法廷ドキュメント 殺意の原点
倒錯の真実に迫る法廷ドキュメント、第七回をお届けいたします。
都合の良い真実
帰って来たその日、部屋に育枝の姿が見えません。
美容院にでも行っているのかなと、部屋の中で暫く待っていましたが、夕方になっても帰って来ません。
八時頃店に電話をすると、一週間ほど前に店を辞めたとのこと。
どうして辞めたのか、理由がわかりません。
待って居ようと横になると、いつの間にか眠ってしまいました。
午前三時頃でしょうか、帰ってきた育枝に起こされました。
大分酒を飲んでいるようでした。
いきなり着ているものを脱ぎ捨て、素っ裸になると、私にのし掛かってきましたので、私も服を脱ぎ挨拶がわりの交わりを持ちました。
野獣のような彼女の喜悦の声を楽しみながらクラブを辞めた理由を聞きますと、トルコに勤めることにしたとのこと。
これには流石に私も驚いてしまいました。
「どうしてトルコになど」
という私の問いに、
「だって、あなたのためよ、私お金を稼いであなたの選挙資金をつくってあげる」
というのです。
私は、そう言えば、
「トルコの方がクラブなんかよりは金が入ってくるよ」
と彼女に話をしたことはあります。
しかし彼女にトルコ風呂で働けというつもりではありませんでした。
セックスが大好きで、快楽を得ることが何よりも優先するようになってしまった彼女の体が、何のためらいもなく、彼女を不特定多数の男を相手に体を与える商売に結びつけてしまったのだと思います。
しばらくは私も悩みました。
私の愛人といっても良い女が、毎晩どこの何やら得体の知れない男に身を任せているのですから、後めたい気持ちとともに、嫉妬心も湧いてきました。
だが一方では、これで彼女と別れる口実が出来たという気持ちもありました。
しかし、私は甘かったのです。
どうやら育枝は本気で私との結婚――法律的な意味ではないにしても――を考えていたのです。
ですから私が別れ話をもち出し、他の女との結婚をほのめかすと、激怒し、気狂いのようになってしまいました。
私が彼女を殺してしまったのは偶然からなのです。
これは本当です。
私達はその頃、セックスする時に、彼女の首を締めてする味を覚えてしまっていたのです。
首を締め、彼女が呼吸が苦しくなり、やがて酸素不足から意識が朦朧としてくるにつれて、あそこの肉がひくひくという感じで私のものに絡みつき、締めあげてくるのです。
あの感じは経験したものでないとわかりません。
その日も私は、あの絡みついてくる感じを味わおうと、腰を浮かしながら彼女の首を締めたのです。
いつになく微妙な感触でした。
磯巾着に指でも入れればあんな感触なのではないでしょうか。
私が気を遣った後、ぐったりとして横になっておりますと、どうも彼女の様子が変なのです。
声も出しませんし、全く体を動かしません。
不審に思い体を揺すってみても反応がありません。
死んでしまっていたのです。
この時の私の受けた衝撃は言葉では言い表わせません。
しばらく茫然とした後、私の考えたことは、自分の将来のことでした。
このままにしても私のことはいずれわかってしまうでしょう。
いっそ死体を始末してしまえ、そうすれば誰にもこのことはわからずに済ませられる。
そう考えて、私は彼女の体をバラバラにし、ビニール袋に包み江戸川の川原に埋めたのです。
何故、性器を切り取ったのかということですが、私自身もよくわかりません。
きっとそこに育枝の魂が潜んでいると思ったからでしょう。
法廷ドキュメント 殺意の原点 第八回 文=法野巌 イラスト=石神よしはる 棄てられていた若い女性のバラバラ死体は、性器を抉り取られていた……。 |
倒錯の真実に迫る法廷ドキュメント、第七回をお届けいたします。
都合の良い真実
帰って来たその日、部屋に育枝の姿が見えません。
美容院にでも行っているのかなと、部屋の中で暫く待っていましたが、夕方になっても帰って来ません。
八時頃店に電話をすると、一週間ほど前に店を辞めたとのこと。
どうして辞めたのか、理由がわかりません。
待って居ようと横になると、いつの間にか眠ってしまいました。
午前三時頃でしょうか、帰ってきた育枝に起こされました。
大分酒を飲んでいるようでした。
いきなり着ているものを脱ぎ捨て、素っ裸になると、私にのし掛かってきましたので、私も服を脱ぎ挨拶がわりの交わりを持ちました。
野獣のような彼女の喜悦の声を楽しみながらクラブを辞めた理由を聞きますと、トルコに勤めることにしたとのこと。
これには流石に私も驚いてしまいました。
「どうしてトルコになど」
という私の問いに、
「だって、あなたのためよ、私お金を稼いであなたの選挙資金をつくってあげる」
というのです。
私は、そう言えば、
「トルコの方がクラブなんかよりは金が入ってくるよ」
と彼女に話をしたことはあります。
しかし彼女にトルコ風呂で働けというつもりではありませんでした。
セックスが大好きで、快楽を得ることが何よりも優先するようになってしまった彼女の体が、何のためらいもなく、彼女を不特定多数の男を相手に体を与える商売に結びつけてしまったのだと思います。
しばらくは私も悩みました。
私の愛人といっても良い女が、毎晩どこの何やら得体の知れない男に身を任せているのですから、後めたい気持ちとともに、嫉妬心も湧いてきました。
だが一方では、これで彼女と別れる口実が出来たという気持ちもありました。
しかし、私は甘かったのです。
どうやら育枝は本気で私との結婚――法律的な意味ではないにしても――を考えていたのです。
ですから私が別れ話をもち出し、他の女との結婚をほのめかすと、激怒し、気狂いのようになってしまいました。
私が彼女を殺してしまったのは偶然からなのです。
これは本当です。
私達はその頃、セックスする時に、彼女の首を締めてする味を覚えてしまっていたのです。
首を締め、彼女が呼吸が苦しくなり、やがて酸素不足から意識が朦朧としてくるにつれて、あそこの肉がひくひくという感じで私のものに絡みつき、締めあげてくるのです。
あの感じは経験したものでないとわかりません。
その日も私は、あの絡みついてくる感じを味わおうと、腰を浮かしながら彼女の首を締めたのです。
いつになく微妙な感触でした。
磯巾着に指でも入れればあんな感触なのではないでしょうか。
私が気を遣った後、ぐったりとして横になっておりますと、どうも彼女の様子が変なのです。
声も出しませんし、全く体を動かしません。
不審に思い体を揺すってみても反応がありません。
死んでしまっていたのです。
この時の私の受けた衝撃は言葉では言い表わせません。
しばらく茫然とした後、私の考えたことは、自分の将来のことでした。
このままにしても私のことはいずれわかってしまうでしょう。
いっそ死体を始末してしまえ、そうすれば誰にもこのことはわからずに済ませられる。
そう考えて、私は彼女の体をバラバラにし、ビニール袋に包み江戸川の川原に埋めたのです。
何故、性器を切り取ったのかということですが、私自身もよくわかりません。
きっとそこに育枝の魂が潜んでいると思ったからでしょう。
07.08.05更新 |
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