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最終章 奴隷の王【2】

「あ、ああ……」

麻由里の口から羞恥の声が漏れる。

「ふふふ、どうだ、北尾。麻由里の恥ずかしい二つの穴は?」

老人は自慢するように言う。北尾は、ごくりと唾を飲んだ。開ききった麻由里の股間から、視線を外すことができない。

全裸で天井から吊られ、両膝を左右に広げられ、そして後ろから伸びた老人の手によって、尻肉まで大きく割り裂かれているのだ。老人の言う通り、女として最も隠しておきたい二つの秘穴は、これ以上ないほどに北尾の目の前にさらけ出されている。しかも、その部分を覆う繊毛すらないのだ。真っ白な下腹部の中央を走る肉の裂け目、そしてその下の窄まりが剥き出しとなっている。

「う、美しいです……」

ようやく北尾は一言だけ答えることが出来た。麻由里のその部分は確かに美しかった。色素沈着はほとんどなく、そして型崩れの全くない佇まい。可憐という言葉がこれほどまでに似合う肉裂と窄まりを、北尾は今まで見たことがなかった。それでありながら、ぱっくりと口を開いた肉裂からは、透明な液体がこぼれて窄まりへと流れ落ち、生々しい卑猥さを感じさせているのだ。

「この女を目の前にして、お前はどうしたいと思う?」

老人が突然、尋ねた。

「えっ?」
「さぁ、この女を好きにしていいぞ。わしはこっちで見ている。気にせずにお前の好きにするんだ」

老人は土蔵の隅に積み上げれられた畳の上にどっかと座った。興味深げな表情で、北尾を眺めている。

北尾はとまどうばかりだ。いくら好きにしていいと言われても、老人の「女」である麻由里をここで抱くわけにはいかないだろう。政権に対しても大きな影響力を持つと思われるこの老人を万が一にも怒らせるわけにはいかない。

老人は自分がどんな人間なのかを試そうとしているに違いない。それはわかるが、どうすれば老人が喜ぶのか、全く想像もつかないのだ。

北尾は頭脳をフル回転させる。ここで、あまり長い間呆然としていれば、自分への評価は下がってしまうだろう。急いで結論を出さなければならない。

「そんなに私に見られるのが嬉しいんですか、麻由里さん」

北尾は麻由里の顎を持ち上げて話しかけた。

「ああ……。恥ずかしいです」
「ずいぶんビショビショにしているじゃないですか。ほら、お尻の穴のほうまで愛液が流れている」

北尾は改めて股間を覗き込む。

「あっ、見ないで……」
「見られるのが好きなんですよね、麻由里さんは。初めて会った男に、こんなところまで覗き込まれて、興奮しているんだから」
「あ、ああ……」

麻由里は顔をさらに赤く染めて頭を振る。

「それに、こんな格好で縛られて興奮しているということは、麻由里さんはマゾということですね。恥ずかしいことや、痛いことをされて感じてしまう変態なんですね」
「そ、そんなこと、おっしゃらないで……」
「でも、ほら、こんなことをされても」

北尾は麻由里の乳首をきつくつまんだ。つまんでひねる。

「ああっ!」

麻由里は苦痛に顔を歪め、悲鳴をあげる。しかし、その声に北尾は彼女の興奮を感じた。さらにきつく、つねりあげる。

「あっ、あっ」

吊り上げられ、不自由な身体を麻由里はビクンビクンを震わせた。その目が潤んでいるのを、北尾は見逃さない。左手の指で乳首をつねりあげながら、今度は右手の指を乱暴に肉裂の中へと突っ込む。

「ひっ!」
「さっきよりも濡れが激しくなっていますね。感じてるんですね、麻由里さん」
「あ、あ、ああ……」

麻由里の身体はさらに激しく反応している。北尾の指が出入りする度に、大きくのけぞり、甘い悲鳴をあげる。

そして、しばらくして、一際大きな声が上がり、身体が激しく震えた。絶頂に達してしまったのだ。

「ふふふ、たいしたもんじゃないか、北尾」

振り返ると後ろに老人が立っていた。

「失礼しました」

北尾は老人の笑顔を見て、自分が賭けに勝ったことを確信した。

「手馴れていたが、心得はあるのか? 少しは縛れたりするのか?」
「いえ、初めてです。縛るなんて、とてもとても」
「ほう、それでは才能があるということかな」

老人は声を上げて笑った。親しみを感じさせる笑いは初めてだった。



それから、北尾は毎日のように老人の元を訪ねて、女を責める手ほどきを受けることとなった。勤務時間をそんな行為に費やすのは、後ろめたくもあったが、上司からは老人の信頼を得ることが最大の任務だと言われている。

そういう意味では、北尾は十分に任務を果たしていたと言えよう。北尾は老人の教えを順調に吸収し、気に入られていた。来客に、冗談交じりではあるが北尾を「自分の弟子だ」と紹介することもあったくらいだ。

そして北尾自身、女を責める楽しみにすっかり目覚めてしまった。自分の中にこれほどサディスティックな性欲があったというのは、北尾にとっても驚きだった。

老人は、何人もの女性を北尾の教材として連れてきた。いかにも人妻といった感じの熟女もいれば、まだ幼さの残るような少女もいた。彼女たちがどんな素性で、どんな理由によって老人の「奴隷」となっているのかは不明であり、それを尋ねることは禁じられていた。

老人の「奴隷女」たちは、いずれも美しかったが、中でも群を抜いていたのは、やはり麻由里だった。他の「奴隷女」たちは、好きに犯していいという許可が出ていたが、麻由里だけは挿入やフェラチオは許されなかった。ありとあらゆる卑猥で背徳的な行為を彼女にはしているのに、セックスだけは禁止というのも奇妙なことではあったが、それほど麻由里は老人にとって大切な「奴隷」なのだろう。

そして北尾も、麻由里には特別な思いを持っていた。



老人が手を動かす度に、白い肌の上に真っ赤な花が咲き、麻由里は苦悶の声を漏らす。薄暗い土蔵の中でぼんやりと揺れる炎を見ていると、見学している北尾も妖しげな気分になってくる。

座禅縛りに縄をかけられ、床に転がされている麻由里の身体は、もう赤い蝋でほとんどが覆われていた。乳房も、尻も、そして股間にも蝋がびっしりと固まっている。その姿はグロテスクでもあり、美しくもあった。

「ああっ!」

脇の下や首筋などの皮膚の薄い部分を狙うように老人は蝋を垂らしていく。蝋が肌に落ちる瞬間に、麻由里は縛られた不自由な身体を仰け反らせて悲鳴をあげる。微かに露出している白い肌は汗でぐっしょりと濡れている。

「あ、あ、ああ……」

蝋が垂らされていない時でも、麻由里は小さく悲鳴を上げている。肉裂に巨大なバイブレーターが咥え込まされているからだ。その残酷な振動は、すでに何度も麻由里を絶頂に追いやっている。熱蝋が肌を焼く苦痛が、バイブレーターの快感を増幅しているのは確実だった。麻由里は苦痛を快感に変えることの出来る女だからだ。

「北尾、もっと感じさせてやれ」

老人に命じられて、北尾はバイブレーターに手をかける。しっかりと奥まで挿入されたそれを、ゆっくりと出し入れする。根本から突き出した振動する突起部を、敏感な肉芽へと触れさせる。

「ひっ!」

麻由里の身体がビクンと跳ね上がる。その動きに合わせるように、老人は乳房の裾野へと蝋を垂らす。

「ああーっ!」

北尾は器用にひねりを加えながら、バイブレーターを出し入れするスピードを上げていく。その動きは、麻由里の官能を燃え上がらせる。快感に身をよじる麻由里の裸身の、まだ蝋に覆われていない部分めがけて、老人は炎を近づける。

老人と北尾の見事なコンビネーションは、麻由里を何度目かの、そして今までで最も大きく深いエクスタシーへと導いた。

麻由里は激しく痙攣し、そして意識を失った。

「ふん、失神しおったか。だらしない。北尾、後始末をしておけ」

ふんどし姿で汗まみれになっている老人は、そう言い捨てると土蔵を出ていった。北尾は、麻由里を抱きかかえると、手早く縄を解き、固くかさぶたのようになって肌を覆っている蝋を剥がしていった。麻由里の意識はまだ戻っていないが、どこか幸せそうな表情を浮かべていた。

蝋を剥がした後の肌は、赤くなっていたが、火傷をさせるような老人ではない。また蝋がしっかりと繋がって、剥がしやすくなっていたことにも北尾は感心した。

蝋を剥がすに連れて艶かしい女体が現われていくのは、妙にエロティックな気分になる。しかもそれはエクスタシーの果てに失神した女なのだ。抱きかかえていると、その体温が伝わってくる。北尾は湧き上がる興奮を抑えきれない。スラックスの下でついペニスが固くなってしまう。

ほとんどの蝋を剥がした頃に、麻由里が瞼を開いた。焦点の合わないぼんやりとした瞳で、北尾の顔を見つめる。

「あ……、北尾、さん……」
「気が付きましたか」

その無防備な麻由里の表情の美しさに、北尾はどぎまぎする。

「蝋はだいたい落としましたから、あとはシャワーで流して……」

麻由里は北尾の頬を手で撫でて、その言葉を遮った。

そして背中に固いものが当たっているのに気づく。身体を起こし、北尾の股間へと手を伸ばした。

「麻由里さん、だめですよ……」

麻由里は黙ったまま、スラックスの布地越しに北尾の固く勃起したペニスを撫でた。それは強烈な快感を北尾にもたらした。

「気持ちいいの? 北尾さん……」

麻由里はジッパーを引き下げる。手を差し込む。トランクスの中のペニスを直に触った。

「固い……」
「麻由里さん」

麻由里は、北尾のペニスをつかみ出すと、それを妖艶な笑みを浮かべながら、眺めた。そして、その先端に舌を這わせた。

「うっ……」

声が漏れる。この土蔵で、これまでに多くの「奴隷女」による奉仕を体験してきた北尾だったが、これほどの快感を味わったことはなかった。

麻由里という最も美しい女が相手ということもあるだろうが、老人に禁じられている行為をしているという背徳感が、快感を何倍にも膨れ上がらせていたのだろう。

麻由里は、見事な舌遣いで、北尾のペニスに奉仕した。気がつけば、北尾はスラックスもトランクスも脱がされている。麻由里の舌は、北尾の下半身を隅々まで舐めまわした。

もう北尾も自分を抑えることなどできない。麻由里を抱きしめ、唇を重ねた。麻由里もそれに応えるように唇を吸ってくる。舌を絡ませる。

そして二人は土蔵の中で、長く激しいキスを続けた。

(続く)

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12.03.26更新 | WEBスナイパー  >  赤い首輪
文=小林電人 |