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フェティシストが愛する名匠を訪ねて 第5回
東京・渋谷ハプニングバー「眠れる森の美女」マスター
緊縛師・一鬼のこ氏 【1】
文・インタビュー=安田理央

写真=Hiroya Fukuda
モデル=うらら
都内最大級のハプニングバー「眠れる森の美女」。様々な人々がこの場所で起こる何かを期待して昼夜を問わず訪れます。そして老若男女が集まるこのお店を取り仕切っているのは、新進気鋭の緊縛師として現在大活躍中の方なのです。私たちの性の営みとその周辺に存在する様々なモノやヒトを紹介する連載の第5回、エロティックエンターテイナー・一鬼のこ氏をご紹介いたします。
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うちの店は風俗だと思ってくると面白くないですけど
変わった飲み屋だと思ってくると面白いですよ
SM系イベントをチェックしている方なら、一鬼のこ(はじめきのこ)という変わった名前を知っているだろう。最近、活躍がめざましい若手緊縛師である。そして彼は都内最大級のハプニングバー「眠れる森の美女」のマスターとしての顔もある。と、いうより、そもそも緊縛師一鬼のこを産んだのはハプニングバーという世界だったのだ。ハプニングバー出身という珍しいこの新世代緊縛師の正体に迫ってみた。

渋谷道玄坂にある「眠れる森の美女」に行ってみて驚いた。地上3階地下1階の4フロアのビルをまるまる店舗として使っているのだ。従来のハプニングバーのイメージを遙かに上回るスケールの店だ。そして毎週、大きな規模のイベントが行なわれている。こうなるとハプニングバーというよりも、アダルトなコミュニティスペースといった方がしっくりくるかもしれない。

この「眠れる森の美女」のマスターであり、気鋭の若手緊縛師である一鬼のこ氏は、今年30歳。いわゆるイマ風のイケメンである。アンダーグラウンドな匂いがしたり、文系のムードを漂わせていることが多い緊縛師の中でも、一氏の「普通のイケメン」っぽさは異質だ。街で彼を見かけても、ハプニングバーのマスターで緊縛師というアブノーマルな世界の住人だとは、とても想像できないだろう。
そんな彼がこの世界に足を踏み入れたのは、ちょっとした成り行きからだった。

「もともとは整体師になろうと思っていて、高校を卒業してからカイロプラクティックの学校に行っていたんです。それで名古屋のカイロのお店で働いていたんですけど、あの仕事って雇われている身だと、ちっとも稼げないんですよ。自分で開業しないと儲からない。なんとか開業資金を貯めようと思って、バイトをはじめたんですね。カジノバーで働いたりしてお金を貯めた後、それまでまったくSMや変態な事に興味がなかったのですが、ひょんないきさつから六本木でハプニングバーをやることになりました。ひょんないきさつって言うのは、わけあって言えませんけどね〜」

一氏も、ハプニングバーという全く未経験の世界でいきなりマスターとして店を運営していかなくてはならなくなったのだ。


「なにしろ知識も経験も全くない状態でしたから、一から勉強していくしかなかったんですよ。六本木はSMバーはたくさんありましたからね。色々なお店に遊びにいって、この業界の人たちと仲良くなっていきました。そのうちに、よく通っていたお店のMの子とつき合うようになったんです」

その頃、一氏はSMには全く興味はなく、その女の子ともノーマルな関係だったという。しかし、M女としては、やはり好きな男性とはSM的な関係が欲しくなる。

「その子とは同棲していたんですけど、店から家に帰るとパソコンで縛りのサイトとか、『よいご主人様になるには』なんてサイトが開いたままになってたりして(笑)。それから、僕の店に縛りの上手な人を客として送り込んで来てたんですよ。その人に『ハプバーのマスターやるなら、縛りくらいできなくちゃダメだよ』って言われて、なるほどと教わったりしたんです。その子に、ご主人様になるように逆調教されてたんですよ(笑)」

一氏が最初の店「美女と野獣」を六本木に立ち上げた2002年頃は、まだハプニングバーは都内に3軒ほどしかなかったこともあり、店はオープンして、すぐに利益を出すようになった。
そして「美女と野獣」が成功した理由には、もうひとつ、一氏が元々ハプニングバーのマニアではなかったということがあった。

「普通はハプニングバーって、自分がそういうことが好きで、趣味が高じて店を開くっていう人が多いんですよ。でも、僕は全然興味がなかったし、よくわからなかったんですね。視線が一般人と一緒なんです。だから普通の人を楽しませられるようなお店に出来たんですよ」

その後、一氏はプライベートな理由で店を閉めて一度名古屋に戻るが、六本木時代のお客さんなどからの熱心な説得により再び東京でハプニングバーをやることとなる。今度は新宿、しかも前よりもずっと大きな規模の店だった。

「50坪くらいありましたね。それだけの規模の大型ハプニングバーは初めてだったんじゃないかな。当時のハプニングバーって、それぞれの店でジャンルが決まっていたんですよ。カップル喫茶っぽい店とかSMっぽい店とかマスターの個性によってジャンルがあった。ハコが小さい店ならばそれでいいんですけど、大きなハコだと、それじゃあやっていけない。窓口を広くしてオールジャンルにして一般のお客さんも遊べるようなお店にしようと思ったんですね」

新生「美女と野獣」には三つのコンセプトが自然に産まれてきた。それは「エロ」「笑い」、そして「仲間」だった。

「変態のお客さんって、自分のフェティシズムとマッチすればずっと来てくれるんですけど、一般のお客さんはエロだけだとすぐに飽きちゃうんですよ。そこで笑いの要素があれば、飽きずに来てくれるし、そのうちに仲間が出来てくる。僕も地方からこっちに来た人間なんですけど、最初は当然知り合いもいなくて、一番欲しかったのが仲間。だから、うちのお店に来たら仲間が出来るようにしてました。お客さん同士で仲良くさせたり、みんなで旅行に行ったりとか、とにかく温かいお店にしたんです。それがよかったのか、新宿の店も上手くいきました」


そして、渋谷「眠れる森の美女」のオープンとなる。新宿の「美女と野獣」も大型店であったが、今度は全4フロアという前代未聞のマンモス店だ。

「やっぱり店が大きくなると大変でしたね。新宿の時の三倍は大変(笑)。階層が分かれているから従業員の教育が難しいんですよ。ワンフロアだと全従業員の動きが見通せるんですけど、こっちは他の階のことがわからないですからね。あと電車の路線も新宿よりかなり少ないですから、集客の努力も3倍しました」

それでも渋谷「眠れる森の美女」は順調に客足を伸ばし、この2月に開店2周年を迎えた。イベント中心による新しいハプニングバーのスタイルを確立させている。

一氏に初心者のハプニングバーの楽しみ方を聞いてみた。

「ハプニングバーというのは、エロに興味を持っている人、変態に興味を持っている人の憩いの場でありプレイの場なんです。そういう人が集まった時にはハプニングが起きる。でも、それがいつ起きるかはわからないし、必ず起きるわけじゃない。必ずハプニングが起きるとしたら、それは風俗ですよね。よく問い合わせの時に言うんですが、うちの店は風俗だと思ってくると面白くないですけど、変わった飲み屋だと思ってくると面白いですよって説明するんです」

店側が煽って無理矢理起こすハプニングは、もうハプニングではないと一氏は考えている。店はあくまでもきっかけを与えるだけでいい。それがハプニングバーなのだと。

「うちもそうですが、ハプニングバーって女の子を連れてくると安くなります。でも、できれば女の子と一緒じゃない方がいい。女の子がいると、本来の自分がさらけ出せなくなります。ハプニングバーはそれじゃつまらない。縛っても、他の人のハプニング見てニヤニヤしていても全然ありっていうのが、ハプニングバーの楽しみ方。店内に入ったら非現実になれる状態で来た方がいい。女の子が一緒だと、『下着姿の人がウロウロしてるね、すごいね』なんて第三者的な視線で見ることになっちゃうんですよ」

しかし男性一人で行って、浮いてしまわないかと気になるのだが。

「全然大丈夫ですよ。特にうちは一人で来る女の子のお客さん、すごく多いですから」

(続く)



HAPPENING BAR[SLEEPING:BEAUTY]
東京・渋谷ハプニングバー「眠れる森の美女」
http://www.sleeping-beauty2006.com/


営業時間=15:00〜LAST

オールタイム料金表(時間に関係なくご利用の場合)

入会金:
=カップル(男性5,000円 女性1,000円)
=単独男性 5,000円
=単独女性 1,000円

チャージ料金(入場料・ドリンク&フードチケット3,000 円分サービス):
=カップル お二人で7,000円
=単独男性 16,000円
=単独女性 無料

※料金システムの詳細は店舗までお問い合わせ下さいませ。
フリータイム、テキーラのショットのみフリー
新規にご入会する単独女性様には、素敵なプレゼント付き!!

※ご入会時、ご確認の為に、ご署名、及び身分証明書をご呈示いただきます。
必ず身分証明書ご持参ください。
身分証明書をお持ちでない場合は、ご入店をお断りしております。
身分証明書とは、運転免許証・健康保険証・パスポート等の公的に通用する身分証明書のことです。
(店の規定で、ご自身の社員証、名刺、クレジットカード等は身分証明書とは認められません)


関連リンク

SM緊縛師『一鬼のこ』縄ブログ〜不思議なキノコの世界〜

Girlizm/Hiroya Fukuda

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yasuda_face.jpg 安田理央 エロ系ライター、アダルトメディア研究家、パンク歌手、ほか色々。この夏、ついに四十代に突入ですよ。もう人生の折り返し地点かと思うと感慨深い。主な著作に「エロの敵」「日本縦断フーゾクの旅」「デジハメ娘。」など。趣味は物産展めぐり。でも旅行は苦手。

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08.06.28更新 | WEBスナイパー  >  フェティシストが愛する名匠を訪ねて