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Alice who wishes confinement
私の居場所はどこにあるの――女児誘拐の不穏なニュースを観ながら倒錯した欲望に駆られた女子高生が体験する、エロティックでキケンで悩み多き冒険。理想と現実の狭間で揺れ動く乙女心とアブノーマルな性の交点に生まれる現代のロリータ・ファンタジー。オナニーマエストロ遠藤遊佐の作家デビュー作品!!タナベは焦っていた。
目の前で失禁して以来、アリスがまったく口をきいてくれなくなったからだ。それどころか目を合わせようともしない。丸二日間というものベッドの上に横になったきりで、最低限の水分以外は何も口にしないでいる。
デリバリーのピザやカレー味のカップラーメン、ハーゲンダッツのアイスクリームなど、年頃の女の子が好きそうなものを考えて用意してみたけれど、無駄だった。
今日は月曜で会社に行かなくてはならないので、自分がいない間に少しでも手をつけてくれないものかとテーブルの上に菓子パンやスナック菓子を置いて家を出たのだが、帰ってきてみるとそれらは朝置いたときのままになっていた。
考えてみれば当たり前である。両手足を縛り、猿轡をかませているのだから。
どうしたって食べられない状態にしておきながら目の前に食べ物を置いておくなんて、かえって目の毒だ。でも、タナベは無駄だとわかっていてもそうせずにはいられなかった。
こういうところが会社の後輩に「悪い人じゃないんだけどKYなんだよね」と噂される所以であると、彼は気づいていない。
しかし、食べようと努力した痕跡すら見られないところを見ると、この場合は身動きがとれないのが原因でもないようだ。
仕事をしている間も、家に一人で拘束されている少女のことを考えると気が気じゃなかった。会社を定時であがると一目散に家に帰り、コートを脱ぐのすらもどかしく監禁部屋に駆け込む。しかし物音で帰ってきたことがわかっているくせに、アリスはぐったりと横になったまま背を向けている。
正面に回り込んで顔をのぞき込むと、子犬みたいなつぶらな瞳の下にくっきりと黒いくまができていた。色が白いせいで顔色が悪いのが目立つのだ。少女らしい頬の赤みがすっかりなくなり、昨日よりもさらに衰弱しているように見える。大きいばかりで生気のない目を見て、タナベは泣きたくなった。
トイレを我慢できず失禁してしまったことが、これほどまでに深いダメージを与えるとは正直思っていなかった。
彼女が泣きながら失禁したときはひどく興奮した。とびきりの美少女が自分だけに無防備な姿を晒していると思うと、どんなハードなAVを観ているよりも胸がときめいた。実を言うと風呂場で濡れた下半身を洗ってやっているときも、ここ数年なかったほどに固く勃起していたのだが、少女があまりにも激しく泣くので一生懸命隠していたのだ。あそこでいやらしいセリフなど吐かなくて本当によかったと今にしてみれば思う。
これまで彼の妄想の中に出てきた歴代の奴隷少女達も、もちろん羞恥心は持っていた。でもそれは「イヤヨイヤヨも好きのうち」とも言える程度であって、これほど深刻なものではない。
少女は泣きじゃくりながらも興奮に股間を濡らし、ご主人様の前で自分をいやらしいメスだと認める。タナベは陥落した少女を余裕たっぷりに責め、自分好みの女に調教していく。そんな都合のいい光景を思い描いていた。しかし今の状況はどうだ。いやらしいメスだと認めるどころか、すっかり殻に閉じこもってしまっているじゃないか。
これじゃ何のために危険を冒して拉致してきたのかわからない。いや、その前にアリスは弱って死んでしまうかもしれない。子供の頃、夜店で買ってきたうさぎの子が学校から帰ってきたら動かなくなっていたことを思い出し、怖くなった。
「アリスの好きなものはなんだい? コンビニ食が口に合わないんだったら、台所であったかいものを作ってくることだってできるんだよ。おい、頼むから何か食べてくれよ……」
これまでに何度も口にした言葉を繰り返しながら、ため息をつく。この分だと明日は有給をとらなきゃならないかもしれない。でも、普段から真面目な働きぶりが取り柄でほとんど会社を休んだことのない自分が急に休みがちになったら、不審がられるに決まっている。どうしたことか……。
タナベは、都心から電車で40分ほどの郊外にある産業用電機メーカーに勤めていた。大学の理工学部を卒業してすぐに入った会社で、今年で勤続20年になる。
バブルで景気がよかったせいか就職はすんなり決まった。その頃の同級生にはバックパック一つで海外放浪に出かけた奴や、フリーターをしながら夢を追うことを選んだ奴も多かったが、特にしたいこともなかった彼は、担当教官に進められるがままにある中小企業の会社員になった。しかし今考えるとこれは賢明な選択だった。入社後、会社は右肩上がりに業績を伸ばし、今では立派な一部上場企業である。
意外なことにと言ってはなんだが、会社での彼は真面目な男だった。
遅刻や無断欠勤は20年間一度もないし、それなりに仕事もできる。人間関係が不得手で社内の派閥争いなどにも疎かったせいか今も平の研究員のままだが、不満も感じずにやってきた。40代の独身男性が暮らしていくには十分すぎる給料を貰っていたし、このご時世には珍しく残業もほとんどないのだから、文句を言っては罰が当たるというものだろう。出世に興味のない彼にとってはおあつらえ向きの職場だった。
恋愛関係のほうはといえば、大学生のときに一度恋人らしきものができたが、それだけである。ゼミで隣の席だった女性となんとなく仲良くなり、急に休講になった時などに数回デートをしたが、数カ月で別れた。初体験の相手もその女性だ。
居酒屋で飲んだ後、酔った勢いで彼女の部屋に行きセックスした。その後も何度かまぐわったが、自分の部屋で理想の美少女を思い浮かべながらするオナニーよりもいいものだとは、正直思えなかった。これが恋愛なら、自分には必要ないと思った。口下手な自分にも別け隔てなく話しかけてくれる優しい子で、肌がザラついているのと足が異様に太いのを除けば、それほど悪くなかったのだけれど。
後になって「俺は初めてセックスしたあの女のことを好きだったのだろうか」と考えた。たぶん好きじゃなかったんだと思う。煮え切らない態度に業を煮やした彼女が他の同級生と付き合いだしたと知ったときは、心底ホッとしたからだ。
それ以来、女性と付き合ったことは一度もない。
職場に妙齢の女子社員がほとんどいないということも一つの原因だが、それだけが理由ではない。タナベは現実の女にいまひとつ興味が持てないのだ。
最近よくニュースで見る“婚活”、ありゃなんだと彼は思う。たいして若くも美しくもなく他の男の手垢にまみれたような女たちが、不景気な世の中でまるで就職先を探すかのように養ってくれる誰かを探している。それだけならまだしも、年収はいくら以上じゃなきゃ嫌だとか、一流企業に勤めてないと話にならないとかはしゃぎ放題、言いたい放題だ。マンコがついてるってだけで、一体自分にどれだけの価値があると思っているんだろう。
――そりゃあ、アリスみたいに若くて可愛くて清純な女の子なら別だけど。
依然として背を向けたままの美少女をしげしげと眺め、自分の幸運に感謝する。
家族や恋人がいなくても、本を読んだり映画を観たりパソコンを楽しんだり、休みの日にすることはいくらでもある。
刺激や大きな喜びはないが、煩わしさもない。そんな安定した安らかな毎日を繰り返し、気づけば42歳になっていた。
しかしそんなタナベにも、人生を変えるような出来事がこの20年間で3つだけあった。
まず一つ目は、風俗に通うようになったこと。
入社して3年が経った頃、風俗マニアの先輩に当時流行り始めた池袋のイメージクラブに連れていかれたのがきっかけだ。根が真面目な彼はそれまで風俗に嫌悪感さえ抱いていたのだが、狭く薄暗い個室の中でセーラー服姿の少女に微笑まれた瞬間、180度考えが変わってしまった。イメクラ嬢に促されるまま、高校教師になって制服のスカートをめくりアソコを舐めた。よく見れば少女はびっくりするほど化粧が濃くタナベよりも明らかに年上に見えたが、そんなことはどうでもよくなるくらいの興奮があった。
自分がロリコンなのだと自覚したのは、この時が初めてだった。以来、年に2・3回の風俗通いを続けている。もちろん通うのは、女子高生や可愛いメイドさんとのプレイが楽しめる店オンリーだ。
2つ目は、パソコンを買ったこと。10年ほど前にインターネットを始めてからというもの、孤独な中年男の生活は一気に豊かになった。特に性欲の方面についてそれは顕著だった。
いろんな個人サイトや掲示板、2ちゃんねるのピンク板なんかを頻繁に覗くと、自分の性癖がどのようなものかだんだんわかってくる。タナベが最も興奮するシチュエーションは、何も知らない無垢な少女を自らの手で調教するというものだ。
少女はもちろん男を知らない処女、まだ自分が女であることに気づいていない蕾がいい。内気で真面目な優等生タイプなら言うことなしだ。そんな子が風俗通いで鍛えたねちっこい愛撫に悦びの声をあげ、花ひらいていく。そしてやがては俺のセックスなしではいられなくなる。
鞭や蝋燭で痛めつけるようなハードなものは好きではなかったが、AVやエロ本に羞恥心を煽るようなSMプレイがあると夢中になった。清らかな制服姿の少女を大股開きの恥ずかしいポーズで縛りあげ、手付かずのピンクのオマンコを穴が開くほどに見つめる。少女は恥ずかしがって身を捩っているが本当は欲情しており、最後には「お願いですから気持ちよくしてください」とアソコをグチョグチョにして懇願するのだ。
ああ、考えただけでたまらない。42歳になった今でも、そんな妄想をすると20代の頃と同じ、いやそれ以上に固く勃起してしまう。体の奥底から沸き上がってくるような興奮は、現実のセックスなんかとはとても比べ物にならない。
自分と同じような趣味の人間がたくさんいることを知ったのも、インターネットのおかげである。
そして3つ目は、3年ほど前にハプニングバーに行ったことだ。エロサイトの掲示板であるハプニングバーの話題があがったとき、タナベは好奇心にかられてその店を訪れてみた。ビールを何杯か飲んで雰囲気だけ楽しめれば上等だと思っていたのだが、そこである男女を目撃したのである。初老の縄師と若くてグラドル級のルックスをした女。常連客に聞くと、時々来る伝説のカップルだという。彼は、2人がみんなの前で気まぐれにやるちょっとしたSMショーの美しさに魅了された。女は腹の出た縄師に命令されるがままに他の男性客に媚態をふりまき、時には美しい肉体を使ってサービスまでするのだが、縄師にぞっこんなのは誰の目から見ても明らかだった。心底うらやましいと思った。
それ以来、いつか美しい獲物を手に入れて一緒にハプバーに行くことが、タナベの夢になっている。あの縄師のように愛する奴隷と心も体も完全に結ばれたい。その思いは常に頭の一部分を占領するようになった。
まあ、そうは言うものの実際の彼は調教師でも縄師でもない、一介の会社員である。時々イメクラやメイド喫茶に通ったり、AVでオナニーしたりしながら、代わり映えのしない毎日を送っていた。
しかし、年が開けてから大きな変化が立て続けに訪れた。4月に控えた引越しと“女児誘拐監禁事件”のニュースである。
新年になって初めて出社した彼を待っていたのは、これまで20年間一度も出たことのなかった転勤話だった。正確に言えば栄転だ。大阪にある研究所に新プロジェクトのチームリーダーとして招かれたのである。
出世にまったく興味がないとはいえ、自分の仕事が認められたと思えば悪い気はしない。自分が大阪に行ったからといって困る人間も誰一人いない。彼は翌日にはOKの返事をした。
そして、さらに大きな変化をもたらしたのが“女児誘拐監禁事件”である。
無垢な少女を10年もの間監禁し続けた男がいるという事実は、眠っていた彼の欲望に日をつけた。女を監禁して自分の思い通りにするなんて夢でしかないと思っていたけれど、それを実際にやってのけた男がいるのだ。
――ほんの少しの勇気と覚悟さえあれば、俺にだって同じことができるんじゃないか。
事件から派生した掲示板を見つけ毎日のように自分の欲望を書き込む中で、その思いはどんどん熟成されていった。
妄想癖はあるものの、基本的にタナベは現実的な人間だった。本来ならば欲望のために誘拐監禁なんて危険を冒すなんてことはするはずがない。
しかし、この状況は二度とない絶好のチャンスだとも言えた。なんてったって4月になれば自分はもう東京にはいないのだ。それまでのほんの少しの間、ずっと思い描いてきた夢を現実のものにして何が悪い。何もわからないまま監禁される少女は可哀想だけれど、何も10年間も家の中に閉じ込めておこうというのではない。宝物のように丁寧に扱い、女の悦びを教えてやるのだ。損はあるまい。なんならすべてが終わった後には、しこりが残らないように謝礼を払ったっていい。蓄えなら十分ある。
夜な夜なそんなことを考え続けて数週間。ひょんなことから文句のつけようのない極上の獲物が目の前に現われた。アリスだ。
最初に掲示板を見たときは半信半疑だった。彼女が出没する日を知らされ公園に赴いてからも、まだ決心は固まっていなかった。
でも、暗闇の中、携帯電話の明かりに照らされた少女の寂しそうな表情を見たとき、確かに「この子しかいない」と思ったのだ。気がつけば、夢中でクロロホルムを染み込ませたタオルを彼女の口に押し付けていた。
今さら、あの激情が間違っていたとは思いたくない。
――明日もこのままだったら、無理矢理にでも食べ物を口に突っ込んだほうがいいのかもしれない……。
制服姿の小さな生き物を見つめながら、監禁魔は小さくため息をついた。
(続く)
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