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第5章 公務奴隷・真紀【3】

「すごいな、美人ジャーナリスト様が大股開きでしょんべんを噴き出してるぞ。ふふふ、まだ終わらないのか。恥ずかしげもなく、よく出すもんだ」

見上げるように真紀の股間を覗き込みながら、老人は言った。よだれをたらさんばかりの表情だった。

「いや、いや、見ないで下さい」

見ず知らずの男たちに丸見えになった性器、そして放尿する様を凝視される。いまだかつて味わったことのない強烈な羞恥心。真っ赤に染まった顔を隠したくても両腕は後ろで拘束されたままだ。真紀は泣きじゃくりながら、頭を激しく振ることしか出来ない。

「ふふふ、まったくよく出しますな。こりゃ、ずいぶんたまってたんでしょう。お、ようやく終わりかな」

黄金色の水流が少しづつ勢いを失っていった。真紀にとっては永遠とも思えるほどの時間だった。

「あ、ああ……」

やがてその流れは止まり、ぽたぽたと雫が落ちるのみとなった。

「ふふふ、終わったか。それでは、ワシが綺麗にしてやろう」

老人が好色な笑みを浮かべながら、手に持ったティッシュペーパーを、真紀の股間へと近づけた。

「公務奴隷が、北尾事務次官に後始末してもらえるなど、そうはないことだぞ。光栄に思えよ」

自分を辱めている男に排泄の後始末をされるなど、真紀にとっては屈辱以外の何物でもない。しかし、真紀はその男の名前に聞き覚えがあった。

「北尾事務次官?!」

名前を呼ばれた老人は、少し驚いたような表情をして股間を拭う手を止めた。

「ふふふ、ずいぶんワシの周りを嗅ぎ回っていたようだが、こんな風に出会えるとは思ってもいなかっただろう、美人ジャーナリスト様」

奉仕庁の実態を調べていれば、どうしてもその名前に行き着く。実質的に奉仕庁を牛耳っている最高実力者であり、過去の総理大臣が彼を更迭しようとして、逆に自分が失脚したという事件まであった。しかし、その実態は一般には知られておらず、写真すら公表されていなかった。彼の実態に迫ろうということは、ジャーナリストとしての真紀のテーマのひとつでもあったのだ。

その男に、排泄した後の股間を拭かれている。真紀はあまりの屈辱に打ちのめされる。

「お前は、ワシのことが知りたいのだろう。これからゆっくりと教えてやろう。色々なことまでな。ひひひ」

北尾は、官僚のトップの座に君臨する者とは到底思えないような下卑な笑いを浮かべて、真紀の股間を拭き続けた。



屈辱の放尿の後、真紀は北尾たちの目の前で医師による診察を受けさせられた。性器の奥までも隈なく調べられた。

奉仕期間の前にも検査は受けさせられ、妊娠防止のための特殊なリングを入れられるなどの処置をされている。しかし、ここではさらに念入りな検査が行なわれた。中には若干の苦痛を伴なうものもあったが、それ以上に男たちの好奇の視線の前で屈辱的な検査を受けさせられるという精神的なダメージのほうが、ずっと大きかった。

検査が終わった後、窓ひとつない個室で休憩が許された。全裸のまま、固いベッドの上で、真紀は泣いた。次々と襲い来る屈辱的な体験で、自分からはもう人間らしい尊厳は奪われてしまったのだと真紀は思い知らされた。これからさらに2年間の地獄の日々を、自分は生き抜くことが出来るのだろうか。自分の精神は耐え切れるのだろうか。

そして泣き疲れ、いつしか眠りについていた。護送車の中ではまともな睡眠をとることもできなかったため、真紀の体は激しく疲労していたのだ。

それから、どれほど眠っていたのかわからない。係員に叩き起こされ、別の部屋へ連行された。全裸に首輪だけの自分の姿を、すれ違う職員の男性たちがジロジロ見ては好色な笑みを浮かべる。今さら隠しても無駄だとは思わないでもなかったが、それでも真紀の羞恥心は、胸と股間を手で隠さずにはいられなかった。

連れて行かれた部屋で、真紀を待っていたのは意外な待遇だった。そこは大きな鏡台とクローゼットのある部屋で、以前に取材で行ったことのあるテレビ局のメイクルームそのものだった。

部屋には真紀と同じように赤い首輪をつけただけの全裸の女が立っていた。真紀と、そう年齢は変わらないだろうが、かなり細く、乳房などはほとんど膨らみがない。顔立ちも悪いというほどではないが地味で、どこか陰気だった。

その女はペコリと真紀を連れてきた係員に頭を下げる。係員は真紀に鏡台の前の椅子に座るように命じた。

すると女は黙ったまま、真紀のメイクを始めた。汗と涙による顔の汚れをクリームで落とし、そして丁寧に化粧を施し、髪を整えた。

奴隷のような扱いから一転しての待遇に、真紀はとまどった。

「あの、これは、いったい……?」

思わず尋ねるが、女は表情を変えずに首を横に振るだけで何も答えない。背後で見張っている係員の目を恐れているのだろう。

髪のセットと、メイクの仕上げが終わると、女は自分の仕事が上手くいったというような満足気な表情を浮かべた。真紀も鏡の中の自分の顔を見る。女の技術は相当なものだった。ただでさえ美しい真紀が、さらに美しく仕上げられていた。係員も、息を飲んだ。

「ほう、すごいな。これはみんな喜ぶぞ。よくやった、ユキ」

みんなが喜ぶ? 係員の言葉から、真紀はこれから自分の身に起こることを予想しようとする。恐らく、北尾たちの前に引き出され、そしてついに凌辱されてしまうのだろう。みんなということは、またさっきのように何人もの目の前で犯されるのか。

真紀は唇を噛む。もう諦めるしかないのだが、なかなか覚悟を決めることは出来ない。

係員はメイクルームの隣の部屋へと真紀を連れて行く。そこは真紀が今までいた部屋とは一変して、不気味な場所だった。真紀が今まで見たことがないような奇妙な形の台や器具が並べられている。しかし、それが人間を辱めるための道具であることは、真紀にも想像がついた。胸が冷たくなる。

「この上に寝るんだ」

係員はそのうちの一つの台を示した。それは簡易ベッドから鉄製の柱が生えたような形状の台だった。鎖と皮製の腕輪、足輪らしきものがつながっている。ここに乗せられたら、自分は拘束され、自由を奪われてしまうだろう。

真紀は台の前でためらった。すると係員の男は、飛び出し式の鞭で床を叩き、大きな音で威嚇した。

「ひっ」

奉仕庁で使われた鞭と同じものだった。あの激痛が脳裏に甦る。

真紀は、あきらめて台の上に仰向けに横たわった。往生際悪く、まだ手で胸と股間を隠していたが、係員は構わず腕輪と足輪をかけていき、そしてそれを台の所定の場所へとつないでいった。

「いやっ、こんな格好、いやです」

その台は女として最も屈辱的な姿勢を強制するための構造になっていたのだ。
 
真紀の体は折りたたまれて股間は天井を向いていた。右手首は右足首、左手首は左足首につながれ、それはまるで捕らえられた狸のような姿勢だ。しかも両脚は大きく左右に開かれたままで固定されているため、隠しておきたい二つの秘穴は、あますところなくさらけ出されてしまっていた。

「ふふふ、これで準備OKだ。お前ほど美しい女だと、素晴らしい見世物になるな」

係員はそうつぶやくと、開ききった真紀の股間をのぞき込んだ。

「い、いや、見ないで……」
「ううむ、これはすごいな」

係員が唸るのも無理はない。天井を向いて掲げられ、広げられた股間では、肉裂も、可憐な窄まりも、無残なほどに丸出しになっていた。その生々しい光景は、男を惹きつけずにはおかない。うっすらと口を開いた肉壁の鮮やかなピンク色、色素沈着のまったく見られない愛らしい菊の花。しかも、その開いた股間の下には、羞恥に悶える美貌も同時に見られるのだ。男なら誰でも、うっとりと何時間でも見つめていたくなる光景だった。

その時、壁にかけられたインターホンが鳴った。係員は受話器を取る。

「はい。用意は出来ました。いつでも行けますよ」

そして係員は、あられもない格好の真紀を乗せたまま、台を押した。下にタイヤがついているため、台車のようにそのまま動かせるのだ。

いきなり運ばれて戸惑う真紀に、係員は言った。

「さぁ、ショータイムだ」
「え、な、何ですか? いや、こんな格好のままで……」

扉をあけると長い通路があった。真紀は台に乗せられたまま、運ばれていく。ざわざわという物音が聞こえてくる。それが大勢の人の話し声だということが真紀にもわかった。するとこれから自分が連れて行かれるのは……。

「ま、まさか。いや、いやです! 止めて、止めて下さい! 」
「もう、あきらめな。さぁ、楽しいショーの始まりだぞ」

扉が開き、場内へ真紀は運ばれた。

「ひっ、いや〜っ!」

真紀の悲鳴は、大歓声にかき消された。

講堂のような大きなスペースだった。そして、そこには何百人という坊主頭の男たちが立っていた。灰色の制服を着せられたその男たちは、血走った目を一斉に真紀へと向けた。いや、視線だけではない。押し寄せてきた。銃を構えた係員たちが居なければ、台の上の真紀に殺到していただろう。

「うわぁ、すげえ、丸見えだぜ」
「ケツの穴まで見えるぞ」
「おい、そこ座れよ、見えねぇぞ!」
「うるせえ、黙れ!」

男たちの獣じみた殺気が場内にこもっていた。そんな中を、これ以上恥ずかしい姿はないという格好をさせられた真紀が運ばれていく。

無数の熱い視線が、自分の股間へ集中している。それは羞恥などという生易しいものではなかった。頭の中も、体の奥も、真っ白になり、血が沸騰してしまうのではないかと思うほど熱くなった。

台は、場内の中央で止められた。数百人の男たちが、その周りを取り囲む。

「あ、ああ……」

凄まじい視姦の嵐に真紀は翻弄される。あまりの羞恥に息も出来ない。目をつぶっても、視線が熱く突き刺さってくるのがわかる。

「ほらほら、お前ら、大人しくしろ。まだ式典の途中だぞ」

係員の一人が大声を出した。それでもなかなか男たちの熱狂は治まらない。痺れを切らした大柄の係員が鞭で床を叩き、そして叫んだ。

「黙れ!」

その怒鳴り声で、場内は一瞬にして静まり返った。どうやら収容者たちに恐れられている係員らしい。

「所長、どうぞ」

会場の奥のステージのようになったところにスーツ姿の中年男がマイクを手に話し始める。しかし場内の誰一人、そちらを向いてはいない。全ての視線は、真紀の股間に集中したままだ。

構わず所長は話し始めた。

「今日から、その真紀をはじめとして、新しい公務奉仕者たちが、この第八特殊収容所にやってきた。奉仕者はあくまでも国の公共財産だ。くれぐれも、壊さないように大事に使って欲しい」

男たちの中から声が飛んだ。

「この女も使わせてくれるのか?」

所長は薄笑いを浮かべながら応える。

「それはお前たちの心がけ次第だ。態度がいい者に関しては、考えないでもない。まぁ、それまでは普通の奉仕者を使うんだな。代わりに今日はこの女のショーを見せてやろう」

限界を超えた羞恥に失神寸前であった真紀には、男たちのそんな声も耳に入っていなかった。

(続く)

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10.04.12更新 | WEBスナイパー  >  赤い首輪
文=小林電人 |