2016.2.13.Sat at tokyo shibuya「CLUB camelot」
2016年2月13日(土) 東京・渋谷「クラブキャメロット」にて開催
たくさんの来場者を迎えて大賑わいのうちに幕を閉じたビッグイベント「マニフェスTOKYO 2016」。有名緊縛師たちによる見応えあるショーを中心に、数多の物販ブースでも楽しませてくれた当日の模様を早川舞さんにレポートして頂きます!!
これは国内最高峰の縄師たちによる緊縛ショーをメインに、SM・フェティッシュ色の強い物販やインスタレーション、パフォーマンスを楽しめるイベントだ。主宰は緊縛モデルとして多くの縄師から支持を受ける女優・川上ゆうという点も、緊縛・SMファンの興味を大いに惹きつけた。
会場であるクラブキャメロットは、開場時間とほぼ同時に満員になったほどの盛況ぶりで、場所によっては身動きがつらいところさえあった。日本の有名縄師のステージを一度に鑑賞できる数少ない機会だからか、緊縛ファンの外国人の姿も多かった。
開場後しばらくすると、メインステージに川上ゆうが登場。MCの松本格子戸、倖田李梨、オーガナイザーの三代目葵マリーとともにイベントへの意気込みと期待、来場者への感謝を述べた。
ショーのトップバッターを務めたのは、女流緊縛師である蓬莱かすみ(受け手・nao)。
正統派和風緊縛を追求する彼女は、自身もモデルも正しく着物を着て舞台に立った。一見してこれから緊縛ショーが始まるとは思えない、きちんとした佇まいだ。
その「きちんと」感を崩さない美しい所作で、丁寧に縛っていく。まるで茶道や華道の場に居合わせているようだ。凛とした手さばき、縄さばきは清々しくもある。
そういった「型」が完璧に整っているだけに、モデルがあられもない姿になり、目線や息遣いなどで双方の生々しさが見え隠れするとはっとする。ストイックに表現する和の美から零れ落ちてしまう艶めかしさ。霧や霞の向こう側で緊縛しているような、しっとりとした雰囲気が二人を包んでいる。
型の美としても、瞬間の美としても美しいステージだった。
続いて特別ゲストとして登場したのは、フランスからのゲスト、MariKa Gorgone(受け手・紫月いろは)。このイベントにも後に登場する奈加あきら氏の愛弟子の一人で、技術と心を受け継ぐ伝道者として正式に認められた女性である。4年前に奈加氏の縄に出会って弟子入り、世界中のワークショップに参加したそうだ。
技術だけでなく心も継ぐとやはり雰囲気やステージングも似てくるようで、単純な縛り方だけでなく、受け手との呼吸の合わせ方や、そこから生み出される「間」など、どこか共通するものがあった。もちろん奈加氏ほどは洗練されていないのだが、その部分が今度彼女自身の個性として伸びていくのだろう。
この日は誕生日だったようで、師匠の奈加氏じきじきにお祝いのバースデーケーキが手渡された。
続いては一鬼のこ(受け手・吉岡愛花)。MCで松本格子戸氏が紹介した通り、緊縛を世に広めた最大の功労者だ。フジロックフェスティバルへの出演や、ファッションブランド「DIESEL」のレセプション会場でのインスタレーションも記憶に新しい。
「受け手がいちばん美しい体勢になるのを最初にミリ単位でイメージし、実現する」と語る彼の縄は、確かにあまりにも緻密で、計算され尽くしているが、どこか甘やかでもある。「触れ方や動き方でも、自分と受け手がジェントルな関係であることを表現したい」という美意識もあってあらわれるものだろう。
彼がこの日念頭に置いていたのは、「上手く見せるより、とにかくモデルをきれいに見せたい」ということ。数々の展開(吊ったままでポーズを変えること)は、どれも私のようないち鑑賞者から見ても完璧と感じる角度で、受け手の手足が固定されていくたびに、まるで舞っているようだと思う。逆さ吊りなど当然苦しいのだろうが、そこに思いを馳せるよりも先につい形としての美しさ、そして二人の息遣いでのやりとりや表情に見とれてしまう。
それにしても、「ミリ単位で考え」たことを実現できるって、すごい。
次のステージは神凪(受け手・神楽)。故・明智伝鬼氏の緊縛を受け継ぎ、「神凪一門」と呼ばれる若手の育成にも力を注いでいる。受け手の神楽嬢は豪華絢爛な花魁姿。縄師になってからずっとやってみたかったという花魁緊縛は、すでに何度か実演しているものの、せっかくの大きなイベントだし、華やかに、盛大にしたいと取り入れたそうだ。
MCの松本格子戸氏が「流れるようにスピーディ」と紹介したように、ステージングは流麗で、かつ独特の工夫のあるものだった。吊り代から縦に下ろした竹に受け手を縛りつけるという、トリッキーともいえる型。かつて師の明智伝鬼氏が新しいものを取り入れるのに意欲的だったように、「動くもの、しかも縦のものに吊るという挑戦をしたかったし、斬新なものを見せたかった」という。
竹に縦に縛りつける緊縛は袖や裾があまり巻き込まれずに垂れる面積が大きくなる分、襦袢の鮮やかな赤がより映えて見え、一層妖しい効果を与えてもいた。
極悪縄師の異名を取る風見蘭喜(受け手・若林美保)は、極悪らしい責め縄を披露。受け手・若林美保嬢の肢体を縄で着実に責めあげていった。
逆海老吊り、横吊り、逆さ吊りなど、縄をじりじりと引き上げていくたびに受け手から苦しげな息が漏れる。縄のきしみまでも聞こえてきそうだ。縄で責めるとはこういうことかという、ある意味「実用的」な縄の世界だった。
「今回のテーマに合うと思って」と使った鞭も、普通の一本鞭ですらない、武器にカテゴライズされそうな強烈なもの。
一見ぐいぐい責めているように見えるが、氏によるとショーの間はどんどん若林美保嬢の世界に引き込まれていくのだという。「形としてはショーだが、自分としてはSMプレイをする気持ちでやっている」と語っていたが、そんなところも確かにSMプレイっぽいかもしれない。
ラストを飾ったのは奈加あきらと、主宰である川上ゆうだ。
すごかった。縄の可能性を知り尽くし、自身の心そのもののように扱う縄師と、あまりにも縄への感受性が高い受け手とがつくり上げた、静謐にして壮絶な時間だった。
縛ることが愛撫になるのは緊縛では普通のことだが、奈加氏の縄を通して溢れ出る情念は飛び抜けている。ただ縛るだけではなく、縛る前に縄を肌に這わせる、縛った後にじっと見つめるなど、ときには縄が持つ様々な要素で責める。縄が受け手にとってどういうものかを説いて聞かせるように、急がず、じわじわと縛っていくのもいい。
奈加氏によれば、それはもはやショーをしているという感覚ではないという。相手をいかに愛しているかを、お客さんに覗かせているような気持ちだそうだ。
川上ゆう嬢の入り込みぶりも半端なものではなかった。後のインタビューで、「緊張感や不安を全部受け止めてもらった。安心して体をまかせられた」と言っていた通り、体も心もゆだねきっているのが表情やとめどない涙から伝わってきた。
さて、緊縛ショーのほかにもうひとつ取り上げたいのが縄の竜だ。縄師の魁氏と一鬼のこ氏の主導で、一鬼のこ氏主宰の「一縄会」のメンバーたちが当日、縄だけでつくり上げた竜のオブジェである。
このオブジェは、ショーステージとは別のフロアでインスタレーション的に一般公開されながら制作された。着々と形になっていくのを楽しんで見ていた人もきっと多かっただろう。
使用した縄の数は7メートルを900本。完成した竜は目が光り、口から蒸気が出た。ちょっとしたテーマパーク仕様だ。ちなみに一縄会のメンバーへの報酬は、当日使った縄だったそうだ。
物販ブースもいくつか紹介しよう。
こうして幕を閉じた「マニフェスTOKYO 2016」。主宰の川上ゆう嬢は、「楽しかったので、主宰だということを忘れてしまうぐらいでした(笑)。これだけ緊縛ファンが集まるとは思っていなかったし、これからもみんなで元気に緊縛やSMができるように、こういうイベントがもっと増えたらいいと思う」と感想と今後への希望を語った。
オーガナイザーの三代目葵マリー氏は、準備期間から当日を振り返ってこう話す。
「縄の竜の設計、会場設営、出演者の体調など、今までにないイベントというのもあったのかいろいろと大変なことがありましたが、主宰のゆうちゃんのがんばりもあって無事に成功させられました。今までいろんなイベントのプロデュースをしてきましたが、ここまでの大御所の方たちが集まってくれたステージを開催できたことを誇りに思います」
次回の予定は?と尋ねると、
「今はまだ私一人の希望ですが、多分やります。来年の同じ時期になると思います。また来年も大御所の方々にステージを飾ってもらいたいです!」
とのこと。
今回惜しくも足を運べなかった緊縛マニア、SMマニアは来年を楽しみにしよう。
文=早川舞
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