DJ Harukichi shouts at the crossing of music and Eros. 毎週木曜短期集中新連載開始! DJハル吉の脳内性感ミックスアップ! 音楽とエロスの交差点【1】 「Richard Kern: Extra Action」 Director:Richard Kern 文=DJハル吉 |
1980年代ニューヨーク・イーストヴィレッジ、当時勃興しつつあったノイズインダストリアルやNO WAVEと言われるジャンルのミュージシャンを俳優として使い、アングラ映画界のカルト監督として名を馳せたリチャード・カーン。その彼の最新DVDはAV嬢のイメージビデオっぽいソフトな作品だった。果たしてリチャード・カーンは何処へ行こうとしているのか。前編。
|
次回の記事>>>
かつて1970年代末から80年代中期ニューヨークのアングラ映画シーンで、「Cinema of Transgression」(反常識映画とでも訳しますか)という8mmカメラを使った超低予算映画制作ムーブメントがあり、『ピンクフラミンゴ』『セシル・B/ザ・シネマ・ウォーズ』の監督ジョン・ウォーターズもそのうちの一人でしたが、もう一人のちにフェティッシュ・フォトグラファーとして有名になる人物がいました。それがリチャード・カーン。当時の彼の作品は『ハード・コア Vol.1』『ハード・コア Vol.2』としてアップリンクからヴィデオ発売されていたので観た人も多いかもしれません。現在はアメリカで『Hardcore Collection』としてDVD化されており、リディア・ランチ、クリント・ルイン、ソニック・ユース、ヘンリー・ロリンズが出演や音楽担当を担当した、今となっては信じられないほどの豪華メンバーによる短編映画集になっています。
ちなみにこのムーブメントをテーマにしたドキュメンタリー映画『Llik Your Idols』が2007年に公開されましが、どうやらアップリンクが配給しそう。さらに、「Cinema of Transgression」ムーブメントのガイド本『Deathtripping』Jack Sargeant著というのも発売されているんですが、翻訳出ないかな。
「Deathtripping, Jack Sargeant」 by:Jack Sargeant (c) 2003 Soft Skull Press, Inc. |
話が逸れましが、そのリチャード・カーン(1954年ノースキャロライナ出身)は上記の通り80年代はアングラ映画監督として活躍、その後90年代に入ってからボンデージ/フェティッシュ写真家として名を馳せていきますが、そこから先は皆さんもご存知と思うので省略。2007年にはあのタッシェンから写真集『Action』を発売、今年は『looker』という盗撮っぽい写真集を上梓し、現在も旺盛な作家活動を継続中です。
「Richard Kern, Action」 by:Dian Hanson (Editor , Richard Kern (Photographer) (c) TASCHEN 2008 |
「Looker」 by:Geoff Nicholson (Contributor) , Richard Kern (Photographer) |
また年間99.95ドル払えば彼の有料サイト『New Nude City.Com』で新作写真&ムービーを思う存分楽しめます。
さてそれでは、彼の最新DVD『Extra Action』(フランス盤)を紹介します。
「Richard Kern: Extra Action」 Director:Richard Kern |
アメリカ盤はこちら。
「Extra Action and Extra Hardcore」 Director:Richard Kern |
ふたつの違いは、フランス盤にはボーナスとしてリチャード・カーンのモデルを務めたMelanie Le Portier嬢へのインタヴューが15分つき、アメリカ盤にはボーナスとして『Hardcore Collection』の未DVD化作品が収録されているところ。さらにちょっとややこしいが、このアメリカ盤のボーナス映像はフランス盤の『Hardcore Extended』(次回紹介)にボーナスとして収録されています。
スチール撮影の間にカーンがハンディカメラで撮影したのではないかと思わせる、プライベート感いっぱいの約60分。「挿入」「脚」「その他」「ウェット」「ヤングガール」などフェティッシュなテーマに沿ってモデル達を追っていきます。モデルは約1〜2分で次々と忙しなく切り替わり(何度か同じモデルが登場)、またオナニーやレズシーンでもモデルの声はカットされており、ノイジーな音楽が全編に流れますが、この音楽は80年代からの付き合いであるソニック・ユースのサーストン・ムーアが担当、ギターのハウリングドローンノイズ、ローファイギター、ハンマービート、電子音、悲鳴のサウンドコラージュとやりたい放題。BGMというよりFGM(Front Ground Music)です(笑)。もはや、サーストン・ムーアの為の長大なPVと言ってもいいかもしれません。サーストンのファンはマストアイテム。
キッチンでオナニー、ナース・コス、猫とベッドで戯れる、ベッドでレズプレイ、ディルドオをしゃぶってから挿入、パンスト見せつけ、自分の足を舐める、首輪&足かせ、おっぱいを紫色になるまで緊縛&ローソク、お風呂でくつろぐ、体育館でバスケ、下から撮った放尿シーンなどなどカーンの「俺はコレが好きだ」が溢れていてグッときます(もちろん無修正、パイパン率高し)。カーンの撮影現場にビデオカメラを持って参加してるような気分に浸れるでしょう。最近のカーンはすっかりソフトになってしまったという意見もありますが、例えばアニエス・ジアールによるインタビュー(『S&M スナイパー』08年8月号)、
アニエス:1987年以前、あなたは暴力や、SM、武器、ドラッグ、ゴア、ノイズ音楽といったものに溢れた映画を作っていましたね。現在のあなたは、一見普通のポルノを撮っていますが、なぜですか?
カーン:私は80年代に麻薬をやめることができたのです。写真集『NY Girls』は、麻薬をやめた後のものですが、昔の経験の残余感が残っていて、短銃とか、ボンデージが出てきます。しかし、現在、私は、もはや同じ段階にはいないのです。憂鬱と攻撃ばかりで人生を台無しにしても仕方ないでしょう。
人間とは成長する生き物。ボブ・ディランがいつまでも反体制フォーク歌手ではないように、カーンだっていつまでもアングラカルト映画監督ではいられません。
問題ないところをキャプチャーしましたが、お○んこが見たいという方は販売元Le Chat Qui Fumeにサンプルムービーがあります。
【http://lechatquifume.com/index.php?Richard-kern-extra-action】
それでもやっぱり80年代のカーンが最高という頑固なあなたにはこちら
『Hardcore Extended』。
「Hardcore Collection」 Director: Richard Kern, Terry West |
こちらは次回詳しくレビューします。 お楽しみに!
(続く)
DJハル吉:今日の二枚
『Psychic Hearts』(2LP) Thurston Moore (95 Geffin)
リチャード・カーンDVD『Extra Action』の音楽を担当したサーストン・ムーアのソロアルバム。ギター、ベース、ドラムのシンプルな脱力ロック。しゃべってるような歌い方で特にサビとか意識しない感じ。ジャンクヘヴィな「pretty bad」からロケンローな「Patti smith matth scratch」への流れがグー。CDになってるし、数年前に2LP(ボーナス未発表曲付き)でも再発されてるけど、オレがお勧めするのはこのゲフィンから出ていた2LP盤。一枚目が緑のクリアヴィニールで綺麗なのもいいんだけど、二枚目のB面がジャケットも担当しているリタ・アッカーマン(昔画集がロッキンオンから出てました)によるエッチング! レコード溝がなくてツルツルの面に千枚通しで削ったようなリタの絵が彫られてます。A面はサーストンによるギターノイズが19分えんえんと流れるだけってのもサイコー。
アルバム二曲目「one soul」
「Weapons of Ass Destruction」 Diskaholics Anonymous Trio label:Smalltown Superjazz |
『Weapons Of Ass Destruction』 Diskaholics Anonymous Trio (06 Smalltown Supersound)
もう一枚サーストン・ムーア行きま〜す。サーストン・ムーア(g)、ジム・オルーク(synth)、マッツ・ガスタフソン(sax)のトリオ。ギター、シンセ、サックスなのにメロディ一箇所もなし。まぁPart1 Part2で20分ずつって曲目見た時、やばいな〜って思ったんだよなー。"ジリジリフォ〜〜ン…ピユーンピヨーンシュ〜〜〜""チュピュチュピュッピュ、ピコピコピー"あーうんざり。気の狂ったヤギみたいな"ヴヴェ〜〜"って音とかどうやってるんだって感じ。昔のゲーセンみたいなピコピコ音とか。で、気付くと二曲目になってて、のこぎりみたいなキコキコ音がずっと鳴ってるし。キーーーーンってサイン波はマジやめて欲しい。耳に刺さって痛いっす。死ネッ。
この後メンバーを増やして作ったバンドが「original silence」
文=DJハル吉
関連リンク
New Nude City.Com
Richard Kern公式
Le Chat Qui Fume
アップリンク
Cinema of Transgression
DJハル吉 7"インチ専門DJ。得意なジャンル:童謡とノイズ。その他インディーズ翻訳家兼作曲家。曲を演奏してくれるオーケストラ募集中。鳥の唐揚げが大好き、あとラム肉。座右の銘「猫は野良に限る」。 DJハル吉サイト=「峠の地蔵」毎週月曜更新 |
|
次回の記事>>>
08.09.11更新 |
WEBスナイパー
>
音楽とエロスの交差点