2009.06.09.Thu at Tokyo
「KINBIKEN」plesents extreme love session!
緊縛美研究会『濡木痴夢男の秘蔵緊縛コレクション“悲願”』
撮影現場フォトレポート【後編】
取材・文=井上文
その読書好きな美貌の淑女は、敬愛する作家の手に「一度でいいから触れてみたくて」、緊張の中で自ら作家とコンタクトをとった。そして数カ月後――作家・濡木痴夢男氏に「沢戸冬木」と名づけられた彼女は、これまでに数千人の女性を縛ってきた濡木氏が夢見る理想の緊縛美を体現するべく、さらなる緊張に包まれながらビデオカメラの前に立つ。長い休止期間を経て活動が再開された「緊縛美研究会」による圧巻の撮影、現場レポート後編です。
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沢戸冬木さんは、濡木氏とスタッフのためにお弁当を作って持ってきてくれていた。「簡単なものですが……」と遠慮がちに差し出した三段の重箱には、ゴボウや舞茸の歯ごたえが利いた手製の稲荷寿司、そしてふっくらと焼けた出汁巻き玉子が詰まっていた。見た目が綺麗なだけでなく、美味である。有り難かった。
この可憐な女性が内面に秘めた、前半部で見せたとんでもない情動は何だろうと、しみじみ思う。撮影の半分を終え、彼女がより立体的に、より人間的に感じられるようになったとも思う。それはすなわち、よりエロティックに感じられるようになったということだ。人間は誰もが身の裡に渦巻く欲望を紙一重のところで抑制しながら生きているのに違いない。「緊縛美研究会」がそういう当たり前の認識を改めて共に持とうとする、このような「場」の形成を大事にしている理由がよくわかる。
後半の撮影は、場所を和室から洋風のキッチンに移して行なわれた。沢戸さんには白いワンピース(これは駅前での待ち合わせ時から、つまり自宅から着てきた服だった)からランジェリー的な薄いキャミソールに着替えてもらうことになる。これもスタッフが用意した衣装ではなく、沢戸さんが持参した自前の衣類から選んだものだ。しっとりとした光沢に高級感があり、よく似合っている。生活臭の感じられる雑なキッチンとのギャップが効果的だ。
濡木氏の手が柔らかく静かに閃いて、まず高手小手。たちまち唇を震わせた沢戸さんを椅子に座らせた。当初は立ったまま縛りを展開するつもりだったのだが、沢戸さんは縄が肌に触れた瞬間から膝に力が入らなくなってしまい、倒れては危険だからというので椅子に座ってもらうことになったのである。
↑濡木氏が滑らかな津捌きで後手縄をかけていくと、たちまち沢戸さんの膝が震え始めた。
さらに白い布猿轡が厳しく、二重に施される。真っ白な乳房が無残に掴み出されると、眉根を寄せて身悶える沢戸さんの瞳が切なく潤んだ。しっかりと閉じ合わされた太腿が悩ましい。脚を閉じているのは足首と膝下が縛られていることもあるが、沢戸さん自身もグッと力を込めて恥部を閉じ合わせているのが見ていてわかる。乳首を細紐で虐げられ、木製の靴べらで腹を突かれ、尻を何度打たれても、そのいじらしい抵抗は失われない。にもかかわらず、その上品さが結果として落花狼藉の風情を醸してしまうことが皮肉であり、残酷でいやらしい。
やがて椅子からズルズルと尻を落とした沢戸さんが、冷たい木の床に身を横たえる。縄でくびり出されたままの両乳房が真正面から光を受け、ぬるついた汗が生々しい光沢を放つ。濡木氏が、その身体に片足を載せて、意地悪くこね回した。乳首を足指で摘み、つま先を腹にめり込ませ、捩じり、汚していく。子宮を持った女性の性、そのものを責め抜く。沢戸さんは激しく呻き、苦悶し、しかし薄く開いた瞳を陶然とさまよわせて不自由な身体をくねらせている。
↑映像用のカメラが心身の様々な変化を細部まで克明に捉えていく。
ワンシーンを撮り終えるたび、沢戸さんは虚脱しきってしばらくの間は動けなくなる。前半部での縄を抱きしめている姿も胸を衝いたが、この場面では縄を解かれた後、土下座するように床へ伏している姿がとても印象的だった。確かその間もカメラは回っていたと思う。責め抜かれて疲れた肉体の艶めかしさは今作で是非注目してもらいたいポイントである。
休憩を挟んで、今度は後手合掌縛りが施される。沢戸さんの身体か撮影開始時よりもずっとほぐれているのが見てとれる。過酷なポーズであることは間違いないが、華奢な身体を締めあげる縄がしっとりと馴染んで、責め感よりもラインの美しさが際立つ。背骨の透けたその背中に、濡木氏は白い熱蝋をポタリポタリと垂らした。
←美しくきまった後手合掌縛り。繊細なボディラインの妙がこれでもかと引き立つ。 |
「あぁぁっ……」と、蝋涙を受け入れて熱さを噛みしめる声が迸る。沢戸さんが後手合掌縛りのまま床に頭をつけて背筋をくねらせた。一滴ごとにうなじを隠す黒髪が揺れる。
濡木氏が、後手縄を解いて沢戸さんを床に寝かせた。そして今作の裏テーマとも言える腹嬲りを再び足で行ない、仰向いて揺れる沢戸さんの乳房へさらに熱蝋を落としていく。ここからのせめぎ合いはじっくりとしていて長く、息詰まる緊張感に満ちている。
沢戸さんが腹に載せられた濡木氏の足を両手で掴み、痙攣するように身悶える。どれくらいの時間が経っただろうか、濡木氏の足が沢戸さんの腹に癒着し、汗で溶けてついには埋まってしまったようにすら見える。この間の沢戸さんの乱れぶりは鬼気迫るものがあった。巨大な津波に揉まれているように、沢戸さんのパーソナリティが何度も何度も剥きあげられて、奥の奥にあるものが否応なく露出させられていくような、激しくエロティックな光景だった。
↑後手合掌縛りから熱蝋責めへ至る最後の山場。嗚咽が絶え間なく響き、蒸れるような色気が沢戸さんの全身から噴きだした。
←激しいわななきが何度も沢戸さんを襲う、後半部の山場。密室に熱気が充満する。 |
――ビデオカメラが止められた後、沢戸さんは「すみません……取り乱してしまって……」としきりに恐縮していた。映像には収録されていないと思うが、沢戸さんの「らしさ」が出ている言葉だったので書きとめておこう。
撮影は昼から夕方までの決して長くはない時間で行なわれた。待ち合わせから撮影終了時まで立ち合わせてもらったが、それでもすべてを書ききることはできない。そもそも撮影前から「悲願」というタイトルをつけて現場に臨んだ濡木氏が、いったいどんな気持ちで縄を握っていたのかが測り知れない。沢戸さんがどんな物語を持っていて、日頃からどんなイマジネーションを働かせているのかも測り知れない。これは、実際に観て感じ取ってもらうほかはない。
本作は、「緊縛美研究会」の方法がとてもいい形で実現されたものになっていると思う。まず濡木氏と沢戸さんの出会いがあり、大事に育まれてきた「場」があった。濡木氏が書いたネットの記事でその背景を追えることは、本作をより深く味わう上できっとプラスに働くはずだ。その時現場にいた人間にとってだけでなく、被写体は「出演者」や「モデル」ではなくて、あくまでも「人」として立ち上がってくることになる。場合によっては「緊縛」という行為の魅力を新たに発見する機会になるだろう。
長い休止期間を経た「緊縛美研究会」だが、その間にもフェティシズムやSMを扱うアダルトメディアを巡る状況は変化し続け、固定化された押しつけの既製品がいよいよ世にはびこりながら、全体としては終末へと向かっているように見える。そんな折に「悲願」と題して撮られた本作が、いったいどんな形で受け入れられることになるのか。撮影を終えた濡木氏は感無量の笑顔であった。もたらされる結果が今から楽しみだ。
取材・文=井上文
関連リンク
緊美研.com
井上文 1971年生まれ。SM雑誌編集部に勤務後、フリー編集・ライターに。猥褻物を専門に、書籍・雑誌の裏方を務める。発明団体『BENRI編集室』顧問。 |
09.06.28更新 |
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