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『ルー・リード/ベルリン』後編

文・翻訳=
DJハル吉


映画『ルー・リード/ベルリン』公開中ですね! 皆さんはもう観ましたか? 66歳にして現役、超大物ミュージシャンでありながらアンダーグラウンド魂を未だに持ち続ける稀有な存在、ルー・リード。この映画でライブ演奏しているアルバム『ベルリン』は73年当時大不評だったわけですが、ルー・リードにはそれを越える大不評アルバムがもう一枚あるのです。後編。

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映画『ルー・リード/ベルリン』の詳細はこちら
NYアンダーグラウンドの生ける伝説ルー・リードのライブ映像『ルー・リード/ベルリン』公開!

上映館「シネクイント」では10月10日(金)、18日(土)とトークショウが行なわれます。

ルー・リードが73年に発表したアルバム『ベルリン』は失敗作と言われその後ステージで演奏されることはなく、やっと2006年12月に初めてライブ演奏(その模様をとらえたのがこの映画)されたわけですが、アルバム自体は常に販売されていました。しかしルー・リードには余りにも酷い音楽だったため98年に再発されるまで23年間ずっと廃盤だったアルバムがあります。それが『メタル・マシーン・ミュージック』。

さて、もしアーティストの名盤を客観的に決める基準として「他のバンドがそのアーティストの(曲ではなく)アルバムをカヴァーしたかどうか」で判断するならば、例えばライバッハがカヴァーしたビートルズのアルバム『レット・イット・ビー』のように、ZEITKRATZERがカヴァーした『メタル・マシーン・ミュージック』がルー・リードの最高傑作となるでしょう。

まずビートルズ『Let it be』をカバーしたライバッハの同名アルバムから一曲、「ゲットバック」。



名曲は誰がカヴァーしても素晴らしいですね。

もう一曲いきますか?「アイ・ミー・マイン」



そしてこちらがZEITKRATZERがカヴァーした『Metal Machine Music』。

haru04_zeit-metal.jpg ARTIST:ZEITKRATZER with LOU REED
TITLE:Metal Machine Music
FORMAT:CD&DVD
LABEL:Asphodel/ASP3002

これはライブDVDとそのCDの二枚組で、演奏しているZEITKRATZERはクラシックのソロイスト達が集まって結成したグループです。このアルバムを作った経緯がレコード会社のサイトに載っていますので、一部訳します。

ルー・リードは言います
「ちょっと(あのアルバムの)背景を教えようか。『メタル・マシーン・ミュージック』は32年前に作られて、発売後三週間で市場から取り除かれてしまったんだ。それでも、時は経ち、人々はだんだんループ、エレクトロニクス、ノイズ、フィードバックに慣れてきた。いいかい? で、ZEITKRATZERがオレにコンタクトを取ってきた。『メタル・マシーン・ミュージック』をライブで演奏したいんですがって。オレは言ったよ、不可能だって。そしたら奴らは『私達は楽譜にしました。(演奏した)数分を送りますので、お返事ください』って。送られてきて、オレは聞いた、結果はアンビリーバブル。オレは言ったよ『すげぇ! OK、やってくれよ』って。で、『この曲のPart3でギターを弾いてくれませんか』って言われてさ。そんなわけで『メタル・マシーン・ミュージック』がベルリン・オペラハウスでライブ演奏されることになったんだ。素晴らしかったよ、だって当時あのアルバムは音楽キャリアの終わりだって見なされてたし、実際そうなるところだったんだ、本当だぜ」


それではルー・リードが出てきて演奏するシーンをどうぞ



この映像だとすぐルー・リード出てきてますけどね、DVDではそこにいたるまでの45分、ずっとクラシック楽器によるノイズの生演奏なんです。つらいんです。三分で飽きるんです。オリジナルの超高音ギターフィードバックはどう再現するのかと観ていたら、ソプラノサックッス使ってますね、あと発泡スチロールを弓で弾いたりして高音ノイズを出してます。そこまでするか……。ちなみにオプションで5.1チャンネル選べますので立体感のあるノイズをお楽しみ頂けます。またライブ前(かな)のインタビューを約20分収録。

話は変わりますが、ルー・リードは写真も撮っていて作品集を二冊出してます。

haru04_emotion.jpg 「Emotion in Action」
Hardcover:112 pages
Publisher:Edition 7L; 2 Bks in 1 edition (September 2, 2003)
ISBN-10:3882439238
ISBN-13:978-3882439236
こちらで多少見れます。
haru04_newyork.jpg 「Lou Reed's New York」
Hardcover:192 pages
Publisher:Steidl/Edition 7L (January 15, 2006)
ISBN-10:3865211526
ISBN-13:978-3865211521
こちらで多少見れます。

『Emotion in Action』は、ハードカバーの表紙がくりぬかれてそこにもう一冊小さい本(表紙の青い部分)が嵌まってるという装丁がかっこいいんです。ニューヨークの都市風景、氷河、ストリート、などがカラーや時には解像度の荒いモノクロプリントで映し出されていて、ヒリヒリした荒涼感が漂っています。 『Lou Reed's New York』は持ってないんで分かりませんがサイトで見たところ、似たような感じですね。

そうそう、ルー・リードは2008年4月12日にパフォーマー・ヴァイオリン奏者ローリー・アンダーソンと結婚しましたが、共同名義のアルバムは出るんでしょうか。今から楽しみです。

(続く)


DJハル吉:今日の一枚

『Hudson River Wind Meditations』Lou Reed
haru04_hudson.jpg 「Hudson River Wind Meditations」
Lou Reed
Label:Sounds True

ルー・リードがまたしてもファンを裏切った快作! これ去年出たアルバムだけど、未だに国内盤出てなくて、1曲目28分、2曲目31分と長大なのに、ただムィ〜ンムオォォォンって鳴ってるだけ。約60分ずーーっとムォォォォンンンヒュィィィィンンン……さいこー! 訳せば「ハドソン川・風の瞑想」だから、まぁしょうがないっつぅか、誰も買わん、みたいな(笑)。いや、オレは好きなの、こういうの。でもルーの声もギターも一切入っていないからロックが好きな人にとっては拷問だね。むしろアンビエント好きに薦めたい。

文・翻訳=DJハル吉


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harukichi5.jpg DJハル吉 7"インチ専門DJ。得意なジャンル:童謡とノイズ。その他インディーズ翻訳家兼作曲家。曲を演奏してくれるオーケストラ募集中。鳥の唐揚げが大好き、あとラム肉。座右の銘「猫は野良に限る」。


DJハル吉サイト=「峠の地蔵」毎週月曜更新

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08.10.09更新 | WEBスナイパー  >  音楽とエロスの交差点