The decision to fight against the world which cannot be finished.
"終われない世界"に、立ち向かう決意を。 |
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ついに『フラクタル』世界の一端が明かされた! どことなく漂うこの世界の異常感、その正体は「自由至上主義」だったのだっ!という第2話。ジブリ炸裂の第1話に続き、第2話はもう独自の話が始まり、山本監督版「君たちはどう生きるか」出現の予感ビシビシでした。
今回はとにかく色々な芽が出ていて、これから第3回、4回と一体どこが伸びていくのか?
たとえば、まずは恋ですよ。恋があるよねどう考えても。僕は思わず観ながら言いましたね、主人公が「フュルネに会って、まずしたいこと......怒りたい」ってそれは恋です! 少年! 恋、始まりました! やられちゃってます!
かと思えば、セックス・ドールの話も出てくる。随分生々しくて、士郎正宗のマンガなら分かるけど、ジブリじゃ(庵野も?)そういうのはまず出てこない。これも今後、効いてくるのでしょうか。
そして、第1話の最後に出てきたいかにもアニメアニメしたキャラクター。これがどうやら、天真爛漫らしいと。そして、無垢であり、この身体性を失った未来の世界で、「身体性」を象徴する、ところが本人はどうやら電子的存在らしいと。この逆説、冷たい人間より、優しいレプリカント(人造人間)のほうがより人間的ではないのか?という『ブレードランナー』(リドリー・スコット監督、1982年)を思い出さずにはいられないですが、同時にこの子は主人公を振り回す『デュー・デート』のザックでもありました。
『デュー・デート』は、まだ観てないヒーマニストの為に説明すると、正式な題名が『デュー・デート〜出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断〜』(トッド・フィリップス監督)で、まあ題名で全てが説明されているんですが、妻が出産まであと5日!の鼻持ちならないエリートの主人公と『ハング・オーバー!』(トッド・フィリップス監督、2009年)のザック・ガリフィアナキス演じる超絶ダメ人間が、一緒にアメリカを横断するはめになるという珍道中映画です。とにかくザックにエリートが限界まで振り回され、「こいつを道に起き去りたい」という欲望と必死に戦うというのが内容なんですが、全編観終わると実は!この映画自体が、主人公がこれから立ち向かう「子育て」のメタファーになっていた(おすすめ度は10ターヘル満点で6.5ターヘルポイントです!)という仕組みになっていて、それをこのアニメの主人公と娼婦の声天真爛漫キャラクターもやっているわけです。
話が通じない、非常識な、反社会的な、うざすぎるザックを引き受けることで、『デュー・デート』の鼻持ちならないエリートはついに「大人になる」のですが、この『フラクタル』ではどうやら、そのゴールになるべき価値観があらかじめ大人どころか、ほぼ世界全体によって否定されているらしいと。
これはもうどうしたってこの主人公、今辺境にいますがこの後この世界の中心に行かざるを得ないんじゃないでしょうか。この天真爛漫キャラと一緒にいて、成長するなら、それは世界と真っ向衝突しちゃうんですから、行かなくたって向こうから捕まえにくるかもしれない。大体もう、その予感がバンバン始まってますよ! 両親の電子的な影によって、早速、探りが入っている。
そして、「辺境から始まって中心へ行く話」とくれば、これはやっぱりコナンやラピュタを思い出しちゃう。今回の女の子を警察署に預けてとぼとぼ帰って来るシーンだって、『天空の城ラピュタ』のパズーがムスカの駐屯地からとぼとぼ帰って来るシーンと同じ盛り上げ方を狙っている。その後、空賊が主人公を有無を言わさずまた冒険に引き戻すのは、まさにあのラピュタの、始まりかけた非日常が終わり、暗くいつも通りの我が家に帰る、と思いきや急にまた冒険に巻き込まれる!「30秒で支度しな!」ヤッター!の「興奮、沈静、より興奮!」みたいな「吸気、圧縮、爆発、排気」みたいな計算しつくされたシーンと同じ流れでしょう。やっぱり表面上は見えなくても第2話もまだまだジブリだった!
けどやっぱり今回のハイライトは、このアニメアニメ娼婦キャラクターからの主人公への全幅の信頼、表明シーン! あそこからジブリフォロワーじゃない『フラクタル』が完全に始まった!
「あなたが私を呼び出したから、あなたが私の『帰る家』よ」というセリフを顔面ドアップで言うんですが、その時の笑顔が重い! そして恐い! これをアニメで表現するのは凄い!と思ったら「笑顔が恐い」ってセリフが入りました けど、この『フラクタル』のテーマは、これはどうやら「家族」になるんだろうか。これは渋過ぎて、まさに予想を超えていました。
自由でも1人であることの空しさと、家族を持つことの(妻や、子供!)疎ましさ。まさに「君たちはどう生きるか」の片鱗がここにある訳です。だから、これをたっぷり回数を重ね追い求めてくれるのか!と思っていたらもう今回の後半であっさり「この笑顔はちっとも重くなんてないんだ」って主人公受け入れちゃったんで、「えー!」みたいな「もうOKですか!」みたいな「主人公すごいまっとうな奴だったんじゃん!」みたいな、ちょっと早くもストーリーから置いて行かれる不安がよぎったのですが。
重荷を背負えない病にかかった人間としては、これからはむしろ、主人公ではなくその周りの人間たちに感情移入して観ていくことになるのかもしれませんね......。
それにしても、街で最初に出会うおっさんと警察署のおっさんの顔。いつの時代もそうなんだろうけど、その時代の世の中の仕組みをそのまま貼付けたような、このおっさん顔の再現度はすごかった! この顔と、主人公が親のアバター(『フラクタル』ではドッペルと呼ばれていますが)に向かって言う「そっかなー」の時の顔は、この回の隠れた名場面じゃないでしょうか。
文=ターHELL穴トミヤ
『フラクタル第2巻DVD』(初回限定生産版)
関連リンク
フラクタル - FRACTALE - 公式サイト
12.01.02更新 |
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