Special Night!! 『"Curiosity" 3D Music Clips e.p.』premium screening
6月8日 六本木ヒルズ TOHOシネマズにて開催 |
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ご存じの通り元気ロケッツは、ゲームクリエイターの水口哲也と音楽プロデューサーの玉井健二、そしてボーカリストのLumiによる2006年に結成された音楽プロジェクト。近年はベルリンで行なわれたIFAやラスベガスで行なわれたCESといった国際家電見本市で3Dライブを行なうなど、音楽業界ならず映像業界からも称賛されている。
などとWikipediaを参考に書いているオレだが、実は元気ロケッツという名前は辛うじて聞いたことはあったもののチャットモンチーみたいなギャルバンと勝手に勘違いしていたという適当さ、もちろん音源を聞いたことも一切なし。そんなオレがPVのプレミアム上映会などというガチなファンイベントに参加するなど本来場違いもいいところなのだが、「先入観なしのまっさらな状態で観てほしい」という編集部Iさんの大プッシュと、最新の3D技術で作られたというPVへの興味から参加してみることにした。
ロビーでチケットを引き替え会場に入ると3D用のメガネを渡される。オレはド近眼ゆえ普段からメガネをしているのでメガネonメガネとなる。仕組みのことはよくわからないが、やっぱりこれはめんどくさい。Nintendo 3DSのような裸眼立体視映画というのは技術的に不可能なのだろうか。など考え少しテンションは下がりがち。
定時にイベントはスタート。さっそくメガネをかけるが特に飛び出す気配はない。あ、最初はただのCMか。数分後「メガネをおかけ下さい」というテロップが入りここから本番。
スペイシーなCGの中で外人の女の子(これがLumiちゃんか)が歌い出す。もちろん3Dなのですべてのオブジェクトが飛び出してくる。
うおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!
思わずうなり声がでる。と言っても3Dにではない。正直3D映像に関してはさほど驚きはなかった。20年前の『キャプテンEO』、去年見た『アバター』の体験に到底及ぶものではない。しかしそれでもなぜかうなり声は出たのだ。その声を無理矢理言語化すると「あぁあああ幸せだああぁ」という感じ。そしてその声はイベントの最後まで止むことはなかった。
音楽の方はキラキラした歌物ハウス。特に変なエフェクトやアレンジは施しておらず、高揚感溢れるサビメロを最大限気持ちよく聴かせることに特化した屈託のない歌謡曲寄りの作り方だ。
そしてそこに乗っかる映像がまたすばらしかった。この日は6曲が披露されたのだが、すべてがとんでもない吸引力を持っていた。宇宙、地球、サバンナ、虹、幾何学模様、それぞれモチーフは違うが、共通しているのはボーカルLumiの魅力的な表情だ。この音と映像が文字通りタッグを組んで「幸せ感」をグイグイと力ワザで心の柔らかい部分にねじ込んでくる。3D効果はあくまでそのサポートに徹しているという印象だ。
そういえば後から知ったのだがLumiは2019年に誕生し、まだ地球に降りたことのないという設定の架空の人物であり、その歌声はビジュアルを担当するモデルのローズ・レイチェルと、歌手兼声優の宮原永海の声を合成したものらしい。
それで思い浮かべたのがDOOPEES(1995年〜1996年にアルバムとシングルそれぞれ1枚ずつが発表されたキャロライン・ノバクという架空の女の子がボーカルを務めるユニット。仕掛け人はヤン冨田)だ。こちらの方はミュージックコンクレートの導入など音楽的にかなりひねくれてはいたが、それでもグッドミュージックとかわい子ちゃんが紡ぎ出す溢れ出る多幸感という部分は共通していた。
元気ロケッツがDOOPEESを意識していたかどうかはわからないが、幸福感の創出には魅力的なイコンさえあればその実在は問わないという思想が共通しており、それがオレにはとても心地よかった。
とは言え不満点もあった。最初にも書いたメガネonメガネのストレス。こんだけ踊らす気まんまんの曲と映像なのに椅子に座ったまま黙って見ていなければならないストレス。そして最大のストレスは、そのショボすぎる音。ドルビーサラウンドならではの強烈な音場を期待したのだが、残念ながらあまりにも音量が小さすぎた。いろいろ事情はあったのかもしれずここだけは残念ではあったが、その後に行なわれた追加上映会では音声が5.1chにバージョンアップされたそうなので問題ないだろう。
それより気になるのは、試運転を終えたあといずれ開催されるであろう大規模ライブだ。同じく架空のキャラクターをホログラムで投影し、まったく新しい形のパフォーマンスを見せてくれた初音ミクの成功も当然意識されることだろう。
ミクと同様被実在ではあるがベースは人間であるLumiを有する元気ロケッツは、今回手応えを得た3DCGと肉体を組み合わせることによって、いったいどのようなステージを作り出すのだろうか。ものすごく楽しみである。
文=田口こくまろ
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