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全ての国民は2年間、国に全てを捧げて奉仕する義務がある――。日本によく似た、しかし異なる某国で「奉仕者」の立場に転落した女たちが辿る、絶対服従の日々。飼育・調教が法律によって認められた世界で繰り広げられる、
異色エロティックロマン!「じゃあ、行ってくるよ」
イサクが声をかけると、妻はいやみたっぷりに返事をした。
「はいはい。いってらっしゃいませ。妻も子供も置き去りにして、お一人で楽しいバカンスへ」
「だから、バカンスじゃないって言ってるだろう、マリア。アイディアを出すための仕事なんだよ」
「わかってますよ。お気をつけて」
もう妻は、イサクのほうを見ようともしなかった。自分は平気で友達とバカンスに行く癖に、イサクが一人で出かけようとすると、たちまち不機嫌になるのだ。妻に言わせれば、普段から家庭を顧みずに仕事ばかりしているイサクが悪いというのだ。
結婚前から気の強い女だったが、最近はわがままが目に余る。だから、イサクもつい仕事を理由に家から離れることが多くなってしまう。いや、実際に仕事は忙しいのだ。
学生の頃に遊び半分で始めたソフトの開発グループが、気がつけばその分野で世界のトップシェアを占める会社になっていた。農業と林業が中心で他に目立った産業のなかったイサクの国では、その会社、バックスはたちまち最大級の企業ということになった。
今やイサク・バックマンは世界がその動向に注目する国の名士なのだ。とは言え、イサク自身は人付き合いが苦手で、派手な遊びとは無縁な性格だった。女性とも全く縁がなく、現在の妻も、心配した周りが紹介して半ば無理矢理に結婚させられたようなものだった。
「イサクみたいな男には、明るくて積極的なタイプの女性がいいんだよ」
創成期からのメンバーであり、実質的にはバックスの経営を任せているダニエルが紹介してきたマリアは、海外留学中にファッションモデルをした経験もある美貌の持ち主で、どんな場においても自然と主役になるような華のある女性だった。人当たりもよく、イサクも初めて会った時から、マリアに惹かれ、二人はほどなく結婚した。
しかし、次第にマリアはおとなしい性格のイサクに物足りなさを感じるようになったらしく、二人の関係はぎくしゃくしたものになっていった。数年前に生まれた娘の存在も、二人の仲を完全に修復することは出来なかった。
マリアには男の影がちらついていたが、イサクはあえて気づかないふりをした。下手に突っ込んで、面倒くさいことになるのはごめんだった。そんな時間があったら、新しいプロジェクトのことを考えたほうがいい。
全く、女はもうこりごりだ。そうこぼすと、ダニエルが済まなそうな顔をした。マリアを紹介した責任を感じているのだ。
「絶対お前たち、上手く行くと思ったんだけどなぁ。すまないな、イサク」
「いや、別にすぐに離婚とか、そういう状況じゃないんだ。大丈夫だよ。たいていの夫婦だって、こんなもんなんだろ」
「……そうだ。ちょっと面白い話があったんだっけ」
それからしばらくしてダニエルは、イサクのスケジュールを調整して、強引に一週間の休暇をひねり出した。そして、その間、会社の役員のための高級リゾート施設に行くようにイサクに言った。
「いいかい、イサク。お前は今、スランプだろう? マリアのことだけじゃない。ずっと働き過ぎなんだよ。たまにはリフレッシュしないとよくない。もうイサク・バックマンはお前だけのものじゃないんだ。我が社の社員全部、それから我が国の命運を背負っている存在なんだかな」
ダニエルのその大げさな言い方を思い出し、苦笑いしながらイサクはフォルクスワーゲン・フェートンを飛ばして、リゾート地へ向かった。
確かにここのところ、イサクが立ち上げたプロジェクトは芳しくなかった。そのうちのひとつは今後のバックスの命運を左右しかねない大きな失態となっていた。スランプだと言われれば、そうかもしれない。
「身も心もリフレッシュするんだ。身も、心もな」
何か意味ありげなダニエルの笑顔が妙に気にかかった。彼のことだ、何かサプライズな仕掛けを用意しているのだろう。
厳重なセキュリティゲートを経て、イサクはバックス所有の別荘地に到着した。派手なものが苦手なイサクの趣味を反映して、敷地は広いものの家屋はこじんまりとした平屋造り。山奥の森林地の中なので、周囲には何もなく、極めて静かだ。
ドアを開く。身の回りの世話をするメイドたちがいるはずなので、鍵はかかっていない。
中に入って、イサクはギョッとした。
「いらっしゃいませ、ご主人様」
目の前の床に白い物体があった。それがそうしゃべった。
しばらくして、それが全裸の女性の白い背中なのだと、やっとわかった。すっぱだかの女性が床に這いつくばっているのだ。それが土下座と呼ばれる姿勢だということをイサクは知らなかったので、奇異に感じた。
「え、え、え?!」
イサクは驚いて素っ頓狂な声を上げてしまった。すると、その女性はようやく頭を上げた。
「アイリと申します。これからよろしくお願いいたします」
イサクはその全裸の女性が、東洋人であることに気づいたが、全く流麗にイサクの国の言葉を話していた。
女性は立ち上がると、イサクが持っていた荷物に手を伸ばした。
「お荷物、お持ちします」
女性はまるっきりの全裸だった。いや、ひとつだけ首に真っ赤な皮製の首輪をしていた。それが無骨な大きなもので、そのほっそりした女性にはあまりにも似合っていなかった。
いや、それよりも、その女性が全裸であること自体が異様だった。
イサクは男としては小柄なほうで、そろそろ中年と呼ばれる年齢に差しかかってはいるが、あまり贅肉はついていず、むしろ貧弱といってもいいくらいだ。実際にイサクに会って、そのあまりの威厳のなさに驚く客人も多いほどだ。まるでクラスのいじめられっ子のようだ、とイサクを揶揄した記者もいた。
しかし、その女性はイサクよりも、ずっと華奢で線が細かった。乳房も形はいいものの、さほど盛りあがっておらず、そしてその股間にはあるべき茂みがなく、肉の亀裂がはっきりと見えてしまっている。顔立ちもあどけなく、女性というよりも、少女と呼んだほうが相応しいだろう。
あっけにとられているイサクの荷物を、少女は手に持ち、運び始めた。大きなボストンバックを華奢な全裸の少女が持っている様は、どうにも痛々しい。
「あ、いいよ、自分で持つから」
「大丈夫です、ご主人様。これが私の仕事ですから。お部屋に運びますね」
赤い首輪だけをつけた全裸の少女は、イサクの荷物を抱えて、スタスタと奥の部屋へと歩いていった。その小さな背中と尻を、イサクは呆然と見ていた。
「おい、ダニエル、これはどういうことなんだ?!」
電話の向こうでダニエルが大笑いをしていた。
「驚いたかい、イサク。可愛らしいだろう、すっぱだかのメイドさん。気に入ったかい?」
「悪趣味だよ、ダニエル。僕がこんなことで喜ぶとでも思うのか」
バカにされているようで、イサクは無性に腹が立った。
「そのメイドさんは、ドールと呼ばれているんだ。君は聞いたことがないかな。世界中の一部の男性セレブの間で密かなお楽しみとして知られていることさ。実は僕も少し前にドール遊びをしたことがあったんだけど、素晴らしかったよ。これから一週間、君はその別荘でドールと二人っきりで過ごすんだ。きっとストレスなんか、どこかへ消えてしまうよ。ふふふ、それではごゆっくりとお楽しみ下さい、社長」
ダニエルが一方的に電話を切った。イサクは呆れ返った。二十年以上の付き合いになるのに、ダニエルは自分のことを全くわかっていないと思った。いや、これまでだって、ビジネスの場において、肉弾接待を迫られたことは何回かある。しかし、そういう時、いつもイサクは敢然と席を立ってきた。性的なことに興味がないわけじゃないが、そうした刹那的な肉欲とは一線を画していたいのだ。自分はそんな下劣な人間ではない。
あの少女には帰ってもらおう。そして普通のメイド、いや、男性の使用人に来てもらおう。
「アイリ、アイリ!」
イサクは少女の名前を呼んだ。確かさっき、アイリと名乗っていたはずだ。
「はい、ご主人様」
すぐに全裸の少女が部屋に現われた。その可憐な白い裸身を見て、イサクは慌てて目を逸らした。
「アイリ……、とりあえず、何か服を着てくれないか? 目のやり場に困るんだ」
「私たちは、なんらかの理由がない限り、服を着ることを禁じられているんです、ご主人様。私たちは、奴隷ですから」
「奴隷? 21世紀のこの時代に?」
「はい。私たちには一切の人権がありません。ご主人様の命令には、何でも従います」
「なんだよ、それ。おかしいよ」
「お願いします。私を奴隷として扱って下さい。私はそのために、ここに来ているんですから」
「どんなことでも聞くって? じゃあ、服を着てくれ。それが命令だ」
アイリは困ったような顔になる。
「奴隷は……、性行為の興奮を高めるためのコスチューム以外には、服を着ることは出来ないんです」
「じゃあ、僕は服を着ている女にしか興奮しないんだ。それならいいだろう?」
「はい、わかりました、ご主人様。それではどんなコスチュームを着ましょうか?」
「普通の女の子の服でいいよ」
「普通というのはないのですが」
「じゃあ、メイドだ。メイドらしい格好してくれ」
「はい、それならあります」
十数分後、アイリは黒いワンピースに白いエプロン、そして白いフリルのついたカチューシャという格好で、イサクの前に現われた。それはアイリによく似合っていて、彼女の可愛らしさを引き立てていた。
にっこりと無邪気な笑みを浮かべて、アイリは言った。
「これでよろしいでしょうか、ご主人様」
「あ、ああ」
イサクはなんだかアイリが眩しくて直視できなかった。服を着たところで、目のやり場がない。
「君は、こういう仕事をずっとやっているのかい?」
イサクは視線を逸らしながら、アイリに尋ねた。だからアイリが哀しそうな表情になったことには気づかなかった。
「仕事ではありません。私たちの国では、女性は一定期間、奴隷になることが決められているんです」
「そんな国があるのか! この現代に? 信じられないよ。じゃあ、君はその一定期間が終わるまで、奴隷として過ごさなくちゃいけないのかい?」
「いえ、私は……、ずっとイサク様の奴隷です。イサク様が私に飽きるまで」
「え、一週間だけじゃなくて?」
「はい。私はそのためにこちらの国まで送られてきました」
イサクは驚いて、アイリの顔を見た。そしてアイリが泣きそうな表情になっていたことを知った。
「イサク様にお使えするために、一生懸命言葉も覚えましたから」
確かにアイリの発音は極めてナチュラルだった。時々、アクセントがおかしい時もあるが、この国でも地方へ行けば、もっと激しく訛っている。
「ですから、私にご奉仕させて下さい。それが私の存在意義なのですから。……失礼します」
そう言って、アイリはイサクの前でしゃがみこみ、ジーンズのベルトに手をかけた。
(続く)
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