とナルの関係性で話すことが本当にできるのだろうか、藤井はそんなことを考える。実際にS学園長というご主人様キャラでしゃべるなんて、笑ってしまいそうだ。しかし、忍はそれを望んでいるのだろうか。
繁華街の外れの方にあるチェーン店のカラオケボックスに入店した。順番待ちをすることもなく、すぐに個室へ通された。空いているせいか、二人用の小さな部屋ではなく、5〜6人は入れる少し大きめの部屋だった。
「ご注文はリモコンでお願いします。ではごゆっくりお楽しみ下さい」
そういって茶髪の男性店員は出て行った。二人の関係を特に気にすることもないような無表情だった。
「先生。昨日は本当に申し訳ありませんでした。お許し下さい」
忍はいきなり床に座り込んで、深く土下座した。もう、すっかりナルのモードに入っているようだった。
続きを読む>>>
電人blog |
著者=小林電人 長年夢見ていた自分の「理想のSMビデオ」を自主制作したことがきっかけで、AV&SM業界のはじっこに首をつっこむことになった都内在住の40代自営業。ひたすら羞恥責め、アナル責めを好み、70年代永井豪エッチ漫画の世界を愛する。これまでの監督作品として「1年S組 高橋真弓のおしおき」「同2」「穴牝奴〜町内会人妻肛虐倶楽部 」がある。以前、永井漫画をモチーフにした小説をネットに発表したことはあるが、オリジナルは本作が初めて。 |