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フェティシストが愛する名匠を訪ねて 第5回
東京・渋谷ハプニングバー「眠れる森の美女」マスター
緊縛師・一鬼のこ氏 【2】
文・インタビュー=安田理央

写真=Hiroya Fukuda
モデル=うらら
都内最大級のハプニングバー「眠れる森の美女」。様々な人々がこの場所で起こる何かを期待して昼夜を問わず訪れます。そして老若男女が集まるこのお店を取り仕切っているのは、新進気鋭の緊縛師として現在大活躍中の方なのです。私たちの性の営みとその周辺に存在する様々なモノやヒトを紹介する連載の第5回、エロティックエンターテイナー・一鬼のこ氏をご紹介いたします。
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人を楽しませたり、いい気持ちにさせるのが好きなんです
その延長上に縄がある。自分の欲望というよりも相手の欲望を満たしたい
さて、一氏のもう一つの顔である緊縛師としての話も聞いてみよう。先述の通り、当時つきあっていたM女によって、逆調教され(笑)縛りを覚えた一氏。女性客から、縛って欲しいというリクエストが殺到したそうだ。

「縛って欲しいという女の子、すごく多いんですよ。新宿の店の時で、一日に最低3〜4人はいましたから。それを毎日縛っていたんです。それだけ縛っていると、いやでも上手くなりますよね。それで一回ショーをやったら、すごく楽しかったんです」

それまで人前で何かをするという経験はなかった一氏だったが、もともと人を楽しませるということは好きだった。縛って見せることで、お客が喜んでくれる。それは新鮮な体験だった。

「実はカジノでディーラーをやっていた時の経験が役に立ったんですよ。ディーラーって強そうに見せなくちゃいけないんですね。だから、カードさばきとかシャッフルの仕方とか、いちいちかっこつけて見せるんです。縛る時でも、それは共通のテクニックなんですよ。例えば、早く縛ったり、ゆっくり縛ったりと強弱つけることによって、縄が早く見えるとか。カードもSMも、どちらも心理戦ですよね。カードさばきのテンポをお客さんの脈拍に合わせて、少しずつ早くしていったりするんです。縄やムチも同じ。だんだんスピードを上げる。どちらも平常心を崩して再構築していく作業ですから。相手のアドレナリンをコントロールしていくんです」

このようにディーラーの経験も役にたつし、それ以前のカイロプラクティックの経験も女体を扱う上で役に立つし、結果的に全てが今の自分につながっていると一氏は笑う。

「最初はお客さんに求められて縛っていたけど、そのうち縄って深いなと思うようになってきたんです。こっちがお店のことを気にしながら縛っていると相手にも伝わるし、真剣に縛っていると、反応も違う。気持ちが伝わる道具なんだなと気づきました。魅力のある縛りをする人は、みんな人格がしっかりしているんですよね」

縄の魅力に気づいた時に、緊縛師・一鬼のこは誕生した。
しかし、緊縛師の中でも、自分からなろうと思ってなったわけではないというのは、かなり異色な存在ではないだろうか? 

「もともとS的な要素もあったのかもしれないけれど、いわゆる攻撃的な性格はあまりないんですよね。それよりも、エンターテインメント志向が大きいんですよ。人を楽しませたり、いい気持ちにさせるのが好きなんです。その延長上に縄があるんです。自分の欲望というよりも相手の欲望を満たしたい。いわゆるサービスのSですね。たっぷりサービスしますよ(笑)。相手が楽しんでくれれば、それで僕も楽しいんです。板前ってお客さんに美味しいと言われるのが嬉しくて料理を作るわけじゃないですか。僕もそれと同じで、ショーを見てよかったって言われるのが嬉しいんです。初めてSMを見て、感動して泣いちゃう人もいるんですよ。そういうの、嬉しいですね」



ちなみに「一鬼のこ」という変わった名前の由来も聞いてみた。

「緊縛師としての名前をつけようとした時に、よくキノコのネックレスをしていたから『キノコ』がいいんじゃないかって従業員の女の子に言われたんです。明智伝鬼先生が好きだったから、鬼の一字をもらって、後は姓名判断のサイトを見て調べたら、この字がよかったんですね。緊縛師らしくはないけれど、当時はこの名前をそんなに使うことになるとは思っていなかったんですよ」

故・明智伝鬼氏にちなんだ「鬼」の一字はともかく、どこかユーモラスですらある「一鬼のこ」という名前を名乗るセンスからも、一氏が従来の緊縛師とは、ずいぶん資質が違うということがわかる。
現在30歳という年齢は、他の緊縛師、責め師に比べて、ずば抜けて若い。比較的、ミラ狂美氏が近いが、後はみな40代以上である。

「若いということは意識していますね。自分なりの新しい縛りを作って行かなくちゃいけないと思っています。僕は縄をもっとメジャーな存在にしていきたいんですよ。例えば普通の主婦が『縛りっていいわよね』って言うくらい。テレビでも地上波で普通に取り上げられるようにしたいんです。だから、縛りというものをいったんSMから切り離してアートの方から責めていきたいんですよ。例えば海外でアートとして確立してから、逆輸入していくとか。縛り=変態という図式をいったん置いといて、縛り=アートという図式で世間に広めてから、変態で縛りをするともっと楽しいんだよ〜みたいな感じにいけば、そうすると人口も増えていくと思うんですよ」

こうしたメジャー指向、一般指向は新世代たる一氏ならではのセンスだ。

「ハプニングバーの世界でも、これまでアングラでやって来た人たちに、よく怒られるんですよ。お前のせいでハプニングバーがメジャーになっちゃったじゃないかって。でも、僕は面白いものは、より多くの人に知ってもらいたいんです。SMでも同じです。SMには愛もあって、ドラマもあって、素晴らしいものだってことを、知らない人にも知ってもらいたいんですよ」

現在、SM業界は袋小路に入り込んでしまったような観がある。マニアによるマニアのためのSMという考え方が、その原因ではなかったか。
これまでの緊縛師とは全く違ったバックホーンを持った一鬼のこ氏のような存在が、SMに風穴を開け、新たなステージへと進化させてくれるのではないかと期待したい。

文=安田理央




HAPPENING BAR[SLEEPING:BEAUTY]
東京・渋谷ハプニングバー「眠れる森の美女」
http://www.sleeping-beauty2006.com/


営業時間=15:00〜LAST

オールタイム料金表(時間に関係なくご利用の場合)

入会金:
=カップル(男性5,000円 女性1,000円)
=単独男性 5,000円
=単独女性 1,000円

チャージ料金(入場料・ドリンク&フードチケット3,000 円分サービス):
=カップル お二人で7,000円
=単独男性 16,000円
=単独女性 無料

※料金システムの詳細は店舗までお問い合わせ下さいませ。
フリータイム、テキーラのショットのみフリー
新規にご入会する単独女性様には、素敵なプレゼント付き!!

※ご入会時、ご確認の為に、ご署名、及び身分証明書をご呈示いただきます。
必ず身分証明書ご持参ください。
身分証明書をお持ちでない場合は、ご入店をお断りしております。
身分証明書とは、運転免許証・健康保険証・パスポート等の公的に通用する身分証明書のことです。
(店の規定で、ご自身の社員証、名刺、クレジットカード等は身分証明書とは認められません)


関連リンク

SM緊縛師『一鬼のこ』縄ブログ〜不思議なキノコの世界〜

Girlizm/Hiroya Fukuda

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yasuda_face.jpg 安田理央 エロ系ライター、アダルトメディア研究家、パンク歌手、ほか色々。この夏、ついに四十代に突入ですよ。もう人生の折り返し地点かと思うと感慨深い。主な著作に「エロの敵」「日本縦断フーゾクの旅」「デジハメ娘。」など。趣味は物産展めぐり。でも旅行は苦手。

安田理央の恥ずかしいblog

「エロの敵 今、アダルトメディアに起こりつつあること」(翔泳社)

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08.06.29更新 | WEBスナイパー  >  フェティシストが愛する名匠を訪ねて