一昔前は数えるほどしかいなかった緊縛師という存在。だが現在では実に多くの方々が日々しのぎを削っている。2005年、そんな緊縛師の第一人者であった明智伝鬼氏が亡くなられた。ひとつの時代が終われば、新たな時代が始まる。そこで現在注目の緊縛師4人にインタビューを行なった。来たるべき新しい時代の予感を感じていただきたい。 |
新時代への予兆
様々な道具が混在するSMプレイのなかでも、縄の存在は特別だ。
体を拘束する用途は当然ながら、特にその女体へかけられた際の美しさ。「shibari・kinbaku」として広く世界にも認められる日本独特の文化である。
そんな縄を自在に操るのが緊縛師と呼ばれる存在だ。
直線的な紐でしかない縄を様々な技法を駆使して女体にかけ、艶めかしさや彩り、そして女性の心情までも表現する。その一本一本は複雑極まり、また当然ながら人体の仕組みにも精通していなければ、体の動きを適度に拘束することなどできない。
そしてまた相手の体を傷つけない安全性への配慮はもちろん、縛るのは肉体でありながら精神的にも拘束することで生まれる被虐感や羞恥心など、そういった様々な要素を満たさなければ女性を、そして見るものを満足させることができないのである。
こうしたことを容易に可能とするために相当の努力が必要であることは想像に難くないだろう。緊縛師とは一朝一夕にしてなりえるものでは決してない。
そして弊誌には様々な調教師の方が連載されている。濡木痴夢男氏や雪村春樹氏などのように、まさに緊縛師という方もいれば、読者の目から一見すると縄をあまり重要視されていないと思える方もいらっしゃるかもしれない。だが彼らは皆が皆、緊縛術を心得ている。その上で縄の他に様々な道具を用い、自らの世界を表現しているのである。
今回、特別企画として紹介する4人はいずれもレギュラーでは弊誌に登場されない方たちだが、いずれも斯界で活躍されている方たちだ。そしてまた緊縛師であることを選んだ人たちでもある。
生い立ちや緊縛への目覚め、斯界への関わりやM女性への考え方はもちろん、今後の活動や亡き人への思いを含めて語られる、緊縛師たちの胸中。その言葉の端々から、過去と現在、そして未来へと向かう新時代への予兆を感じていただければ幸いである。
※この記事はS&Mスナイパー2006年1月号に掲載された記事の再掲です。
文=編集部・五十嵐彰