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monologue in the night
女の子にとって、「美醜のヒエラルキー(それによって生まれる優劣)」は強大だ! 「酉年生まれゆえに鳥頭」だから大事なことでも三歩で忘れる(!?)地下アイドル・姫乃たまが、肌身で感じとらずにはいられない残酷な現実。女子のリアルを見つめるコラムです。
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ちょっとした雨なら傘を持たないので、梅雨はいつも困ってしまう。あとで天地をひっくり返したような大雨になると分かっていても、天気予報にどれだけ警告されても、出しなの雨がたいしたことなければ、私は傘を持たない。人から言わせれば、その大したことない雨すら傘をさすべき、らしいのだけど。
とにかく痛い目に遭ってからでなければ、事の重大さに気が付かないのだ。いつもそうだ。こんな私だから折りたたみ傘ひとつ、煩わしくて持ち歩けない。

今日だってそうだ。家を出るときは大したことのなかった雨が、大学の最寄り駅に着くと大雨になっていた。一瞬、カフェにでもはいって昨日買ったばかりの本を読むという優雅な午後が頭にちらついたけれど、一年後に大学五年生になっている自分(というよりは、一年分の学費)を思って、渋々雨の中を歩き始めた。
突然の雨に慌てている人だと思われるのが嫌で、わざとゆっくり歩いた。私の隣を、授業終わりの女子大生ふたりが相合い傘で嬌声をあげながら通りすがっていく。女友達か、と思った。

女友達、そんな子たちが、かつて私にもいたように思う。小学校とか中学校の頃。みんなどこへ行ったんだろう。女の子の友情はちょっと変わっていて、アンバランスで危うかった。
たとえば、誰かが誰かを可愛いと言う。そうすると言われたほうは、それを否定したうえで自分より相手のほうが可愛いと言わなければいけないのだ。
最初の頃は私だって、英語の授業で「ハロー、ハウアーユー?」と聞かれて「アイムファイン!」と答えるくらいには何の疑問も持たず、深く考えずに答えていた。「そんなことないよ! なんとかちゃんのほうが可愛いよ!」である。
中学生になって、ふと、このやりとりに疑問を持ってしまって、考えてしまった。彼女たちはなんでもない時に、可愛いねと言ってくる。でも昨日も会ったし、同じ制服だし、髪を切ったわけでもないし、ふとした仕草が可愛かったとか? まさか、それこそ彼女じゃあるまいし。
それでようやく、この定型文のやりとりによって彼女たちが無意識のうちに自尊心を満たしていることに気が付いた。余計なことに気付いてしまったら、定型文は喉に引っかかって出てこなくなってしまった。たった一言「なんとかちゃんのほうが可愛いよ」と言えばいいのに。ずっと小骨が刺さっているような、居心地の悪さだった。
あるいは、大人たちは「褒められたら、ありがとうって言えばいいのよ」と言った。でもそういうことじゃないのだ。彼女たちは本当に私を褒めてるわけじゃないのだから。ありがとうなんて言ったら自意識の高い鼻につく子だと思われてしまう。
そうこうしているうちに、自尊心を満たすための定型文はやがて、誰それって顔は可愛いけど性格悪そうだよね、という確信的で高度なものに変化してきて、私の居心地の悪さは喉に小骨がささった程度ではなくなり、完全に女友達から離脱してしまった。それから今日まで「女友達」って、私にとってそういうアンバランスで危ういものだ。

高校生にもなると、同級生も大人びていて、意外なことに女の友情から離脱しきった私でも学校生活になんら問題はなかった。渋谷、恵比寿、六本木に囲まれた立地も良かったのかもしれない。同級生たちはみんなひとしきり遊び終えていて、楽しいことも知っているし、遊び疲れて少しくたびれているところも居心地が良かった。
私は喉に小骨が引っかかっていそうな子たちと集まって仲良くなった。どうやって知り合って、どうやって仲良くなったのかすら思い出せないほどに自然に。そして私はその中のひとりの女の子にメロメロになった。
授業が早く終わると廊下の窓から教室を覗いて冷やかしてくるいたずらな笑顔、屋上に寝転がっている時の眩しそうな顔、放課後にカフェでコーヒーを飲んでいる時の幸福感、クラブでふたりの好きな音楽がかかると抱き合って喜んで踊った、あの高揚感。私は彼女を本当に美しいと思った。嘘っぽく思われることを恐れるほど、抑えきれなくて何度も何度も美しいと、可愛いと言った。女同士の蜜月というものを、初めて知った。

もしこれを女友達だとして、小学生や中学生の時の女友達が、私が疑っていたような不純な動機じゃなく、高校生の私と同じような気持ちで可愛いね、可愛いねと無差別に言い合ってたとしたら恐ろしい。あんなに美しくて大事な人が何人もいたら、きっとみんな骨まで甘く浸って砕けてしまうだろう。私にとって、あんなに美しい関係はもはや「女友達」ではない。恋と間違えてしまいそうだったし、恋だったのかもしれない。

大学の玄関で警備員に怪訝な顔をされながらワンピースの裾を絞った。雨水がざぶざぶと床に落ちる。そういえば、女友達がいたころは些細なことでよく泣いた。あの頃の方が人は周りにたくさんいたはずだけど、どこか孤独だった。
雨は小雨で中途半端に濡れている時が一番鬱陶しい。ああ、またやってしまった、少し考えて傘くらい持てばよかったのにと思う。でも本当のところ、女友達も傘も持たず、ずぶ濡れになった私にもう煩わしいものはない。途中の小雨だけが煩わしかったけれど、いまは爽快だ。

とはいえ、女友達はともかく、傘くらいコンビニで買ってなんとかすればよかったのにと思わないこともないけど。

文=姫乃たま

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姫乃たま 1993.2.12下北沢生まれ/日本の地下アイドル/アダルトライター/司会/女子大生
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Twitter=https://twitter.com/Himeeeno

白根ゆたんぽ 1968年埼玉県生まれ。イラストレーター雑誌や広告、webコンテンツなどにイラストを提供しているほか自身のZINEのシリーズ「BLUE-ZINE」や個展の図録「YUROOM GIRLS SHOW」などの制作、販売も行っている。最近の仕事に「ノベライズ・テレビジョン」(河出書房新社)装幀、「セックスペディア」(文藝春秋)カバーイラストなど。
http://yuroom.jp/
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14.07.19更新 | WEBスナイパー  >  とりあたまちゃん
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