法廷ドキュメント 殺意の原点
倒錯の真実に迫る法廷ドキュメント、第七回をお届けいたします。
政治家の世界とホステスの世界
私は大学時代から政治家を目指しておりました。
私がおりました大学は昔から政治家志望のものが大勢入学してきまして、従って卒業生には何人もの政治家がおります。
私は入学する前にはそんなことは考えておりませんでしたが、大学に入ってみると私の周囲には政治家志望の者が大勢いたので、いつのまにか私も将来政治家になろうと考えるようになったわけです。
政治家になるためには、政治家のもとで秘書として働き、いろいろと勉強するのが良いと先輩から聞かされていましたので、卒業すると、その先輩から紹介されたN県選出の代議士の下で、私設秘書ということで働くようになりました。
最初の頃は、給料も安く苦しい毎日でしたが、二、三年も過ぎると、私もすっかり政治家の秘書としての仕事に慣れ、政治資金づくりを担当するようになりました。
この仕事を担当するようになってから私は大分金銭的に恵まれるようになりました。
というのも、政治資金はその性格上、公に出来ない部分も大分あるのです。
ある会社から政治献金ということで金を受けとっても領収証を切らないこともあります。
一〇〇万円受領して、事務所の方には八〇万円入れるというようなことをしても、まずばれるようなことはありません。
又、例えばれたとしても、その程度のことが大目に見られるような政治家でなければ、周囲の者がついて行きません。
というようなことで、私は大分金を自由に使えるようになり、毎晩のように銀座や赤坂あたりの店で飲むようになりました。
育技と最初に会ったのは銀座のクラブ―H―という店でした。
当時、彼女はあまり売れないホステスでした。
私もその頃までにはバーのホステスなどと大分遊んでいましたから、ホステスの生態についても一応は知っているつもりでした。
彼女達の商売は、私ども政治家秘書以上に金の世界です。
銀座あたりのホステスでも、指名客が付いてくると大抵店に借金をするようになります。
客のツケは全部ホステスが店に支払うことになりますから、悪質な客を何人か抱えると、店からの給料よりも客の飲食代立替金の方が多額になるということにもなってしまうのです。
ですから、売れっ子のホステスでも意外に懐は苦しいのです。
毎月きちんと現金で支払ってくれる客、あるいはその度毎に現金で支払ってくれる客、しかも毎月ある程度の固定額以上を飲んでくれる客が最上の客となります。
私も二度目から育伎を指名して飲むようになりました。
彼女は水商売は今度が初めてということで、客あしらいにぎこちないところがあり、それが何とも言えず新鮮に見え、私はぐいぐいと彼女にのめり込んで行ったのです。
彼女の方も、慣れない世界に足を踏み入れたばかりで心細かったのでしょうか、連日のようにやって来る私に程無く少なからぬ好意を示してくれるようになりました。
法廷ドキュメント 殺意の原点 第五回 文=法野巌 イラスト=石神よしはる 棄てられていた若い女性のバラバラ死体は、性器を抉り取られていた……。 |
倒錯の真実に迫る法廷ドキュメント、第七回をお届けいたします。
政治家の世界とホステスの世界
私は大学時代から政治家を目指しておりました。
私がおりました大学は昔から政治家志望のものが大勢入学してきまして、従って卒業生には何人もの政治家がおります。
私は入学する前にはそんなことは考えておりませんでしたが、大学に入ってみると私の周囲には政治家志望の者が大勢いたので、いつのまにか私も将来政治家になろうと考えるようになったわけです。
政治家になるためには、政治家のもとで秘書として働き、いろいろと勉強するのが良いと先輩から聞かされていましたので、卒業すると、その先輩から紹介されたN県選出の代議士の下で、私設秘書ということで働くようになりました。
最初の頃は、給料も安く苦しい毎日でしたが、二、三年も過ぎると、私もすっかり政治家の秘書としての仕事に慣れ、政治資金づくりを担当するようになりました。
この仕事を担当するようになってから私は大分金銭的に恵まれるようになりました。
というのも、政治資金はその性格上、公に出来ない部分も大分あるのです。
ある会社から政治献金ということで金を受けとっても領収証を切らないこともあります。
一〇〇万円受領して、事務所の方には八〇万円入れるというようなことをしても、まずばれるようなことはありません。
又、例えばれたとしても、その程度のことが大目に見られるような政治家でなければ、周囲の者がついて行きません。
というようなことで、私は大分金を自由に使えるようになり、毎晩のように銀座や赤坂あたりの店で飲むようになりました。
育技と最初に会ったのは銀座のクラブ―H―という店でした。
当時、彼女はあまり売れないホステスでした。
私もその頃までにはバーのホステスなどと大分遊んでいましたから、ホステスの生態についても一応は知っているつもりでした。
彼女達の商売は、私ども政治家秘書以上に金の世界です。
銀座あたりのホステスでも、指名客が付いてくると大抵店に借金をするようになります。
客のツケは全部ホステスが店に支払うことになりますから、悪質な客を何人か抱えると、店からの給料よりも客の飲食代立替金の方が多額になるということにもなってしまうのです。
ですから、売れっ子のホステスでも意外に懐は苦しいのです。
毎月きちんと現金で支払ってくれる客、あるいはその度毎に現金で支払ってくれる客、しかも毎月ある程度の固定額以上を飲んでくれる客が最上の客となります。
私も二度目から育伎を指名して飲むようになりました。
彼女は水商売は今度が初めてということで、客あしらいにぎこちないところがあり、それが何とも言えず新鮮に見え、私はぐいぐいと彼女にのめり込んで行ったのです。
彼女の方も、慣れない世界に足を踏み入れたばかりで心細かったのでしょうか、連日のようにやって来る私に程無く少なからぬ好意を示してくれるようになりました。
(続く)
07.08.02更新 |
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