法廷ドキュメント サタデー・ナイト・レイパー
過去のS&Mスナイパーからアーカイブでお届け、法廷ドキュメント第四波!
籠絡方法
麻子、珠子が英気の部屋に遊びに来る前の日のこと。
「おい、お前はセックスの経験はあるのか?」
ウイスキーを飲みなから、英気の四歳上の兄、大沢田拳二が英気に聞いた。
夜も十一時を回っている。
兄はやはり、このアパートに住んでいる。
英気の部屋の隣が拳二の部屋である。
どちらの部屋にもテレビは置いてあるのだが、一人では寂しいのか、ウィスキーの瓶を持ちながら九時頃、拳二が英気の部屋に入ってきたのである。
二人の部屋は一応独立した構造になっているのだが、一番奥の部屋に、ドアが造ってあって、そこから互いの部屋に出入り自由になっているのである。
「あるよ。この年になってまだ女を知らないなんて片輪だよ」
「ヘーっ? 生意気言いやがって。しかし、やりてえよな。俺、今、日照りだからな」
兄の拳二も、英気と同様、学業の方など全く駄目で、周囲の者が高校に進むので、自分も仕方無しに進学したのである。
勉強と名のつくものは全く駄目。
高校もやっとのことで卒業した。
成績は勿論最低に近い。
学校の方でも、こんな不良生徒は一刻も早く卒業させようとしたのだろうか、別に落第の話も出なかったことは、不思議と言えば不思議なことである。
しかし、下半身の欲望たけは見事に発達していて、同級生の女生徒と不純異性交遊の機会などは、数知れなく持ったし、二〜三度は、相手の女生徒を妊娠させてしまい、中絶費用を捻出するために、親の目を盗んで財布を持ち出したり、親戚の、人の好い老婆に、嘘八百を並べたてて金を借りたりしたものである。
卒業しても、ブラブラしていて、この歳になっても、まだまともな勤労意欲は湧いてこないらしく、喫茶店のボーイのアルバイトをしたと思うと、別の店のボーイをしたり、キャバレーの呼び込みの仕事をしたりと、どれ一つ永続きしたためしがない。
親もあきれて、文句を言うことなどしない。
弟の英気も、血は争えないもので、兄に輪をかけた性格、嗜好の持ち主。
ただ違う点といえば、弟の方がより巧妙なところがあり、ずる賢いことである。
結構この二人の兄弟は仲が好いのである。
「おい、お前の学校は不良ばっかりの学校だから、簡単に男と寝る女の子がいるだろう、誰か世話しろよ」
「駄目だよ。俺とならいいわと言う奴もいるけと、兄貴じゃなあ。うちの学校の生徒は年寄りとは寝ないよ」
「へっ。年寄りとはよく言うよ。年寄りのテクニックを知らないからそんなこと言うんだよ。一度俺と寝てみろよ。ひいひい泣かせてやるよ。畜生! やりたいな。やりてーよっ」
拳二の頭の中には、女の体のことしか無い。
それ以外のことには興味が無いのだから無理もないが。
テレビの画面には、水着姿の若い女の娘が体を横たえて、ウィンクをして見せている。
拳二は、ウィスキーグラスを左手に持って、右手を画面に伸ばして、画面の娘の太股の付け根のあたりを人差し指でこすっている。
「おい、誰か連れてこいよ。命令だ。すぐにやらせる奴の一人や二人は知ってるんだろ。顔なんかどうでもいいよ。穴だけあいていれば十分だよ」
品の悪いことおびただしいものかあるが、これは客観的に見ているからそう思えるのである。
リビドーの爆発に自分でもどうして良いのやらわからず、ひたすら性交を希求する若者の会話はこんなところが普通なのである。
英気も兄の毒気に次第にあてられてきた。(よし、明日は誰か連れてきて、やってしまおう)兄の言葉に返事こそしないが、頭の中で獲物を物色しているのである。
二〜三分考えて、相手は決まった。
何となく気配で、自分に好意を抱いているのがわかる、クラスメートの美空麻子と、尻軽な女生徒で、麻子の友達の淡谷珠子である。
英気は、またこの二人のどちらともセックスの関係は無かった。
二人との関係はないものの、英気のセックスの経験はかなりのものだった。
最初の経験は、友人の母視と。
彼女とは二度関係を持った。
中学二年の時である。
この時はお互いの技量の差からして、英気の方が、弄ばれたといった方が真実に近い。
次は、夏休み、キャンプに行った山中湖畔で知り合った年上の高校生の女の子と、昼間蝉しぐれを聞きながら、草を押し倒して。
そして、新宿の街を流しながら引っかけた都立高校の女の子と。
土曜日はよく友達の吾郎と連れだってディスコに行き、女の子を誘い、旅館に泊りたこともある。
英気と、吾郎と、相手の女の子二人と合計四人で一部屋に入り、相手を取り替えてのセックスも経験した。
英気には、愛する者との充実したセックスとかは興味がなかった。
数こそが全てたった。
スポーツのようなものだった。
数多くの女の子を相手に続く限り打ちまくる、そんなことが可能な自分が英気は楽しかった。
この点にこそ英気の青春は存在した。
まず、ジャブを打って、相手の反心を確かめるための第一回めの射精、続いて、余裕を持って相手の反応を楽しみ、肌触わりを味わいながらの二度めのエジャキュレーション。
そして、自分の体力を相手に誇示し、自分の誇りを満足させるための、体の芯が痺れるような第三回めのエジャキュレーション。
自分を燃焼し尽くしたかのような四回めの……。
英気は、女の子をたらし込む白分の腕に自信を持っていた。
それに、すぐ誘いにのってくる女の子を見分ける眼にも。
麻子や珠子を選んだのも、すぐ誘いにのる女の子と見たからだ。
電話ででも誘ってやろう。
断わられることはあるまい。
「いいよ、兄貴。明日の晩、女の子を二人呼んでやるよ。いいのがいるよ。しかし俺一人なら、彼女達、すぐやらせてくれると思うけど、兄貴が相手じゃどうかなあ。心配だな。俺の方が腕いいんだからな」
「馬鹿を言え。ガキのくせにナマ言うんじゃないよ。しかしそうだな、初めてだと暴れるかな、声を出されたりするとヤバイぞ」
拳二は、アルコールのおかげで、次々と、女の子を籠絡する方法が浮かんでくるらしい。
「おい、英気、お前、コーラに目薬を入れて飲ませると一発で女の腰が立たなくなること知ってるか」
「いや知らない。そんなことしなくても俺は大丈夫だもの」
「うるさい。あれはものすごく効くんだよ。おい、明日は、俺と会わせてみて、女の子がその気にならないようだったら、わからないように、飲み物に目薬を入れろ。すぐ効いて動けなくなる。ビールやコーラに入れれば味が変わらないから、入れたのは気づかれないからな。いいか」
「ああ、そんなことしなくても大丈夫だと思うけどな。駄目だったら、そうするよ」
この親にしてこの子ありとよく言われるが、この兄にしてこの弟ありである。
この段階では、兄の拳二も、弟の英気も、自分らの計画しでいる行為が犯罪を構成するなどということは考えもしない。
勿論、強姦という罪があることは知っている。
知っているが、現実の自分らの行為とは結びつかない。
彼らの周囲では、女の子を無理矢理に犯した、やってしまったなどという話は、それこそ日常茶飯事のことであり、その結果、男がつかまったり、裁判になったりしたという話は聞いたことがない。
警察につかまったりするのは、よほど運が悪い人であり、交通事故に遭うようなものである、その位の認識しかないのである。
やがて、自分達か逮捕され、起訴ざれようとは、大海にっ浮かぶ一毛ほども考えなかった。
法廷ドキュメント サタデー・ナイト・レイパー 第四回 文=法野巌 イラスト=笹沼傑嗣 性の快楽だけを求める男子高校生とその兄の犯した罪。 |
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籠絡方法
麻子、珠子が英気の部屋に遊びに来る前の日のこと。
「おい、お前はセックスの経験はあるのか?」
ウイスキーを飲みなから、英気の四歳上の兄、大沢田拳二が英気に聞いた。
夜も十一時を回っている。
兄はやはり、このアパートに住んでいる。
英気の部屋の隣が拳二の部屋である。
どちらの部屋にもテレビは置いてあるのだが、一人では寂しいのか、ウィスキーの瓶を持ちながら九時頃、拳二が英気の部屋に入ってきたのである。
二人の部屋は一応独立した構造になっているのだが、一番奥の部屋に、ドアが造ってあって、そこから互いの部屋に出入り自由になっているのである。
「あるよ。この年になってまだ女を知らないなんて片輪だよ」
「ヘーっ? 生意気言いやがって。しかし、やりてえよな。俺、今、日照りだからな」
兄の拳二も、英気と同様、学業の方など全く駄目で、周囲の者が高校に進むので、自分も仕方無しに進学したのである。
勉強と名のつくものは全く駄目。
高校もやっとのことで卒業した。
成績は勿論最低に近い。
学校の方でも、こんな不良生徒は一刻も早く卒業させようとしたのだろうか、別に落第の話も出なかったことは、不思議と言えば不思議なことである。
しかし、下半身の欲望たけは見事に発達していて、同級生の女生徒と不純異性交遊の機会などは、数知れなく持ったし、二〜三度は、相手の女生徒を妊娠させてしまい、中絶費用を捻出するために、親の目を盗んで財布を持ち出したり、親戚の、人の好い老婆に、嘘八百を並べたてて金を借りたりしたものである。
卒業しても、ブラブラしていて、この歳になっても、まだまともな勤労意欲は湧いてこないらしく、喫茶店のボーイのアルバイトをしたと思うと、別の店のボーイをしたり、キャバレーの呼び込みの仕事をしたりと、どれ一つ永続きしたためしがない。
親もあきれて、文句を言うことなどしない。
弟の英気も、血は争えないもので、兄に輪をかけた性格、嗜好の持ち主。
ただ違う点といえば、弟の方がより巧妙なところがあり、ずる賢いことである。
結構この二人の兄弟は仲が好いのである。
「おい、お前の学校は不良ばっかりの学校だから、簡単に男と寝る女の子がいるだろう、誰か世話しろよ」
「駄目だよ。俺とならいいわと言う奴もいるけと、兄貴じゃなあ。うちの学校の生徒は年寄りとは寝ないよ」
「へっ。年寄りとはよく言うよ。年寄りのテクニックを知らないからそんなこと言うんだよ。一度俺と寝てみろよ。ひいひい泣かせてやるよ。畜生! やりたいな。やりてーよっ」
拳二の頭の中には、女の体のことしか無い。
それ以外のことには興味が無いのだから無理もないが。
テレビの画面には、水着姿の若い女の娘が体を横たえて、ウィンクをして見せている。
拳二は、ウィスキーグラスを左手に持って、右手を画面に伸ばして、画面の娘の太股の付け根のあたりを人差し指でこすっている。
「おい、誰か連れてこいよ。命令だ。すぐにやらせる奴の一人や二人は知ってるんだろ。顔なんかどうでもいいよ。穴だけあいていれば十分だよ」
品の悪いことおびただしいものかあるが、これは客観的に見ているからそう思えるのである。
リビドーの爆発に自分でもどうして良いのやらわからず、ひたすら性交を希求する若者の会話はこんなところが普通なのである。
英気も兄の毒気に次第にあてられてきた。(よし、明日は誰か連れてきて、やってしまおう)兄の言葉に返事こそしないが、頭の中で獲物を物色しているのである。
二〜三分考えて、相手は決まった。
何となく気配で、自分に好意を抱いているのがわかる、クラスメートの美空麻子と、尻軽な女生徒で、麻子の友達の淡谷珠子である。
英気は、またこの二人のどちらともセックスの関係は無かった。
二人との関係はないものの、英気のセックスの経験はかなりのものだった。
最初の経験は、友人の母視と。
彼女とは二度関係を持った。
中学二年の時である。
この時はお互いの技量の差からして、英気の方が、弄ばれたといった方が真実に近い。
次は、夏休み、キャンプに行った山中湖畔で知り合った年上の高校生の女の子と、昼間蝉しぐれを聞きながら、草を押し倒して。
そして、新宿の街を流しながら引っかけた都立高校の女の子と。
土曜日はよく友達の吾郎と連れだってディスコに行き、女の子を誘い、旅館に泊りたこともある。
英気と、吾郎と、相手の女の子二人と合計四人で一部屋に入り、相手を取り替えてのセックスも経験した。
英気には、愛する者との充実したセックスとかは興味がなかった。
数こそが全てたった。
スポーツのようなものだった。
数多くの女の子を相手に続く限り打ちまくる、そんなことが可能な自分が英気は楽しかった。
この点にこそ英気の青春は存在した。
まず、ジャブを打って、相手の反心を確かめるための第一回めの射精、続いて、余裕を持って相手の反応を楽しみ、肌触わりを味わいながらの二度めのエジャキュレーション。
そして、自分の体力を相手に誇示し、自分の誇りを満足させるための、体の芯が痺れるような第三回めのエジャキュレーション。
自分を燃焼し尽くしたかのような四回めの……。
英気は、女の子をたらし込む白分の腕に自信を持っていた。
それに、すぐ誘いにのってくる女の子を見分ける眼にも。
麻子や珠子を選んだのも、すぐ誘いにのる女の子と見たからだ。
電話ででも誘ってやろう。
断わられることはあるまい。
「いいよ、兄貴。明日の晩、女の子を二人呼んでやるよ。いいのがいるよ。しかし俺一人なら、彼女達、すぐやらせてくれると思うけど、兄貴が相手じゃどうかなあ。心配だな。俺の方が腕いいんだからな」
「馬鹿を言え。ガキのくせにナマ言うんじゃないよ。しかしそうだな、初めてだと暴れるかな、声を出されたりするとヤバイぞ」
拳二は、アルコールのおかげで、次々と、女の子を籠絡する方法が浮かんでくるらしい。
「おい、英気、お前、コーラに目薬を入れて飲ませると一発で女の腰が立たなくなること知ってるか」
「いや知らない。そんなことしなくても俺は大丈夫だもの」
「うるさい。あれはものすごく効くんだよ。おい、明日は、俺と会わせてみて、女の子がその気にならないようだったら、わからないように、飲み物に目薬を入れろ。すぐ効いて動けなくなる。ビールやコーラに入れれば味が変わらないから、入れたのは気づかれないからな。いいか」
「ああ、そんなことしなくても大丈夫だと思うけどな。駄目だったら、そうするよ」
この親にしてこの子ありとよく言われるが、この兄にしてこの弟ありである。
この段階では、兄の拳二も、弟の英気も、自分らの計画しでいる行為が犯罪を構成するなどということは考えもしない。
勿論、強姦という罪があることは知っている。
知っているが、現実の自分らの行為とは結びつかない。
彼らの周囲では、女の子を無理矢理に犯した、やってしまったなどという話は、それこそ日常茶飯事のことであり、その結果、男がつかまったり、裁判になったりしたという話は聞いたことがない。
警察につかまったりするのは、よほど運が悪い人であり、交通事故に遭うようなものである、その位の認識しかないのである。
やがて、自分達か逮捕され、起訴ざれようとは、大海にっ浮かぶ一毛ほども考えなかった。
(続く)
07.07.08更新 |
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