2016.1.30.Sat-11.29 at tokyo shinjuku「SPACE zatsuyu」
2016年1月30日(土) 東京・新宿「SPACE 雑遊」にて開催
緊縛師・一鬼のこ氏主宰「一縄会」(東京)、獅子若氏主宰「獅子縄會」(大阪)、永遠氏主催「想縄会」(名古屋)という三つの会による合同イベントとして開催された2016年度の「縄紋」。第1部では各会縄教室生徒たちの発表会ならびに縛りの創造性を競う「未踏縛コンテスト」が、第2部では日本のみならず世界で活躍する各会講師陣による縛りのショーが披露された。志ある縛り手たちを中心としたフレッシュなステージの模様をたくさんの写真で、また「縄紋」が生まれた背景を各会主催者たちへのインタビューでお伝えしよう。■縛師/パイセン
■縛師/トバ
■縛師/真夜
■縛師/yuu
■縛師/百舌(モデル/ささみ)
■縛師/不流市
■縛師/凛花
■縛師/いか(左:モデル/育子)、あさり(右)
■縛師/yossy
■縛師/まる(モデル/なお)
■縛師/こーじ
■縛師/宙知サンジ
■縛師/國燗じぇす(モデル/入華)
■縛師/時雨(モデル/m@rica)
■縛師/永遠(モデル/向日葵)
■縛師/獅子若
■縛師/一鬼のこ(モデル/えり)
「縄会」というものをご存知だろうか。平たく言えば緊縛同好会である。登山やテニスにフットサルなどと同様、趣味を同じくするもの同士が集まり活動する点において変わりはないのだが、その多くは緊縛を教わる場として発展してきた。緊縛教室、緊縛講習会、緊縛研究会、もしくはSMサークルと呼ばれるほうが多いかもしれない。
こうした縄会は、緊縛技術を伝えるという都合上、緊縛師が主宰していることが多い。そしてまたSM趣味者が集まって交流する場、サロンとしても古くから親しまれてきた。もちろんサロンはサロンであって縄会とは異なり、様々な形で現在まで発展している。クラブで行なわれるフェティッシュ・イベントしかり、SMバー、フェティッシュ・バーなども当然サロンの一種といえる。
今回紹介するのは一鬼のこ氏が主催する「一縄会」、そこから派生して主に関西で活動している獅子若氏主宰の「獅子縄會」、そして名古屋を中心に活動する永遠氏主宰の「想縄会」、この3つの縄会による合同開催のイベント「縄紋」だ。
イベント概要をわかりやすくお伝えすると、上記3つの縄会参加者による、緊縛の発表会である。さらに講師陣と主宰3人の模範緊縛も披露された。
こうしたイベントの性質上、プライバシーの観点から全員というわけにはいかなかったが、当日の写真を可能な限り掲載した。また各々の縄会を主宰する3人に、活動内容なども併せて伺ったので紹介したい。
編集部(以下「編」)「一縄会」について聞かせてください。始められたきっかけは。
一鬼のこ(以下「一」)いつ始まったかというと2008年頃ですね。最初は渋谷にあるお店の緊縛講習会だったんです。
編 その講習会ではどんなことを教えていたんですか?
一 まずは縛りの型ですね。吊りの基本となる後手縛りから。最初に後手縛りを教えていく中で、たとえば縄の「留め」とか、モデルへの接し方とか、マナーやいろんなことが学べるようになってるんです。お店をやっているとお客さんから縛り方を教えて欲しいとよく言われてたので、それならまとめて教えたほうがいいなって始まったのが最初です。
編 本日の「縄紋」というイベントは、3つの会の合同イベントですよね。獅子若さんと永遠さんは、もともとは「一縄会」に教わりにいらしていたのでしょうか?
一 最初に若さんに縄を教えていて、覚えてもらった頃に、指導する側としてやって欲しいとお願いをして、講習会が始まったんです。
編 獅子若さんは講習会の最初の先生だったんですね。
一 はい。一方で講習会とは別に、縛りたい人と縛られたい人が集まってとにかくいっぱい縛ろうよというサロンがあって。講習会とは別の日にやってましたが、渋谷のそのお店でやっていたそういう活動をひっくるめて「一縄会」と呼ぶようになったんです。
編 緊縛講習会と人が集まる場としてのサロン、この2つが「一縄会」だったんですね。
一 そうです。
編 永遠さんは「一縄会」にどんな形で参加されていたんですか?
永遠(以下「永」)最初はサロンに参加したんです。名古屋の縄の先生に誘われて。他の方の縛りを初めて見て、名古屋のSMバーで見てた縛りとはまったく違うんだなと衝撃を受けましたね。こういう縛りを私もできるようになりたいと思って、通うようになりました。
編 それがどれくらい前のことになるんでしょう。
永 7年くらい前かな。
編 獅子若さんはその後、東京から大阪に戻られて「獅子縄会」を立ち上げられたんですよね。
獅子若(以下「若」)2010年に大阪へ戻って。せっかく東京でやってきた縄を、まあお土産はそれしかなかったんで(笑)、同じスタイルで教室をやっていこうかと考えたのがきっかけです。
編 一さんとしては暖簾分けみたいなことになるかと思うんですが、何か改まった話があったりしたんですか?
一 僕はそれ、自由なんです。逆にみんなが僕のことを話してくれたりするんですけど、むしろ「言わないほうがいいよ」って言ってます。まあそういう、楽な感じでやってます。
編 そうすると「獅子縄会」は「一縄会」とは別のスタイルにするのもアリだったんですね。
若 でも当時僕が得ているものは教わったものしかありませんでしたし、まだ縄を触って2年くらいでしたから。東京で任せてもらった教室のスタイルと、これまで見てきたものが最低限の僕の環境なので、それを大阪に作ろうと思って始めたんです。
編 大阪で活動を始められてから5年くらいになるということですが、5年経って「獅子縄会」と「一縄会」、獅子若さんの目から見てちょっと違ってきたな、みたいなことはありますか?
若 やっぱり土地が変われば人も変わるし、環境要素が西と東では違うので、同じような形では育たないですね。個性が幅広くなっていると感じます。
編 永遠さんが名古屋で「想縄会」を始められたのはいつのことでしょうか。
永 2年半くらい前かな。
編 永遠さんも「一縄会」で教えていらしたんですか?
永 いえ、私は教えてないです。
編 ということは、独自のスタイルの教え方をされてるんでしょうか。
永 縄筋そのものは一緒で、一さんが考えた型をそのまま教えることにしています。ただ教え方については、やっぱり環境が違うので。最初は私しか教える人がいなかったし、お店を持ってるわけでもないので、SMバーに遊びに行く時に、もし縄を覚えたい人がいたら教えるよみたいな。ホントにちょっとずつ人を増やしてやってきたんです。「教室です! これ教えます!」という感じではなかったですね、最初は。
編 今日の舞台では「初級」「中級」「上級」というふうに演者さんの中で段位分けがされていたんですが、これは3つの縄会すべて共通なんでしょうか。
一 うちは後手縛りができたら中級に上がれますね。
永 うんうん。
若 初級は後手縛りができたら合格で、中級は吊りの基本になる三型。同じですよね、たぶん。
一 いろいろやってたけど、俺はあんまり把握してない(笑)。三型は、M字と横吊りと......。
若 上半身が向いた縦型と、伏せた形、あと横吊り。
一 なんかうち飛脚の型とかも教えてるよ。飛脚、M字、あとは横吊りとか......。まあ吊りをちょいちょい覚えて、お墨付きをもらったら上級って感じじゃないかな。
永 うちは、初級の後ろ手ができるようになったら次はグラウンドにしてる。グラウンドは吊りをやらないで、床で遊ぶ。脚に2本くらいとか、吊り縄をつけるとしても空中には浮かさないでちょっと形つけるためだけとか、それくらいを中級にしてて。それ以上が必要かどうかは、パートナーさんがいるかどうかとか、友達同士でもっとやりたいねって意見が出てきたら教えるようにしてます。自分の名前で集まってきた人たちに怪我をさせられないので。
編 そんなそれぞれに個性のある3つの会が合同でイベントをするのは今回が初めてなんですよね。
一 そうですね。
編 何かきっかけがあったんでしょうか。
一 最初は若さんのところとうちでやったんですよ。
若 僕が大阪に来て1年過ぎた頃に、初めて両教室で発表会をしようよってことで「一門会」という形でやったんです。その流れから年に1回くらいの間隔で、名前を「縄紋」に変えてやるようになって。
一 ちなみに「縄紋」って杉浦(則夫)先生がつけてくれた名前なんです。凄く気に入ってて。縄文時代から歴史って始まってるじゃないですか。それと縄の印っていうのとかいろいろ掛けてある。
若 そしてそれが終わった頃に名古屋で「想縄会」が立ち上がって。
永 そうですね。
若 そこから「想縄会」が単独で発表会をしはったりするようになった流れで今年は3教室でやろうかと。
永 やっと名古屋でもちょっと縛る人が出てきて。やっと形になってきた感じなんです。それまでほとんどいなかったので。
編 ところで、縄会に集まる方々には人前に立ってショーの形で何かをしたいわけではないという人もいると思います。縄会の起こりにサロンがあったように、単純に縄の技術を知りたいわけじゃないという人も。そんな人たちはどういうふうに会に関わって、自分の楽しみや目的を見つけていらっしゃるんでしょうか。
永 うちは全体の人数が少ないのもあると思うんですけど、プライベートだけで遊びたいという人はほぼいないですね。友達作りを兼ねてというのは大々的に言っているので、パートナーと2人で遊ぶためのものだけど、やっぱり会を一緒に楽しんでもらいたい。友達としてやっていきたいというふうに思ってるので、何かひとつイベントやろうよって言ったら、ほぼみんな「じゃあやります」「自信ないけど出ます」みたいに言ってくれる。だからまったくいないと言っちゃってもいいかも。
編 そういう中で、たとえば講習が終わった後の飲み会のほうを一番の楽しみにしてるという人もいらっしゃったりすると思うんですが、それはそれで楽しくやっているという感じでしょうか。
永 そうですね。縄には関係ない遠足に仲良く行ったりもしてますし(笑)。あとは自分たちは出ない他のイベントへ一緒に出かけたりとか。
編 獅子若さんは昨年、大阪でお店をオープンされたんですね。皆さんで集まれる場所が出来たと思うんですが、それ以前はどこで活動されてたんでしょうか。
若 自宅でした(笑)。5点吊れるメゾネットマンションを、そこでやるのありきでネットの画像だけで押さえてから大阪に帰ったんです。実際に1年半ぐらいそこでやってましたね。ただ、やっぱり自宅=入りにくいという印象があるので、途中からサロンマンションをレンタルしてやるようになりました。
編 今、会に参加されているのはどういう方が多いんですか?
若 大阪でも東京でもそうですけど、皆さんイベントを観て「緊縛のイメージが変わった」と言って来るんです。そういう中でも最近はアートが掛かってきてるので、「アートをしてみたい」「私は写真を撮るからその一部に縄をおきたい」とか、そういう単独の人が多くなってます。あとは、イベント観て、勇気を持ってアングラの界隈に出向いて、お店を紹介してもらって教室に来る。もちろん男女ペアの方もいますけど、率としては一割ぐらいですね。
編 年配の方もいらっしゃいますか。
若 いますね。50代の方とか。
編 逆に若い方は。
若 下も最近は20代半ばとか。
編 18歳以上なら参加可能なんでしょうか。
若 そうですね、でも10代はなかなか来ない(笑)。
編 一さんは、海外でも縄を教える機会をお持ちですよね。海外の人にとっては貴重な機会だと思うので、皆さん熱心に取り組まれるんじゃないでしょうか。
一 日本のイベントにワークショップってないじゃないですか。それが海外では、1日のイベントでも、学校の時間割りでみたいに1時間目は何々、2時間目は何々ってテーマが決まってるんです。そういうワークショップの最後にショーがあるというパッケージが基本なので、とにかく勤勉だなと感じます。
編 そうしたワークショップを経験なさっていて、「一縄会」に参加されている方たちと比較して、何か思うところはありますか。
一 共通してるところも多いんですけど、教わりたいっていう貪欲さが外国人は強い。だけど態度は日本人のほうがいい(笑)。
編 (笑)。
一 僕のところで教えてる時は、だいたい5分の2が外国人。自分のホームページを見て来てくれる人も多いけど、うちらのショーを観て、自分もショーをやってみたいってことで来る人が多いです。ちなみに日本人外国人を問わず、来る人はまったくの初心者が半分くらい。彼女を軽く縛ったり、SM的なことをして遊んだことがあるって人が1割、2割。他の縄会で縛ってたよって人も少なくて1割くらい。そんな感じの割合かな。
編 かつての縄会はサロン寄りの、同じ趣味の人たちが集まって、会社の人たちとは絶対に出来ないSMの話をするという場でもあったと思うんですが、皆さんの縄会は、そういう昔の空気みたいなものが薄れているのかなとお話を伺って感じました。
一 そうですね、時代の流れもありますから。
編 今、皆さんのされているような縄会が、実際に縄を手にしていざ縛ろうと考えている人たちに対して、本当に実用的な入り口になってると思うんです。たとえばSMクラブで女の子を前にして縛っていいよと言われても、教わったことがないからうまくできないという状況がある中で。
一 そうなんですよね。で、知らずに吊っちゃうじゃないですか。
編 ハプニングバーみたいな場所でも縛ったりできるようになってますよね。
一 僕もね、吊りなんか教えて危ないって言われるけど、みんなできると思ってやっちゃうから。だったらちゃんと教えますっていう気持ちがありますね。
編 実践的なことをやりたいと思った時の入り口として、とても重要なポジションになっていると思います。現代的な縄会の姿とでも言いましょうか。
一 僕らも自分たちの緊縛を「現代緊縛」というように呼んでいます。
編 そういう話を踏まえた上で、これからのご自身の縄会がどのような形で皆さんに伝わればいいと思ってらっしゃいますか。
一 僕は一番初めの部分、知識というか、それを覚えてから自分がどうこうっていう話だと思うので、まずそこを教えてあげたい。自分が教わった時はなんのメリットもなく教わったんです。だからそれと同じく、と思ってます。
編 どんな人に来て欲しいというのはありますか。
永 ひとつの趣味として捉えてくれる人に来て欲しいですね。友達作りが前提になってるから。縄や緊縛を通して人と関わることを考えていきたいし、そうやって考えてくれる人に来て欲しい。そう思ってない人はやめていくだけだから結局一緒なんですけどね(笑)。
一 今日も永遠ちゃんのところにエスエマーの人が来てましたね。女の人から習ってくれって言われて始めたらしくて。
永 ○○さんかな。
一 その男の人は縄に興味があるわけじゃなくて、女の人がやって欲しいからやってあげてるんだよね。なんか人間味があるっていうか......永遠ちゃんはそういうところをちゃんと把握してるんですよ。僕なんか、ひとりひとり全然把握してなくて(笑)。
永 人数がぜんぜん違うから(笑)。
一 だからそこが永遠ちゃんのいいところで、ひとりひとりの深いところまで知りながら教えてるから。偉いと思います。
編 縄を通して人と関わりたいと思う人に教えたい、と。
永 そうですね。自分自身がそう思うので、共感できたら嬉しいなと。
編 獅子若さんはいかがでしょう。
若 きっかけは何でもいいんです。ショーを観て、自分もショーがしたいからって来る人もいるし、お店で出会いを広げたい、でも鞭も蝋燭も分からないけど縄は教室があるから行ってみようという人もいる。とりあえず、僕のところの初級・中級講習はあくまでそういう出会いに対応できる武器にしかならない。技術だけを学びに来た人にとっては。それはそれとしてありつつ、やっぱりそういうことだけじゃなくて、講習後の会話とか、何かをこなしていくうちに、この人は教室の時は堅苦しいけど、それ以外ではこんな感じなんだとかって相手の人柄を吸収したり、その時々の仕草を見てエスコートすることを覚えたりってこともある。
一 だいたい「獅子縄」の生徒は酒漬けになってる(笑)。
永 テキーラの飲み方とか(笑)。
若 そういうところも含めて、ですかね(笑)。だからだいたいうちでは、教室に来て途中でやめる人ももう見ないし。ただ最後まで行き着く人もなかなかいないですわ。ともあれ好きなら続けてもらいたいから、お金も時間も無理せずに、なるべく間が空かないようにスケジュール組んで来てもらえたら、最低限の武器だけは100パーセント提供しますって思ってますね。
編 では一さん、最後に「縄紋」についてまとめていただければ。
一 緊縛のパフォーマンスをする時に、一番最初にそれをやる場所や機会って、普通の人にはないんです。大抵は10年くらいやって、実力がついてからやっと機会が巡ってきたりするもので。だけどもうちょっと早くやってもいいんじゃないかなと。このイベントがそういう最初の場として機能して、やってみたい人たちの後押しになればいいなと思ってます。
編 そういう思いがあっての発表会なんですね。
一 最初は生徒だけだったんですけどね。やっぱりうちらの見本も併せてみてもらったほうがいいんじゃないかと......。僕はショーをやって楽しかったので、縛りをやって楽しかったので、みんな、楽しいよってことでやってます。
編 どうもありがとうございました。
現在国内には様々な縄会、サークル、講習会が存在しており、お住まいの地域の近隣にもきっとあることだろう。縄に関心をお持ちなら、最初の一歩を踏み出すきっかけにしてみてはいかがだろうか。
文=編集部
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16.02.27更新 |
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