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女の子にとって、「美醜のヒエラルキー(それによって生まれる優劣)」は強大だ! 「酉年生まれゆえに鳥頭」だから大事なことでも三歩で忘れる(!?)地下アイドル・姫乃たまが、肌身で感じとらずにはいられない残酷な現実。ステキにポップな白根ゆたんぽさんのイラストも見逃せない、女子のリアルを見つめるコラムです。
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「下校時間が遅くなると整形に失敗した口裂け女が『わたし、きれい?』って聞いてくるんだって」
小学校ってところには怪談がいくつもあった。私は怖がりだったから、ひとりの帰り道はいつも口の中で小さくポマードポマードって――口裂け女が逃げていく呪文――を唱えていたけど、トイレの花子さんには会ってみたいと思っていた。
小学校ってところはそういうことを考えていないと退屈だった。あの東校舎の一階、職員室のはす向かいにある女子トイレの奥から二番目、まだひとつだけ和式便所のままの個室に、花子さんはいるらしい。
小学校ってところはとにかく居心地が悪かった。きっと、黒いおかっぱ頭で、同じくらい黒い瞳が凛としていて、小さな唇を固く結んでいる花子さんとなら、クラスの子より話が合うような気がしていた。
あの居心地の悪さ。
たとえば、音楽の時間におしゃべりをしていて叱られた、りなちゃんが
「さとこ先生ってよく見ると可愛くないよね」
と、言ってきたこと。
さとこ先生は授業だと簡単な曲しか弾かないけど、とても素敵な演奏をするって知っていた。だって放課後に遅くまで図書室で本を読んでいると、音楽室からピアノの音が聴こえてくるから。先生にそのことを伝えたらびっくりした顔をしてから「仔犬のワルツ」って曲だと教えてくれた。先生のえくぼが柔らかくへこんだ。
あの、同級生たちの無邪気な乱暴さ。
女の子っていうのは、自分が不利な状況になったり、相手より能力や技術や地位が劣っていたりすると、すぐに美醜の話を持ち出して攻撃する。そして美醜のヒエラルキー(それによって生まれる優劣)は、強大だって、小さい頃から本能で知っている。そういう生き物なのだ。
私はそのことに気づくのが遅くて、気づいた頃にはもう自分が「女の子」かどうか微妙な年齢になっていた(無論、私は世間からすれば立派な小娘であるけれど、アイドルという幼児性を肯定する世界で育てられたので、18歳以降はもう女の子ではいられない気がしてしまう)。
大学へ向かう途中、近所の小学校で、赤と白の帽子で組分けされている子どもたちを見ながら(ああ、私はもうあんなことしなくていいんだと安心する)あの娘たちはもう気づいているんだろうなと思う。
思えば私は随分とぼんやりした子どもだった。酉年の祖母からは
「たまちゃんも酉年だから鳥頭だね」
と、よく笑われた。どんなに大事なことでも、三歩も歩くとすぐ忘れてしまうのだ。
鏡を見ても、写真を見ても、自分の顔すらすぐに忘れてしまうので、美醜ヒエラルキーの話なんて夢のまた夢だった。
それでよく「地下アイドル」なんて仮にも美醜で評価が変わる世界で生活しているなと自分でも感心してしまう。そもそもアイドルになる夢があったわけでもなく、小さい頃から夢といえば目を閉じて見る夢だけで、大人になれば自然と会社で働くものだと思っていたのだ。
不景気な時代に生まれて、"あの"大震災の前日に高校の卒業式を迎えた。才能も自信も、手に職もなかったので大学に進学したものの、初年度の就職率は最悪で、すでに払ってしまった入学金と学費を思って呆然とした。
いまは進学先の女子大を卒業するために、地下アイドルやアダルトライターの仕事をして、学費を稼いでいる。自分の性を存分に売りにして稼いだお金を使って、フェミニストの話を聞いて単位をとっている。
この原稿の大筋を大学で書いていたら目の前で話していた女子大生ふたりの片方が泣き出した。
「いいよね、あんたはそうやって可愛いから就職できてさ」
と言って。
もうこんなことじゃ驚かない。入学した年はもっとひどくて、毎日のようにこんな子を目にしたから。
そういうところで私は21歳を生きてる。
文=姫乃たま
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14.06.14更新 |
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