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第4章 女教師・美沙子【4】

「とにかく、ホームルームをはじめます。みなさん、席について下さい」

声を上ずらせながら麗子先生が言うと、生徒たちはニヤニヤ笑いを浮かべながら、それぞれ自分の席についた。

過激なポルノ写真に動揺する美人教師が面白かったんだろう。しかし、麗子先生の本当の動揺の意味を知っているのは、おれだけだ。

席についたおれを、麗子先生が見た。おれはニヤリと笑ってみせた。麗子先生の顔に怯えた表情が浮かんだ。

数日前の進路指導室で、おれが「美沙子」の名前を口にしたことと、この写真騒動が先生の中でつながったのだろう。

そう、この写真を貼ったのは、早朝に一度教室に忍び込み、何食わぬ顔で再度登校してきたおれなのだ。

その日の麗子先生は、気の毒になるほどボロボロだった。何かに気を取られているようで、まともに言葉が出てこないし、目もうつろだった。正常に授業が出来る状態ではなかった。

麗子先生が教室から出て行ったあと、生徒たちは興味津々に話しあった。

「麗子タンがあんなにオロオロしてるの、初めて見たな。そんなにあの写真がショックだったのかな」
「もしかして、処女なんじゃねぇの? 処女に無修正二穴責めの写真はキツイよ」
「そういうお前だって、童貞じゃねえか」
「おれは、ネットでずいぶん勉強してるからな」

誰もが、純情な麗子先生が過激なポルノ写真を見たことで動揺したとしか思っていなかった。そこに写っている淫らな女と、麗子先生を結びつけて考える者は一人もいないようだった。おれは一人、心の中でニヤニヤした。おれに怯える麗子先生の気持ちを考えると、面白くてたまらなかった。

その日の昼休み、おれはまた麗子先生から声をかけられた。

「宮本君。放課後、進路指導室に来てくれる?」
「またですか? 先生」
おれは笑いたくなるのを必死に押し殺して、できるだけ無表情を装った」

「ごめんなさいね。この前の話の続きをしたいの」
「ああ、そうですか。でも今日はちょっと用事があるんだよなぁ」

おれがそう答えると、麗子先生は不安そうな顔になった。

「そんなに時間はかからないから。お願い」
「わかりました。それじゃ、伺います」
「ありがとう、宮本君。じゃあ、後で」

表情をこわばらせたまま、麗子先生は教室を出て行った。

おれの後ろでヒソヒソ声が聞こえる。

「なんだよ、また宮本かよ。いいな、おれも登校拒否しようかな」
「つーか、もしかしてアレじゃねぇ? さっきのエロ写真、あいつの仕業だったんじゃねえか」
「あー、なんかありうるな。あいつ、そういうことやりそうなタイプだよ」

声を潜めても、おれにはしっかり聞こえていた。しかし、いつものように腹は立たなかった。なにしろ犯人は本当におれなのだから。そして、今日の放課後、いよいよおれは獲物を追い込みにかかるのだ。頭の悪いガキどもの言葉をいちいち気にしている暇はないのだ。

どうせ、お前らも毎晩麗子先生にいやらしいことをする妄想でオナニーしてるんだろう。でも、おれは現実に麗子先生を自分のものにしてやるのだ。それも、お前らの思いもよらないほど、いやらしいことを、いっぱいしてやる。

あまりに楽しくて、おれはついニヤニヤ笑ってしまった。

「なに、あいつ、キモい……」

そんな女子生徒の声が聞こえた。



放課後、おれはわざと遅れて、進路指導室に行った。麗子先生の不安感を煽ろうと思ったのだ。今後の駆け引きを、少しでも有利に運ぶために。

「失礼します」

ドアを開けて入ると、麗子先生はハッとした顔でおれを見た。やっと来たという安堵と、そして得体の知れない不安の入り交じったような表情だ。おれは愉快でたまらない。

「宮本君、ちゃんと来てくれたのね……」

おれは返事もせずに、麗子先生の前の椅子に座った。黙ったまま、じっと顔を見つめた。麗子先生はそんなおれの態度に気押されたようで、慌てて視線を外した。

二人とも、何も言わない。重たい沈黙。麗子先生はその重圧が苦しそうだ。気の毒になるくらいに不安げな表情だった。一方、おれは無表情を装いながらも、笑いを堪えるのに必死だった。

呼び出したものの、何から話せばいいのか、決めかねているのだろう。「美沙子」という名前のこと、貼り出された写真のこと。確証といえるような証拠はない。下手な話をすれば薮蛇だ。どこから探りを入れればいいのか、必死に考えているに違いない。

「け、今朝の写真を貼り出した犯人に、心あたりないかな、宮本君」

長い沈黙の後に、麗子先生はようやくそう切り出した。

「貼り出した奴のことは知りませんが、あの写真は僕も知ってましたよ。美沙子って言う名前らしいですよ、あの女」

美沙子という名前をおれが口に出すと、麗子先生はビクリと反応した。顔が真っ青になっている。

「それは、前に宮本君が言ってた、AVに出ている女性のことなの……」
「いや、本当はプロのAV女優じゃなくて、奴隷らしいです。ネットの一部で、すごい人気なんですよ」
「ネットで人気って……」

やはり麗子先生は、自分の痴態がネットに公開されていたことは、知らなかったようだ。奴隷の画像や動画を不特定多数に公開することは国民奉仕法で禁じられている。まさか自分のご主人様がそんなことをしたとは、思っていなかったのだろう。

「いや、パスワードのかかった会員制のサイトだから、まだ普通には流出してないと思いますけどね」

だから安心して下さい、と言外に含ませたつもりだった。

「奴隷の人のそういう写真をネットで公開したりしたら、いけないのよ。ダウンロードした人も罪に問われるはずよ。宮本君、そういういかがわしいサイトを見たりしちゃいけないわ」

おれは苦笑した。麗子先生は、まだ教師ぶろうとしているのだ。もう少しネチネチといたぶってやろうかなと思っていたが、考えが変わった。

「バレるような、ヘマはしませんよ、美沙子さん」

おれが面と向かって美沙子と呼ぶと、麗子先生は目を見開いた。

「美沙子って……」
「もういいでしょう? 麗子先生が美沙子さんだってことは、誰が見たって明らかなんだから。おれは、美沙子の映像、たくさん持ってますよ。大ファンですから」
「あ、ああ……」

麗子先生は目を伏せた。肩がぶるぶると震えていた。

「あの感じてくるとヒクヒク動くお尻の穴が、すごくエロいですよね、先生。アナルって、そんなに気持ちいいんですか?」
「やめて!」

おれの言葉に耐えかねた麗子先生は、声を上げた。

「宮本君、奴隷期間のことを言うのは法律違反なのよ」

おれを見る瞳が潤んでいた。うっすらと涙が浮かんでいる。年上の美しい女性のそんな表情は、おれの興奮をかきたてる。もっともっと、この女を泣かせてみたいという気持ちが高まってくる。

「ということは、麗子先生が美沙子だってことを認めるんですね」

麗子先生は顔を伏せたままだった。返事はしなくとも、認めたということだ。

「あの映像、学校のみんなに見せたら大喜びだろうなぁ。なにしろ麗子先生はこの学校のマドンナですからね。ほとんどの男子生徒が、麗子先生の裸を想像してオナニーしたことがあると思いますよ。あの服の下にはどんなおっぱいがあるんだろうって。まさか、あんなにいやらしいアナルを持っているなんてことまでは、想像できないでしょうけどね」
「だめよ。奴隷期間のことで、脅迫するのは重罪なのよ。そんなことを言ったことが当局に知られたら、それだけで逮捕されてしまうわ。だから……」

あなたのためだから、とでも言いたいのだろうか。こんな状況でも、教師ぶっている麗子先生に、おれはなんだか腹が立ってきた。

「いいんですよ。おれなんか、どうせロクな人間になれないことがわかってるんです。中学校だって、ちゃんと通えない落ちこぼれですからね。逮捕されようが、どうなろうが構わないんですよ。別に、長生きだってしたいと思っちゃいない。それよりも、麗子先生みたいな素敵な女の人を自由にできるほうがずっといい。そっちのほうがきっと後悔しない人生だと思うんですよ」

それは本心だった。もう生きていくのも面倒くさい。そんな気持ちがずっとあった。自分のように誰からも必要とされていない人間が、30歳を過ぎてまで、ダラダラと生きていくことは、全くの無駄だと思っていたのだ。

それよりも、好きなことをやって、さっさと死にたい。それはおれがずっと考えていたことだった。

「だから、先生。警察に訴えてもいいですよ。おれは全然構わない。そうしたら、美沙子の映像コレクションをクラス全員の奴に送りつけて、おれはさっさと自殺しますから。その後、先生がどんなに恥ずかしい思いをするのか、それを想像するだけで、おれは満足なんですよ」

学校中の憧れである麗子先生が、実は変態アナルマゾ奴隷だということが知られたら、その恥ずかしさは想像を絶するだろう。麗子先生はどんな気持ちになるのだろう。それを考えるだけで射精してしまいそうに、興奮する。

「そんな、そんなこと、ダメよ……」
「じゃあ、どうしてくれるのかな、麗子先生。言っておくけど、これは脅しじゃないからね。おれは本気なんだ」
「……宮本君は、私をどうしたいの?」
「そうだね。とりあえず、あのいやらしいアナルを見せてもらおうかな。あのヒクヒク動くお尻の穴をよく見せてよ」
「そんな!」

麗子先生は息を飲んだ。話の流れから、体を要求されることは想像はしていただろう。しかし、おれの命令は予想を超えたものだったのか。

「ここは、学校の中なのよ」
「だから、お尻の穴だけでいいって言ってるじゃないか。今、全裸になれとは言ってないよ。ここでスカートをめくって、お尻を見せてくれよ」

麗子先生は、しばらく目を閉じて、ぶるぶる震えていたが、あきらめたように肩を落として、答えた。

「わかったわ……」

麗子先生はくるりと後ろを向いて、おれに背中を見せた。チェックのスカート越しにも、むっちりと盛り上がった尻肉が確認できる。

「見せればいいのね」

麗子先生はゆっくりとスカートをめくった。すると薄いブルーのシーツに包まれた大きなヒップが顔を覗かせた。

「早く、パンツも下ろして」

言いながらもおれも喉がカラカラに乾くほど緊張していた。肉親を除けば、現実の女の裸を見るのは生まれて初めてなのだ。それも、これほど美しい女教師の尻だ。緊張するなというほうが無理な話だ。

「は、はい……」

麗子先生はショーツの縁に指をかけると、少しずつ引き下ろしていった。真っ白でやわらかそうな肌が剥き出されていく。

そして、ショーツは太腿まで下ろされ、麗子先生の豊かな白い尻は完全に露出した。おれはその美しさとなまめかしさに目を奪われた。これが本物の女の尻なのか。

(続く)

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10.02.08更新 | WEBスナイパー  >  赤い首輪
文=小林電人 |