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日本で唯一のSM専門ホテルに迫る!
フェティシストが愛する名匠を訪ねて 第4回
SMホテル「アルファーイン」オーナー 今関和道氏 【2】
文・インタビュー=安田理央

日本で唯一のSM専門ホテル、東京・六本木「アルファーイン」。実際に足を運んだことがなくとも、マニアであれば一度はどこかでその名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。私たちの性の営みとその周辺に存在する様々なモノやヒトを紹介する連載の第4回はマニアの聖地を築いたその人、「アルファーイン」会長、今関和道氏をご紹介いたします。
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本来なら首を吊っていたかもしれないロープを見た時に
これを思いついたから今の私がある


もともとSMの趣味のない今関氏だ。SMホテルを作ろうといっても手本になるものも参考にするものもない。

「SM専門のホテルなんて日本どころか世界にもないんだから、お手本になるものはない。全部自分で一から考えなくちゃいけないんです。SMマニアはみんな隠れていて探しても見つからない時代ですから、知り合いもいない。SM小説を読んで、こういうものが必要かなと想像するだけですよ。欲情が倍増するような雰囲気はどうすれば出るのか、ひたすら考えましたね。最初から鞭や蝋燭なんかの道具も完備してましたけど、これもどこで揃えればいいのか、悩みましたね」

もともと機械工学部出身であった今関氏は、自ら設備を設計・製作した。磔用の十字架やSMチェア、晒し便座なども全てご自身の手によるものだ。

日本初のSM専門ホテルといわれる「アルファーイン」だが、実はオープン時はSMルームは7部屋しかなかった。

「やっぱりいきなり全部をSMにしてしまうのは勇気が要ったんですね。嫌がるお客さんもいるだろうと。だから当時は26部屋中17部屋は普通のラブホテルの部屋だったんです。でも、そうなるとSMルームの部屋を選びづらくなるんですね。他人の目を気にしますから。本当はSMルームに入りたいのに、普通の部屋を選んでしまうとか。なので、一カ月も経たないうちに、全てSMルームに変えてしまいました」

現在のようにネットがあれば告知も簡単だが、当時は街頭の広告だけが頼りだった。今も続いている電柱の広告。そして六本木ロアビルの向かいにあった雑貨店の上に看板を出していたという。

それでも、全国のマニアが待望していた本格的SMホテルの誕生はクチコミで少しづつ広まっていった。

そして「アルファーイン」の名を一躍有名にしたのは、テレビ番組の取材だった。

「最初は『独占!女の60分』って番組が紹介してくれたんですよ。こんなホテルがあるって、室内まで映されて。その番組の司会は、水の江瀧子さんだったんですが、その後ワイドショーも取材に来ましたよ」

SMという言葉がやっと広まり始めた時期。マスコミも興味本位で次々と「アルファーイン」を取り上げた。社長である今関氏にも注目が集まり、日刊スポーツなどの新聞に、「アルファーイン」での起こったエピソードを連載するなど、執筆活動も始まる(当時のペンネームはサド利介)。単行本『凄いこと大好き。(二見書房)』は映画化までされた。

←こちらの十字架は創業当時のもので、今関氏が直接手がけられたもの。他にも今関氏が手がけられた器具などは今でも各部屋に数多く残っているという。
←「アルファーイン」のベッドには、全室このような手枷と足枷、計4個必ず設置されており、またバラムチ・首輪 (チョーカー)・口カセ (Gag Ball)・洗濯バサミ (Clip)・毛バタキ・Eye Maskも各部屋に常備されている。


「アルファーイン」の存在を知ったマニアたちが全国から集まった。ホテルオークラや全日空ホテルに宿泊していながら、「アルファーイン」にやってくるような客も多かった。駐車場には入りきれずに順番待ちをする客が溢れた。ビジネスホテル一年分の売り上げを一カ月で叩き出した。

「銀座の有名クラブに行った時に、女の子に『目黒エンペラーへ行こうよ』って誘ったら、『あなた古いわよ。今はアルファーインよ』って言われたんです。もちろん私がアルファーインの社長だとは知らずに。あれは嬉しかったですね」

とはいえ、まだまだSMという言葉には誤解があり、中にはSLと間違えて鉄道弘済会の専用ホテルだと思って問い合わせが来たこともあったとか。

「たくさんのマニアの方がいらっしゃいました。某役人さんが女性の排泄物を弁当箱に詰めて、それを食べるのを見せられました。あれはショックでしたね。ここまでやる人がいるんだと。そのうち段々、頭脳明晰な人ほど過激なプレイにハマるんだということがわかってきました。みんなこういうことができる場所に飢えていたんですね」

従業員にプレイを見せつけたがる客が多いのも「アルファーイン」の特長だ。

「よく呼ばれるんですよ。コーヒーとか煙草を持ってきてくれと言われて行くと、普通はドアのところで手だけ出して受け取るんですが、時々部屋の中まで入らされるんです。そうすると女性が色々な形で縛られている(笑)。女性は突然知らない男が入ってきたので、キャーッと叫ぶんですが、見られている興奮で、もうタラタラなんです」


↑603の「岩窟王」。部屋の床に直接埋め込まれた便器は「TOTO」によるタイの合弁企業のブランド名「COTTO」。当然タイから取り寄せたのだとか。


↑「アルファーイン」のユニークな特徴のひとつが、各部屋に独特の名前がついていること。ネーミングは全て今関氏によるものだ。
「アルファーイン」が誕生して昨年の12月で29年。昨年には利用客が100万組を突破した。来客の6〜7割がリピーター。長い間通い続けている常連が多い。通常のラブホテルに比べれば、かなり高価でありながらも、マニアはアルファーインに通うのだ。

「オープン当初にメンバーズカードを作ったんです。真っ黒なカードで、これを見せると料金が二割引になるんです。今でもボロボロになったこのカードを持ってくるお客さんがいるんですよ」

29年間のプレイの思い出が詰まったカードということだ。これは捨てられない。いかにアルファーインがマニアから愛されているかという証拠だ。

現在、今関氏は経営から退き、息子のS氏がマネージャーを務めている。S氏は部屋のリニューアルを少しずつ進めている。

「さすがに古くなってきていますから、直すべきとことは直しています。でも、新しい技術を使いつつも、古いところも残していきたいんです。例えば、各部屋の名前なども変えていません。会長が30年前に考えたままです。他につけようと思っても、こんなすごいネーミングは出てこないですよ」

伝統はしっかりと次の世代へとバトンが渡されているようだ。

最後に今関氏にとって、「アルファーイン」とは何なのかを尋ねてみた。

「命ですね。本来なら首を吊っていたかもしれないロープを見た時に、これを思いついたから今の私がある。事業に失敗した人もごまんといますが、そういう人たちに勇気を与えたいですね。こういう生き方もあるんだよということを」

文=安田理央

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イラスト=とやまみーや
東京・六本木ホテル「アルファーイン」

住所:〒106-0044 港区東麻布2-8-3
電話番号:03-3583-3655

■システム
ご宿泊:チェックイン22:00〜チェックアウト翌10:00
(※AM3:00以降のチェックインはAM11:00チェックアウト)
\16,380〜(部屋によって料金が異なるため、詳細はHPでご確認下さい)

ご休憩:チェックインから2時間
※サービスタイムAM6:00〜PM:5:00、但し土曜日を除く)
\9,030〜(部屋によって料金が異なるため、詳細はHPでご確認下さい)

延長料金:1時間毎 \2,310〜\3,680

ご使用人数制限:全室3名様までご利用可能
(※4名様の場合はご宿泊料金の50%、5名様の場合はご宿泊料金の倍額の追加料金)

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「ホテルアルファーイン」

大人のデパート - 大人のおもちゃ・コスプレ衣装のエムズ -
「ニューヤングロボ」

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yasuda_face.jpg 安田理央 エロ系ライター、アダルトメディア研究家、パンク歌手、ほか色々。この夏、ついに四十代に突入ですよ。もう人生の折り返し地点かと思うと感慨深い。主な著作に「エロの敵」「日本縦断フーゾクの旅」「デジハメ娘。」など。趣味は物産展めぐり。でも旅行は苦手。

安田理央の恥ずかしいblog

「エロの敵 今、アダルトメディアに起こりつつあること」(翔泳社)

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08.05.25更新 | WEBスナイパー  >  フェティシストが愛する名匠を訪ねて