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第6章 外交奴隷・アイリ【7】

「初めまして。アスカと申します」

床の上で、深々と土下座をしたその女性は、20歳そこそこといったところだろうか。しかし顔立ちはあどけなく、まだ少女といったほうが似合いそうだ。東洋人は、イサクたちからすると、年齢よりもずいぶん若く見える。アイリなどは、子供といってもいいくらいだ。

しかし、華奢なアイリとは違って、アスカはずいぶんグラマラスな体つきをしていた。ドレスの上からも、むっちりとした腰のラインは見て取れるし、大きく開いた胸元にはくっきりとした深い谷間が刻まれている。それが幼い顔立ちとミスマッチな魅力になっている。

慌てて、アイリも床に座り頭をつけて挨拶した。

「イサク様の奴隷のアイリです。よろしくお願いいたします」

「久しぶりだね、アイリ。相変わらず可愛いね」

「ありがとうございます、ダニエル様」

イサクはちょっと驚いた。

「初対面じゃないのか」

「ああ、イサクにはどんなドールがいいのか、何人も面接したんだぜ。お前の好みにぴったりだろう? 伊達に何十年もお前の親友をしてないからな」

そう言ってダニエルは笑うが、イサクは「マリアがお前にぴったりだと言ったのも、お前だろう」と心の中で呟いた。イサクは自分より先に、ダニエルがアイリに会っていたということに、少し嫉妬していた。

そんなイサクの心情など、全く気にしないように、ダニエルは明るく言う。

「さぁ、行こう。会場はここから車で30分ほどのところだ」

ダニエルのプライベートルームに集まった4人は、リムジンに乗り込んだ。イサクとダニエルは、最近この国で流行っている細身のタキシード、アスカは胸元が大きく開いたワインレッドのドレス、そしてアイリは清楚な薄いブルーのドレスを着ていた。もちろん、アスカとアイリの首には、ドレスとは不似合いな無骨な赤い首輪があった。

イサクのバカンスが終わってから一ヶ月が過ぎていた。イサクは首都マティラに戻ってからも、アイリに部屋を与え、ハードスケジュールの中、なんとか暇をみつけてはそこへ通っていた。

もはやイサクにとって、アイリは欠かすことのできない存在となっていた。何の遠慮もすることなく、自分の思い通りに扱える女性がいるということは、イサクにとって大きなストレス解消となった。イサクは時には恋人のように、時には乱暴にアイリに接した。そしてアイリはどんな扱いをうけようと、喜んだ。アイリはイサクの全てを受け入れた。一方で、イサクはそれまでのスランプが嘘のように仕事に打ち込み、新しいプロジェクトを次々と進めていた。

そんなある日、イサクとアイリは、ダニエルの誘いで「ドールパーティ」なるイベントに参加することになった。奴隷=ドールを持つセレブたちが集まるパーティだという。人前にアイリを晒すことに抵抗はあったものの、興味を抑え切れずにイサクは参加することを決めた。

「この国では、まだ3回目だけど、世界ではもうセレブの隠れた常識になっているらしいぜ、ドールパーティは。一応、それぞれの身分は秘密ということになっているけれど、まぁ、びっくりするようなメンツが集まってるよ。ある意味で、新しい社交場になりつつあるみたいだ」

会場へ向かうリムジンの中で、ダニエルが言った。車内は、ゆったりとした座席が向かい合っていて、応接室のようだ。ダニエルは話ながらも、アスカのスカートの中に右手を突っ込んでいる。アスカは必死に快感に耐えているようだったが、肌がピンク色に上気し、目が潤んでいる。声を漏らすまいとしても、荒くなっていく息は隠せない。

そんな様をイサクは顔を赤らめながら見ていた。ずいぶん「ご主人様」ぶりが板について来たと自分では思っていたが、人前でこんなことをすることには、まだ躊躇があった。

いや、ダニエルとは長い付き合いだが、彼がここまで大胆な行為の出来る男だとは知らなかった。自分と同じように、ダニエルもアスカによって、どんどん開発されているのだろうとイサクは思った。

ふと、横のアイリに目をやる。アイリは息を飲んでじっと、アスカを見つめていた。どこか羨ましそうな表情だった。しかし、イサクの視線に気づくと、慌てて恥ずかしそうにうつむいた。

ダニエルの手の動きが激しさを増したようだった。スカートの布が上下し、そしてアスカの反応も大胆になっていく。

「あっ、んんっ……」

悩ましい声が漏れた。ダニエルがたしなめる。

「なんだ、お客様の前で変な声を出すんじゃない、アスカ」

「は、はい、申し訳ありません、ご主人様……」

しかし、その謝罪の声すらも、震え、甘い吐息が混じっている。防音された車内に、微かに響くエンジン音と混じって、湿った卑猥な音が聞こえた。

「ああっ、あっ……」

また声が出てしまう。アスカは大胆に露出した胸元まで汗をかいている。

「ふふふ、そんなに我慢できないのか。イサクたちも気になってるようだし、見せてあげようかな」

ダニエルはアスカのスカートを捲り上げた。現れた下半身には、何もつけられていなかった。むき出しの股間にダニエルの指が深々と突き刺さっている。

「ほら、脚を広げて、イサクとアイリによく見えるようにするんだ」

「はい……。ああ、恥ずかしいです、ご主人様」

言いながらも、アスカは足を座席の上に乗せ、左右に大きく開いた。脚はM字型を描き、恥ずかしい部分がさらけ出された。

ダニエルは、その中心の亀裂から、指を引き抜いた。指先からその部分に、キラキラと糸が引いた。ダニエルはそれを見せつける。

「ほら、こんなに糸を引くほど濡らしちゃったんだな、アスカ。イサクとアイリに見られてしまったぞ」

「申し訳ありません。恥ずかしいです」

アスカは思わず広げきった脚を閉じようとした。ダニエルは怒鳴りつける。

「誰が脚を閉じていいといった。よし、アスカ。二人にもっと見せるんだ。自分で、奥まで開いて見てもらえ」

「は、はい……」

アスカは指を自分の太腿の内側に食い込ませ、そのまま左右に引っ張った。つられて肉裂が大きく開いた。濡れ光る桃色の粘膜が剥き出しになり、そこに溜まっていた透明の愛液がとろりとこぼれ落ちた。

イサクは思わず目を奪われる。そこはアイリと同じように全く陰りがなかった、肉唇は大きく厚く複雑な形状をしていて、見るからに卑猥な佇まいだった。そして無毛であるがゆえに、その印象がさらに際立っている。

「どうだ、アスカ。イサクとアイリにお前の恥ずかしいところを見てもらっているぞ」

「あ、あ、あ……。アスカは、みなさんに、おまんこを、見ていだけて、うれしいです」

そう言いながらも、アスカのその部分はみるみるうちに蜜が溢れ出し、こぼれていく。

「どうだい、イサク。おれのアスカは、見られることが大好きでね。この前のドールパーティでも、みんなの前でこんな格好をしただけで、イッてしまったんだよ」

「みんなの前で……?!」

「そう。ドールパーティは自慢のドールを披露しあう会だからね。みんなの前で色々なプレイをやって見せるんだ。まぁ、もちろん希望者だけだから、無理にやらされることはない。まぁ、今回は最初だから、見ているだけでもいいだろう」

「あ、ああ……、そうだな。今回は見学に徹することにするよ」

「それがいい。今回、おれはアスカにきっちりと仕込んできたからな。よく見てやってくれよ」

ダニエルは得意げに笑った。

やがてリムジンは、街のはずれにある大きな邸宅へと入っていった。



見覚えのある顔ばかりだった。イサクもこの国では大企業のトップという立場にあるため、政界・財界の大物たちとは顔を合わせる機会は少なくない。個人的には、そうしたつきあいは苦手なため、ほとんどをダニエルに任せているわけだが、それでも多少の関係は生まれている。

「やぁ、イサク。君もドール仲間だったのか。そんなことには縁のないタイプだと思っていたけど、人は見かけによらないものだな」

気安く声をかけてきたのは、最大野党の幹事長だった。それどころか、与党の大物政治家も何人もいる。国会ではいがみ合いをしている彼らだが、ここではにこやかに談笑している。有名なスポーツ選手や、俳優もいた。そして、全ての男の手には鎖が握られ、それは傍らに立つ女の赤い首輪へとつなげられていた。女たちは、大柄であったり小柄であったり、グラマラスであったり、スレンダーであったりと様々なタイプがいたが、いずれも黒髪の東洋系美女だった。誰もが華やかなドレスを身にまとっているが、無骨な赤い首輪がどうにも目立っている。

会場はこの国の有数の資産家の別荘だった。「ご主人様」が20人ほど。そして同数の「奴隷」がいた。表向きは、なごやかなムードではあるものの、どこかにギラついた雰囲気が感じられる。誰もが普段とは違って、獣のような臭いを放っているのだ。

そんなパーティの中で、イサクとアイリは所在なげだった。イサクはもともとパーティ嫌いで、こうした場は苦手なのだ。人見知りがちなイサクは、みんなのように軽々しく声をかけあうことが出来なかった。

そして、アイリも気後れしているようだった。そこに連れられている奴隷の中でも、アイリは最も年齢が下のようだったし、体つきも一番華奢だった。グラマラスで華やかなタイプの奴隷が多く、アイリは圧倒されていた。

一方、ダニエルとアスカは、すでに顔見知りのドール仲間たちと、親しげに話している。イサクもその度に引っ張り出されて挨拶させられるのだが、どうにもうまく話せずに、次第に話の輪から離れていってしまうのだ。

やがて一人の男は部屋の中央で大きな声を上げた。

「ようこそ、ドールを愛する仲間たちよ。それでは今夜のドールパーティをはじめましょう。ここで起こったことは、すべて秘密です。現実のあらゆるしがらみを忘れて、今夜は欲望のままにドールとの遊びを楽しみましょう」

どうやら、このパーティの主催者のようだったが、イサクにはその男の顔に見覚えはなかった。傍らのダニエルに小声で聞く。

「おい、あれは誰だ?」

「ああ、ドール輸入の元締めだよ。アスカもアイリも彼を介して紹介してもらったんだ」

「安心できる男なのか?」

「たぶんな。もともとはタルス議員から紹介されたわけだし、もし彼が危険な男なら、この国はもうおしまいだよ」

ダニエルは周りを示すように指でくるりと輪をかいた。

「確かにな」

イサクも周囲を見渡して、頷いた。これだけ多くの国の主要人物が彼の世話になっているのだ。彼が危ない人物ならば、この国自体の存亡に関わってしまうだろう。いや、この国だけではない、ここに集まっている男の中には超国籍企業の要人の顔もちらほらあるようだった。

その男が言った。

「それでは、ドールを整列させましょう」

すると会場の男たちは一斉に、自分の奴隷の首輪から鎖を外した。イサクもマネをして、鎖を外す。

すると奴隷たちは会場の奥へと集まり、横に一列に並んだ。アイリも不安そうな顔でそれに従っていた。

ずらりと22人の奴隷が並んだ。その中でもアイリは一番小柄で、まるで子供のように弱々しく見えた。

男は奴隷たちの前に立ち、言った。

「さぁ、お前たち。奴隷としての正しい姿になりなさい」

言われると、奴隷たちは一斉にドレスを脱ぎ始めた。
(続く)

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10.07.19更新 | WEBスナイパー  >  赤い首輪
文=小林電人 |