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趣味人の趣味人による趣味人のための特別レポート!!
ポールダンサーにして特殊衣装デザイナーでもある女性パフォーマー・メガネ氏が、ポールダンスの動きをよりパフォーマティヴに見せるためのポールを考案。人力発電研究家に製作を依頼して、実際に発電ができるポールダンス台を客前でお披露目することに!? ダンスがエネルギーで、エネルギーがダンス……そのユニークな現場をテクノロジーフェチのフリーライター・takaoka氏がレポートします!!オルタネイティブ・ポールダンサーのメガネ氏の発案によるこのイベントは、恵比寿にあるアートスペース「Magic Room??」で行なわれた。今回のパフォーマンスは、海外での公演活動も盛んなコンテンポラリーダンスグループ「BABY-Q」に所属するケンジルビエン氏との共演。多方面で活躍するダンサー同士のセッションということで、「発電」という謎のセッティングに否が応にも期待が高まる。
最小限の明かりだけが灯る、真っ暗な会場。バーカウンターには数十人の観客が開始を待ちわびる中、そこへ登場するのが身体の動きを余す所なく表現するために、ボディラインを露にした衣装の男女。ポールダンス台へ飛び乗り、面妖な動きでポールを回す。台の上で身体が躍動する度に、ライトが放たれて場が明るく華やぐ。時に激しく、時に優しく、ポールを中心にして息を合わせた男女のダンスは続いた。ポールダンスとコンテンポラリーダンスの融合に、驚きを隠せず食い入るように見る客たち。自分もその空気感に飲み込まれて、あっという間に時間は過ぎてしまった。
立てられたポールを軸にして踊るのが、通常のポールダンス。しかし狂気のアイデアが盛り込まれているのが今回のショー。それは、ポールを回転させたエネルギーを電力として活用しようというものだ。つまり、ポールが回ると電気が生まれる! ダンスに対する常人の想像範囲を超えた情熱を感じさせる発明といえるだろう。これは世界初となる発電ダンスセッションだったのだ。
発電された電力は、ライトとラジカセに使われる。つまり、照明と音響を自らが行なう舞台演出だ。ポールダンス台の中身は、シンプルかつダンスに耐えられるよう頑丈な作りだ。ポールが回ると、LED が点灯して会場に鮮やかな光のシャワーが降り注ぐ。同じように、ラジカセからどこか懐かしい音楽を再生する。ステージの動きが止まると、ラジカセからの音楽も止まる。「CD やラジオでは、面白く再生しないのでカセットテープにしました」とメガネ氏談。発電用ポールは通常のポールダンス台「スピニングポール」に比べて回転時の負荷が数倍も大きく、回すためにはダンスをしながら力仕事をしなければならない。一手間のかかった表現である。
蛍光灯を使用した自作音具「オプトロン」を使い、現代美術側からの音あるいは音楽へのアプローチを続けている伊東篤宏氏、電化製品によるサウンドシステム『the Rotators』等、音の出るアートを追及する宇治野宗輝氏など現代美術作家との交流があることもあり「ポールをつかってパフォーマンスをするというポールダンスを、よりパフォーマティブに見せられないか?」と考えたメガネ氏。回転するポールを使って発電することを思いついた彼女は、インターネットを駆使して「人力発電研究家」という特殊な肩書きの研究家を発見し、自分の持っていたポールダンス台の改造を依頼、今回のショーに至ることとなる。ちなみに「次回はパワーアップして一層派手になる」らしいので、見逃すことは出来ないだろう。
ダンサーが表現の可能性を広げるために、今までに複合することのなかった領域に足を踏み入れる。その勇気ある行為に触れることの出来たのが、今回のショー。ポールが回転する度に発生する、レコードを擦るスクラッチ的な感覚。それは身体だけでなく聴覚や視覚に対しても訴えかけた。ダンサーが躍動する度に空間が歪む磁力が発生し、まるでポールによって自分の感覚を掌握されている気分に陥った。そう、ほんの一瞬だけ、ポールを中心に世界が回転しているように思えてしまった。生活していれば誰しも他人に振り回されることはしょっちゅうあるが、ポールに振り回される感覚はなかなかない。もし味わいたいなら、是非現場へ。
文=takaoka
関連リンク
ポールダンサー・メガネのblog 「メガネの活動日記」
「magic room??」
ポールダンサー・メガネとハードコアパンク・バンド「黒パイプ」によるセッション動画(You Tube)
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