Men's Strip N-stage in HIRAGA G SQUARE
2011年3月20日 東京・新宿「シアターPOO」にて開催
ヌード・パフォーマンス集団「N-stage」が魅せるバラエティ豊かな男性ストリップショー。着実にファンを増やし、今年で7年目に突入したこのマニアックなイベントが新たに目指すものとは何か。地震から約10日後に開催された熱きステージの模様を早川舞さんにレポートしてもらいます!!友人からのそんなお誘いメールで、「メンズストリップ」というものの存在を知ったのは、たしか去年の春のことだった。
今まで個人のパフォーマンスとして行なっているものは観たことがあったのだが、これはそのために結成された団体が興行しているものだという。そんなおいしいモノ(腐女子目線的に)、断わるわけがないだろう!と思ったが、そのときは予定が合わずあえなく断念。それから早1年、去る3月20日、やっとこのメンズストリップ集団「N-stage」の興行を観賞することができた。
なぜ1年も間が開いてしまったかというと、なかなか興行が行なわれないからだ。それぞれ本業を持つかたわら、趣味で参加しているメンバーばかりなので、なかなか頻繁に活動できないのだという。だから公演は多くても年3回が限度。それでもその分一回一回の内容が濃く、固定ファンもそのたびに増えて、N-stageは今年で7年目に突入したのだそうだ。
私がお邪魔した日は、いろんな意味で、N-stageが新たな戦いに挑んでいた回だったようだ。まず、これまでと公演会場が変わった。新しい会場はSMショーイベントではおなじみの新宿・シアターPOO。そして公演日は、東北関東大震災の約10日後……主催の向月さんは、ぎりぎりまで開催するかどうかを悩んだという。だが、決行された。
「あれだけの大災害だから当たり前なんだけど、世の中が暗い話題ばっかりの中、公演を観ることで明るくなってくれる人、公演を必要としてくれる人が少しでもいるならばやる価値があると思ったし、何よりも自分たちが前向きになるためにやりたかった」
その意志はメンバーにも伝わり、以前から決めていたショー内容を急遽変更して、「祈り」をテーマにダンスを踊ったメンバーもいた。
ところで、そもそもメンズストリップってナニ?というところから簡単に説明すると、まぁ文字どおりストリップである。女性がやることが一般的となっているストリップを、男性がやっているのだと想像していただければ間違いない。最初はダンスを、最終的にはヌードを楽しむという点は女性のそれと変わりないが、N-stageの場合はショーやコントなどを取り入れ、コミカルな要素を強くした演目にも力を入れているのが特徴だ。またここ数年はSM系AV監督・パフォーマーとしておなじみのTAIZOさんが出演することで、SM色も強くなっている。今回はTAIZOさんのほか、新人イケメン緊縛師・鵺神蓮(やがみれん)さんも出演した。
さっそく会場に足を運んでみると、意外なほど女性のお客さんが多かった。全体の3〜4分の1ほどは入っていたのではなかろうか。もともとは男性だけに向けて行なっていたものが、女性からの要望で、1日3回公演のうち第1回目だけ女性の入場も許可したのだという。きっとここにいる女性はみんな私と同じ穴のムジナなんだろうなと思うと、何だか妙な親近感が湧いてきた。なんとなくみんなコミケにも通っていそうな雰囲気だ。
開園時間になり、入り口が閉まると、
「こんなときだからこそ、がんばろう!」
という威勢のいい掛け声とともに舞台が明るくなった。まず舞台に上がったのはダンスユニット、N-akedから彪流(たける)さん、それからシャンプーさん。彪流さんはN-stage初登場の新人だ。スピード感のある彪流さんのダンスの後には、シャンプーさんのシースルーの布を使った優雅なダンスという、緩急のはっきりした流れ。その後にフェイクファーの衣装が野生的な桜井純一さんが登場し、またも軽快なテンポのダンスを見せてくれた。
ダンスのときの見えそうで見えないじれったさは女性のストリップ以上。女性のソレの形状とは違い、表に出っぱっているモノだからこそ、より危うく感じてしまう。結局見えなかったけど、フツーに見るよりもより濃厚に「見た」気がした。見えてないのに、人間の、というか私の脳みそってばかですね。あ、もちろんちゃんとダンスも堪能した!
続いてのYu-toさんによる自吊りのソロパフォーマンスは、女でも大変な自吊りを男子がやるの!?という極めて「中の人」的な目線で観賞スタンバイ。自吊りは、基本的には体重を腰の縄一本で支えるのだが(飾り縄を入れる場合もあるが、そこには体重は掛からない)、男性の体重で耐えられるだろうか……。が、和服を脱いで褌一丁になった姿を見て納得。Yu-toさんは薄い筋肉が貼りついているだけの、張り詰めたとも、緊張感に満ちたともいえる体つきをしていた。その体が彼自身の力で浮き上がって、夜光性の縄が照明を落としたステージに光ったときの妖しさといったら……!
さて次は、バーレスクとベリーダンスを取り入れたダンスを披露してくれるというディー太さん。前回の取材で編集さんが絶賛されていたので、私もかぶりつく勢いで観てみた。なるほど、両手に飾ったファーに、フリルのミニスカート、帽子などの衣装もフェティッシュだ。しかし彼の本領はもちろん衣装だけにあるのではなかった。舞台登場とともに繰り出された激しい腰のフリ。呆気にとられているうちに次々衣装が脱ぎ捨てられていく。あっという間に裸になった後は(でも小っさいパンツは履いてます!)、メンズストリップではおなじみ(なのかな?)の「脱いでも脱いでもさらに小っさいパンツが下から出てくる」卑猥なマトリョーシカ状態に。彼は女装子ではないのだろうが、女装にも通じるファッションと美的感覚で、女装子がストリップをしているように見えたのも、個人的には大変おいしかった。
前半ラストは今年デビューしたばかりだという新人緊縛師・鵺神蓮さん+モデルの晴海さんによる緊縛ショー。普段は「緊縛師・鵺神蓮」として和風な緊縛をモットーにしているという鵺神さんは、今日は初の試みで「REN」と名乗り、ライトでコミカルなストーリー性を重視した緊縛に挑戦してみたとのこと。
鵺神さんは普段は一般の緊縛ライブにも出演しているが、ショーの後、「観客がゲイのときとそうではないときと、何か違いがありましたか」と尋ねてみたところ、
「普段のライブではモデルさんをどう見せるかに主に頭を使うんですが、こちらのショーでは自分も脱がなくてはいけなかったので、そのタイミングまで考えるのが難しかったです!」
とのことだった。あ、脱ぐとはいっても上半身だけですけどね。
モデルの晴海さんの悶えっぷりもまた素晴らしかった。責められているときに漏れる声が女の子のよう。「女性」ではなくて女の子。ここ大事。彼のような存在であれば、たとえゲイではなくても、そしてSではなくても、ついクラっとくるのではなかろうか。人の「イジめてみたい」スイッチを押すものを、彼は持っている。実際、縛られることや責められることが大好きらしい。今までの人生何があってここまでのドMオーラを醸し出すようになったのか、個人的にも聞いてみたかったが、残念ながら時間が許さなかった。
ここで休憩を挟んで後半へ。休憩時間中、前のほうを窺うと最前近くの座布団席に空きがあったので、そちらに移動した。踊り子さんに触れられそうな距離である(触れないけど)。こういう時期だからなのか、N-stageのメンバーの意気込みからなのか、私の好みと一致しているからなのか、とにかく舞台との一体感をビシビシと感じてしまったので、後方で観賞していることがだんだん物足りなくなってきたのだ。
後半一発目は、中山幸一さん、じゅーしーさん、なつさんによる寸劇+ダンスのパフォーマンス。中山さんのダンスの巧みさ、じゅーしーさんのノリのよさ、なつさんの初々しさと三者三様のキャラクターが前面に出た楽しい演目だった。ソフトなカラミも多く、女性には嬉しい内容。まぁ、男性にはもっと嬉しかったかもしれないが、それはよくわからない。「『踊る』という自分にできることで、『これからみんなでがんばっていこう!』という意志を伝えたかった」とは中山さん。「こういうときにわざわざ来て下さったお客さんに感謝の気持ちでいっぱいで、いつにも増してノリノリな動きになりました」とはじゅーしーさん。
なつさんは3回目の登場だったそうだが、そうとは思えないほど初々しく(褒め言葉)、いろんな意味であぶなかっしく感じることもしばしば(いい意味で)だった。これからもずっとこの危うさを失わないでいってほしいと、腐女子目線の持ち主としては思う。ベテランだけど初々しいっていちばんおいしいじゃない。
そしてトリはTAIZOさん、あっきーさんによるSMショー。TAIZOさんのショーは初見だったが、かたくななまでに縄を使わず、その代わりに巨大でエキセントリックな拘束具を用いて責めることにこだわりを持っていると聞いたことがあったので、いったいどんな道具が出てくるのかわくわくしながら登場を待った。
開始とともに舞台に這い出してきたモデルのあっきーさんは、膝下を黒い布のようなもので包まれていた。荒々しく剥ぎ取られた下にあったのは、頑丈そうなブーツで脚を開いた状態で固定し、そのまま逆さ吊りできるようにした重々しい鉄の拘束具だ。逆さまになったあっきーさんに、TAIZOさんの容赦ない責め、そしてフィストファックまでもが降り注ぐ。みるみるうちに首筋に男らしい太い血管を浮き出がらせるあっきーさん。呻き声が音響を縫って観客席にまで伝わり、脂汗が照明に照らされる。フィストファックに続いては、TAIZOさんお手製の、電動ドリルの先にディルドを連結させた責め具が登場。傍目にもわかるほどの大きな振動に、あっきーさんは歯を食いしばっていた。
床に降ろされた後もプレイは続き、今度はバットの先にディルドがつけられたものが登場。またもあっきーさん大受難……。Mモデルとしては2年以上経験があるという彼だったが、それでもTAIZOさんの責めは特に厳しいのだと、ショーの後に語ってくれた。
最後のショーが終わるまでゆうに3時間は経過していたが、本当にあっという間だった。普段見慣れていないものだったというせいもあるだろうが、決して物珍しさだけに心を奪われていたわけではない。女性が女性を責めるというショーは今まで何度か観てきたが、そこにはない猛々しさに終始惹きつけられていたといったほうがいいだろう。
私が男×男の世界が好きなのは、生殖機能という「不純」さのない状態のエロに崇高さのようなものを感じるからだ。中二的な発言でお恥ずかしいが、私は男×女ではありえない「純粋な」エロや、そこから生まれる「愛情」(それは生まれないこともあるかもしれないけど)に憧れを抱いている。その世界には私たちは想像力を遊ばせることでしか入り込んでいけないが、その不自由さもまた快感だ。さらに、自分をどこにも投影する必要のない、みそっかす的気楽な感覚も好きだ。
崇高なんて言ったらN-stageの皆さんはいやがるかもしれないが、いちゲイでもビアンでもない女として、ダンスやパフォーマンスを観賞する中で、私はそれを存分に楽しませていただいた。公演の回数が少ないのがじつに残念だが、次回以降もまた行きたいと思っている。
取材・文=早川舞
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『Men's Strip N-stage』公式ページ
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