DJ Harukichi shouts at the crossing of music and Eros. 毎週木曜日更新! DJハル吉の脳内性感ミックスアップ! 音楽とエロスの交差点【2】 「HARDCORE EXTENDED」 Director:Richard Kern 文=DJハル吉 |
1980年代ニューヨーク・イーストヴィレッジ、当時勃興しつつあったノイズインダストリアルやNO WAVEと言われるジャンルのミュージシャンを俳優として使い、アングラ映画界のカルト監督として名を馳せたリチャード・カーン。その彼の最新DVDはAV嬢のイメージビデオっぽいソフトな作品だった。果たしてリチャード・カーンは何処へ行こうとしているのか。後編。
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私の短編映画は、ピアスの穴を開けたり、自分の身体を切っている少女とか、喧嘩や、殺人や、レイプといったシーンが出てきます。――リチャード・カーン(『S&M スナイパー』08年8月号)
前回に続いてフェティッシュ・フォトグラファー、リチャード・カーンのDVDをレビューします。
『RICHARD KERN: HARDCORE EXTENDED』(フランス盤)
「Richard Kern: HARDCORE EXTENDED」 Director:Richard Kern |
これはフランスの「Le Chat Qui Fume」社がリチャード・カーンの最新DVD『Extra Action』(前回参照)と同時に発売したもので、基本は2002年に発売されたアメリカ盤『The Hardcore Collection』と同じ。
「The Hardcore Collection」(2002) Director: Richard Kern, Terry West |
ただしこのフランス盤『RICHARD KERN: HARDCORE EXTENDED』は二枚組になっておりアメリカ盤未収録の作品(86年から91年に製作された)「Pierce」「King of Sex」「Scooter and Jinx」「Nazi」「Catholic」「Goodbye 42nd street」がDISK2に入っています。ちなみにこの6作品は、フランス盤でしか観れないのかというとそうではなく、アメリカ盤『Extra Action and Extra Hardcore』にボーナス収録されています。
「Extra Action and Extra Hardcore」(2008) Director:Richard Kern |
混乱しそうですが、つまりこのフランス盤『RICHARD KERN: HARDCORE EXTENDED』は80年代中期から90年初頭のアングラ映画監督だった頃の作品を全て収めたリチャード・カーン完全版。トータル19作品お腹一杯観れるというわけです。まぁ少し問題なのは当然ながら字幕がフランス語ってところ。ほとんどストーリーのない短編ばかりなので問題ないといえばないですが、「You killed me first」や「Fingered」は話が少し長いので日本語字幕が欲しいところ。そうなると以前アップリンクが出していた『ハード・コア Vol.1』『ハード・コア Vol.2』(字幕が特殊翻訳家柳下穀一郎)も捨て難いんですが、こちらはこちらでボカシが大きすぎて何をやってるか分からないシーンも多く、現在は廃盤で入手困難と。うーん、「帯に短したすきに長し」とはまさにこれ。
それでは幾つかピックアップしながらザッと観てみましょう。大部分(修正orカット版)がYoutubeにアップされてますが、やはりDVDの高画質無修正でまとめて観れるのはうれしいですね。販売元「Le Chat Qui Fume」にサンプルムービーがあります。
【http://lechatquifume.com/index.php?Richard-kern-hardcore-extended】
「Death Valley 69」
オルタナロックグループ、ソニックユースのビデオクリップ。メンバー若いです、当たり前だけど。一瞬出てくる女性は前回触れた「transgressive movement」のスター女優のラングレッグ。ソニックユースのアルバム『EVOL』ジャケットの女性と言えばピンとくる人も多いはず。後で触れるPV「You killed me first」「Fingered」にも出てきます。
【Sonic Youth - Death valley 69】
「The right side of my brain」
モノクロ映像。リディアランチの巨乳が拝めます! しかも当時付き合ってたJGサールウェルとのフェラシーンがノーカット! ヘンリー・ロリンズも出てきますが、このときはまだ刺青が少ないんですね。
「You killed me first」
いつも出来のいい姉と比べられることにウンザリした妹が一家を惨殺するストーリー。親と折り合いの悪い人はぜひ観て欲しい。
「The sewing circle」
うわー痛い痛い。ただ女性器を縫合してるだけの映像です(笑)。右の女の子が縫われるんですが、日本ではこれ以上お見せできません。当然Youtubeにも上げられない。
「Fingered」
テレホンセックス嬢のリディア・ランチが男と出会って男の車で連れまわされる(途中殺人あり)というストーリー。『ナチュラル・ボーンキラーズ』を思い出したが、『ボニー&クライド』という説も。音楽はリディア・ランチとJGサールウェル。22分と結構長いのが災いしたか、こちらもYoutubeなし。
「Submit to me now」
顔面にトカゲが這い回り、サールウェルのオナニーダンス(ちんこデカッ)、リディア・ランチが全裸で挑発、セルフ剃毛するおっさん、鞭を顔面に巻き血を流す男、といった映像がカットアップされる。やはりちんこが出るとYoutubeにはアップできませんね。音楽は上記二人+サーストン・ムーア(前回触れた『Extra Action』の音楽も担当)。
「My Nightmare」
自分がカメラマンでモデルとイケナイ関係になる、と想像しながらオナニーする男。欧米人のちんこってほんと大きいよなー。なのでYoutubeなし。
さてDISK2に移って
「Pierce」
タイトルどおり。女の子が乳首にピアスを入れてもらうだけの映像。うぅぅ痛い痛い痛い。麻酔なしで、乳房を冷やしてそのまま針を通すんだなーと感心。痛い映像もYoutubeでは観られません。
「Scooter and Jinx」
これもソニックユースのPV。女性カメラマンとモデルの撮影現場風景。チェーンソーノイズが鳴り続けるBGMが凄い。ソニックユースさすがです。
「Goodbye 42nd street」
カーンが手持ちカメラでストリートを流す映像。ガラスの割れる音や悲鳴のBGMがノイジーだなーと思ったら音楽はいつものリディア・ランチ&JGサールウェルに加えてスワンズのノーマン・ウェストバーグ! そりゃウルサイわ。これはYoutubeにあってもおかしくないんだけどなぁ。あ、最後に拳銃自殺するからダメなんだ(笑)。
こうして前後編二回に分けてカーンの現在と過去を紹介したわけですがが、確かに昔の方がアバンギャルド。しかし一方では現在でも手持ちカメラでDVDを作り、盗撮っぽい写真集を出してるわけで、だいぶ丸くなったとはいえリチャード・カーンの根底にある「プライベート感」は未だに失われてないなと思いました。
(続く)
DJハル吉:今日の二枚
『The Crumb』(12" Vinyl) Lydia Lunch / Thurston Moore (88 Widowspeak Productions)
リチャード・カーンの映画最多出演(?)リディア・ランチとソニック・ユースのサーストン・ムーアによるコラボ12インチシングル。録音は87年なので、まさにカーンとつるんで映画を作ってた頃。リディアとサーストンが作詞作曲、プロデュースはこれまたカーン映画の常連クリント・ルイン(JGサールウェル)。鉄板をガンガン叩いてるようなジャンクビートに貯水槽でエレキギターをひきずってるような反響ノイズ、そしてリディアの浮遊するヴォーカル。カーンの映像が浮かんできそう、ってかこのPVをカーンに作って欲しいね、今更だけど。B面はリディアが歌い、ローランド・S・ハワード(元バースディパーティ)がギターを弾くだるくてゆる〜いロック二曲。
曲は違うがリディアとサーストンが一緒に演奏してる映像がこちら。これは2008年6月13日ニテッィング・ファクトリーでのライブ。曲はリディアが昔組んでたバンド「Teenage Jesus & the Jerks」の「Orphans」。ニューヨークの「No Wave」ムーブメントが好きだった人にはたまらん映像。あれからもう30年近くが過ぎたんですね。
『Wash / Slog』(12" Vinyl) You've Got Foetus On Your Breath (85 Some Bizzare)
リチャード・カーン映画に何度も出演し音楽も作ったJGサールウェルのプロジェクト、「フィータス」の12インチシングル。ジャンクなファンクで「ワ〜オッ」「アゥアゥアゥッ」「ほぅ〜ほぅ!」と一人浮かれまくるフィータスがサイコー。なんかせっぱつまった躁状態というか、瞳孔開きっぱなしというか、ひしゃげた声が裏返ってるし。あ、急に音がデカくなるからDJするときは注意。「フィータス」のサイトはこちら【http://www.foetus.org/】
「フィータス」はこんな人です。
文=DJハル吉
関連リンク
New Nude City.Com
Richard Kern公式
Le Chat Qui Fume
DJハル吉 7"インチ専門DJ。得意なジャンル:童謡とノイズ。その他インディーズ翻訳家兼作曲家。曲を演奏してくれるオーケストラ募集中。鳥の唐揚げが大好き、あとラム肉。座右の銘「猫は野良に限る」。 DJハル吉サイト=「峠の地蔵」毎週月曜更新 |
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