2010.6.27 The Shotascratch 12
2010年6月27日(日)於・都立産業貿易センター台東館 7階
イベントの継続と安定を目標に、活動内容や方向性を越えた総合的なショタ・男の子同人誌の発表の場として、年に数回開催されている少年系同人誌即売会「ショタスクラッチ」。コアでありつつ、男の子だったら何でもアリという一風変わったこのオンリーイベント。先日開催された「ショタスクラッチ12」の模様、そして収穫物の内容を永山薫氏に伝えてもらいます!!さて、後先になったが、ショタとはショタコンの短縮形。「男の子キャラクターに対する萌え」だと憶えておけば大体は大丈夫。この種の術語は厳密に定義しようとすると絶対に無理が出る。漠然と大枠で捉えて楽しむのが大人の知恵である。たとえば最近流行の女装少年ものはショタと志向にズレがあるわけだが、女装ショタという部分では重なっている。また元々は女性向けの男子同性愛ファンタジーであるやおい・JUNE(後のBL)から始まっているとはいえ、商業誌的には美少女系エロ漫画がショタ路線を採り入れた(独自開発部分もあるが)という経緯もあって、現在のBLとは大きく重なりつつ、男性作家も男性読者も非常に多い。オリジナルと二次創作に登場する可愛い男の子キャラを鑑賞し、性的ファンタジーの翼を拡げることは今や男女共通のお楽しみなのである。
■今回の収穫は?
正直、今回は取材目的じゃなかったので知り合いの作品+αしか買ってません。あとで、「これも買っておけばよかった」というのが結構あったな。まず、資料として保存しようと思ったのが「ショタスクラッチ12」カタログそのもの。現在のトレンドもわかるし、主催者の自主規制についての考え方が述べられている点にも注目。現実問題として公共施設を利用する以上は、管理者側との折衝はどうしても必要になる。管理者側としても「公的な施設で『エロ本』を堂々と売られたら、自分たちの責任問題」みたいな意識は当然あるだろう。といって「だからダメです」と断わると、これもまた表現の自由との兼ね合いで問題化する。お互いにゴリ押ししても誰も幸せになれない。「ショタスクラッチ」の場合、今回は18歳以上限定とし、参加者の年齢確認、入退場の管理(リストバンドとカタログ)を励行。自主規制には様々な意見があるだろうが、理想と現実の間に落としどころを作る、ウィンウィンの関係を模索するのは悪いことではない。
さて、同イベント、250スペースという規模だったわけだが、全体の傾向としてはアニメの「イナズマイレブン」が最大スペース。島一つじゃ足らなくてはみ出してた。去年の冬コミで、BL系を中心にあなどれない勢いだったが、まだまだ伸びるか? 版権系では他にアニメ「サマーウォーズ」、トレーディングカード「バトルスピリッツ」、ボーカロイド「鏡音レン」がそれなりのボリューム。他は「女装」「創作」「版権」みたいな大きな括りで島が出来てた。イベント内イベントとして「しめこみ」(褌少年)の島も。褌というとゲイ濃度高めに感じるが、ショタっ子の締め込みというのは愛らしさ先行。大規模即売会だと「東方」「ヘタリア」が巨大なエリアを作っちゃうんだけど、オンリーイベントの場合はトレンドの出方が違うなあと体感。ただ、同日には池袋で「サンシャインクリエイション48」が、またショタスクラッチと同じ会場の別のフロアではガンダム00のオンリーイベントが開催されており、確認しただけでも当日は都内で8つの即売会が同時開催されており、参加サークルが分散していることも考えると一概にこうだとは言い切れない。
では続いて収穫物を紹介しよう。
□書名=ショタコンのゆりかご
□サークル名=ひやかしぶどう
□作者=ぶどううり・くすこ 『ショタコンのゆりかご』
ショタの歴史に興味のある人は注目。無償頒布で、こまめに増補改訂が行なわれており、貴重な資料だ。サークルとしては参加していないが、今回は交流のあるサークルスペースで頒布されていた。国立国会図書館、京都国際マンガミュージアム、米澤嘉博記念図書館に納本されている。ショタ系のイベントでは高確率で入手可能。
□書名=セカイがどうとか言っちゃう男の娘は電波かわいい。
□サークル名=かぶったりかぶらなかったり
□作者=せいほうけい 『セカイがどうとか言っちゃう男の娘は電波かわいい。』(成人向け)
セカイ系をおちょくった話かと思いきや、前世戦士ネタ。気弱で流されやすい性格の小鳥遊遊馬くん(これがショタっ子)がアリス・アリスと名乗る美少女に学校の屋上に呼び出されて……というオハナシ。「セカイが滅びます。」とか断言されて、素直に「えぇ!? そうなの!? 大変じゃないですか!」と反応する小鳥遊くんのアホさがいいですねえ。で、この英雄吟遊詩人のアリス・アリスと「契り」を結ぶハメに。ところが彼女は「男性体として転生」してしまったため、生えてるオトコノコだったという次第。でも素直な小鳥遊くんは「こ、混乱しただけで 協力はします! というか こんな可愛い子から迫られて……」と受け入れちゃう。かくしてアリス・アリスは「不滅剣デュランダル」が封印されているかもしれない(意外とデカイ)小鳥遊くんのおちんちんを……。作者のせいほうけいは、俺的には大注目中の漫画家で、商業誌でも活躍中。ボカロ本『レンくんはアイちゃんにいぢめられちゃうよね。』も買ったぞ。
□書名=2Hらくがき帖
□サークル名=2H
□作者=po-ju 『2Hらくがき帖』(18禁)
これはちょっと外せない。なにしろショタ系即売会にサークル参加するのは2年振り。全14Pのラフなイラスト集だが、作者お得意のフェチな衣裳と女尻の美少年がエロいポーズを取っている。ただ、それだけなのにね。作者の商業誌ショタ作品はコンプリート版が松文館から豪華本で出ている。版権との兼ね合いもあるのだろうが、同人誌集成も欲しいところだ。ちなみに、海外の画像投稿サイトでは本誌の表紙がすでにアップされていた。どんだけ好きなんだよ。
□書名=人外女装少年図鑑
□サークル名=黒戌舎
□作者=犬丸 『人外女装少年図鑑』
どれが新刊なのかよくわかんなかったので持ってないのを全部買った。さてこのコピー本『人外女装少年図鑑』(成人向・全10ページ)は、人間じゃない美少年で、なおかつ女装というラフスケッチ集。ケモノ系かと思ったら、「龍神」とか「水」とか「炎」の擬人化だったのにはビックリ。俺としては、えっちなことを沢山すると身体のパーツが増えていって、パーツが二人分になると分裂して二人になるという設定の「淫魔」に惹かれた。新刊じゃないけど『少年エロコネコ』(全16ページ・成人向)も買って正解。「HUNTER×HUNTER」の王×ネフェルピトー本。猫系に弱い俺としては家宝にしようと思う。他に『電動哀願男子・第二版』(全24ページ・成人向)とSUMMER CHILDとの合同コピー本『どっきり☆ミクスチャー』(全12ページ・R15ぐらい)は「HUNTER×HUNTER」のゴンキル本。
□書名=み:ん:な:の佳主馬:くん
□サークル名=うさぎ佳主馬きゅん
『み:ん:な:の佳主馬:くん』
SH@RPの編集&デザインによる「サマーウォーズ」佳主馬本(全30ページ・全年齢)。黒星紅白、奇械田零士郎などゲスト18名によるイラスト集だ。実はSH@RPがショタ本を作るのはこれが二冊目。もちろん一冊目も買ってるわけですが、繊細でデザイナー的な処理が、かえってエロい(レイアウトも担当)。ゲストも当然水準が高くて、お買い得感あり。俺としてはisagasuのプラグスーツ佳主馬、大原久太郎のスパッツ佳主馬、奥付ページのSH@RPによる全裸佳主馬にきゅんと来たぜ。全年齢向なので、性交及び性交類似行為も露出もなしだがフェチ度が高いので、エロ度は低くない。
□書名=大江戸秘密玩具
□サークル名=秘本衆道会
『大江戸秘密玩具』
「オタ訳! 本朝外道古典シリーズその拾」は、江戸時代の大人のアダルトグッズを集めた資料(十八禁・全20ページ)。ディルドオ=張型、オナホ=吾妻型……という感じで解説もわかりやすくてイイ。この種のネタは図書館&古書店で探さないと見つけにくい。入門書であり、資料調査のインデックスでもあるとも言えるだろう。他にも色々と出されているのだが、今回はお試し買いで一冊のみ。夏のコミケには『合本・日本のBL古典』を頒布されるとの由。これは買わねば。
さて、次回「ショタスクラッチ14」は11月14日、大田区産業プラザPiOにて開催を予定。サークルスペースは300、イベント内イベントとして女装少年オンリー「オトコノコIMPACT」とケモショタオンリー「ふらっふぃ2」を併催。最後になるがショタスクラッチ代表の松村直紀さんに今回の総括と、次回以降への展望についてコメントをいただいた。
「はじめまして、ショタスクラッチ実行委員会で代表をやらせて頂いております、松村直紀と申します。ショタスクラッチは年3回、東京での開催を続けて次秋で4年になります。男の子だったら何でもOKということで、傾向を限定したオンリーイベントでありながらオールジャンルという感じなので、同人誌界隈では一風変わったイベントかもしれないですね。サークルの出展内容は様々で、時期や当日の企画によってもだいぶ印象が違うかなと思いますので、興味を持たれたらぜひ会場に足を運んで、サークルさんの作品を手に取って頂ければと思います。
6月27日の第12回開催では、永山薫さん・昼間たかしさんをゲストに迎え、都条例改正問題など、表現に関わる規制問題についても勉強することができました。長くイベントを続けていくために必要とされることや、努力していかなければならないことを主催者として痛感する日々ですが、ただの「お客」ではなく、「参加者」として皆で作っていく同人誌即売会には、現実が厳しいからこそなくならない、理想を追い、作っていく力があると思っています。こちとら四半世紀もショタやっとるんじゃーッということで、あと四半世紀くらいは続けていきたい……と言いたいところですが、一回ずつ、ゆっくりゆっくり時間を重ねていけるようこれからも頑張っていきたいと思います」
文・取材=永山薫
関連リンク
「ショタスクラッチ」公式サイト
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永山薫 1954年大阪生まれ。近畿大学卒。80年代初期からライター、評論家、作家、編集者として活動。エロ系出版とのかかわりは、ビニ本のコピーや自販機雑誌の怪しい記事を書いたのが始まり。主な著書に長編評論『エロマンガスタディーズ』(イーストプレス)、昼間たかしとの共編著『マンガ論争勃発』『マンガ論争勃発2』(マイクロマガジン社)がある。
10.07.18更新 |
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