DJ Harukichi shouts at the crossing of music and Eros. 毎週木曜日更新! DJハル吉の脳内性感ミックスアップ! 音楽とエロスの交差点【3】 「Black Metal」 原作:Rick Spears 作画:Chuck BB 文・翻訳=DJハル吉 |
劇場映画「デトロイト・メタル・シティ」が観たい。偶然ながら(意図的か?)同日公開されたヘヴィメタルドキュメンタリー「グローバルメタル」、そして9月27日からはドイツのメタルレーベルを取り上げた「Heavy Metal in the country」も公開。どうしたんだ今年は? メタルの当たり年か? よし、メタルネタもういっちょ追加!
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えーどうも、ヘヴィメタ歴20年のハル吉です。「デトロイト・メタル・シティ」観ましたか? 俺はまだ観てません、原作漫画は読んでますが。あらすじは、渋谷系ミュージシャンを目指す主人公が事務所の意向でメタルを演奏することになり、デスメタルバンド「デトロイト・メタル・シティ」のヨハネ・クラウザーII世として大ブレイクしちゃうっていう展開ですけど、映画はどうなってるんでしょうか? デーモン小暮閣下と悪魔対決とかして欲しかったなー。そうそう、クラウザー様は顔にコープス・ペイント(白塗りの死化粧メイク)してますけど、あれ、デスメタルの人はやりません。ああいうのはサタニック・メタルとかブラック・メタルバンドがするものです。
「デトロイト・メタル・シティ」 著者:若杉公徳 ISBNコード:9784592143543 判型/頁:B6判 定価:530円(税込) 出版:白泉社 (C)1998 HAKUSENSHA, all rights reserved. |
最新刊は6巻ですが、こちらはクラウザー様がメロイックサインしてる4巻。
で、そのブラックメタルを漫画の題材にしたのがこちら、その名も「Black Metal」! 直球です。
「Black Metal」 原作・Rick Spears 作画・Chuck BB (Oni Press 11.95ドル) Pages:168 Format:Digest ISBN:978-1-932664-72-0 |
出版社名がオニ・プレスですからね、鬼出版(笑)。しかもこの漫画、アメリカで最も権威ある漫画賞の一つ「ウィル・アイズナー漫画業界賞」 の2008年特別賞を受賞しました。ちなみにノミネートされたが受賞できなかった日本漫画には「夕凪の街」(こうの史代)、「ニュー土木」(横山裕一)がありました。過去に受賞した日本人作品には「アキラ」「鉄コン筋クリート」「オールド・ボーイ」、漫画家としては手塚治虫、小池一夫、小島剛夕などがいます。
[ストーリー]
双子の悪がきショーン・ストロングハンドとサム・ストロングハンドが中学校に転向して来るところから始まるが、いきなり二人は学校の食堂で喧嘩を起こして放校され、里親が車で迎えに来てしまう。里親は双子に服を買ってあげようとデパートに連れて行くが、そこで双子はレコードショップを発見しブラックメタルバンド「Frost Axe」のLPを購入し里親宅に戻る。急いで家の二階に駆け上がり巨大スピーカーとつながったレコードプレイヤーにLPをセット。演奏と共に地獄での壮大な悪魔同士の殺戮ストーリーが展開し、聞きながら興奮する二人。聞き終わり、今度はLPを逆回転させた途端、本物のミイラ人間が炎の中から立ち現れ巨大な魔法の剣を二人に渡して消えていった。すると間もなく今度はその剣を追って地獄から兵士がやってくる。戦いの末双子はどうにか勝つが、なぜこんな事が起きたのか? 「Frost Axe」のLPが原因と考え、彼らに会いにレコード会社まで行くのだが、そこで聞かされた話とは……
と、ここから地獄を舞台とした大冒険活劇になっていきます。この作者二人ともメタルが本当に好きなんだと一読して思いました。ショーンとサムは二頭身だし、結構コミカルなシーンもあるんだけど、決してバカにしてないというか、メタルへの愛が(この漫画のテーマではないけれど)伝わってきます。その点は「デトロイト・メタル・シティ」も同じですね。あらすじにも書きましたが、ショーンとサムがレコードを買う場面があります。なぜMP3全盛時代の今、CDでもなく、わざわざLPを買うか?ってとこなんですけね、ブラックメタルのコアなファンはレコードが好きなんですよ(笑)。しかもプレス枚数が少ないやつ。作者のリックとチャックがインタビューで答えています。
リック:レコードを逆回転させるシーンを書いたとき、こんな場面を書く機会なんてもう最後かもしれないなって冗談を言ったあとに気付いたんだ。本当にそうかもって。俺はレコードが大好きだし、メタル界にもレコード愛があるよね。俺達みたいなのがもうしばらくレコードを作っていけたらっていいなと思うよ。
チャック:ブラックメタラーはレコードが好きなんだ。俺なんかこの前、ウルヴァーのピクチャー盤で初期三枚組のボックスセット(現在廃盤)に200ドルも使っちゃったよ。ブラックメタルはユニークさとかカルト的なものに価値を置くだろ、レコードってのはいつも限定生産だし、制作枚数が少ないほどいいんだ。ブラックメタル界ではテープトレードも盛んだよ。もうあまり使われない古いメディアの方が好まれるんだな。あと、レコードプレイヤーのヒスノイズもブラックメタルにとっては重要だからさ。
うーん、いい話ですね。こういうのどっかで聞いたことあるなぁと思ったら、あれだ、ノイズミュージック・オタクにも多いです、こういう人。他にも至るところにメタルネタ(メロイックサイン、メタルTシャツ、ブラックメタル特有の解読不能なバンドロゴなど)が埋め込まれていて面白いんですが、ブラックメタルを知らなくても十分楽しいです。インタビューでこう答えています。
質問:ブラックメタルのネタはアンダーグラウンド過ぎて普通の読者には分かり辛いかもと心配しませんでしたか?
リック:いや。だれでも理解できるように書いたからね。ブラックメタルの深い知識は必要ないよ。でももし君がブラックメタルどっぷりの人なら、もう一つ別のレベルでこの本を楽しめるはずさ。
チャック:もちろん、そのことは俺の頭によぎったよ。(ブラックメタル特有の:ハル吉注)あの咆哮があるからメタラーじゃない人はビビって近づかないんだけどさ、でも本の中なら実際に叫んだりうめいたりできないだろ。だから大丈夫だと思ったんだ。誰でもメタルを好きになれるはずさ、少しはね。
少なくとも三巻まで出す予定とのことなのでこれからどう展開してくのか非常に楽しみです。ああ早く続きが読みたい。
(続く)
DJハル吉:今日の一枚
『No titel』(12" Vinyl) Sanctom / Stormcrow (06 No Options Records)
見開きジャケがかっこいいです。
内ジャケはこんな
せっかくなので外に出てプレイしました。
A面サンクトゥム、B面ストームクロウのスプリットアルバム。両バンドともに速い、重い、うるさい、のデス三拍子。ヴォーカルの“ブヴヴァアァ〜”って咆哮がサイコー。濁流のように押し寄せるギターとドラムもグー。内ジャケに歌詞載ってるけど、ほとんど聞き取れねぇし、腐った楔形文字みたいなフォントで書かれてるから読み辛ぇってのもイーネ! LPは、ほら、裏返すときにバンドが替わったって認識できるけど、CD(07年に「20Buckspin」レーベルがCD化)だったらどの曲からストームクロウになったか分かんねぇだろーなー。
サンクトゥムはこちらB面一曲目「age of ruin」
ストームクロウはこちら
というわけでまた次回! バイバーイ。
文・翻訳=DJハル吉
関連リンク
「NEWSARAMA」のインタビュー記事
「Express Night Out」のインタビュー記事
出版社 Oni Press
「Black Metal, Vol.1」プレビュー(立ち読み)
DJハル吉 7"インチ専門DJ。得意なジャンル:童謡とノイズ。その他インディーズ翻訳家兼作曲家。曲を演奏してくれるオーケストラ募集中。鳥の唐揚げが大好き、あとラム肉。座右の銘「猫は野良に限る」。 DJハル吉サイト=「峠の地蔵」毎週月曜更新 |
08.09.25更新 |
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