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撮影:インベカヲリ★
(C) copyright 2007 Inbe Kawori★
The long interview of
photographer Inbe Kawori★.

強烈な表現衝動の源泉
 
写真家・インベカヲリ★
ロングインタビュー 第1回


インタビュー・文=安田理央

協力=「飛茶瓶洞 Cafe FLYING TEAPOT」


インベカヲリ★写真展『倫理社会』開催直前にお届けする、ロングインタビューを全3回にわたって掲載いたします。またインベカヲリ★の完全撮り下ろし映像を2作品、そしてインタビュー当日の映像も併せて公開! いったいインベカヲリ★とは何者か!? 必見の総力特集!
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インベカヲリ★、写真家としての第一歩は
江古田のプログレ喫茶から



「飛茶瓶洞 Cafe FLYING TEAPOT」。奥にいらしゃるのが店長の目黒氏。壁面を展示スペースとして、一週間まで無料で利用できる他、フロアはイベントスペースとしてライブはもちろん、芝居や上映会などに幅広く利用することができる。興味がある方は詳細をHPでどうぞ。

このインタビューは、東京・江古田のカフェ「飛茶瓶洞 Cafe FLYING TEAPOT」(※以下フライングティーポット)で行なわれた。都内でも珍しいプログレ喫茶として知られる同店だが、ライブや上映会、そして写真や絵画の展示なども行われるサブカルチャーの発信地でもある。そして写真家インベカヲリ★の初の個展も、2001年にこの店で行なわれている。
筆者(安田)も自宅の近所ということもあり、よく足を運び、数年前にはここでリオ・ブラボーというユニットでのライブを行なったこともある。
というように、二人とも「フライングティーポット」には縁が深いのだが、実際に会うのはこの日が初めてだった。

――ここはよく来てるの?
「そうですね。6年くらい前からです。むかし近所に住んでいたんですけど、写真展が出来るお店があるって聞いて。でも、怖くてなかなか入れなくて(笑)。
――プログレ喫茶っていうだけで、ちょっと怖いし、地下にあるしね。実際は綺麗で落ち着く店なんだけどね。
「入るのに勇気が必要で、だから最初は泥酔して来たんですよ(笑)」
――夜、飲んでから来たの?
「昼(笑)。写真展をやらせてもらおうと思ってたから、緊張してたんですよ」
――もうその時は、結構写真撮ってたんだ。
「まだ撮り始めたばかりでした。自分を写した作品のファイルを見せて、そしたら目黒さんが(フライングティーポット店長)いいよ、やろうって言ってくれて。『本当ですか? こんなんでいいんですか?』なんて感じで、初めての写真展をここでやらせてもらったんです」

初めて会うインベカヲリ★は、あのエキセントリックな作品のイメージ通りといえば、イメージ通りだし、違うと言えば違うといった印象の女の子だった。
いや、女の子なんていうと失礼になる、立派に大人の女性なのだけれど、やはりインベカヲリ★は「女の子」なのだと言いたくなる。線の細い外見と、その奥に何か得体の知れないモノを隠し持っているような不可解さは、「女の子」というミステリアスな生き物そのものなのだ。
そんなインベカヲリ★は、どのように作られてきたのか。幼少時の話から聞き始めてみた。

「子供の頃は、子供が嫌いな子供でした」
――背伸びしたい子だった?
「いえ、違います。よく小学生とかって公園とかで遊ぶじゃないですか。友達と一緒にワーって。そういうのが全然面白くなくて、なんで子供時代は子供と過ごさなくちゃいけないんだろうって思ってました。当時はバブルだったから、早く女子大生になりたいなとか(笑)」
――小学生の時から、早く女子大生になりたかった、と。
「大人になれば自由にどこへでも行けて、交友関係も自分で選べるじゃないですか。子供同士だと、話の合う人がいなかったんです、単純に」
――その頃って、何が好きだったの?
「絵を描くのが好きでした。漫画とか描いてました」
――どんな漫画が好きでしたか?
「読んでないんですよ」
――読まない(笑)。
「読まないんですよ。私、漫画読まないし、音楽聴かないし、映画見ないし、小説は読まないし。追求するタイプじゃない」
――文学少女じゃなかったんだ。
「根暗のくせに文学少女ですらなかったんです」
――中学生になると何か変わった?
「その頃も漫画を描いてました」
――どんな漫画なの?
「厳しい先生がいたんですよ。その先生を主人公にして恋愛漫画を描いたりとか(笑)。少女に手を出しちゃうとかダークなネタのギャグ漫画。描いたのを友達に見せたら、その子がまた他の子に見せて、どんどん回っていくと、誰が描いた漫画かわからなくなっていくんですね。だから「あの漫画面白かったね」とか言ってるのが聞こえてくるんだけど、私はあんまり友達いなかったから知られてなくて、他の人が描いたことになってたりして、屈辱感を味わったり」
――著作権の問題が(笑)。友達は少なかったんですか?
「少ないですね。友達はいるんですけど、誰といても基本的には一人ぼっちという感覚がありました」

流行モノに対して天の邪鬼なんですよね
ルーズソックスとか、私は一回も履かなかった

――高校時代はどうでしたか?
「高校は女子高だったんですけど、少しかわった学校で、わりかしみんな個人主義なんですよ。休み時間なんかもみんな一人で勝手なことしていて。友達同士で集まるというより、一人で本を読んでるとか、寝てるとか、そういう子が多くて」
――それは向いている学校だったんだ。
「そうですね。それでも、楽しかったなぁってほどでもないんですけど」
――話を聞いていると華やかな青春時代という感じはないですね。彼氏とルンルンとか、そういう感じはなかった?
「ルンルンって感じはなかったですね(笑)」
――高校時代に何かに燃えたとか、なかったんですか? スポーツに燃えるとかは、まず無いだろうけど。
「心理学の本にはまってました。もうなくなっちゃったけど池袋の芳林堂書店の7階くらいに心理学のコーナーがあって、いつも立ち読みしてたんです。あの階には女子高生ってあまりいないじゃないですか」
――まぁ、いないですね。
「暗い顔したサラリーマン風とか、不気味な女の人しかいなくて。そこに女子高生がポンと入ると、自分だけ華になれる(笑)。このフロアの中では異端な存在だと店員さんは見てるだろうとか考えたり(笑)。隅のほうで一冊しか置いていない本を、これは面白いと思って買うと、しばらくたってそれが平積みにされていたりするんですよ。お、影響を与えてるか!?と思って(笑)」
――そういう女子高生でしたか(笑)。なんか全然、女子高生らしさがないよね。
「流行モノに対して天の邪鬼なんですよね。流行してたら別のことをしたくなる。当時はルーズソックスとか流行してたけど、私は一回も履かなかった」
――まぁ、履かなそうだよね。高校時代は他に熱中するものはなかったんですか?
「心理学ぐらいですね。あと、自己啓発本とか読みまくってましたよ。どうやったら生きてることを楽しいと思えるんだろうってずっと考えてたんで」
――このままじゃダメだと思ってた?
「いわゆる遊んでる子たちのグループにも入れないし、オタクにも入れないし、かといってサブカルにも入れない。自分が所属できるところが、ひとつもなかったんです。それは未だにそうなんですけど」
――内心、遊んでる子が羨ましいとか思ったりした?
「普通の感覚を持ってる人たちに対するコンプレックスはありましたね。流行にのったり、テレビとか映画を面白がれたり、友達と他愛のない会話を楽しめたり。そういう感覚が完全に欠落してるんで、ものすごいコンプレックスでした」
――その頃、漫画はどうしてたの?
「高一までは描いてました。まさし君という情けない男のキャラを作って、時事ネタのヒトコマ漫画描いて、教室の壁に貼ったりしてました」
――漫画家になろうとか考えてなかった?
「絵が下手なんですよ。ウマヘタ系しか描けなくて。だからプロになろうとかは考えたことはなかったですね。ストレス発散の方法としての表現でしかなかったんですよ」
――思春期のストレス発散かぁ。そういう高校生活があって、短大に入るわけですよね。でも、大学に入ったから華やかにデビューといはいかないですよね。
「そうなんです。それでこのままじゃいかんと思って。いつも無理して人との調和を図ってたんですけど、ある日を境に、完全に一人で行動するようにしたんですよ。でかけるのも一人、買い物に行くのも一人。どんな遊びもまず一人で始める。そうしたら、色んなことが上手くいくようになりましたね」
――前向きになったのかな。
「その頃にビデオカメラを買って、映像を撮り始めたんです」
――それは何かきっかけがあったの?
「カメラは好きだったんです。興味はあった。でも、写真を撮るのは絶対に嫌だったので」
――それはどうして?
「うちの父親が建築カメラマンなんですよ。親の職業に影響されたと思われるのが癪だったんで。それって単純すぎるじゃないですか。そんなんじゃいかんと(笑)。だから自分は親の影響なんか受けずに、自分の道を探そうと、ずーっとカメラを無視して生きてきたんです。だけど、どうしても撮る方に興味が出てきて。じゃあ、写真じゃなくてビデオならいいんじゃないかなって、中古屋でビデオカメラを買ったんです」
――ビデオなら親のマネじゃないと。
「そうですね。動くならいいだろうと(笑)。ただカメラに興味を持った時点で負けじゃないですか」
――負けってこともないけどなぁ。
「絶対親にバレたくなかった。カメラに興味あるんだ、じゃあ教えてあげるって流れに持って行かれるのが、どうしても嫌で。だから、こうタンスの中に隠したりして、撮る時だけこっそり持っていく」
――エロ本じゃないんだから(笑)。
「でもある日、ついにバレちゃったんですよ。怒られました。そんな安いカメラ使うんじゃないって」
――そういう怒られ方か。
「もうデジタルの時代だったのに、旧型のHi8でしたから。こんなので撮ってどうするんだって、ソニーのTRV-20を買い与えられて、撮るならこれで撮りなさいって」
――その頃は、何を撮ってたんですか?
「永田町とか……。道行く人を撮るのが好きだったんですね。レンズに七色に光るセロハンとかプリズムとかを当てて、いかにメルヘンチックに撮れるかに凝ってました。あの辺って、普通の人がいないじゃないですか。スーツ着てたり、警察官が立っていたり、制服的なものを着た人しか歩いてないんですよ。子供とかお姉ちゃんとかいないんですね。だから、自分がひとりで歩いていると、それだけで異物になれたりして。それも面白かった」
――なるほど。
「心理学のコーナーの女子高生みたいな感じで、自分がここにポンって現れると、その違和感が面白いんですよ」
――それを撮ってどうしてたんですか?
「撮ってどうしようとか、作品にしようというのはなかったんです」
――じゃあ、なぜ撮っていた?
「ビデオ撮ってるだけで、ビックリするぐらい落ち着けたんですよ。それはもう漫画じゃなくなっていた。DVカメラを手に入れてからは、ショートムービーなんかを撮るようになりました」
――どんな話の?
「スピリチュアルな音楽を流して、コントを字幕付でやってるみたいな。信号をやたらに怖がる人とか、母親に馬の仮面をかぶらせて掃除とか洗濯してもらったのをすごい早送りにして音楽と合わせたりとか。シュールな映像ですね。それを数少ない友達に見せたりして」
――映像作家になろうと思った?
「実は通っていた短大で広告を勉強していたんですよ。最初映像関係に行こうと思ってたんですが、オープンキャンパスに行ったときの映像の先生がちょっと頭かたそうな人で。この人の影響を受けたらマイナスにはたらくなと直感的に思ったんです。そしたら広告の先生が「俺の授業なんか受けないほうがいい」とか普通じゃないことばっかり言う人で面白かったんですね。広告って何をするかわからなかったんですけど、ピンときてそこを選んだらはまりました。だから当時はコピーライターに憧れてましたね」

(続く)


インベカヲリ★完全撮り下ろし映像公開!
カヲリチャンネル vol.01
撮影モデル面接ドキュメント

kawori_channel 01.jpg
インベカヲリ★のもとを訪れるモデル希望者との面接の模様を収録したリアルドキュメント。

インベカヲリ★撮り下ろし映像はこちらから>>>

Windows Media Playerの入手
WMV形式 155MB 9分55秒


ニコンサロンjuna21
インベカヲリ★写真展『倫理社会』
■東京
2007年10月30日(火)〜11月5日(月)
10:00-19:00(最終日は16:00まで)
会場:新宿ニコンサロン
(東京都新宿区西新宿1-6-1新宿エルタワー28階 ニコンプラザ新宿内)
※11月3日(土)13:00〜14:00 ギャラリートークあり

■大阪
2008年4月3日(木)〜4月8日(火)
10:00-18:00(毎週水曜日休館)
会場:大阪ニコンサロン
(大阪市北区梅田2-5-2新サンケイビル1階 ニコンプラザ大阪内)
※グループ展につき、東京での展示と同内容で、出展数を減らしての展示となります

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インベカヲリ★ インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。

インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/



yasuda_face.jpg 安田理央 エロ系ライター、アダルトメディア研究家、パンク歌手、ほか色々。この夏、ついに四十代に突入ですよ。もう人生の折り返し地点かと思うと感慨深い。主な著作に「エロの敵」「日本縦断フーゾクの旅」「デジハメ娘。」など。趣味は物産展めぐり。でも旅行は苦手。

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07.10.27更新 | WEBスナイパー  >  インタビュー