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第10章 特殊奴隷・晶【2】

「すごい回復力だね。さすがに若いだけのことはあるな」

晶の担当医師である米田が驚いたように言った。

「ありがとうございます」

ベッドの上で米田に脈をとられながら、晶は答える。自分でも、特に苦痛を感じる箇所はないし、不快感も疲労感もなくなった。食欲も戻っている。

漂流から救出されて、わずか一週間で晶は、すっかり健康体になっていたのだ。

「なので、共和国の家族に連絡をとりたいのですが……」

晶の言葉に、米田は表情を曇らせる。

「まぁ、それは少し待ってくれ」
「せめて僕が無事だということだけでも……」
「晶君。わかっていると思うが、君の国と我が国は、正式には国交はない。さらに言えば、今でも戦争状態にあるんだ。しかりべきルートを通さないと、君を国に返してあげることも難しいんだよ。気持ちはわかるが、無理に急ぐと、面倒くさいことにもなりかねないんだ」
「は、はい……」
「とりあえず、君には身体を完全に回復してもらわないとね」
「もう、十分治ったような気がしますが」
「ははは、そう焦らないで。でも、確かにほとんど健康体といってもいいな。もう、そろそろ……」

米田は、ベッドの傍らに正座している全裸の千尋を見た。

「ご奉仕させてやってもいい頃かもしれないな」

すると千尋は顔を赤らめながら返事をする。

「はい。わかりました」
「えっ、ええっ?」

晶は米田と千尋の二人を交互に見て、どきまぎする。晶の頬も赤くなる。

奴隷と呼ばれる千尋が、身の回りの世話だけではなく、性的奉仕もする存在であることは、晶にもわかっていた。だから彼女は常に全裸でいることを決められているのだ。

そして晶は、その千尋の裸身を見て、何度となく興奮してしまっているのも事実だった。痛いほどに勃起してしまって、隠すのに困ったことも度々だった。

しかし、奴隷制度に馴染みのない日本共和国の人間であり、そして女性経験のない晶にとっては、どう対応していいのかわからない。

その晶のうろたえぶりを見て、米田は笑う。

「ははは。まぁ、その辺はご自由に。ただ、まだ完全に回復はしていないんだ。あんまり、無理をしちゃだめだぞ。その辺は、お前が気をつけるんだぞ、千尋」
「は、はいっ!」

千尋が妙に真面目な表情で返事をしたので、米田はさらに笑う。なんだか初々しいカップルを見ているような気になる。

「ま、とりあえずは、のんびりと入院生活を楽しんでくれればいいよ」

そう言って米田は、全裸の奴隷看護婦を連れて晶の病室を出て行った。そしてドアの外から鍵をかける。晶は軟禁状態なのだ。

「あの……」

米田が出て行くと、千尋はベッドの上の晶を見上げた。まだ顔が赤い。いや、さっきよりも赤みを増している。

晶も、もうまともに千尋を見ることが出来ない。心臓が激しく脈打つ。

命令すれば、この少女はどんなことでもしてくれるのだという。米田のいった「ご奉仕」が、どういう行為を指しているのか、女性経験のない晶でもわかる。

千尋は立ち上がり、ベッドに近づく。その美しく盛り上がった豊かな乳房が目に入り、晶は思わず目を逸らす。眩しくて、見ていられなかった。しかし、顔を背けても、少女の甘い体臭からは逃れられない。胸の鼓動がさらに早まる。そして、晶の牡の器官は、熱く大きく、固くなっていた。

「もしよろしければ、ご奉仕させていただけませんか?」
「え、ええっ? ご、ご奉仕って……?」

晶がそう言うと、千尋は目をふせて口ごもる。顔はさらに赤く染まる。

「あの、ご主人様を、気持ちよくさせて……」

晶は自分の言葉が、この少女を余計に辱めることになったことを後悔した。

「いや、あの、大丈夫だから。いいよ、そんなこと」
「遠慮なく命令なさっていいんですよ。私は奴隷なんですから」
「その、おれ、奴隷っていうのが、まだピンと来なくて……。それに、おれ、女の子は……」
「あっ」

千尋は、何かに気づいたような表情になる。慌てて少し離れて、姿勢を正す。

「もしかしたら、晶様、女性は……。そうですよね。だって、私なんかよりも、ずっと綺麗ですもんね」
「……ねぇ、君。なんか誤解してないか?」
「えっ?」
「おれ、ノーマルだからね」
「そうなんですか? 私、もしかしたらって思っちゃって。ごめんなさい」

千尋は、また顔を真赤に染めた。

「ただ、おれはまだ女の子とやったことがないって言いたかっただけなんだよ」

そんなことを言うのは男として恥ずかしかったが、千尋をしょげさせるほうが抵抗があった。

「でも、晶様、すごくモテそうじゃないですか。意外です」

千尋の表情が、十代の少女相応の明るさを見せた。晶が千尋のそんな表情を見たのは、ここ数日で初めてだったかもしれない。

「まぁ、色々あってさ。あんまり女の子には興味はなかったんだよ。でも、だからって、男がいいわけじゃないぜ、勘違いするなよ」

晶は千尋に笑って見せた。晶がそんな笑顔を見せたのも、こここ数日で初めてだった。

「でも、女の子に興味ないって言ってましたけど、私のこと見て、ちゃんと反応してましたよね」

千尋が照れくさそうな表情で、そう言う。晶は慌てる。

「ええっ、見てたの?」
「……はい」
「まいったな……」
「でも、嬉しかったです」
「バカ」

二人の間のムードが急に柔らかなものになっていた。まさしく仲睦まじい十代の少年少女のそれだった。

違うのは、少女だけが全裸に首輪をつけた姿だということだ。

「そりゃあ、おれだって健全な男だよ。女の子が目の前で裸でいりゃあ、勃つにきまってるじゃないか」
「ふふふ」
「何かおかしいんだ?」
「晶様、可愛いんだもん」

千尋は少女らしい、屈託のない笑顔を見せた。

「ちぇ……」

晶はわざと、大げさにふてくされて見せる。半分はふざけてだ。千尋と、そんなやりとりをしているのが、晶も楽しいのだ。

「ねぇ、晶様……」

千尋がまっすぐ晶の目を見た。晶はドキっとする。この少女の可愛らしさを、改めて実感した。

「私たち奴隷は、ご主人様の命令がないと、何もしちゃいけないんです。そしてご主人様の命令があれば、どんなことでもしなくちゃいけないんです。だから、私に命令してくれませんか?」
「どんな命令をすればいいんだ?」
「キスしろって」

晶は一瞬、息を飲み、それから言う。

「キスするんだ」
「はい」

千尋は、ベッドの上の晶に覆いかぶさるようにして顔を近づけ、そして唇を重ねた。

「ん、んっ」

それは、とろけそうに柔らかく、意外にひんやりとした感触だった。晶は目をつぶり、その味を確かめようとした。

すると唇の間から、さらに柔らかいヌメヌメとした感触のものが滑りこんできた。千尋の舌だった。驚く晶の歯の隙間から、内側へ滑りこんでくる。

舌が舌に触れた。それは晶が今まで想像もしたことのない未知の感触だった。たっぷりの水分を含んだ物体が艶めかしく、晶の舌にからみつき、そして腔内を這い回る。

くすぐったいような、痺れるような感覚。快感なのか、ちがうのかすらわからない。ただ、身体の奥から強烈な興奮が湧き上がってくる。寝着越しに押し付けられている千尋の柔らかな乳房の感触もまた晶を燃え上がらせた。衝動に駆られるままに、晶は千尋を抱きしめた。女の身体はこんなに柔らかいものなのかと、晶は驚嘆する。

千尋の舌は生き物のように晶の腔内を縦横無尽に動きまわった。舌の根本から歯茎まで、あらゆる部分を舐め回す。千尋の舌が動く度に、晶は強烈な快感を味わった。

キスがこれほどまでに官能的なものだとは、晶は考えたこともなかった。それは想像していたセックスの快感を、はるかに上回るものだった。

千尋の甘い唾液を飲み込み、そして自らも舌を絡めていく。すると千尋も負けじと舌を絡め返す。そうやって、ふたりの濃密なキスは、延々と続いた。

それが終わりを迎えたのは、晶の身体の突然の変異だった。

「ん、んんっ!」

晶の声が大きくなり、そして千尋を強く抱きしめる。そして身体が小さく痙攣した。

しばらくして、晶の身体から力が抜けた。ようやく唇を離し、荒く息をつく。晶と千尋の唇と唇の間に、唾液が透明の糸を引いた。

「晶様……?」

千尋は少し驚いたようだったが、晶の照れくさそうな表情を見て、全てを理解した。

「失礼します」

千尋は掛け布団を剥ぎ、慌てる晶の寝着のズボン、そしてブリーフを手際よくずり下ろしてしまった。

「え、何をするの、千尋!」

晶が手で前を隠そうとするよりも早く、千尋はその精液にまみれたペニスを口に咥えた。それは射精したばかりなのに、まだ雄々しく屹立していた。

「あっ……!」

晶は全身に電撃が走ったかのような快感に、身を反らせた。千尋の口の中で、舌がうねうねと動きまわり、舐め上げる。そして、強烈に吸い上げた。尿道に残っていた精液も、吸いだされてしまう。

そうして、千尋はペニスから口を離すと、満足そうな笑顔を浮かべて、晶を見た。

「お掃除させていただきました」

晶は、呆然としている。今、自分が何をされたのか、よくわからない。

とりあえず、生まれて初めてのフェラチオという行為を、たった今、体験したということはわかった。

「そ、掃除?」
「はい。終わった後のご主人様のものをお口で綺麗にするのも、奴隷の仕事ですから」
「さっき、おれの命令がないと何も出来ないっていってたじゃないか……」

すると千尋は、屈託のない笑顔で応える。

「後片付けは奴隷の義務ですから」

そして、精液でぐしょぐしょに濡れてしまった寝着のズボンとブリーフを、片付けて、戸棚から新しいものを出し、晶に穿かせる。呆然としている晶は、千尋のなすがままだ。

そして穿かせる時に、千尋は、まだ固いままのペニスに気づく。

「晶様。また、こちらにご奉仕させていただいてよろしいですか?」

晶は唾を飲み込んで、言った。

「よ、よし。また舐めるんだ」
「ありがとうございます、晶様」

そうして、千尋は再び、晶のペニスに舌を這わせた。

(続く)

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11.03.28更新 | WEBスナイパー  >  赤い首輪
文=小林電人 |