法廷ドキュメント 闇の中の魑魅魍魎
久しぶりの登場、法廷ドキュメント第九回をお届けいたします。
質草
誠子が玄関の戸を開けると、誰か客がいるらしかった。
一階の六畳間で話し声がする。
例の男だった。
逃げよう。
誠子がカバンを階段の手摺の横において、靴を履こうとした時だった。
男が近づいて来て、
「おい、待たないか、こっちへ来い」
と、声をかけた。
誠子は恐怖のあまり、一瞬のうちに凍りついたようになってしまい、体を動かすことが出来なくなってしまった。
男が誠子の脇に手を回し、六畳間に引っ張っていった。
中には、父と母が頭を垂れて、小さくなって坐っていた。
大分脅されていたのだろうか、二人とも顔面が蒼白になっていた。
「お父さん、いやよ、助けてよ」
それだけ言うのが精一杯であった。
あとは声にならなかった。
だが、父も母も、誠子の声が聞こえないかのように、何の反応も示さないで坐っている。
「おい、お前ら邪魔だ。出ていろ」
男が二人に命令するような口調で言った。
その言葉を待っていたかのように、二人は下を向き、誠子の姿を目に入れたくないかのように、足早に外に出ていった。
誠子には信じられない光景だった。
親が実の娘をやくざの男に預けて、席を外したのだ。
どういうことなのだろう。
心が散々に乱れている誠子の、その内心を見抜いたのだろうか、男が低い太い声で衝撃的な話をした。
「俺はな、お前の親父に一千万円の金を貸しているのだよ。本当は、この家からお前ら家族に出て行って貰わなければならないのだが、行くところがない、しばらく住まわせてくれと頼まれているから仕方なしにお前らをここにおいているんだ。一千万円は、死んででも返して貰う。このままにしておくと俺の顔がつぶれる。お前は、今日から俺の情婦だ。いいか。うらむなら親をうらめ」
男は、誠子の顔を、胸を、腰を、ゆっくりと時間をかけて見つめた。
それは、野獣が、獲物を追いつめ、とどめの一撃を加えんとして生きている最後の姿を舌なめずりしながら眺めているような見つめ方だった。
「お前は、なかなかいいたまだよ。俺がじっくりと磨きをかけてやる。いいか、この家を飛び出したところで、S組は全国に目を光らせているからな。 すぐに見つけるのは訳はない。変な気はおこさない方が身のためだ」
男は素人を脅す際のおきまりの文句を並べた。
だが誠子の気持ちを萎えさすには十分な効果があった。
抵抗したって無理だわ。
相手は恐ろしいやくざなんだもの。
目を閉じるとひとりでに涙があふれてきた。
男の手が誠子のセーラー服の胸のボタンを外し、はだけ、十七歳にしては豊かな盛りあがりを見せている透きとおったような乳房をわしづかみにした。
男の手のひんやりとした冷たい感触が乳頭や乳房から伝わってきた。
その感触が、今、男に弄ばされているという現実を一層生々しいものにしていた。
法廷ドキュメント 闇の中の魑魅魍魎 第六回 文=法野巌 イラスト=兼田明子 身を挺して子供を守るべき両親は意外な行動をとった。 |
久しぶりの登場、法廷ドキュメント第九回をお届けいたします。
質草
誠子が玄関の戸を開けると、誰か客がいるらしかった。
一階の六畳間で話し声がする。
例の男だった。
逃げよう。
誠子がカバンを階段の手摺の横において、靴を履こうとした時だった。
男が近づいて来て、
「おい、待たないか、こっちへ来い」
と、声をかけた。
誠子は恐怖のあまり、一瞬のうちに凍りついたようになってしまい、体を動かすことが出来なくなってしまった。
男が誠子の脇に手を回し、六畳間に引っ張っていった。
中には、父と母が頭を垂れて、小さくなって坐っていた。
大分脅されていたのだろうか、二人とも顔面が蒼白になっていた。
「お父さん、いやよ、助けてよ」
それだけ言うのが精一杯であった。
あとは声にならなかった。
だが、父も母も、誠子の声が聞こえないかのように、何の反応も示さないで坐っている。
「おい、お前ら邪魔だ。出ていろ」
男が二人に命令するような口調で言った。
その言葉を待っていたかのように、二人は下を向き、誠子の姿を目に入れたくないかのように、足早に外に出ていった。
誠子には信じられない光景だった。
親が実の娘をやくざの男に預けて、席を外したのだ。
どういうことなのだろう。
心が散々に乱れている誠子の、その内心を見抜いたのだろうか、男が低い太い声で衝撃的な話をした。
「俺はな、お前の親父に一千万円の金を貸しているのだよ。本当は、この家からお前ら家族に出て行って貰わなければならないのだが、行くところがない、しばらく住まわせてくれと頼まれているから仕方なしにお前らをここにおいているんだ。一千万円は、死んででも返して貰う。このままにしておくと俺の顔がつぶれる。お前は、今日から俺の情婦だ。いいか。うらむなら親をうらめ」
男は、誠子の顔を、胸を、腰を、ゆっくりと時間をかけて見つめた。
それは、野獣が、獲物を追いつめ、とどめの一撃を加えんとして生きている最後の姿を舌なめずりしながら眺めているような見つめ方だった。
「お前は、なかなかいいたまだよ。俺がじっくりと磨きをかけてやる。いいか、この家を飛び出したところで、S組は全国に目を光らせているからな。 すぐに見つけるのは訳はない。変な気はおこさない方が身のためだ」
男は素人を脅す際のおきまりの文句を並べた。
だが誠子の気持ちを萎えさすには十分な効果があった。
抵抗したって無理だわ。
相手は恐ろしいやくざなんだもの。
目を閉じるとひとりでに涙があふれてきた。
男の手が誠子のセーラー服の胸のボタンを外し、はだけ、十七歳にしては豊かな盛りあがりを見せている透きとおったような乳房をわしづかみにした。
男の手のひんやりとした冷たい感触が乳頭や乳房から伝わってきた。
その感触が、今、男に弄ばされているという現実を一層生々しいものにしていた。
(続く)
07.11.06更新 |
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